新卒採用難の原因と対策|導入すべき採用手法とは
2020年7月24日更新
はじめに
「応募が来ても面接を実施するまでに至らず、書類選考などの前段階で落ちてしまう。」
「面接を組んでも、平気で遅刻したり、無断欠席することがある。」
「高い採用コストをかけたにも関わらず、人間関係が理由で1年で辞めてしまった」
このような採用課題に悩む企業は少なくありません。
短期的に見れば単なる人出不足であっても、
長期的な視野で見ると、営業短縮や事業縮小を余儀なくされて売上が減少、
最悪の場合は倒産に至ってしまうケースもあるなど、
特に中小企業にとっては死活問題でもあります。
また、
応募者が集まらないからといって賃金の引き上げを行ってしまった場合、
見合うだけの売上が上がらなければ安定的な経営は難しく、
自ら首を絞めてしまうことに繋がりかねません。
このような採用課題を解決し、
採用難突破の糸口を見つけるためには、
業務効率改善による経費削減や、
採用手法のアップデートなどが有効です。
本記事では、
昨今の採用難を取り巻く状況と対策について、解説します。
1.近年の採用活動を取り巻く環境
厚生労働省の発表によると、
2018年に約44年ぶりの高水準である1.63 倍を記録以降、これまで同様の水準で推移してきており、
2019年8月の有効求人倍率は前月と同水準の1.59倍を記録、
「売り手市場」が採用活動における悩みの種となっていました。
しかしながら、
今年2020年は新型コロナウイルスの影響により採用控えを実施する企業が増加、
有効求人倍率は1.39倍(2020年3月)から1.32倍へ(2020年4月)、さらに5月時点では1.20倍となっており、
経済活動が制限され事業縮小を余儀なくされた企業や、突然の就職氷河期に頭を抱える学生双方にとって、苦しい戦いとなっています。
また、採用難の理由はそれだけに留まらず、
近年社会問題となっている少子高齢化による若年労働人口の減少や、
昨今叫ばれている働き方改革に端を発し、ワーキングバランスを求める動きが活発化しています。
それに伴い内定辞退率や早期離職率の割合なども課題となっており、
リクルートの調査によると
2019年12月時点の内定辞退率は65.2%と、前年とほぼ変化はなく、依然として高い内定辞退率を推移している他、
厚生労働省の調査によると、
2016年卒学生(大卒)の3年以内の離職率は32.0%と、ここ数十年でほぼ横ばいとなっています。
このように、
現代社会を取り巻く環境も、
採用難に暗い影を落としていることが伺えます。
2.企業が採用難に陥る3つの原因
企業が採用難に陥る原因は、
これまで解説したような外的要因も大きく影響していることは間違いありません。
一方で、外的要因以外にも、
企業の採用手法が仇となっている場合も往往にしてあり得ます。
景気の変動というよりも採用手法そのものに問題がある場合は少なくありません。
学生に対してのアプローチなどを中心に見ていきましょう。
2-1.オーディション型採用
オーディション型採用とは、
昔から取られている手法であり、
広告(例えばマイナビ、リクナビなど)を打って学生がそれを見ていわば採用の為の「オーディション」に申し込む流れです。
就活市場においては
学生からの応募を募り、集まった応募者の中から選考をし振るい落とすという、
「オーディション型」が主流を占めてきました。
多数の学生と接触機会を得られる一方、
採用枠が決まっているために合格率も低く、
本当に欲しい学生を獲得するには、かかるコストを考えればやや非効率とも言えます。
またオーデイション型ではターゲットを特に絞らずに学生を募集するので、
学生は「会社の知名度」で判断することになり、
企業としてのブランド力で人が集まるため質の管理が難しくなる点は否めません。
一方、
中小企業やその他自社の採用ブランドが弱い企業では、状況が異なり、
やはりブランド力に欠ける傾向が強く、比例して学生の応募母数は少なくなります。
採用枠÷応募数で考えれば効率的という意見もあるものの、
質の担保はできていないと言えます。
その点大企業はファンに依存しているとはいえ応募者母数の桁が違うために、
選考の中である程度の質を維持することが可能。
ここに、
大企業と中小企業での採用活動における優劣が発生しているのです。
2-2.学生の志望度の認識ミス
学生にとっては、
就活中最もハードルが高いのは面接の場面。
その際に「なぜウチがいいの?」と聞いていませんか?
つまり学生の「志望度が高いこと」前提で、
採用を始めてはいませんか?
これは昔ながらの考え方であり、
学生に対して志望度を高めてから面接、あるいはESを書いてもらうことを求めるのは、
本質的ではありません。
学生の立場としては【「志望動機」の欄があるだけで志望度が落ちる】と考えてもいいほど、
この志望動機の存在は採用の弊害になっています。
なぜそのようなことが起きるのでしょうか?
