【業界研究】繊維業界とは?志望動機・ビジネスモデル・職種を徹底解説
2023年9月25日更新
はじめに
本記事では、就活生向けに繊維業界について紹介しています。
「繊維業界って何?」
「繊維業界に将来性はある?」
「繊維業界の志望動機が思いつかない、、、」
上記のように、繊維業界に対する状況は学生ごとに異なると思います。
今回はそんな学生の持つ様々な悩みを解決できるよう繊維業界を徹底解説しているため、ぜひ最後まで読んでみてください!
繊維業界とは
繊維業界は衣食住の「衣」と密接に結びついている業界で、ポリエステルや綿などの繊維や樹脂、フィルムなどを扱う業界です。
繊維は主に「天然繊維」と「化学繊維」に分けられます。
天然繊維は、繊維自体が人工的に作られたものではなく、自然のままの繊維形状で利用されたものを指し、原材料によってさらに植物繊維・動物繊維・鉱物繊維の3つに分けられます。
化学繊維は、人工的に加工して製造される繊維で、再生繊維・半合成繊維・合成繊維・無機繊維の4つに分類されます。
イギリスの産業革命を期に一気に繊維業界が拡大し、日本では20世紀に国内に普及していった経緯があります。
現在は従来通り衣料品の素材として利用されつつ、自動車や医療品・IT分野など他業界にも繊維ビジネスが広がっています。
繊維業界のビジネスモデル
繊維を用いた商品が実際に消費者のもとに届くまでの間には、様々な業者が連携しています。
そのため、各企業がどのような立ち位置で繊維業界に関わっているかを紹介していきます。
1、繊維メーカー(川上)
最も川上に位置する業種は繊維メーカーで、実際に製品として利用されるための糸や生地を製造します。
(繊維メーカーの企業例)
・東レ
・帝人
・クラレ
・三菱ケミカル
2、商社(川上)
繊維メーカーで製造された生地などは、繊維メーカーの営業を通して商社が仕入れ、仲介を行います。
繊維メーカーが子会社として商社を設立し、グループ間で製造と流通を行う企業もあります。
(繊維専門商社の企業例)
・東レインターナショナル
・帝人フロンティア
・ワールド
・蝶理
3、アパレルメーカー(川中)
商社から生地などを購入するのはアパレルメーカーで、実際に繊維を用いて衣服などを製造していきます。
アパレルメーカーとよく似た言葉として「SPA」がありますが、SPAはアパレルメーカーと後ほど紹介する小売店の機能を併せ持つ特徴があります。
(アパレルメーカーの企業例)
・ファーストリテイリング
・しまむら
・良品計画
・ワコールHD
4、小売店(川下)
アパレルメーカーが製造した衣服などの商品を仕入れ、実際に消費者に販売していくのが小売店です。
従来は消費者が販売店に足を運んで商品を購入する「店舗型小売店」が基本的でしたが、近年ではコロナウイルスの感染拡大などが影響し、ネット上で商品を販売し、購入し郵送で商品が届く「無店舗小売業」が人気を得ています。
(小売店の企業例)
・三越伊勢丹
・イオングループ
・ZOZO
繊維業界の職種
繊維業界を営む企業では、主に以下の職種で働くことができます。
・研究開発
・商品開発
・生産
・管理
・営業
・研究開発
研究開発は、商品に使用する「原材料」について研究していく職種です。
開発済みである繊維がさらに良い品質にならないか、またそもそもまだ発明されていない繊維を発見するために実験し、分析していきます。
また繊維が持つポテンシャルを活かしていくためには、研究開発で成果を挙げていくことが必要不可欠です。
そして研究開発という職種は、失敗しても挫けずに研究を成功させるための仮説を考え続けていく必要があります。
そのため論理的思考力や分析力に加え、粘り強さも必要になります。
しかしその分、自身の研究成功が世の中に良い影響を与えることができたときに感じられる達成感はこの上ないはずです。
繊維そのものについて興味がある学生はその興味を追求できる職種のため、オススメです。
・商品開発
消費者のニーズやトレンドを分析し、分析結果をもとに繊維商品の設計を行っていくのが商品開発の役割です。
商品開発担当者が考える設計とは、主に以下2点を指します。
1、既存商品の改良改良
2、新商品の開発
そのため、アパレルメーカー・自動車メーカー・医療メーカーなど実際に繊維を用いた商品を製造していく企業との連携が必要不可欠になります。
また消費者のニーズを把握するために、時に市場調査も行います。
