【業界研究】リース業界とは?志望動機・ビジネスモデル・職種を徹底解説
2023年8月31日更新
はじめに
「リース業界」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
一般的にBtoB領域とみなされているため、就活生にとっては馴染みが薄い業界かもしれません。
一方で、耳馴染みがある大手企業が多数存在する業界でもあり、リース業界を知らずに就活を進めてしまうのはもったいないかもしれません。
そこで本記事では、私たちの生活の近くに実は存在している、リース業界について詳しく解説します。
すでにリース業界に興味・関心がある人はもちろん、「全く知らない業界だった」という人も、ぜひこの記事をきっかけに興味の幅を広げてみてはいかがでしょうか。
リース業界とは?
そもそも「リース」という言葉は、「賃貸借契約を結ぶことや、その契約に基づいて貸し出される土地や建物などのことである。不動産業界では一般的な用語であり、賃貸住宅やオフィスビルなどの契約においてよく使われる」と定義されています。(出典:Weblio辞書)
「業界」という言葉と一緒に使われている「リース」には、元々の意味のようにオフィスなどを貸し出すという意味に加え、器具や設備といった物品を長期的に貸し出すという意味も含んでいます。
似たような言葉に「レンタル」がありますが、「リース」と「レンタル」は似て非なる言葉です。
「レンタル」は基本的に中古品を一時的に貸し出すという意味を持っていますが、「リース」は新品を一定期間貸し出すといった意味を持っています。
購入ではなく「リース」のメリットがある法人が、必要な物品をリースしているのです。
リース業界のビジネスモデル
では、リース業界のビジネスモデルはどのようになっているのでしょうか。
リース会社は、物品を貸し出した際の「リース料」によって収益を得ています。
分かりやすく説明すると、物品をリースすることによって、サブスクのように毎月一定額の収益を得ることができるのです。
とは言え、「新品ならリースではなく、購入したほうが良いのでは?」と思う人がいるかもしれません。確かに総コストで見ると、購入とリースの場合、リース料などを含むためリースの方が購入よりも割高になってしまうケースがほとんどです。
また、一度リース契約を結ぶと、契約満了まで途中解約不可、解約する場合は違約金を支払う必要が生じます。
しかし購入ではないため、一定期間経過した製品の新モデルが登場した場合、新モデルへの乗り換えが可能であるほか、万が一物品にトラブルがあった場合、リース会社が対応・保証を行ってくれます。
もちろん購入の上、全て自社でまかなった方がトータルコストは抑えられるものの、予期せぬトラブル対応によって人員やコストが割かれてしまう可能性があるため、企業は「リース」を選択するケースが少なくないのです。
2種類の「リース」
なお、リース業界のビジネスモデルを細分化すると、大きく2つに分けることができます。
1つは、「ファイナンス・リース」。
ここまでご紹介してきたように、原則途中解約不可のリース契約を指し、リース業界では最も一般的なビジネスモデルです。
なお、ファイナンス・リースの場合、請求時には固定資産税や保険料など、継続利用において必要な項目が全て含まれた状態の金額が請求されます。
もう1つは、「オペレーティング・リース」です。
顧客が物品を利用する期間が一定定まっている場合、こちらのリース方法が適用されます。
ファイナンス・リースは途中契約解除不可に加え、見通しの無い一定期間のリースが前提ですが、オペレーティング・リースは一定の期間が決まっているため、ファイナンス・リースよりも安価にリースできるよという特徴があります。
なお、経費精算の面においても、年間の企業コストに与える影響がオペレーティング・リースの方が少ないため、意識的にこのリース方法を選択する企業も少なくありません。
リース業界の職種
では、リース業界にはどのような職種があるのでしょうか。
代表的な職種をご紹介します。
営業系
リース業界の収益源となるリース契約を獲得するために、営業職は非常に重要な職種です。
リース会社の売上は、営業担当者の力量によって決まると言っても過言ではありません。
