【業界研究】紙・繊維・パルプ業界とは?志望動機・ビジネスモデル・職種を徹底解説

【業界研究】紙・繊維・パルプ業界とは?志望動機・ビジネスモデル・職種を徹底解説

2023年6月29日更新

はじめに

紙・繊維・パルプ業界は、身近に溢れる新聞紙や段ボール、衣料品の製造を支える重要な産業です。志望企業を絞ったり志望動機を考えたりするうえで重要なのが、業界研究です。ここでは紙・繊維・パルプ業界について、概要・よくある志望動機・ビジネスモデル・職種などを解説していきます。



紙・繊維・パルプ業界とは?

紙・繊維・パルプ業界とは、原料を加工して各種メーカーへ納品をしている企業群のことです。素材産業や川上企業と呼ばれることもあり、生活の根幹を支えているとも言えるでしょう。紙・繊維・パルプ業界は、繊維業界と紙・パルプ業界の2つに大きく分けられます。以下に、それぞれの概要について解説していきましょう。

繊維業界

繊維業界の企業は主に、原料である綿や綿を入手しそれを加工して各メーカーへ販売しています。加工には、紡績や染色など基本的な作業の他に、保温性を高めるといった新たな価値を付与するものも含まれます。

繊維業界ではこれまで、色々な繊維を製造してアパレルメーカーに卸すというものが一般的なビジネスのイメージでした。しかしながら近年では、より高機能な化学繊維を開発した結果、住宅における断熱材、スポーツに利用される器具類、航空機や自動車など、アパレルメーカー以外で活用される場面も多くなってきました。

紙・パルプ業界

紙・パルプ業界の企業は主に、原料である木材や古紙を入手しそれを加工して各メーカーや家庭向けに販売しています。製造する商品は、新聞・雑誌・印刷用紙などの情報用、段ボール原紙・クラフト紙などの包装用、トイレットペーパー・ティッシュなどの衛生用、電気絶縁紙などの工業用といった多岐に渡ります。紙・パルプ業界の企業はこれらを生産供給することで、産業活動や家庭生活を支えとなっています。言い換えれば、縁の下の力持ちとも言えるべき業界でしょう。



紙・繊維・パルプ業界のビジネスモデル

紙・繊維・パルプ業界のビジネスモデルは、原料を調達し、加工して販売した時の利益となっています。具体的には、販売価格から、加工コストと調達コストを差し引いた分が利益となります。

繊維業界

綿や皮が元となる原料です。これらを調達して加工、販売することによって利益を得ています。出来上がった商品は海外へ輸出することも多く、為替の変動も利益を押し上げたり押し下げたりする要因の1つとなっています。

紙・パルプ業界

木材や古紙が元となる原料です。これらを調達して調達して加工、販売することによって利益を得ています。木材の調達は海外に依存していて、為替の変動も利益に影響を及ぼします。基本は、生産コストを抑えられる、大量生産方式です。そのため規模が大きい会社の方が有利となっています。



紙・繊維・パルプ業界の職種

紙・繊維・パルプ業界には、複数の職種があります。それぞれ仕事内容や求められるスキルが異なっているため、把握することが重要です。

営業

自社の商品を、顧客である企業に提案し、販売していきます。顧客は基本的にメーカーなどの企業であることが多く、大きな数字を取り扱うことも珍しくありません。いかに競合他社との違いを打ち出して、取引を締結するメリットを感じてもらえるかが重要となってきます。

コミュニケーション能力はもちろんのこと、分析力や論理的思考力も必要な仕事です。

資材調達・購買

各地の工場やプラントからの要望を取りまとめて、国内外から原料や薬品を調達する仕事です。仕入れコストをいかに抑えられるかが焦点となってきます。

ヒアリング力や分析力をもって自社の要望を汲み取り、語学力や折衝力をもって取引先と交渉を行う力が必要となってくるでしょう。

商品開発

既存商品の改善と、新商品の企画と開発を行います。既存商品の改善では、品質を向上させたりコストを削減したりして、生産へのフォローを行うことも重要です。新商品の企画と開発では、何回も試作を繰り返して新しい技術の開発を行うこともできます。