答えは簡単です。
学生の志望度を確認することを採用プロセスの入り口に設定しすぎているからです。
もちろん、内定承諾という意思決定のタイミングでは志望度を確認しておくことは必要ですが、
これを早い段階から期待するのは、
会社と学生の信頼関係が構築される前では学生にとって酷な話ではありますし、
企業側としても志望度という指標のみでみすみす優秀な人材を逃すことにも繋がります。
面接やESのハードルを下げてあげることが、
学生にとっての説明会参加や応募という行動動機になるのです。
2-3.学生側のニーズとのズレ
学生に対してどのようなアプローチが出来ているでしょうか?
学生が持つ会社を選ぶ際のニーズを汲み取って採用活動出来ているでしょうか?
下グラフでは、
就活生が就職先を確定する際に決め手になった要素について挙げられています。
答えとして多く上がってきているのは
「自らの成長が期待できる」かどうかです。
そして福利厚生・手当の充実が続き、
職務地や安定性なども大きな要素となっています。
更に近年では「安定性」の考え方も変わってきており、
会社が大手で安定していることが個人にとっての安定ではなくなってきています。
「将来が見通しづらい社会では自らの成長こそが安定に繋がる」という新しい「安定」の考えが広まりつつある分、
就活における決定要素では「成長」という部分は重要なポイントとなりうるでしょう。
では皆さんは採用の際に自社のどのような部分をアピールしていますか?
例えば「海外で働ける!」という部分をアピールしたとしても、
近年の学生のニーズとしては下のような現状であると知った上でアピール出来ているのかを確認すべきでしょう。
(参考)第六回新入社員のグローバル意識調査 2015年9月産業能率大学発表
結論からいうと
60%以上の学生は海外で働きたいとは思っていません。
海外留学にいく学生の数は年々増えています。
しかし、それは短期留学者の数であり、
長期留学に行く学生はほとんど増えていません。
見かけ上は学生がグローバルな仕事を志向しているように見えるものの、
むしろ海外では働きたくない学生が増えているのが現状なのです。
このようなポイントをしっかり抑えつつ、
学生のニーズを細かく拾いながら採用が出来ているかが重要になってきます。
3.採用難突破において企業が取るべき4つの対策
これまで見てきたような採用難を突破するためには、
表面的な施策ではなく、採用手法を根本から見直すと同時に、経営体制にも目を向ける必要があります。
・業務効率改善
・「求める人物像」の再定義
・Z世代の理解
・ターゲットの拡大
3-1.業務効率改善
一見採用と関係が無いように思われますが、
人手不足を嘆く前に、
その作業は本当に「人間」による必要があるのか、今一度問い直しみることも重要です。
言うまでもなく、
昨今は様々な企業のIT化やAIの活用が進んでおり、
初期投資こそかかるものの、長期的な視野で見ると人的リソースの投入よりも、遥かに優れたコストパフォーマンスを発揮するケースも少なくありません。
業務効率改善にあたり、
無駄な作業はないか、不必要な工程はないかなど、
業務プロセスについて改めて見直すことも有効でしょう。
3-2.「求める人物像」の再定義
求人倍率が高い水準を維持している現在、
他社と同様の「優秀」さを求めていては、
競争力の乏しい企業の場合、激しい人材獲得競争に負けてしまいかねません。
「求める人物像」のアップデートは、
ミスマッチによる早期離職防止にも効果が見込まれます。
自社の「求める人物像」が理想を固めたものになっていないかどうか再度見直すことにより、
企業と応募者、双方にとってメリットが得られるはずです。
3-3.Z世代の理解
さらに、ミスマッチを防ぐための施策としては、
将来の日本経済を担う存在であり、今後就職活動を迎える世代である「Z世代」の価値観を把握しておくこともまた重要です。
具体的には、
協調性が高く、真面目で堅実、安定を重視した意思決定を重視する一方、
自らの主体的な判断や、他社との争いを苦手とするなどの側面が見受けられます。
これらZ世代の特徴は、
Z世代より前とされるX世代、Y世代と明確に異なっているため、
正しく理解しておくことが重要です。
3-4.ターゲットの拡大
母数の少ない学生が相手のため、獲得競争が激化するのであり、裏を返せば
母数を増やす、あるいは違う市場に目を向けるなどの施策によりターゲットを拡大することで、
優秀な人材を獲得する可能性は高まります。
具体的には、
近頃参入する企業も増えている「地方学生」へのアプローチや、
場合によっては、新卒以外でも代用可能な業務の場合は、近年増加傾向にある「中途採用市場」で応募者を募るなどの施策が考えられます。
事業を継続させるためにも、新卒採用枠に留まらず、柔軟な発想で採用活動に注力する姿勢が重要です。
4.採用難突破の鍵となるスカウト型採用
では採用難に対して今後どのような採用手法をとっていくのか、ということを考えなければなりません。
今回は「スカウト型採用」という手法について言及していきます。
そもそもスカウト型採用とは、
今までのオーディション型採用のような「待ち」のスタンスとは違い、
企業側から学生に直接オファーを送るような形で採用を進めていくものです。
サービスとしてはOfferBox(オファーボックス)、FutureFinder、キミスカなどが挙げられます。
そして今では大企業も
スカウトマン状態になってきています。
例えば、
TOYOTAでは何百人ものリクルーターを組織し全国に派遣、
学生へのリーチを行なっています。
プロセスとしては、
リクルーターが後輩に直接アプローチし口説く、
というような手法をとっています。
今まで応募者数も多く、
ある程度難なく採用できていた大企業が、
ナビ系を使わずにスカウト型で採用する必要があるのか?
