【業界研究】医療機器業界とは?志望動機・ビジネスモデル・職種を徹底解説
2023年8月19日更新
はじめに
医療機器業界は国内外の医療を支えるためになくてはならない業界です。時代が変わってもその需要が失われることはなく、今後も持続的な成長が見込まれる、将来性の高い分野でもあります。業績が安定している企業や職場環境がホワイトな企業も多く、例年就活生から人気を集めています。
今回は、そんな医療機器業界を詳しく見ていきましょう。業界の概要や主な職種、大手企業の基本データ、業界の今後の動向などを解説します。
医療機器業界とは?
医療機器業界とは、医療機器の開発・製造・販売を担う業界を言います。医療機器の種類は千差万別で、もし不具合が出たときの人体への影響などで4つの区分に分けられています。
具体的には、最も人体への影響が軽微な「一般医療機器(クラスⅠ)」(聴診器・水銀柱式血圧計・体外診断用機器など)、命の機器や重大な機能障害に結びつく可能性は低い「管理医療機器(クラスⅡ)」(電子体温計・電子内視鏡・画像診断機器など)、不具合が生じた場合に人体への影響が大きい「高度管理医療機器(クラスⅢ)」(放射線医療機器・透析機器など)、不具合が生じた場合に患者の命の危機もあり得る「高度医療管理機器(クラスⅣ)」(ペースメーカー・中心静脈用カテーテルなど)です。
取り扱う医療機器の人体への影響レベルが高いほど、業務に求められる専門性の高さも上がるため、就職難易度も上がると考えてください。医療機器業界に属する企業には、主に医療機器メーカーと医療機器商社があります。
医療機器メーカー
医療機器メーカーは、医療機器を製造・販売する企業です。一般家庭用医療機器または医療機関用医療機器を製造しており、外資系企業の中にはこの両方を製造しているメーカーもあります。日本国内の医療機器メーカーは、どちらかの分野に特定し製造・販売を行っている企業が大多数です。
医療機器商社
医療機器を実際に使用する医療機関などと医療機器メーカーを仲立ちする役割を担うのが、医療機器商社です。国内外の医療機器メーカーや卸売業者から医療機器を仕入れ、医療機器を求める医療機関やさらに次の卸売事業者に販売しています。
業界のビジネスモデル
医療機器業界に属する企業は、クライアントからの代金を収益としビジネスを行っています。例えば医療機器メーカーであれば、自社の製品を販売した相手からの代金が収益です。医療機器商社であれば、仕入れた製品を販売する相手から得た代金が自社の収益になります。
当該業界の職種
技術職
医療機器メーカーの技術職は、医療機器の開発・製造に携わる職種であり、その専門性の高さから、大学・大学院の理系学部において修士・博士過程を修了している必要があります。なお、技術職の中でも、さらに次の3つの職種に分かれます。それぞれ見ていきましょう。
研究・開発
自社の新製品開発や既存製品の改良などを研究・設計する職種です。常に最先端の医療技術を理解し、社会の動きや市場の動向、顧客のニーズなども踏まえながら、国内外の医療現場や患者の求める医療機器を生み出し、提供します。医学や薬学など医療に関する高い専門性が求められる職種であり、当該学部を卒業していることが応募条件に掲げられている場合も少なくありません。なお、研究・開発の仕事は、臨床工学技士の資格取得が必要です。
また、専門的なスキルだけでなく、常時新しい研究結果や技術を学び続ける向上力、課題にぶつかっても解決への道を根気強く模索する課題解決力や忍耐力、データを的確に読み取る分析力など、幅広いスキルが求められます。
生産技術
生産技術は、医療機器の実際の製造業務に携わる職種です。生産ラインの企画・設計、必要な設備の選定・設置、運用のためのテスト・改良、稼働中の設備の監視、メンテナンスなど、生産に関するさまざまな仕事を担います。セクションごとに担当がいて、チームで動くことがほとんどです。
設備の設計や取り扱い、生産ラインの設置、品質管理などに関する専門知識の他、課題が生じたときに解決方法を探し出すスキル、トラブル時に速やかに的確な判断を行う対応力、チームでしっかり連携するコミュニケーション能力などのスキルが求められます。
