
【5分で分かる業界研究】不動産業界の実態|メリット・デメリット
2020年8月8日
はじめに
「不動産業界」と聞くとどのようなイメージが湧きますか?
土地や建物、あるいはお金やピリッとしたスーツを着用しているイメージを持っている人もいるかもしれません。
ただ案外、「何をしているか」ってはっきりと答えるのは難しいですよね。
そこで本記事では、不動産業界の研究はできるように、
不動産業界をざっくり解説します。
不動産業界に興味のある人は必見の記事です。
1.不動産業界とは:5つの企業と4つの役割
不動産業界の研究をするにあたって、
まずは業界を構成する要素について理解しておく必要があります。
不動産業界と一口に言っても、
実は以下の5つの企業の種類から構成されています。
・デベロッパー(開発業者):商業施設やビル、リゾート施設の開発
・ハウスメーカー:注文住宅や建設住宅を手がける
・不動産仲介業社:物件の売買や賃貸を仲介
・住宅販売会社:マンションや一戸建ての販売
・管理会社:不動産物件を管理
つまり、不動産業界では、
①デベロッパーが建物を建てる
②建てた建物をデベロッパーや販売会社、不動産仲介業社が賃貸
③消費者の手に渡った物件を管理会社が管理
というのが、一連の流れとなっています。
そのため不動産業界では企業の役割を、
・建てる
・販売する
・貸す
・管理する
の4つに分けて考えることが一般的です。
2.不動産の業界研究は3分野の理解から
前章で不動産業界とは何かについて解説しましたが、
さらに理解を深めるためには
不動産業界の3つの分野を理解することが重要です。
本章では
・不動産開発(デベロッパー)
・不動産流通
・不動産管理
に分けて解説します。
2-1.不動産開発(デベロッパー)
不動産開発は、商業施設やビル、マンションあるいはリゾート施設などの建物を建設する役割の仕事です。
建物を建設といいましたが、不動産開発においては
「どんな場所にどのような建物を建てるのかを提案していく仕事」
だと理解しましょう。
仕事の流れとしては、
建物を建てるための土地を検討し、
土地にはどのような建物がマッチしているのかを考えていきます。
そして企画を行い、
企画が固まった時点で土地所有者に対して土地使用の提案をし、
その提案が通れば実際に建物を設計していく流れです。
デベロッパーの仕事が、この不動産開発に当たります。
2-2.不動産流通
不動産流通とは、
不動産市場での流通に関わる仕事です。
つまり、不動産を市場に流通させて、
その不動産を購入したい人とマッチングさせることをミッションとしています。
また、さらに細かく不動産流通をみると、
・不動産仲介
・不動産売買代理事業
の2つに分かれます。
◯不動産仲介
不動産仲介は、
不動産所有者と不動産購入を検討している顧客を結びつける役割の仕事です。
不動産はその存在だけでは顧客に購入してもらうことは不可能ですし、
不動産所有者が自ら販売することも難しいです。
そこで、不動産所有者と不動産が欲しい顧客を仲介することで
価値を見出しています。
つまり、その仲介手数料が不動産仲介における利益となってきます。
◯不動産売買代理事業
不動産売買代理事業では、
不動産所有者の不動産販売を完全に委託されて、
販売促進活動や販売を行います。
このようにいうと
「不動産仲介と同じじゃん」
と思われてしまうかもしれませんが、
手数料の発生場所が異なってきます。
不動産仲介では、
不動産所有者と不動産を買うor借りる人の両者に手数料が発生するのに対し、
不動産売買代理業では売り手のみに手数料が発生します。
この違いは、売買を完全に委託されているかどうかが
大きく関わってくるといえるでしょう。
2-3.不動産管理
不動産管理は、不動産設備の管理はもちろん、
テナントに入店するお店を募集したり、賃貸料を回収したりなど
不動産にまつわる管理サービスをマルッと引き受けることが仕事となります。
民間の建物だけでなく、公的な建物の管理を行う場合もあります。
3.データにみる不動産業界の現状
次に不動産業界の現状と動向について解説します。
財務省が発表した「年次別法人企業統計調査(平成30年度)」によれば、
2018年度の国内不動産業の市場規模は46兆5,363億円となっています。
2015年は39兆3,835億円規模に留まっていることから、
継続して拡大傾向にあると言えるでしょう。
また、帝国データバンクが発表している「『業界天気図』動向調査(2020年度見通し)」でも、
「不動産賃貸(住宅系賃貸除く)」は「市場が成長しており、企業業績も安定して成長している」ことを示す「晴れ」の見通しとなっており、
不動産業界が堅調に拡大の一途を歩んでいることが伺えます。
中でも、
「東京都心の好調な賃貸オフィス市場が継続、各社の業績をけん引する見通し」となっています。
しかしながら、
不動産業界の今後の動向に関しては、
以下3つを焦点として大きな影響を被ると見られています。
・東京オリンピック、パラリンピックの影響
・農地が宅地になる2022年問題
・避けられない人口減少
以下説明します。
3-1.東京オリンピック・パラリンピックによる地価上昇
延期になってしまったものの、