失敗を糧に成長できる粘り強さを持ち、分析力と論理的思考力で問題を解決していける力が求められるでしょう。

基礎研究

基礎研究が商品開発と異なる点は、すぐさま販売できる商品を必ずしも作る必要がないという所です。いかに将来に役立つ最先端技術を考えられるかが焦点となっています。

そのため、新しいことに挑戦する精神、アイディア力、忍耐力などが必要となってくるでしょう。

生産管理

生産管理で重要なのは、スケジュールの管理です。いかに業務をスムーズに進められるかが焦点となってくるでしょう。そのために計画を立てて、それを確実に実行できるよう手配を行います。紙・パルプ業界ではたとえば、海外植林の計画も立てることがあるでしょう。生産性の高い植林事業展開に向けて、日々分析を行います。

緻密さや真面目さはもちろんのこと、視野の広さも必要とされる職種であると言えるでしょう。

プラントエンジニアリング

工場全体を管理する職種です。この業界では、製品を作るための工場が多数存在します。それぞれの工場で、スタッフがスムーズに効率良く働けるよう、誘導する必要があるのです。そのための設計、工場設備の改造計画立案、導入設備の仕様策定、コスト評価・選定などを手掛けます。

バックオフィス業務

経営企画、人事、総務、経理財務など、他の業界にもある仕事もあります。バックオフィス業務で経験を積めば、キャリアプランの幅が広がることでしょう。



紙・繊維・パルプ業界の大手企業紹介

紙・繊維・パルプ業界を、繊維業界と紙・パルプ業界の2つに分けて、それぞれの大手企業の紹介をしていきます。大手は資金力や技術力がずば抜けているため、より大きな仕事や新しい業務にチャレンジしていけるかもしれません。

就職偏差値については、こちらの記事も参考にしてください。(【24卒・25卒最新版】文系・理系・公務員別就職偏差値・難易度ランキング

繊維業界

会社名三菱ケミカル株式会社
売上高3兆9769億4800万円
平均年収949万2943円
就職偏差値・難易度66
社風総合化学企業でトップの売上を誇り、全国で幅広い事業を展開しています。そのため転勤が多く福利厚生がしっかりしています。

(引用:三菱ケミカル株式会社「会社概要」三菱ケミカル株式会社「第17期(2021年4月1日~2022年3月31日)有価証券報告書」

会社名東レ株式会社
売上高2兆2285億2300万円
平均年収734万3000円
就職偏差値・難易度59
社風比較的がっつきすぎず穏やかな雰囲気があります。

(引用:東レ株式会社「会社概況」東レ株式会社「有価証券報告書」【24卒・25卒最新版】文系・理系・公務員別就職偏差値・難易度ランキング

会社名旭化成株式会社
売上高2兆422億1600万円
平均年収751万1733円
就職偏差値・難易度58
社風温厚な人が多く、風通しが良いと言われています。

(引用:旭化成株式会社「会社概要旭化成株式会社「第131期有価証券報告書」【24卒・25卒最新版】文系・理系・公務員別就職偏差値・難易度ランキング

旭化成に関しては、次の記事に詳しく解説があります。ぜひ参考にしてください。(【就活】旭化成の就職難易度は?採用情報や対策を解説

紙・パルプ業界

 

会社名王子ホールディングス株式会社
売上高1兆4858億9500万円
平均年収858万7968円
就職偏差値・難易度61
社風長い歴史があるため保守的。若手でも挑戦できる風土はあります。

(引用:王子ホールディングス株式会社「会社概要」王子ホールディングス株式会社「有価証券報告書」【24卒・25卒最新版】文系・理系・公務員別就職偏差値・難易度ランキング

会社名日本製紙株式会社
売上高1兆450億8600万円
平均年収666万5993円
就職偏差値・難易度55
社風長い歴史があるため保守的。雰囲気は部署次第です。

(引用:日本製紙株式会社「会社概要」日本製紙株式会社「有価証券報告書」【24卒・25卒最新版】文系・理系・公務員別就職偏差値・難易度ランキング



紙・繊維・パルプ業界の動向

紙・繊維・パルプ業界を、繊維業界と紙・パルプ業界の2つに分けて、それぞれの市場規模と成長性、事業内容の変化を解説していきます。

繊維業界

国内市場規模は直近で8.6兆円となっていて、減少傾向にあります。(引用:「2030年に向けた繊維産業の展望繊維ビジョン」)一方で海外アパレル市場は拡大傾向にあり、海外進出が焦点となっています。