マーケティング力や創造性を発揮できる仕事に就きたい学生にマッチしている職種と言えます。
・生産
商品開発によって誕生した商品を実際に工場で生産していく職種で、主に生産工程の管理や、完成した製品の品質管理を行います。
製品を納入する納期があるためそのスケジュールをもとに製造を進めていく必要がありますが、時に工場で思わぬトラブルが発生することもあります。
製造が止まれば企業自体が機能しない状態に繋がってしまうため、トラブルの原因を素早く見つけ、適切に対処していく力が必要です。
・管理
工場での生産を管理していく職種です。
管理とは具体的に、
・商品の納期や数量の調整業務
・在庫管理
・より不良品を出さないような作業工程を考えること
・生産コストを減らす方法の立案
・品質検査の実施
など、会社の利益を増やしていけるように生産現場をコントロールする業務が大半です。
会社の業績に直結するため責任が生じますが、その分やりがいを感じられる職種です。
・営業
繊維メーカーの営業は商社の営業とやり取りし、商社の営業は繊維メーカーから得た繊維をアパレルメーカーに販売し流通させるなど、各会社の顔として取引先と関わっていきます。
また実際に展示会に足を運び、新規顧客を獲得するべく名刺交換なども行います。
コミュニケーション能力や行動力が必要なうえ、繊維といってもアパレル・自動車・医療など用途が様々なため、顧客のニーズを発見していくために「繊維」における多くの知識が必要になります。
大手企業紹介
会社名 | 売上高 | 平均年収 | 就職偏差値・難易度 | 社風 |
東レ | 2兆2,285億円 | 932万円 | 59 | 堅実 |
帝人 | 9,261億円 | 940万円 | 57 | 多様性の尊重 |
蝶理 | 2,841億円 | 927万円 | 54※ | 若手から成長できる |
ファーストリテイリング | 2兆1,330億円 | 963万円 | 60 | 結果主義 |
三越伊勢丹 | 2,085億円 | 696万円 | 56 | ワークライフバランス重視 |
参考・引用
繊維業界の動向
繊維業界は新興国が台頭してきたことが影響し、中長期的にみると国内の業界規模は縮小傾向にあります。
特に衣料品繊維に関しては中国が安価で、かつ大量に輸出を行っているため衣料品繊維の国内市場規模が縮小しています。
それを受け国内企業はより海外に向けて事業を展開し、また独自の高度な技術力を他業界で活かす動きを取る傾向が生まれています。
特に化学繊維の技術を生かした光化学フィルムや電子・バイオなどを開発する「非繊維事業」や、新マスクなどの医療品に利用される「不織物事業」にシフトチェンジする企業が増えています。
また他社のノウハウを獲得するためM&Aも盛んで、理由としては主に
・繊維を製造する技術力の獲得
・通販サイトなどを用いた販売経路の拡大
・ブランド力の強化
が挙げられます。
時代の経過と共に、より性能や利便性・ブランド力が重要視されるようになっていますが、今後はそれと共に「環境問題」を考慮した事業に注力していく必要があります。
例えば現在、繊維が素材となる「衣類」は廃棄された場合たった5%しか再資源化できず、衣類の「大量生産・大量消費・大量廃棄」が問題視されています。
環境問題の悪化に繊維が影響していることを受け、日本化学繊維協会などがカーボンニュートラルに向けた取り組みを策定するなど、繊維業界はより環境を考慮した取り組みが評価される業界へ変化しています。
そんな中、近年「炭素繊維」が環境問題解決という点において注目度が高まっています。
アクリル繊維を焼いて製造される炭素繊維は鉄と比べ強度が約10倍なのに4分の1の軽さであるため、炭素繊維を使った製品は長持ちし、結果的に廃棄物の減少に繋がります。
一石二鳥の品質を持つ炭素繊維は現在スポーツ用品や自動車・航空機などに用いられるなど、他業界で多く使われるようになっています。
また炭素繊維の世界市場シェアトップ3は全て日系企業が独占(1位:東レ・2位:帝人・3位:三菱ケミカル)しており、今後は日系企業が環境問題解決のうえで繊維業界を引っ張っていくと予想されます。
志望動機
繊維業界を志望する就活生に向けて、志望動機の例を2つ下記に記載しました。
自身の考えた志望動機と比較して、志望動機をブラッシュアップしていってもらえたら嬉しいです!
