【業界研究】百貨店業界とは?志望動機・ビジネスモデル・職種を徹底解説

【業界研究】百貨店業界とは?志望動機・ビジネスモデル・職種を徹底解説

2023年6月30日更新

はじめに

百貨店と言えば、「高島屋」や「伊勢丹」、「大丸」といった企業がすぐに浮かんでくると思います。一度は訪れたことがある人でも、業務内容や職種については詳しく知らない人が多いです。

 

百貨店業界に就きたいと考えている人であれば、ビジネスモデルや職種など基本情報は理解しておく必要があります。業界研究をしておかなければ、就職してから自分のイメージとのギャップに苦労してしまう場合もあります。

 

本記事を参考に、百貨店業界の知識と理解を深めていきましょう。



百貨店業界について

百貨店業界と言えば、デパートで商品を売っているイメージがあると思いますが、詳しいことまでは知らない人が多いです。まずは百貨店業界とはどういうものなのか見ていきましょう。

百貨店業界とは

百貨店業界とは、小売業界の中に位置づけられている業界です。つまり百貨店業界、というよりかは小売業界の中にある百貨店、という方が正しいです。

 

百貨店には「衣・食・住の商品販売額が全体10〜70%」、「売り場面積の50%で対面販売を行う」という基準があります。特徴としては、スーパーマーケットやショッピングモールと違い、高級な商品や値段よりも品質を重視した商品が多いことです。

百貨店業界の3つの種類

百貨店には、「地域型」、「都市型」、「鉄道型」の3種類がありそれぞれ特徴や強みが異なります。それぞれの違いについて見ていきましょう

地域型

地域型の百貨店は名前の通り、「地域密着型」の経営スタイルを取っています。その理由としては、この後紹介する「都市型」、「鉄道型」との競争を避けるために差別化を図っているからです。

 

地域型の百貨店は、「松屋」、「丸栄」、「天満屋」、「トキハ」、「井筒屋」などがあります。郊外型のビジネスモデルを採用することで、地域住民にターゲットを絞り、親しまれやすい店舗を目指しています。

 

郊外にあることから自動車で訪れるファミリー層に重点を置き、家電や家具などの大型商品を取り扱うことで、他の2種類と差別化を図ることが狙いです。しかし人口減少に伴い、地方の活性化が衰えているため。経営不振になってしまう場合もあります。

都市型

都市型は全国各地に展開している大手企業が多いです。とくに県庁所在地や大都市には積極的に力を入れているのが特徴です。都市型の百貨店は、「高島屋」、「伊勢丹」、「西武」、「エイチ・ツー・オー・リテイリング」などが挙げられます。

鉄道型

鉄道型は、駅ビルと直結して店舗を構えているのが特徴です。主要な駅には特に力を入れていることから、都市型に次ぐ事業規模があります。鉄道会社が、駅近くに出店し集客を集めている形を「ターミナル立地型」と言います。

 

代表的な百貨店で言えば、「阪急百貨店」、「東急百貨店」などです。



百貨店業界のビジネスモデル

百貨店業界のビジネスモデルは、メーカーで商品を生産し、卸売業者を通して小売業者が消費者に販売するという流れです。その中の、「メーカー」と「卸売業者」の役割について説明します。

メーカー

メーカーの役割は、百貨店で売れる商品を生産し、卸売業者に販売することです。いかに世の中のニーズに応えた商品を提供できるかがカギとなります。そのためメーカーは、ターゲットとなる顧客層やトレンドなどに細心の注意を払うことが重要です。

 

百貨店の中には、卸売業者を通さず、直接百貨店に仕入れを行い、プライベートブランド商品を生産するところもあります。

卸売業者

メーカーから仕入れた商品を百貨店に販売するのが卸売業者の仕事です。百貨店と卸売業者の商品の仕入れ方法は、「買取仕入れ」、「委託仕入れ」、「売上仕入れ」の3つがあります。

 

買取仕入れは、卸売業者から商品を買取り販売する方法で、商品が売れ残ってしまった場合も百貨店が処理しなければいけません。商品がすべて売れれば最も粗利率は高くなりますが、売れ残ってしまえば在庫を抱えてしまうリスクもあります。

 