という疑問があるのではないでしょうか。
その理由としては
就活市場が「売り手市場」であることにより、
学生が活発に企業を探すことをしなくなっている側面があります。
ナビ系を使って採用しようとしても、
例年に比べて応募者が少なくなっている現状があるのです。
なので大企業も積極的にスカウト型採用に乗り出してきていることは、理解しておく必要があります。
しかし、全体の流れとしてスカウト型採用が流行り始めているとはいえ、どんなメリット・デメリットがあるのかは確認しておきましょう。
4−1.スカウト型採用のメリット
スカウト型を採用するメリットとしては次の点が挙げられるでしょう。
- ターゲットしやすい
- 企業ブランド以外の部分で勝負できる
・ターゲットしやすい
スカウト型採用のサービスでは基本的な流れとして学生側がサービスに登録後、個人の情報(どんな人間なのか、どんな志向を持っているのか、など)を入力し企業側からのスカウトを待つことになります。
オーディション型とは違い、ある特定の学生層へリーチできる点でこれまでよりも自社に合った人材と接触できる可能性が高くなる分、学生の合格率は上昇します。
ナビ系サービスが担ってきた就活へのハードルを下げて機会を与えるという点は能力がある学生が明確に評価されなかったり意欲がしっかりとすくい上げられなかったりする弊害を含んでいました。
本当に自社が必要な人材にリーチできる可能性が広がるという点でメリットはあるのではないでしょうか。
・企業ブランド以外の部分で勝負できる
このメリットは中小企業、ベンチャー企業において顕著ではないでしょうか。
超大手人気企業ではブランドに依存させることでオーディション型であっても人を動員することが容易な部分があります。反面、中小企業やベンチャー企業では採用で簡単に人を集められるほど会社のブランド力が高くない場合がほとんどです。
そんな状況でもスカウト型の利用によって活発に学生に直接リーチしていき、自社の魅力を近い距離で学生に伝え、それに反応してくれた学生を離さないことで採用の質を上げていくこともメリットとして考えられます。
4-2.スカウト型採用のデメリット
その反面、スカウト型採用にもデメリットはあります。
大きくみてこの二つです。
- 採用競合が強くなる
- 囲い込みが多い
以下説明します。
・採用競合が強くなる
スカウト型採用、逆求人などを利用することで今まで獲得できなかった優秀層の学生と接触できる可能性は広がる分、その後の選考フローにおける手厚いフォローが必要になります。
というのも当然優秀層の学生は自社だけではなく合格倍率の高い他社の選考も受けているため、自社の魅力やマッチ度がその他社群から抜きん出なければ内定承諾へは繋がらないことになります。
そのため、オーディション型の採用時からはレベルアップした学生への魅力づけや優位性などのアピールが必要にならざるを得ません。
採用担当としては優秀層の学生を採用していくトライ自体は仕事冥利に尽きるかもしれませんが、採用枠などを決めている場合は最終面接に残った学生がほとんど他社に流れる、なんてことは避けたいですよね。
・囲い込みが多い
就活生向けのサービスやメディアがある層(例えば上位大学のみ)などにリーチさせる特化型のサービスを提供していることが多いです。
外資就活やOne careerなどは特に顕著です。早い段階から動き出した優秀層が現状食い荒らされている状態でここに大手企業などもしっかり参加してきています。
現状スカウト型のサービスに就活生全体の20%、約10万人が登録していますが上記のようなサービスのおかげで早期から流動的になっている分、スカウトをしたからといって確実に優秀層とマッチできるかは微妙なところです。
また、有象無象に学生が登録している分、スカウト採用のみに振り切ってしまうと対応に時間がかかる分その他の優秀な学生と巡り会える機会を失う可能性もあります。
終わりに:採用難の時代にはバランスが大事
採用市場の概観的な業界ごとの情報などではなく、
自社のおかれているポジションや採用人数、
かけられるコストなどを考慮した上で
どれだけオーディション型とスカウト型の採用のバランスをとりつつ、
採用手法を効率的かつ効果的にできるかにかかっています。
採用市場では、
30人程度の会社まではスカウト型のみで採用は事足りる、などとは言われていますが、
それも5年後にはどうなっているかはわかりません。
どちらにせよ、
採用難の時代には採用手法は変えても変えなくても、
自社選考に乗った学生に対してのフォローアップに力を入れていく必要はあるのではないでしょうか。