
日本の財閥とは?財閥の序列やランキングについて詳しく解説!
2023年9月30日更新
はじめに
就活を開始すると、「財閥系企業」という言葉を耳にすることが増えるのではないでしょうか?
「財閥」と聞くと、「お金持ち」といったイメージがあるかもしれませんが、現状生活の中に「財閥」が存在しないことから、ピンと来ない人も多いはず。
また、何となく「序列がある」ような気がしている人が大半ですが、実際のところどのような企業が存在しているのか、詳しく知らない人がほとんどです。
そこで本記事では、日本の財閥とはどのような企業を指すのか、また、財閥の現状はどのようになっているのかなどを詳しく解説します。
財閥系企業に興味がある人はもちろん、後学のために専門的な知識を付けたい人もぜひ最後までお読みくださいね。
財閥とは
財閥とは、「とあるお金持ち一族が、様々な業種の企業を経営することによって市場を独占している企業グループ」を指します。
財閥の起源は第二次世界大戦以前に遡り、持株会社の制度を利用して巨大な企業グループを形成した財閥が日本経済をけん引してきたことにあります。
財閥が経営してきた業種は非常に幅広く、銀行をはじめ、電気などのインフラ、自動車や造船、小売など、経済における主要な分野を全て経営していたと言えます。
しかし、大きな力を持ちすぎてしまったがゆえに、国家権力との癒着が目立つようになっていました。この癒着によって今後の経済に大きな影響を与えないよう、第二次世界大戦後に連合国軍総司令部(GHQ)によって財閥は解体されます。
GHQとしては、国家権力との癒着回避はもちろんのこと、財閥による市場寡占を取りやめることで、民間企業のさらなる発展を期待したことによります。
そのため1945年以降、規模の大きな財閥から順番に解体され、財閥解体が完了する1947年には独占禁止法が成立し、持株会社の制度を利用した巨大な企業グループ設立は禁止され、財閥は実質廃止されました。
なぜ今も財閥系企業が存在する?
財閥解体以降、1997年の独占禁止法の改正によって純粋持株会社の設立が許可されます。
これにより、財閥系企業は再び終結できるようになったことを受け、現在も「三井」「住友」「三菱」といった名称とともに、財閥の名残が残っています。
日本の三大財閥
では、日本の代表的な財閥にはどのような財閥があるのでしょうか。代表的な財閥を詳しくご紹介します。
三井財閥
江戸時代の商人である三井高利は、呉服店と両替商を生業としていました。
財閥のスタートは、三井が現在の三越である三井越後屋を創業したことによります。
戦前は最大の財閥と知られ、日本経済の中で小売を中心に大きな存在感を示していました。
住友財閥
住友財閥は世界の財閥の中でも最も古い歴史を持ち、その歴史は400年を超えています。平家一門を祖先に持つと言われる住友家は、室町時代に京都で書籍と薬を扱う「富士屋」を創業し、のちに泉屋の商号で銅銀商を営むようになったことが起源とされています。
江戸時代以降は貿易商や両替商を行ったことが、現在の財閥の流れとなっています。
三菱財閥
三大財閥の中で最も歴史が浅い三菱財閥は、明治期に岩崎弥太郎が三菱商会を創立したことをきっかけにスタートした財閥です。
三菱商会は政商として海運業を独占したことによって、造船業や鉱業、鉄道や貿易などの広い分野に進出し、現在もその流れを大きく汲んでいます。
四大財閥という表現もある?
