【業界研究】全国紙業界とは?志望動機・ビジネスモデル・職種を徹底解説

2023年10月29日更新

はじめに

昔から全国の多くの人が読み続けている全国紙に魅力を感じ、就職したいと思う就活生もいるのではないでしょうか。全国の多くの人が必要としている媒体に携わるため、やりがいをもって働ける仕事です。

 

しかし、実際どんな仕事をするのか職種やビジネスモデルなどを知っていないと、思っている仕事ではない、といったギャップがある可能性もあります。そのため、本記事では全国紙業界について詳しく紹介しているので、どのような業界なのか学んでいきましょう。

全国紙業界とは

全国紙業界とは、全国に向けてニュースや情報などを提供している新聞を発行する業界です。現在はテレビやインターネットが普及していますが、それよりも前から情報を提供する手段として用いられ、長い歴史のある業界です。

 

新聞業界には全国紙、ブロック紙、地方紙、スポーツ紙、専門紙などがあり、全国紙業界はその中の一つになっています。

 

全国紙の主な企業としては、朝日新聞・読売新聞・毎日新聞・産経新聞・日本経済新聞などがあり、その対となっている地方紙は、中日新聞社・北海道新聞社・神戸新聞社・西日本新聞社・中国新聞社などが主な企業です。

全国紙業界のビジネスモデル

全国紙業界のビジネスモデルは下記の図をもとに説明していきます。

引用元:メディア業界

 

新聞社の収入源となるのは、新聞そのものを販売して得られる「販売収入」と、新聞に掲載されている広告から得られる「広告収入」の2つです。

 

・販売収入

日本では朝刊・夕刊のように毎日決まった時間に新聞が届く「戸別配達制度」が採用されています。主に定期購読の読者が多く、新聞会社を支える主な収入源となっています。しかし、近年では新聞を取る人が減少し発行部数も大幅に減ってきているのが現状です。

 

日本新聞協会の調べによると、2000年に71,896千部発行していた新聞が、2022年では36,775千部と約半分まで減少しています。インターネットの普及が広まり、新聞を読む人が減り、特に40代まで下がると1割程度の人にしか読まれていません。

 

そのため、書籍や雑誌の出版や、不動産経営、イベント開催などその他の事業によって収益を得ている新聞会社も存在します。

 

・広告収入

販売収入の次にメインとなる収入が広告収入です。広告収入は、新聞による広告収入は減っているものの、新聞以外を含めた総広告費は増えているのが特徴です。簡単に表にまとめたので見ていきましょう。

 

年度 総広告費(億円) 新聞広告費(億円) 新聞広告掲載率(%)
2022年 71,021 3,697 29.7
2000年 61,102 12,474 40.1

 

2000年から2022年までの間で、総広告費は約10,000億円増えましたが、新聞広告費は約9,000億円減少し、新聞広告掲載率も約10%ほど低下しました。

 

販売面でも広告面でも、インターネットの普及が新聞社にとって大きな打撃を与える存在となっています。そこで新聞社の中には、新戦略として新聞以外の媒体で読めるものを開発したのが、スマホやタブレットなどで読めるデジタル版です。

 

日経新聞や朝日新聞などが代表的に取り組んでいますが、新聞の購買者数と同じように伸び悩んでいるのが現状です。

全国紙業界の職種

全国紙業界の職種を大きく分けると「編集」、「販売」、「広告」、「事業・ビジネス部門」の4つにわけることができます。

 

また小さく分けると、「記者」、「編集者」、「校閲」、「広告」、「販売」、「事業・ビジネス部門」の6つにわけられるので、それぞれの特徴を見ていきましょう。

 

編集部門

編集部門では、「記者」、「編集者」、「校閲」の3つに分かれます。

 

・記者

記者は新聞に掲載する記事の執筆を行うのが仕事です。記事を書くためには情報を集めなければいけないため、記事に載せる事柄について自ら取材に赴きます。

 