サービスエンジニア
サービスエンジニアは、医療機器を導入する際や導入後のフォローを担当するエンジニア職です。導入前にはクライアントのヒアリングや現地の調査を元に、医療機器を設置する環境整備を行います。導入時には機器設置の立ち会いやデモ稼働、使用説明なども担当します。また、導入後のメンテナンスやトラブル・故障のフォロー対応なども業務です。
医療機器の取り扱いやシステムに関する知識・スキルはもちろんのこと、顧客と直接関わる業務が多い職種なので、コミュニケーション能力も欠かせません。顧客のニーズや伝えようとしていることを理解する力、わかりやすく説明する力などが必要です。
営業職
医療機器業界の営業職は、医療機関など医療機器を使用・販売する機関や企業を相手に営業活動を行う職種です。製品の提案や導入時の立ち会い、使用方法の説明、アフターフォローなどが主な業務になります。サービスエンジニアと類似する部分もあると言えます。
営業職にまず必要なのは、自社製品に関する深い知識と取り扱うスキルです。顧客の要望や問いに迅速にリアクションするため、ある程度専門的なスキルを身に付けておかなければいけません。また、医療機器業界に限ったことではありませんが、顧客のニーズを的確に理解する力や提案力、顧客と信頼関係を築くためのコミュニケーション能力、タフな体力なども求められます。
大手企業紹介
ここからは、医療機器業界の大手企業をピックアップし、各社の基本的な情報を紹介します。
会社名 | 売上高 | 平均年収 | 就職偏差値・難易度 |
オリンパス | 8.920億円 | 950万円 | 57 |
オムロン | 8,761億円 | 850万円 | 57 |
シスメックス | 953億円 | 850万円 | 56 |
コニカミノルタ | 1兆1,400億円 | 750万円 | 55 |
社名、企業理念、特に力を入れている事業、社風、平均年収、就職偏差値・難易度など
「オリンパス株式会社」は、国内の医療機器業界におけるトップ企業です。カメラ製品などが有名ですが、現在オリンパスの売上高で最も大きなウエイトを占めているのが医療事業です。特に内視鏡などは世界で約7割と高いシェアを誇っており、国内外の医療機器業界をリードする存在と言えるでしょう。「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」を掲げ、オリンパスグループの組織力を活かしながら、グローバルに事業を展開しています。
近年は社内でもグローバル化が進んでおり、外資系企業のような雰囲気もあります。人柄の良い社員が多く、良好な人間関係を築きながら働ける職場です。採用倍率は例年100倍以上と言われており、就職難易度は高めと考えられます。ただし、採用人数が50人以上であること、学歴フィルターがないことなどから、選考対策次第で採用獲得は不可能ではないでしょう。
「オムロン株式会社」は、国内有数の大手電気機器メーカーです。制御機器・電子部品など、多様な製品を開発・製造していますが、ヘルスケア事業にも注力しており、医療機器業界でもトップ企業に数えられています。「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」という社憲を掲げ、事業を通じて社会課題の解決や新たな価値の創造などを目指し活動しています。
社内でも社会貢献を意識する空気感があり、社員の挑戦に寛容です。また、社員を大切にすることも特徴で、社員にも優しいタイプが多いと言われています。グループ全体で例年100~150名の新卒採用を行っています。倍率は20~40倍ほどと推測されており、大手企業の中では比較的就職難易度は低めです。
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「シスメックス株式会社」は、世界190ヶ国以上で事業を展開するグローバルな医療機器メーカーです。「ヘルスケアの進化をデザインする。」をミッションにしており、積極的に新たな事業にチャレンジしています。検体検査機器・試薬やソフトウェアなどを取り扱っており、開発・製造・販売・アフターフォローを一貫で提供しています。なお、特にヘマトロジー(血球計数検査)分野では世界トップシェアを誇ります。