ここまで三大財閥を紹介してきましたが、日本を代表する財閥として、四大財閥が用いられることがあります。
4つ目の財閥は安田財閥と呼ばれ、明治維新後に両替商として活躍した安田善次郎によって創立された財閥です。
安田は明治維新後に政府が発行した太政官札(最初の紙幣)の取引において、当時の大蔵省にその実績を買われたことをきっかけに、第三国立銀行設立に携わることとなりました。このことを理由に、営んでいた両替商を「安田銀行」と改称し、財閥としての地位を確立しました。
その後は金融業に専念した点が、他の財閥とは異なるとされています。現在は損害保険ジャパン日本興亜、東京海上日動火災保険、みずほ証券、明治安田生命などに受け継がれているものの、安田財閥としての存在感は現在は無くなっています。
三大財閥の序列とランキング
ここまで日本の三大財閥を紹介してきました。
財閥の中には複数の組織が存在し、それらの序列は明確に区分されています。
こちらでは財閥そのもののランキング順で、各財閥内の序列を見ていきましょう。
三菱グループ
歴史は最も浅いものの、現在財閥系グループで最も力があるのは三菱グループだと言われています。その大きな理由は、日本のGDPの約10%を占めていることにあります。
財閥グループ内では最も組織内のつながりが重視されており、経営陣を中心に日々の交流が重視されています。
<御三家>
三菱商事
三菱重工業
三菱UFJ銀行
<世話人会(御三家+主要10社)>
三菱UFJ信託銀行
三菱マテリアル
三菱地所
三菱電機
三菱ケミカル
AGC(旭硝子)
日本郵船
東京海上日動火災保険
明治安田生命保険
キリン
<金曜会(世話人会+主要14社)>
三菱倉庫
ENEOS
三菱ケミカルホールディングス
三菱製鋼
三菱製紙
三菱化工機
三菱瓦斯化学
ニコン
三菱自動車
三菱ふそうトラックバス
三菱アルミニウム
ピーエス三菱
三菱総合研究所
三菱UFJ証券ホールディングス
<三菱広報委員会(金曜会+主要11社)>
ローソン
アストモスエネルギー
大日本塗料
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ
三菱鉱石輸送
三菱食品
三菱オートリース
三菱スペース・ソフトウェア
三菱UFJリース
三菱プレシジョン
三菱UFJニコス
中でも「金曜会」は、一流企業の社長クラスが集まる例会を毎月開催しており、親睦を目的に協議を行っています。「組織の三菱」と言われるような繋がりの強さは、このような日々の取り組みから醸成されているようです。
三井グループ
「三井」の冠がついていない場合、三井系企業である印象は大きくないかもしれませんが、ルーツをたどると、三井財閥の先祖といわれる伊勢商人・三井高利による越後屋三井呉服店などが前身となっていることが多く、現在の事業に相関していることが良く分かります。
<御三家>
三井物産
三井不動産
三井住友フィナンシャルグループ
<二木会>
商船三井
三井物産
三井不動産
東芝
東レ
トヨタ自動車
日本製粉
富士フイルムホールディングス
三越伊勢丹ホールディングス
王子製紙
IHI
<月曜幹事企業(御三家+主要5企業)>
三井金属
東レ
三井造船
三井化学
三井住友トラストホールディングス
<広報委員会加盟企業(月曜幹事企業+主要4企業)>
三井住友海上火災保険
三井倉庫ホールディングス
王子ホールディングス
三井化学
社長陣が集う「二木会」は、毎月第2木曜日に集まることからこのように名付けられています。今では毎月の会合のほか、「新年互礼会」「叙勲・褒章受章者祝賀会」などと称した数百人規模の会も定期的に開催しています。
住友グループ
住友グループは1社の加入数が少ないことから、ひとつひとつのグループの横のつながりが強固にある点が特徴です。
中でも代表的な白水会の加入には、住友精神の順守などが定められた「血判状」と呼ばれている誓約書に押印しなければ、白水会への出席は認められないという強いルールが存在します。
<白水会>
住友商事
住友化学
日本板硝子
NEC ほか
財閥系グループのメリット・デメリット
では、財閥系グループへ就職すると、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。いくつかご紹介しましょう。
メリット①:経営に安心感がある