一つの分野に特筆するのではなく、経済・社会・政治・文化・科学技術・スポーツ・エンタメ・生活情報など、取り扱うジャンルは多岐にわたるため、幅広い知識量が求められる仕事です。

 

記事を執筆するため正確な情報を読者に伝えるための文章能力はもちろん、取材力やコミュニケーション能力も必要とされます。決まった時間に取材を行うのではなく、事件が起きれば昼夜関係なく現場に直行するため、フットワークの軽さや体力が必要となるハードな仕事です。

 

・編集者

編集者は記者が執筆した記事を見やすく、わかりやすい紙面を編集・レイアウトするのが仕事です。どのページにどのくらいのボリュームを出し、どのような見出し、配置、構成をするかを決めます。

 

文章能力が必要な記者に対し、レイアウトやデザインといった空間を上手く使う技術が求められる仕事です。

 

・校閲

校閲は記者が執筆した文章に誤字脱字がないか、事実関係に問題はないか、表現や日本語の表記にゆれがないかなどを確認する仕事です。

 

新聞において「正しい情報を伝える」という点は非常に重要であるため、校閲は必要不可欠な職種です。さまざまな情報の事柄をチェックするため、豊富な知識量はもちろん、文章をチェックするための語彙力も求められます。

 

販売部門

販売部門は、編集部門が発行した新聞を読んでもらうために、購読者の増加や、読者獲得に向けたイベント・宣伝といった販促プロモーションを行う仕事です。

 

新規購読者を増やすために戦略会議を行ったり、エリアの販売網強化を行ったり、各地域の販売店のコンサルティングを行ったりと、営業力が必要となってきます。購読者が減少している中、どのような切り口で販売していくかがカギとなります。

 

広告部門

広告部門は、広告の掲載・提案・募集を行う仕事です。一般企業以外にも、団体・公的機関・官公庁などもクライアントの一つです。新聞広告掲載率が減少している中、新聞以外での広告を増やしていかなければいけません。

 

事業・ビジネス部門

事業・ビジネス部門は、新聞販売とは関係なく、スポーツや文化イベントの企画運営を行う仕事です。美術・博物などの展覧会やアート・高校野球・駅伝といったスポーツイベント、コンサート、映画祭、絵画の展示会など、さまざまなイベントの運営を行っています。

大手企業紹介

全国紙を提供しているのは、朝日新聞・読売新聞・毎日新聞・産経新聞・日本経済新聞の五大紙です。それぞれの売上高や就職偏差値の違いを比較していきましょう。

 

なお、就職偏差値や難易度を詳しく知りたい方は、【24卒・25卒最新版】文系・理系・公務員別就職偏差値・難易度ランキングを参考にしてください。

 

会社名 売上高 平均年収 就職偏差値 社風
朝日 2,299億円

(2023年3月)

1,228万円 64 使命感を持って全員で作り上げていくという社風
読売 2,922億円

(2023年3月)

1,500万円 64 「読者目線」と「現場主義」
毎日 595億円

(2023年3月)

829万円 61 組織を優先せず個人の優先してくれるリベラルな社風
産経 786億

(2023年3月)

741万円 59 様々な個性を持った人を採用し、その個性を伸ばす社風
日本経済 3,584億円

(2022年度)

1,220万円 69 モチベーション高く、プロフェッショナル意識の高い

 

朝日新聞について詳しく知りたい方は【学歴フィルターは?】朝日新聞社の就職を可能にする3つの対策法 | ジョーカツキャンパス (jo-katsu.com)を参考にしてください。

 

読売新聞について詳しく知りたい方は【企業研究】読売新聞社の選考対策・社風・求める人物像を徹底解説 | ジョーカツキャンパス (jo-katsu.com)を参考にしてください。

 

朝日新聞・読売新聞・毎日新聞・産経新聞・日本経済新聞、どの企業においても平均年収の高さが魅力的です。多忙な労働環境を強いられることが予測できますが、それを緩和させるかのように平均年収が高いのが特徴です。

 

