【ココが違う!】 理系の就活:文系との違いやスケジュールも解説
2022年11月7日更新
はじめに
理系の就活は文系とは少し毛色が異なることもあって、どのような選択をするか悩んでいる人は多いのではないでしょうか。よくある悩みの例としては、以下のようなものが挙げられます。
「進学すべきか、就職すべきか?」
「自由応募か、それとも学校推薦か?」
「専門分野就職か、文系就職か?」
進学・就職のどちらを選ぶかはもちろん、応募方法や就職方法なども考える必要があり、選択肢の多さに悩んでしまいますよね。
一方で、学校の授業やゼミでの研究・実験も就活と並行してこなさなければならないため、「ただでさえ忙しいのに、どうやって就活を進めればいいの?」と不安になる人が少なくないはずです。
そこで本記事では、理系学生の進路の選択肢を紹介します。文系との違いや、就職を選択した場合のスケジュール感も解説するので、ぜひ参考にしてください。
【文系とココが違う!! 】理系の就活
理系の就活は進路や応募方法、就職方法などに複数の選択肢があり、文系とは異なるアプローチを求められます。
文系との違いも確認しつつ、まずは理系特有の就活形態について見ていきましょう。
1-1.進学率が高い
理系と文系の違いのひとつは「進学率」です。理系は文系に比べ、大学院への進学率が高い傾向にあります。
文部科学省の「令和元年度学校基本調査」によると、大学の学部の分野別進学状況は以下の通りです。
理 学 工 学 農 学 人文科学 社会科学 教 育
40.8% 36.4% 23.3% 5.2% 3.1% 5.9%
このデータから、理系(理学・工学)は40%前後の学生が大学院に進学しているのに対して、文系(人文科学・社会科学)は5%前後にとどまっている現状が読み取れます。
例えば理系学生が10人いた場合、4人は進学し、残りの6人は就職もしくはその他の進路を選んでいる計算です。
「平均的な数値はわかりました。が、進学がいいのか、就職がいいのか、どちらの進路を選択すればいいのかわかりません…」
そうですよね。
すべてが初めての経験の人がほとんどでしょうし、人生のターニングポイントになるので、選択に迷ってしまうのも無理はありません。
大学卒業後の進路のような大きな決断をする際には、一定の判断基準が必要です。
その基準のひとつとして、「進学」と「就職」のメリット・デメリットをそれぞれ紹介するので、進路に悩んでいる人は参考にしてみてください。
どちらか一方のメリット・デメリットだけを見るのではなく、両面を理解したうえで総合的に判断することが大切です。
【進学の特徴】
メリット
- 専攻分野の知識をさらに深堀りできる
- 自分の専門知識・スキルが企業のニーズとマッチする場合は採用されやすい
- 採用条件が「修士以上」の職種に応募できる
- 学部卒に比べて初任給が高い
デメリット
- 学費がかかる
- 社会人としてのスタートが遅れるので社会的信用が薄い
- 学部卒と比べると実務経験に2年の差が出るので入社後に遅れを取り戻す必要がある
進学の特に大きなメリットは、学部卒に比べて初任給が高いことです。
産労総合研究所の「2023年度 決定初任給調査」によると、2023年4月入社者の初任給の平均は以下の通りでした。
学歴別の初任給額の水準
- 大学院卒(博士):24万6,052円
- 大学院卒(修士):23万8,203円
- 大学卒:21万8,203円
初任給だけでも大学院卒(修士)と大学卒で2万円ほどの差があり、生涯年収となるとさらに差が広がると考えられます。
【就職の特徴】
メリット
- 早い段階から実務経験を積める
- 給与を得られる
デメリット
- 「修士以上」を採用条件にしている募集に応募できない
- 生涯年収に差が生まれやすい
早い段階から実務経験を積めるのが就職の大きなメリットです。
大学での学びを早く仕事に活かしたい人や、自分の専攻分野のことを既にひと通り学び終えた人は、就職が有力な選択肢となるでしょう。
1-2.複数の応募方法がある
理系と文系の就活では応募方法にも違いがあります。企業への応募方法は「推薦応募」と「自由応募」の2種類に大きく分かれ、文系の就活は自由応募が中心なのに対し、理系の就活では推薦応募を活用する学生も多く見られます。
「推薦応募」は、大学もしくは教授から推薦を受ける形で、企業の選考に臨む応募方法です。
「大学や教授が高く評価している学生」として選考に望むため、合格の可能性が上がるメリットがありますが、ほとんどの大学では推薦できる人数に上限が設定されています。
その場合は学内(研究室内)での選考があるうえ、たとえ推薦してもらえたとしても企業の選考で不採用となるケースもあります。
