
衰退する金融業界|市場規模と就職人気ランキングにみる業界の現状
2020年8月8日更新
はじめに
みなさんは金融業界と言われると、どのようなイメージをお持ちですか?
「就職先としては安定」「人気な業界」
などのたくさんのことを想像できるでしょう。
またこんなことも聞いたことはないでしょうか?
「金融業界は衰退する」「金融就職はやめとけ」と。
今回は、
銀行や証券、損害保険や消費者金融、クレジットカードなどをはじめとした金融業界が
「衰退する」と言われている理由について、解説していきます。
もちろん業界には良い面もあると思いますが、
今回はあえて悪い面にスポットライトを当ててみたいと思います。
金融業界に進もうとしている人、していない人にも読みやすい記事にしています。
ぜひ最後までお読みください。
1.市場規模にみる金融業界の現状
業界動向サーチが毎年発表している調査によると、
主要対象企業193社の経常収益の合計、つまり
2018年から2019年にかけての金融業界の業界規模は65兆6,367億円となっています。
この数字は、136業界の中では4位と非常に大きく、
また伸び率は前年比で2.6%増となっています。
これだけ見ると、金融業界の基盤が安定しているように思われますが、
利益率は8.5%増と前年比を割り込んでいます。
背景には様々な要因が絡んでおり、
例えば銀行業界に目を向けると、
日銀のマイナス金利政策による銀行の収益力低下や、
人口減に伴い地方銀行合併の動きが加速したことなどが挙げられます。
また、証券業界は2018年度とは一変、減少に転じており、
ネット銀行はそこまでダメージは受けなかったものの、
個人投資家の動きが鈍化したことで減収となっています。
一方、クレジットカード業界は過去最高の業績となっており、
政府主導でのキャッシュレス化の波や、
EC市場拡大に伴うオンラインショッピングの普及などを背景に、市場規模を拡大させています。
昨今のコロナウイルス拡大に伴い、オンラインショッピングの需要が急拡大したことも、
この流れをさらに後押ししていると言えるでしょう。
2.就職人気ランキングにみる金融業界の現状
近年言われている金融業界への懸念は、
就職人気ランキングにも現れ始めています。
キャリタス就活が発表した
メガバンク(みずほ、三菱、三井住友)の2018年度・2019年度の就職人気ランキングを見てみましょう。
【就職人気ランキング】
みずほフィナンシャルグループ:1位(2018)→17位(2019)
三菱UFJ銀行:2位(2018)→4位(2019)
三井住友銀行:5位(2018)→14位(2019)
どうでしょうか?
2018年度は、メガバンク人気が顕在ですが、
2019年度になると軒並み順位を一気に落としています。
ここまでの一年での変動にはいろいろな理由がありますが、
恐らく金融業界の不振や悪い噂を聞くことで、
一定数の志望者が減少したことが原因と言われています。
3.金融業界がかつて人気を誇っていた2つの理由
かつて就活生には
「金融業界に入ったら安泰」と言われるほどの絶大な人気がありました。
そこまで就活生を引き付け、人気を誇っていた理由は大きく2つ挙げられます。
3-1.業界の安定性
就職先の情報として気になるのがまず待遇面です。
金融業界の平均年収は650万前後とも言われており、
業界動向サーチでも2019年度は年収700万とされています。
他の業界と比較しても上位に入る年収で、
「30歳で1千万」とも言われていたことがあります。
また休暇制度を中心に、福利厚生も良いと言われています。
職業柄ではありますが定時退社、土日休暇の会社がほとんどで、
産休や育休の制度もしっかりと整っています。
いわゆるホワイト企業が多いということですね。
メガバンクともなると企業の人数も十分確保できるので
福利厚生を充実することができます。
3-2.業界の知名度
業界が安定しているという話が、
就活の界隈でも流れています。
何年もの間その話が出ているおかげで、
就活前から「金融業界は安泰」と信じる就活生が毎年一定数はいる、というのも、
金融業界の就活人気を下支えしていると言えるでしょう。
しかしここで重要なのは、
これが確かな情報を握った上で金融業界が安泰なのか、
それとも固定観念で安泰だと感じて動いているのか、という点です。
近年の就活市場をみると、
「とりあえず金融はおさえておこう」
という就活生が散見されますが、
これは極めて危険な判断です。