(例1)
仕事を通じて環境問題の解決に貢献をしたいと考えているからだ。
そう思う理由は、フィンランドへ留学した際、現地学生の「資源」を大切にする姿勢を目の当たりにし、環境問題解決の当事者としての意識を強く感じたからだ。
自身の環境問題に対する意識の低さに落胆すると共に、その出来事以降はより環境問題を身近に考えていくようになった。
そして今後は人生の多くの時間を費やす仕事で環境問題に貢献していくために、ものづくりの根幹を担う「繊維」に強いこだわりを持った会社で働くことが最重要と考え、繊維業界で活躍する貴社を志望する。
(例2)
「挑戦」を通して人々の生活に貢献したいからだ。
私は学生時代に野球・サッカー・吹奏楽という3種のチーム競技を経験し、常に高い目標を掲げて果敢に挑戦してきた。
そして挑戦する中でチームを盛り立てた経験は、自身の大きな成長に繋がっている。
貴社は、繊維メーカーとして業界を超えて様々な事業に積極的に挑戦することで、より高機能な商品開発の一助を担っている。
そのため、生活する上で必要になる様々な製品の素材となる「繊維」という商材で多くのことに挑戦し、クライアントや技術者などと協力しながら成長することを通して、人々の豊かな生活に貢献していきたい。
ホットニュース
ジャパンサステナブルファッションアライアンスに繊維大手企業が多数参画
「ジャパンサステナブルファッションアライアンス」とは商社や繊維・アパレルなどファッションに関わる企業が多数集結し、発足した組織です。
発足の目的は環境汚染産業と称される「ファッション業界」を、環境問題解決を貢献するビジネスに変えるためです。
具体的に、当組織は年9,000万トン排出される二酸化炭素の削減や、マイクロプラスチックなどが影響して起こる海洋汚染を改善するための政策を行っていきます。
経済産業省や環境省など、国のバックアップを受けるこの組織に、繊維業界からは東レ・帝人フロンティア・クラボウ・シキボウ・旭化成アドバンスなど繊維業界を引っ張る企業が多数参加しています。
繊維業界はすでに環境問題の負荷を減らす技術・製品の開発に着手しており、繊維を回収して再利用することができる「繊維ツー繊維」という言葉も浸透してきています。
例えば化学繊維の分野で繊維ツー繊維の取り組みが広まっており、ペットボトルを原料とした樹脂を原料として作られた化学繊維は一般的なものになってきています。
またポリエステル繊維を再利用した作業着や、洗濯しても繊維くずを出さない繊維製品を開発するなど、独自のアイデアで徐々に環境問題の解決に繋がる商品の開発が進んでいます。
しかし繊維ツー繊維の拡大にはそれだけコスト・高度な技術が必要で、コストの削減という面では特に他業界の協力が必要不可欠になります。
参考:繊維業界が新素材で変える。大量生産・廃棄“負の連鎖”から脱却なるか|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社 (newswitch.jp)
まとめ
本記事では、【業界研究】繊維業界とは?志望動機・ビジネスモデル・職種を徹底解説というテーマで、繊維業界に興味を持つ学生が参考になるような情報をまとめました。
繊維業界は現在海外に向けて、今までとは違う新たな事業を多角的に展開していく傾向があることが分かりました。
また繊維が持つポテンシャルは環境問題の解決に繋がっていくため、新たな価値の創造を通して社会をよりよくしていきたい学生には特にマッチしている業界といえます。
人気でかつ採用人数が少ない企業が多いため倍率も高いですが、諦めずに粘り強く就活に取り組んでいけばその分内定の可能性も高くなるため、悔いのない就活にするために地道に頑張っていきましょう!
この記事を参考にしてくれた学生の方々が、志望する企業から内定をもらえることを祈っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。