必ずしも「推薦応募=内定」ではないことを理解しておきましょう。
一方の「自由応募」は、自ら企業にアプローチして、説明会、エントリーシートの提出、面接といった選考に進んでいく応募方法です。
文系の就活でよく見られる応募方法であり、理系の就活でも推薦応募とあわせて活用されています。
推薦応募と自由応募はどちらが良くてどちらが悪いというものではなく、両方にメリット・デメリットがあります。
就活の進め方や目的によって自分に合う応募方法は変わるため、それぞれの特徴を正しく理解しておきましょう。
【推薦応募の特徴】
メリット
- 自由応募に比べて内定率が高い
- 選考プロセスを省略するケースが多く、短期間で就活を終えられる
デメリット
- 就職先が学校と関わりのある企業に限定される
- 基本的に第1志望の企業しか応募できない
- 内定辞退のハードルが高い
自由応募に比べて内定率が高く、選考プロセスも短い傾向にある推薦応募ですが、内定辞退のハードルが高いデメリットがあります。
推薦応募で内定をもらったのに辞退してしまうと、企業だけでなく、大学や教授、同じ大学の学生にも多大な迷惑がかかります。
場合によっては大学の推薦枠を減らされる可能性もあるため、自由応募に比べると内定辞退のハードルは高めです。
【自由応募の特徴】
メリット
- 多くの選択肢から企業や職種を選べる
- 大学の専攻以外の職種にも応募できる
- 自分のペースで就活を進めやすい
- 複数企業の選考を並行して進められる
デメリット
- 文系学生と同じ土俵で戦うことになるので競争率が高くなる
- 推薦応募に比べて選考プロセスが長くなりがち
自由応募は、推薦応募に比べて就活の自由度が高い点が魅力です。
自分が選んだ企業に応募するためスケジュールを調整しやすく、自分のペースで就活を進められます。
一方で、推薦応募という理系学生ならではの恩恵を授かれなくなってしまうデメリットもあります。
幅広い企業や職種から選んだり、自分のペースで就活を進めたりできる点は魅力的ですが、文系学生との競争が激しくなる点には注意しましょう。
なお、新卒採用を実施するすべての企業が推薦応募を受け入れているわけではありません。
年度によって推薦応募を受け入れていない企業もあれば、そもそも自由応募しかない企業もあると理解しておきましょう。
「昨年は推薦応募があったから今年もある」とは限らないので、自由応募も視野に入れておくことが大切です。
※後付け推薦とは
後付け推薦とは、自由応募で学生を募集した企業が内定辞退を防ぐために、「内定が出る直前」になって推薦状の提出を求めることです。
「入社確約」を意味する企業の意思表示なので、第1志望であれば受け入れても問題ありませんが、そうでない場合は注意が必要です。
後付け推薦も推薦応募と同様に、一度内定をもらってしまうと辞退するのが難しくなってしまいます。
内定欲しさに深く考えずに受け入れてしまうと後悔する可能性があるので、しっかりと考えてから結論を出しましょう。
自分1人で判断するのが難しい場合は、大学のキャリアセンターや教授などの周囲の人に相談するのがおすすめです。
1-3.3つの就職方法がある
文系の場合、自分の専攻分野である法学、経済、文学などをそのまま仕事にできる学生はほんの一握りです。
専門分野就職よりも、専門分野外就職をする学生が多くを占めています。
一方で、理系の場合は、自分の専攻分野である仕事にそのまま就きやすいのが特徴です。
大学で身につけた知識・スキルを仕事に直結させやすいため、「工学分野を専門とする学生はモノづくりの仕事に就く」というようなケースが多く見られます。
ただし、理系の場合でも、専門分野外就職や文系就職がまったくないわけではありません。
専門分野就職以外の道を選ぶ学生も一定数存在するため、それぞれの特徴を確認しておきましょう。
専門分野就職
大学で学んだ専門分野の延長線上の仕事に就くこと
例)研究、開発、設計、製造技術、生産、生産管理、品質管理など
専門分野外就職
専門分野とは別の領域の仕事に就くこと
例)特許、知的財産、技術営業、SEなど
文 系 就 職
専門分野とほぼ関連性のない文系領域の仕事に就くこと
例)コンサルタント、金融関係業務、営業、事務など
併せて、それぞれのメリット・デメリットもみておきましょう。
専門分野就職の特徴
- 大学で身につけた専門知識・スキルを仕事で活かせる
- 機械、電気、情報などの業界との親和性が高く、求人需要も多い
- 専門分野の企業に学校推薦してもらえる
- 専門分野の枠にとどまり、視野が狭くなる可能性がある
専門分野外就職の特徴