財閥系企業の最も大きなメリットは、大企業ならではの安心感ではないでしょうか。ただの大企業ではなく、歴史ある大企業という点も大きなポイントです。
万が一経営が傾いた際には、財閥系のグループ企業が金銭的な支援をしてくれる可能性もあり、いきなり倒産などの最悪の事態にならない点も大きな魅力でしょう。
また、働きやすさという点で、経営の安心感を感じることも可能です。豊富な制度や福利厚生は盤石な経営基盤ゆえのメリットだと言うことができ、この点を魅力に感じて入社を決める人も多いです。
メリット②:企業ブランド力が高い
財閥系のグループ企業は、それぞれの企業が高いブランド力を持っています。したがって、そのブランド力ゆえの信頼度や、市場価値を身につけることができるでしょう。
ブランド力が高い企業へ就職できると、自身のキャリアアップや転職にも大きく役立ちます。もちろん自身の能力が一定以上あることが前提にはなるものの、企業ブランドを活用することで実力以上の効果を期待できます。
また、社会的ステータスも高いことから、高額のローンなどの審査も、企業ブランド力によって容易に通過できることが多いです。
自身の生活面でも盤石な基盤を築ける点は、財閥系グループの大きなメリットではないでしょうか。
デメリット①:終身雇用は期待できない
かつて財閥系企業といえば、入社すれば一生安泰でした。しかし、経済の見通しはどんどん立ちにくくなるばかりで、必ずしも終身雇用を期待することは難しくなりました。
現在では、早期退職を求める企業も増えており、セカンドキャリア、サードキャリアを見越したキャリア設計が重要になっています。
大企業ということや、企業のブランド力に甘んじることなく、自分自身のキャリアを積極的に構築していくことが必要になります。
デメリット②:勤務地は選べないことが多い
財閥系のグループは、全国各地に支店や事業所を持っていることが多く、全国転勤はマストになります。
したがって、自分で居住地を選択できないというデメリットがあるでしょう。
全国転勤がない職種もありますが、いわゆる一般職に該当する場合がほとんどで、給与や待遇といった面でやや劣る可能性があります。
自身の優先事項と天秤にかけながら、何を優先するかはしっかり見極めることが大切です。
デメリット③:年功序列であることが多い
財閥系グループの特徴として、今も年功序列の文化が色濃く残っていることが挙げられます。そのため、どれだけ実力があっても、年次次第では十分に活躍できない可能性があります。
また、財閥系グループ内でも序列があるため、序列が高い企業の言い分には逆らえないといったデメリットもあります。
近年ではこのような事象は減っているとされていますが、まだ完全になくなったわけではありません。
近年では年功序列は弱くなっているものの、まだまだ色濃く残っていることは十分に理解しておきましょう。
よくある質問
では最後に、よくある質問に回答しましょう。
異なる財閥への転職は難しい?
異なる財閥系グループだからといって、転職が難しいということはありません。ただし、財閥系グループの中には現在も学閥などの派閥が色濃く残っており、出身大学などで区分される可能性があります。
また、異なる財閥系グループでありながら同業である場合には、転職することが歓迎されない場合もあります。
その点には十分注意し、転職活動を行う必要性があるため、就活時に将来設計もある程度立てられていることが理想的です。
もちろん現在は財閥系グループと言っても、昔ほど強固な制約があるわけではありません。ただし、他の企業と比較すると、現在も色濃く残っている側面があることを理解し、自分自身が適応できるかを含め、しっかり検討することが大切です。
まとめ
本記事では、日本の財閥とはどのような企業を指すのか、また、財閥の現状はどのようになっているのかなどを詳しく解説してきました。
これまで「財閥」の得体が知れなかった人も、この記事を通じて現在の状況や経済的な立ち位置などを理解していただけると幸いです。
また、現在は直接的に「財閥」ゆえのパワーはないものの、財閥系グループの強固な絆によって得られるメリットはまだまだ多いと言えます。
これから就職する企業を検討する人はぜひ、財閥系グループ企業を視野に入れてみてはいかがでしょうか?
最後までお読みいただき、ありがとうございました。