AIによる自動化の動きが加速する中で、
大規模な人員削減といった施策に踏み切る大手企業が増加しています。
このような不測の事態に備えるといった意味合いでも、
しっかりと今後の動向や将来性を踏まえて判断していくことが求められています。
4.金融業界を衰退へ導いている3つの要因とは
これまで見てきたように、
業界の安定性と知名度を背景に人気を誇ってきた金融業界ですが、
今後の衰退は避けられないと言われています。
その理由を3つ解説します。
4-1.伸び悩む給料
業界が伸びていかない限り、給料は伸びません。
そして給料が伸びていかない限り、人は集まって来ません。
やはり「お金」という面は、労働者にとって大きな問題になるのです。
高度経済成長期を迎えていたかつては、業界全体が急成長し、
その分給料も上がり、「30歳で1千万」というネタさえ挙がっていたほどです。
しかし、業界の業績不振が懸念されている現在では、
そう簡単に給料は上がりません。
今、就活を考えている人にとっては、
残念ながら不振の時期と昇進の時期が被る可能性が高いと言えるでしょう。
4-2.高い離職率
意外とも思えるかもしれませんが、
金融業界の離職率は実際高くなっています。
安定性を求めて就職した新卒社員は、
30歳までに約40~50%離職してしまうとも言われています。
離職の理由として
・ノルマがきつい
・覚えることが多い
・将来が不安
などの理由が挙げられます。
知名度で就職する就活生が一定数いるので、
想像していたよりも業務がきつい、と感じてしまうことがあることも
離職する理由になると考えられます。
4-3.フィンテックの影響
金融(Finance)と技術(Technology)を合わせた造語であるフィンテックは、
金融サービスと情報技術を結び付けた革新的な動きのことです。
身近な例では、スマートフォンを使った送金もその一つであり、
フィンテックの台頭により、
以下の理由が衰退の理由として挙げられています。
① 融資や資産運用へのビックデータやAIの活用
融資や資産運用は過去何十年ものデータが存在しているため、
人が分析してお金を動かすより、
ビックデータやAIに任せてしまった方が効率的で正確とも言われています。
② キャッシュレス決済の加速
中国はキャッシュレス大国とも言われ、
現金での支払いを受け付けない店も増えてくるなど、
キャッシュレス決済が消費者の幅広い支持を獲得しています。
また日本では2010年後半からQRコード決済を筆頭とした、
キャッシュレス決済の普及率が増加しました。
このようなキャッシュレス社会の流れにより、
「モノ」としての通貨の価値が薄くなり始めています。
③ 仮想通貨の主流化
仮想通貨が主流になることで、
仮想通貨だけで社会が回り始めるようになります。
それにより通貨自体に意味をなさなくなり、
使用されなくなっていく可能性も高まります。
この流れに関しては、意見が分かれているところではありますが、
明確にいつ、仮想通貨が主流通貨になるかどうかについては
まだ未知ところが多いのが実情です。
④ AIの発達による銀行の業務(窓口や受付、データ入力)の消失
銀行だけではありませんが、
簡単な業務内容はAIにより置き換えられます。
AIの発達により人での銀行の業務が消失し、
採用者だけではなく、既存の雇用者の給料や雇用そのものが
危うくなっていくことが今後考えられます。
なお、
ハーバード大学によって運営されている非営利団体「Harvard Business Publishing」は、運営メディア内の記事の中で
「今後世界中の既存の銀行で新たなイノベーションを起こせない場合は
92%が10年以内に消滅する」
という予測を、2015年の時点で出しています。
時代の変化とともに、銀行のビジネスモデルも変化していかなければ、
銀行の消失すら懸念されてきています。
最後に
いかがでしたでしょうか?
今回は銀行が衰退する理由を挙げていきました。
その中でも、AIの発達は凄まじいものがあるので、
銀行の業務自体の消失も大げさではなくなっています。
全体的にネガティブな情報ばかりになってしまいましたが、
金融業界は厳しい業界だからこそ、
新たな革新的なサービスやビジネスモデルが生まれることも期待しています。
金融業界に就職してみたいと考えている就活生は
時代の変化を捉えるとともに、
固定概念にとらわれずその場所で全力を尽くすことをおすすめします。
頑張ってください!