- 専門分野外に枠を広げて仕事できる
- 自分の可能性が広がる
- 文系就職より少し専門性を活かせるだけで、就活でのアドバンテージにはなりづらい
文系就職の特徴
- 理系学生という差別化点が強みになる
- 内定獲得までに時間を要する
- 選考プロセスの省略がないぶん準備や対策に時間がかかる
1-4.時間がない
理系学生は研究室に所属するため、文系学生に比べて就活に使える時間が少ない傾向にあります。
研究室に入る時期は大学や学部によって差がありますが、学部3年もしくは4年に上がるタイミングで研究室に入るのが一般的です。
通常の授業に加えて自身の研究で忙しくなり、就活になかなか時間を割けなくなってしまうのが理系の難しさといえます。
そのため、効率的に就活を進めて早期に終わらせることが得策です。
1-5.早期内定を得やすい
就活に使える時間が少ないデメリットは、裏を返せば早期内定を得やすいメリットになります。
理系学生や学業で忙しいことは企業も重々承知しているため、忙しい学生に配慮した採用戦略をとる企業が多く見られます。
企業側としても優秀な人材を早期に囲い込みたい思惑があり、その結果早く内定を獲得しやすい点が魅力です。
少ない時間で就活を完了させたい理系学生と、早期に優秀な人材を獲得したい企業側の思惑が合致した結果といえるでしょう。
1-6.大手志向がある
理系学生は早めに就活を終わらせて研究に専念したい想いが強いことから、知名度が高く、事業規模が大きい大手企業を選ぶ傾向があります。
実際、HR総研と楽天みん就が2024年新卒学生を対象に実施した調査では、理系学生の約7割が「絶対大手企業に行きたい」もしくは「できれば大手企業に行きたい」と考えていることが明らかにされています。
画像引用:HR総研×楽天みん就:2024年卒学生の就職活動動向調査 結果報告【就職意識編】
また、キャリタスが作成した「2024年卒の就活生が選ぶ就職希望企業ランキング(大学生編・理系)」によると、理系学生に人気の企業はSKYがトップ、その後に日本アイ・ビー・エムとトヨタ自動車が続いています。
上位には大手IT企業やメーカー、保険会社がランクインする結果となりました。
1-7.
研究や実験で忙しい理系学生は就活イベントに参加しづらく、就活情報を集めにくい実態にあります。
企業説明会や長期インターンシップに参加するハードルが高く、文系に比べると情報不足に陥りやすい点が理系ならではの悩みの種です。
学業と並行して就活を進めるのは大変ですが、研究や実験の合間に可能な限り就活イベントに参加し、必要な情報を集めるように心がけましょう。
理系就活のスケジュール感と対策
ここからは理系就活のスケジュール感と、いつまでにどんな準備と対策をしていけばいいのかを解説します。
就活の解禁スケジュールは経団連から政府に引き継がれ、現在は政府主導で公表されています。
大まかな日程は以下の通りです。
- 学部3年/修士1年の夏頃:インターンシップ開催
- 翌年3月1日~:新規採用情報の公開、エントリー受付開始
- 6月1日~:採用選考を実施(以降、随時内々定出し)
- 10月1日~:正式に内定が出される
画像引用:マイナビ2023~理系就活の進め方理系の就活スケジュール
上記の日程はあくまでも目安であり、近年の就活は業界や企業によって採用プロセスとスケジュールが多様化しています。
「この時期から準備を始めると安心」と決めつけるのは難しい状況になっているため、鵜呑みにしすぎないよう注意しましょう。
大切なのは、「3月からはじめよう!」ではなく、「3月から動ける体勢で臨もう!」という意識を持つことです。
新規採用情報が公開される3月1日になって、企業研究や選考対策を始めたのでは、とても本選考までに準備が間に合いません。
3月1日の本格的な就活解禁に先立って、企業研究や選考対策、インターシップへの参加などの対策を、学業と並行しながら少しずつ進めておくことが大切です。
インターンシップやセミナーで学生と接点を持つ企業は年々増えており、3月時点で既に内定を出す学生がほとんど決まっているケースもあるため、早めの準備を心がけましょう。
おわりに:理系就活は「まずは行動する」
以上、理系特有の就活事情やスケジュール感、意識すべきポイントについて解説しました。
理系の就活は文系に比べて選択肢が多く、準備にかけられる時間は少ない傾向にあります。
研究や実験が忙しいからといって後回しにしてしまっては、後悔する可能性が高くなるため、早めの準備を心がけましょう。
3月1日が本格的な就活解禁だからといってそこから準備を始めるのではなく、数ヶ月前から少しずつ準備を進めることが大切です。