多くのリース会社は、リース用に特定の商品のみを扱っているということはなく、幅広い領域の商品を扱っています。そのため、領域によって商品特性が全く異なることは珍しくないため、領域ごとに営業チームが組成されている場合がほとんどです。
そのため、広く様々な領域の商品知識を獲得することができるでしょう。
また、リース会社によっては、リース商品の難易度に応じて、既存の契約の更新を促す既存営業と、新規契約獲得のための新規営業の2つのチームに分かれているケースも少なくありません。
あらゆる「営業」チームが想定されるものの、新卒で入社する場合、営業職スタートとなる可能性が高いことを心得ておきましょう。
資産管理系
リース会社にとって重要な役割を果たすのが、「資産管理」を担う職種です。
顧客となる企業からすると、リース会社を利用することで資産管理が楽になるケースがほとんどですが、リース会社側はそうはいきません。
そもそも、企業は資産として処理される物品を抱える場合、適切なフローの基で計上・管理する必要があり、定期的に資産の管理状況をモニタリングする必要があります。
リース会社は物品量の関係上、管理するべき物品が多くなっており、資産管理系の部署が独立しているという点が特徴的です。
法務系
リース系会社は、顧客となる企業にリース能力、すなわちリース物品の継続的な支払いが可能なのかを契約前に審査する必要があります。審査によっては、リース契約が不可となるケースは少なくありません。
したがって、リース会社において法務系職種は非常に重要であることが分かります。
また、「リース」という事業の特性上、リース会社側が大きな被害を被る可能性があるため、都度契約内容を確認し、自社の損失を未然に防ぐことも求められています。
リース業界の有名企業紹介
では、リース業界ではどのような企業が活躍しているのでしょうか。
有名企業をいくつかご紹介します。
なお、就職偏差値や難易度について詳しく知りたい人は、【24卒・25卒最新版】文系・理系・公務員別就職偏差値・難易度ランキングを参考にしてください。
会社名 | 売上高 | 平均年収 | 就職偏差値・難易度 | 社風 |
オリックス | 2,666,373百万円(2023年3月期) | 9,100,288円(2023年3月期) | 55 | ・風通しがよく、ハラスメント対策を細かく行っている ・穏やかでのんびりとした空気感 |
三井住友ファイナンス&リース | 2,159,396百万円(2023年3月期) | 8,904,000円(2023年3月期) | 中 | ・三井住友銀行の資本が入っているため、銀行系の気質が強い ・体育会系の文化・風土 |
東京センチュリー | 1,324,962百万円(2023年3月期) | 8,596,000円(2023年3月期) | 中 | ・上位ポストはみずほ銀行の人が多く、若手の出世難易度は高い ・銀行資本が入っているため、ややお堅い人が多い |
三菱HCキャピタル | 1,896,231百万円(2023年3月期) | 9,243,000円(2023年3月期) | 中 | ・部署によって文化・環境の雰囲気が大きく異なる ・四敗してもフォローしてくれる体制がある |
リース業界の動向
市場規模
2021年度のリース取扱高は4兆2,186億円となっており、2020年度以降は市場規模の減少が続いています。(参照:リース市場に関する調査を実施(2022年))
リース業界の主となる顧客は企業となるため、新型コロナウイルス感染症の影響によってリモートワークが拡大した影響によって、オフィスの需要が減少したことを受け、リース業界は大きな打撃を受けました。
しかし、新型コロナウイルス感染症が徐々に収束していることを受け、オフィスへの需要が再拡大していることから、リース業界にとっても追い風となっています。
企業によっては、リモートワークから一定脱却し、出社を促すことで社員同士の交流を行う企業も増えてきたため、今後はさらなる業績回復が見込まれるでしょう。
成長性
リース業界は、2006年のリーマンショックの影響を非常に大きく受けた業界です。
2006年にはリースの契約件数規模は6兆円を超えていたものの、2010年以降は3兆円台をほぼ横ばいの形で推移しています。