新しい技術の開発も焦点です。これまで多く扱われてきた木綿や麻、絹、羊毛といった天然素材に対して、化学繊維や炭素繊維など新技術の開発が伸びてきています。また、ナノテクノロジ―や高分子化学の発展により、繊維自体の高機能化も顕著です。

汎用性がある普通の繊維は、海外の低コスト製品と比較して競争力が高いと言えず厳しい立場にあります。反面、伸縮性や着心地、保温性や速乾性などの高付加価値をつけた商品は競争力が高く、人気です。このことから、衣服以外を手掛けるメーカーへの売上も伸びています。たとえば、医療メーカー、航空機や自動車メーカーなどが挙げられます。

以上のように繊維業界では、いかに海外展開を進めるか、新たなビジネスモデルや新商品開発ができるかが重要です。

紙・パルプ業界

2020年の紙・パルプ・加工品産業の製品出荷額は約7.1兆円でした。これは製造業全体の約2.3%、製造業24業種中15番目の規模となっていて、決して大きい数字とは言えません。(引用:日本製紙連合会「製紙産業の現状」

需要や生産量は減少傾向にあります。(引用:日本製紙連合会「製紙産業の現状」

背景にあるのは、紙の使用量減少です。インターネットやIR技術の進化によって、ペイパーレス化が進みました。さらに、在宅勤務やweb会議も普及しています。

しかしながら、需要が拡大している分野もあります。医療や福祉用のマスク、衛生用品などです。インターネット通販の普及によって段ボール需要の増加も見込まれます。さらには、脱プラスチックによる代替物として紙ストローの需要も増加しました。

今後の大きなテーマは、環境保全です。その中でもCNF(セルロースナノファイバー)は近年注目されている技術の1つとなっています。CNFは植物由来の素材となっているため、環境に優しいとされています。(引用:CNFの概要と特徴



紙・繊維・パルプ業界でよくある志望動機

紙・繊維・パルプ業界でよくある志望動機を以下にまとめました。参考にしつつ、自分なりにカスタマイズしていきましょう。

身近な製品を愛用している

紙・繊維・パルプ業界の製品は、ティッシュペーパーや衣服として身の回りに溢れています。身近に感じやすいものだからこそ、思い入れがあるといったエピソードに活かせるでしょう。縁の下の力持ちとして、人々の生活を根本から支えたいという精神がアピールできます。

アイディア力や開拓力がある

紙・繊維・パルプ業界は古くからある企業が多いですが、時代の変化から事業内容も変化しつつあります。新しいビジネスモデルや製品の開発が求められているため、アイディア力や開拓力をアピールするチャンスと言えるでしょう。自ら考えて行動し、チャレンジできる人材であることを主張してください。

語学力がある

紙・繊維・パルプ業界では、原料の海外輸入、商品の海外輸出が盛んです。また、海外進出を目論んでいる企業も少なくありません。語学力があることは、立派なアピールポイントになり得ます。



紙・繊維・パルプ業界のホットニュース

紙・繊維・パルプ業界では、日々目まぐるしく状況が変化しています。最新のニュースを確認することが重要です。

最近では、カーボンニュートラルと呼ばれる、脱炭素社会の実現を目指した議論が多くなされています。脱炭素社会の実現には、森林資源の活用が欠かせません。

これについて一般社団法人「プラチナ構想ネットワーク」が都内で開いたシンポジウムで発表された提言が、ニュースとなっています。プラスチック製品の原材料として、原油から精製したナフサではなく木質バイオマスを使うことで二酸化炭素の排出削減が期待されます。また、コンクリートの代替品として木材を使用することで「都市の木造化」も目指します。これにより、二酸化炭素の排出量を削減できるでしょう。

(引用:「脱炭素社会へ木材の積極活用求める提言 経済界など参加の団体」

カーボンニュートラルという単語は、紙・繊維・パルプ業界でも登場します。特に紙・パルプ業界の企業では、安定した供給のために森林資源を保有していることも少なくありません。



紙・繊維・パルプ業界の企業研究を進めよう

紙・繊維・パルプ業界について、概要・志望動機・ビジネスモデル・職種などを解説してきました。この記事によって、全体像を把握できたでしょう。興味を持った企業があったら、引き続き企業研究を行ってください。より深く企業のことを知ることができるでしょう。



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