毎日新聞、産経新聞が売上では差が出ており、五大紙の中では就職偏差値もやや低くなっています。

全国紙業界の動向

全国紙業界の動向を見ていきましょう。

 

全国紙業界の現状

一般社団法人日本新聞協会の調べによると、2000年に5,370万部、発行していた新聞も2022年には3,084万部と大きく減少しているのが現状です。40代より下は1割の人しか新聞を取っていないなど、全国紙業界も衰退していることがよくわかります。

 

年度 総広告費(億円) 新聞広告費(億円) 新聞広告掲載率(%)
2022年 71,021 3,697 29.7
2000年 61,102 12,474 40.1

 

ビジネスモデルでも説明しましたが、新聞広告費は2000年に比べると約1/4まで減少しているのが現状です。しかし、総広告費は2000年よりも増えているため、各新聞会社は新聞から別の媒体に力を入れていることがわかります。

 

インターネットの普及により痛手を負っている全国紙業界は、どのような打開策を取っているのか見ていきましょう。

 

全国紙業界の将来

新聞からネット社会へと移り変わっている今、全国紙業界もデジタル展開の進展を目指して取り組んでいます。五大紙が取り組んでいる政策について見ていきましょう。

 

・日本経済新聞社【デジタルファースト戦略】

日本経済新聞は、2010年「日経電子版」を創刊し、2020年には70万人以上の方が有料会員として登録しています。40代、50代が中心でしたが今では20代が一番多く新しい読者の獲得に成功しています。

 

・朝日新聞社【朝日新聞デジタルを運営】

朝日新聞デジタルは、スマホやパソコンなどで朝日新聞の記事が読める定額制のサービスです。社会・経済・政治・スポーツ・IT・文化・ライフなど様々なジャンルの記事を一日約500本提供しています。

 

・読売新聞【読売オンラインを運営】

2019年より読売新聞はオンラインで新聞や小説、数独、コラム、占いなどが利用できる「読売オンライン」のサービスを開始しました。読売オンラインは、新聞を購読している人に向けてのサービスであり、有料会員になるためには新聞を購読しなければいけません。

 

他の全国紙の有料デジタルサービスとは少し違った形をとっているのが特徴です。

 

産経新聞や毎日新聞もデジタルサービスを開始し、紙からネットへと変化しています。新聞だけでは、将来的にも経営が困難になるので、どの企業も新聞以外での事業に力を入れ収益をあげる取り組みを行っています。

志望動機

志望動機で大切なことは、「なぜこの業界なのか」、「なぜこの企業に惹かれたのか」、「将来どのようなことをしたいのか」といったことが書かれているかが大切です。全国紙業界のよくある志望動機は以下の通りです。

 

・正確性の高い情報をより多くの人に発信したいから

・全国の方に向けて人々の暮らしに役立つ情報を発信したい

・新聞に慣れ親しんでほしい

・声なき声を届けたいから

・新聞に広告を掲載することで地元の中小企業や個人のビジネスに貢献したい

・社会人のスキルアップに役立つ情報を発信する貴社のデジタル版に携わりたい

・多様性を大切にする貴社の情報発信を支えたい

 

志望動機を作るためには、自己分析を深めていくことが大切です。自分の長所・短所、具体的なエピソードなどひとつひとつ深堀していきましょう。

 

また、必ず「なぜ他の新聞社ではなく自社を選んだのか」という志望動機を聞かれるため、企業研究もしっかり行い、自分が選んだ企業の求める人物像に沿ったアピールができるようにしましょう。

まとめ

全国紙を発行している朝日新聞・読売新聞・毎日新聞・産経新聞・日本経済新聞のどの企業においても、新聞離れにより経営が苦しくなっています。そんな全国紙業界に就職を考えている人は、将来性があるのかをしっかり見極めることが大切です。

 

新聞を読む人もどんどんいなくなり、数十年後には新聞自体がなくなっている可能性も十分にあります。それでも、新聞に関する企業に就きたい、と考えている人は本記事を参考に業界研究を深め、現状の把握と将来の可能性を視野に入れて考えましょう。

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