委託仕入れは、卸売業者から仕入れた商品が売れ残ってしまった場合、その残り分を卸売業者に返却することができる方法です。

 

売上仕入れは、百貨店で売れた商品分だけ卸売業者に支払う方法です。



百貨店業界の3つの職種

百貨店業界は、「営業」、「販売」、「バイヤー」の3つの職種に分かれます。それぞれの役割で必要な能力が異なるため、見ていきましょう。

営業職

営業職は、店舗で商品を販売するのではなく、特定の外部顧客に販売する仕事です。例えば、大量に商品を購入する顧客や、定期的に商品を購入する顧客などを対象に、新商品の紹介や、お得になるキャンペーンについての案内などを行います。

 

また贈呈品やギフト商品、記念品など何かの行事を迎える企業に購入を促す法人用の営業もあります。

 

営業の種類は、「外商営業」と「内勤営業」の2つです。外商営業は、お客様の元に足を運び、商品の概要を紹介し購入から契約までをします。またアパレルメーカーなどに百貨店内にお店を構えてもらう営業活動も行います。

 

一方の「内勤営業」は、お歳暮やお盆などのイベント日が近づくと、「贈答品」などを顧客に営業する職種です。

販売職

販売職は、店舗運営に関わる仕事で、実際にお店でお客様と対話し、商品の説明や紹介を行う職業です。百貨店が販売しているものは、食品や独自展開しているプライベートブランドです。

 

商品販売にあたり、お客様と接するためマナーや言葉遣いといった「接客スキル」を身につけなくてはいけません。快適に買い物できる環境作りを目指すためには、礼儀など当たり前のことが当たり前にできる必要があります。

 

販売だけが仕事ではなく、在庫管理や商品の発注、売上分析など事務作業も業務の一つです。キャリアを積むにつれ、部下の教育やマネジメントといったこともしていきます。

 

販売職は「売り場販売員」と「販売支援」の2つの役割に分かれます。

 

・売り場販売員

店頭に立って、お客様と直接やりとりしながら商品を販売していく仕事です。コンビニやスーパーなどと同じで接客担当係として、入社後は現場作業から働き始めます。

 

この経験をもとにキャリアアップを図り、店長やエリアマネージャーとして管理する幅を広げ、店舗運営を担う作業を行います。

 

・販売支援

バイヤーが仕入れてきた商品を、「どこで」、「どのように」販売するか企画する職業です。

季節行事やイベントなどの開催を手掛け、百貨店の売上をあげるための取り組みを考えます。わかりやすいもので言えば、「ご当地物産」、「バレンタインデーのイベント」などです。

 

こうしたイベントの企画を行うため、プレゼン力やマーケティング力などが必要なスキルです。

バイヤー

バイヤーは販売する商品を買い付けてくる仕事です。客層やニーズなどをしっかりと把握し、どんな商品であれば売れるのか考えて買付なくてはいけません。

 

トレンドの商品は、世の中の流れと共にすぐ変化するため、常に一歩先を見ながら商品を購入するところがバイヤーの特徴です。また情報分析や競合調査など、しっかりと根拠をもって売れる商品を見つけなくてはいけません。

 

商品の特性や知識を十分に兼ね備える必要があるため、新卒入社でバイヤーになることはできません。まずは現場経験を積んでから、キャリアアップを目指しましょう。



百貨店業界の大手企業を紹介

百貨店業界の大手企業をいくつかピックアップし、売上高や就職偏差値の違いを見ていきましょう。就職偏差値や難易度を詳しく知りたい方は、【24卒・25卒最新版】文系・理系・公務員別就職偏差値・難易度ランキングを参考にしてください。

 

会社名売上高平均年収就職偏差値難易度
高島屋7,611億円686万円583.5/5.0
三越伊勢丹HD4,183億円711万円573.2/5.0
J.フロントリテイリング3,314億円708万円データなし2.9/5.0
丸井グループ2,093億円642万円593.3/5.0
近鉄百貨店981億円464万円データなし2.9/5.0

※J.フロントリテイリングは、大丸松坂屋百貨店を運営している会社です。J.フロントリテイリングと近鉄百貨店は、就職偏差値のデータがありませんでしたが、「高島屋」、「三越伊勢丹」、「丸井グループ」よりも低いです。