2021年に開催が予定されている東京オリンピックとパラリンピックにより、
エリアによって地価が上昇しています。
特に東京の選手村が設置される湾岸の埋め立てエリアは人気となっており、
価格が上昇しています。
しかし、そのエリアの居住用マンションはすでに供給過多であり、
東京五輪を前に値下がりするとされています。
3-2.農地が宅地になる2022年問題
生産緑地の多くが一斉に宅地として放出されるようなことがあると、
不動産市場に大きな影響があると予想されています。
というのも、
2022年に生産緑地として指定されている全体の8割の農地が営農義務から解かれ、
自治体に買取を申請できるようになるからです。
自治体が買い取るのであれば、公園などに整備することが可能ですが、
買い取れない自治体も少なくないでしょう。
その結果、農地が宅地として売却されることで土地が供給過多に陥り、
地価が下落します。
その対策として2018年に改都市計画法が施行され、
用途地域に「田園居住地域」が追加されました。
この改正によって、
旧生産緑地に高層マンションやショッピングモールが立つことによる
周辺地域の急激な環境変化と、大規模な宅地を防ぐことが期待されています。
3-3.避けられない人口減少
先述した通り、日本国内において人口減少は避けられません。
そのため、需要と供給のバランスが崩れることが懸念されています。
人口が減少することで、
これまで必要だった一定数の住居が供給過多を引き起こし、
空き家が増加することは想像に難くありませんね。
実際、現在でも地方では空き家問題が深刻化してきていますが、
この流れが今後はさらに加速すると見られています。
人口減少による弊害は様々な側面が取り沙汰されていますが、
不動産業界は幸か不幸か、
大きく影響を被る業界の一つであると言えるでしょう。
4.不動産業界の研究では理解すべき特徴3選
次に不動産業界の研究では理解すべき特徴について解説します。
特徴としては主に以下の3つが挙げられます。
・景気の影響を受けやすい
・使命感を持つ人が多い
・安定した休みが難しい時期も
4-1.不動産業界の特徴①景気の影響を受けやすい
不動産は非常に景気に左右されやすい業界です。
景気が下がると不動産の相場も下がるという風に連動しているのは実態です。
また、「投資」の側面も持ち合わせており、
海外が絡む投資である場合は、
為替の変動なども受けやすいことが考えられます。
4-2.不動産業界の特徴②使命感を持つ人が多い
不動産業界には使命感を持って仕事に取り組む人が多いとされます。
例えば、地図に残る仕事として誇りを持てます。
また、不動産は消費者にとって非常に高い買い物であることも
使命感に繋がるのかもしれません。
4-3.不動産業界の特徴③安定した休みが難しい時期も
不動産業界では、安定した休みを取ることが難しい時期もあります。
卒業や入学、入社など年度が変わる時期である2月から4月、5月頃は、
不動産業界にとって年一番の書き入れ時であると言っても過言ではありません。
また、土日が仕事である場合も非常に多く、
人付き合いが疎遠になるリスクは否めません。
5.不動産業界の課題
メリット・デメリットが並存する不動産業会ですが、
業界全体としては、以下の3つの課題を抱えています。
・人口の減少
・中小企業や地域密着型企業の減少
・学生向け物件の需要の低下
以下説明していきます。
5-1.人口の減少
現在では日本国内の人口が減少していることが明らかであり、
全国の世帯数も減少するとされています。
つまり、人口減少と少子高齢化が進む社会において、
いかにして対応していくかが不動産業界における課題となります。
5-2.中小企業や地域密着型企業の減少
中小企業や地域密着型企業のような小規模な企業が減少し、
大手企業やフランチャイズ企業のシェアが高くなると予想されています。
というのも、消費者のニーズに答えることのできる物件を紹介することが難しくなってきているからです。
中小企業や地域密着型企業が良い物件を紹介することができなければ、
大手企業のような資本力のある企業に勝つことは難しいです。
もちろん、大手企業が進出しない地域もあるため、
地域における不動産のあり方を考える必要性が出てきたともいえるでしょう。
5-3.学生向け物件の需要の低下
繰り返しになりますが、日本は少子高齢化社会で人口減少社会です。
つまり、学生の数も今後どんどん減っていくことが予想されます。
特に学生向けの物件をメインで扱ってきたような企業は何らかの対応を求められることになるでしょう。
終わりに
いかがでしたでしょうか?
本記事では、不動産業界研究がしやすくなるよう、
不動産業界について概要をかいつまんでざっくり解説しました。
東京オリンピックの影響やコロナによる影響も懸念されていますが、
市場規模としてはこれまで堅調に拡大を続けており、
夢のある業界だといえるでしょう。
もし、本記事を読んで不動産業界に興味を持ったのであれば、
ぜひ色々調べてみてください。
主体的に得た情報で、最終的に自分が決断することは非常に大切です。
不動産業界に興味のある人は必見の参考になれば幸いです。
(その他業界研究)