国際的な事業展開を見せる企業ですが、社風は穏やかで優しい社員が多く、風通しの良い職場です。ただし、実力主義的な面もあり、好成績を収めれば勤続年数や年代に関係なく上を目指せる可能性もあります。例年50~70人ほどの新卒採用を行っていますが、人気企業なので採用倍率もかなり高いはずです。
「コニカミノルタ株式会社」は国内の大手電機メーカーです。複合機など、プリンティング関連製品がよく知られていますが、ヘルスケアにも注力しています。特に、画像診断システムや医療ITサービスなど、IT技術を取り入れた医療事業に取り組んでいます。2003年創業という比較的若い企業ながら、「新しい価値の創造」という経営理念の元、社会を支える使命を持ちながら成長を続けています。
既存の事業とブラッシュアップと新しいチャレンジのどちらも尊重してくれることが社風の特徴の1つです。社員の裁量に任される部分も多く、自立心を養える職場でもあります。近年新卒採用人数が増えており、2021年度は39人、2022年度は63人、2023年度は86人の実績です。採用倍率は年によって大きく変動しており、70~150倍ほどと見られています。
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当該業界の動向
医療機器業界は市場縮小の可能性が低い業界です。人間が生活していくためには医療は切り離せない分野であり、どのような社会情勢にあっても、常に望まれ続ける業界だからです。2020年から世界的に流行した感染症の影響により、医療の重要性が非常に高まり、同時に医療機器の需要も増しました。感染症流行は沈静化しつつありますが、今後も医療機器業界の市場拡大が見込まれる要因は多々あります。例えば日本国内では少子高齢化が進んでいるため、医療ケアを必要とする人口が増え、医療機器の需要が高まると予想されます。また、海外ではまだ医療機器の普及が十分でない国・地域も多く、新規に開拓を行いシェアを増やしていく動きもあるでしょう。
志望動機
ここでは、医療機器業界の企業に応募する際の志望動機として、アピールしやすい内容を紹介します。応募する企業の理念や、医療機器業界の使命などをよく理解した上で、個人のエピソードや経験などを含め、説得力のある志望動機を用意しましょう。
健康的な社会をつくりたい
健康は活き活きと生きるために非常に重要な要素の1つです。皆が健康的な生活を送るための社会づくりに役立ちたいという志望動機は、医療機器業界の選考で説得を与えられます。もし自分に病気やケガで大変な思いをしたエピソードや、医療ケアで助けられたエピソードなどがあれば、それも志望動機に絡めましょう。自分の経験を含めた内容で、より個性的な動機をアピールできます。
ものづくりを通して社会貢献したい
特に医療機器メーカーはものづくりの仕事をする会社です。医療機器は非常に社会貢献性の高い製品なので、ものづくりを通して社会の役に立ちたいという志望動機もあり得ます。学生時代までで何か自分で製作した経験があれば、何を作ったかや大変だったこと、その経験から何を学び感じたかなどもまじえながら、志望動機を練ってみてください。
医療機器業界の業績は大手を中心に好調
国内の医療機器業界は、大手メーカーを中心に近年好調な業績を記録しています。業界のリーディングカンパニーであるオリンパスは、2022年度決算において、前年度比18%増の成長を遂げ、営業利益も28%増となりました。同業界のトップ企業であるオムロンも、2022年度決算は売上高が14.8%増、営業利益も12.7%増で過去最高業績です。世界的な感染症流行が落ち着き、今後は流行前の状態に戻りつつ、安定的に業界が伸びていくと見込まれています。
参考:営業利益率20%超、変革目標を満たしたオリンパス決算(日経クロステック)、オムロンが2022年度過去最高業績を達成、好調な制御機器事業が成長後押し(ITmedia)