百貨店業界の動向について

コロナウイルスの影響により売上を落としてしまった百貨店業界は、今後どのように回復させていくかが注目です。また人口減少により地域型の百貨店が経営困難に陥るなど、芳しくない状況が続いています。

 

新サービスの開発に取り組み、打開策を練っていますが今後の動向について説明します。

コロナウイルスによる売上低下

一般社団法人日本百貨店協会によると、百貨店業界はコロナウイルスの影響により、2019年から2021年にかけて大きく売上を落としてしまいました。近年の百貨店業界の売上について見ていきましょう。

参考文:一般社団法人日本百貨店協会

 

上記のグラフは2019年~2023年(1月)までの、百貨店業界の売上です。2020年の4月頃に緊急事態宣言が発令され、売上が大きく落ち込みました。2019年の6月の売上高が約4,789億円に対し、2021年の6月の売上高は約3,715億円と「-1,074億円」低下しました。

 

現状はコロナウイルスが落ち着きつつあるが、今後の社会情勢によって大きく左右されてしまうため、新たな一手を打つことが重要です。

 

2023年5月の売上高は、4,111億円とコロナウイルスが流行する前の2019年5月の売上高(4,443億円)に近しい値まで回復してきてはいますが、油断はできません。

 

コロナウイルス以外にも人口減少により、地方の百貨店は経営困難に陥る店舗も出ています。例えば、山形県では老舗の「大沼百貨店」が倒産し、山形県は百貨店のない県になってしまいました。

 

若者が都心へ異動する動きが強まる中、地方の百貨店はどう顧客を獲得していくかが注目です。

新サービスへの取り組み

商品を売るだけでは、顧客獲得が困難であるため、その他のサービスから顧客を得る動きが増えているのが現状です。新たに導入しているサービスの事例は以下の通りです。

 

・ファミリー層をターゲットにした、子供体験教室の実施

・シニア層をターゲットにした、健康管理やヨガ教室の実施

・若者をターゲットにした、カップル限定の商品獲得イベントなど

 

こうした取り組みにより商品購入を目的とした、顧客を獲得することができます。

 

また従来までの考えを捨てて、百貨店のコンセプトにあった独自の売り場を作る「自主編集売場」の拡大も増えています。フロアごとに年齢別の商品を展開していた制度を撤廃し、より消費者のニーズに応えられる売り場づくりを展開しているのが特徴です。

 

その他の取り組みとして、富裕層をターゲットにしていた百貨店から、若者からシニアまで幅広く楽しめる百貨店にモデルチェンジする百貨店も増えています。ブランド品や高級品以外のテナントを貸し出すことで、余った売場を有効活用できます。

 

例えば、スポーツ用品店、皮膚科、歯科、ジム、図書館、進学塾など今まで百貨店に導入されることがなかったテナントも参入できるようになったのが特徴です。これにより、富裕層だけでなく若者の利用も増え、売上増加につながります。



百貨店業界の志望動機について

百貨店業界は、お客様と接客することが多く、アルバイト経験を活かした志望動機を作成することができます。専門スキルをあまり必要としない業界であるため、自分の体験談を活かしやすいのが特徴です。

 

とくに接客業の経験がある人は、百貨店でも経験を活かせるためアピールポイントになります。百貨店業界でよくある志望動機の例を紹介するので、参考にしてください。

 

接客経験を活かして働きたい

コンビニやスーパーなど接客業のアルバイト経験から、お客様の笑顔のために働きたいという想いから。

 

店舗だけでなく街全体を活気づけたい

ボランティア活動の経験から、街づくり戦略について学び、百貨店という立場から街に活気を与えたいから。

 

小さいころに百貨店で得た体験から

幼いころに家族で百貨店に訪れることが多く、そのときに得た感動が忘れられず、自分も「感動を与えられる百貨店を作りたい」と思ったから。



まとめ

百貨店業界は、比較的専門的なスキルが少なく文系でも理系でもどちらにもおすすめの業界です。接客業務が多いため、アルバイトやボランティア活動などで、人と関わることが多かった人は、自分の経験を仕事に活かせると思います。

 

職種やビジネスモデルも単純であるので、企業研究しやすく自分に合うかどうかわかりやすい業界です。本記事を参考に百貨店業界の知識を深め、業界研究に役立ててください。



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