(参照:特定サービス産業動態統計調査)
また、リース業界は物価高や原材料の高騰などの影響を受けやすいことから、リース件数が増えたとしても、契約規模が格段に上がる可能性は低いと言えます。
したがって、成長性としては引き続き3兆円台の規模を横ばいで推移していく可能性が高いと言えるでしょう。
また、いずれ完全リモートワークやバーチャルオフィスなどが主流となり、オフィス不要が一般論化する可能性もあります。そのような場合には、成長度合いは上がるのではなく、下がる可能性が高いと言えます。
リース業界の志望動機
リース業界の志望動機は、下記のような内容がよく見かけられます。
- リース業界を通じて企業の経営を支えたい
- リース業界が提供する様々な物品によって、企業規模を問わず、企業の安定的な経営を支えたい
- リース業界での業務を通じて、中小企業の助けになりたい
- 需要ある物品を備えた企業で働くことで、社会に貢献したい
- リース業を通じて、日本国内のみならず、海外との交流を盛んに行いたい
- 特定の顧客と一定期間、時間をかけた付き合いをしたい
- 企業の財務に関する知識を身に着けたい
- 企業の法務に関する知識を身に着けたい
このように、企業経営に対する言及や、社会課題に対する言及などをすることが多くなっています。もちろん、他社と比較すると、新卒であっても財務や経理、法務といった仕事に就ける可能性が高いことから、若いうちに専門知識を獲得したいと考える場合、職種に言及するのもおすすめです。
リース業界のホットニュース
ゼロゼロ融資との共存
新型コロナウイルス感染症拡大時、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫といった政府系金融機関業が実質無利子・無担保で企業に融資する仕組みを開始しました。しかし、利用が相次いだため、民間金融機関も融資できるような仕組みとして、多くの企業が新型コロナウイルス感染症の影響による経営難を逃れました。
現在、多くの企業のゼロゼロ融資返済が本格化するフェーズに入っており、返済金をまかなうために設備投資などが手薄になることが懸念されています。
設備投資などが手薄になると、必然的にリース業界は大きな打撃を受けることになります。
もちろんリース業界に関わらず、様々な業界に関与している問題ではあるものの、新型コロナウイルス感染症が落ち着いたことでリース業界の売上が安定していきていることから、ゼロゼロ融資返済による経営環境のゆらぎが懸念されています。
M&Aが増加傾向
リース業界では、M&Aが増加している傾向があります。
新型コロナウイルス感染症が落ち着きを見せ始める中、リース業界では売上を回復できた物品と、そうではなく今後もリースが見込まれない物品の差が顕著に出るようになりました。
また、今後リース量が増えることを予測し、積極的に仕込みを行っている企業もあります。
このような動きの中で、大手リース会社がメーカー系のリース会社を買収したり、銀行系のリース会社の経営統合などが目立つようになってきました。
この結果、国内に存在するリース会社の1社の規模は非常に大きくなっていることから、他社に対抗するべく、今後もリース業界でのM&Aは加速していくことが予想されています。
まとめ
ここまで、リース業界についてご紹介してきました。
リース業界と聞くと、「ただ物品を企業へ貸しているだけ」と思っていた人が多いのではないでしょうか?しかし、実際は企業の成長のために「リース」という手段を通じて経営を支えている業界と言っても過言ではありません。
金融業界を志望している多くの就活生は、広く見ると金融業界に属するリース業界に見向きもしないかもしれません。しかし、「リース」という他業界とは異なるビジネスモデルだからこそ、企業の経営に関する知識はもちろん、金融に関する知識も獲得することができます。
成長率こそ横ばいではあるものの、今後のM&Aの状況次第では、業界内の企業分布ががらっと変わり、新たな潮目を迎える可能性が高い業界だとも言えるでしょう。
正しく業界研究を行うことで、ぜひリース業界へ興味を持ってもらえたら嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。