
フェルミ推定:やり方や考え方を徹底攻略!【例題あり】
2022年11月15日更新
はじめに
外資コンサルティングファームや、
新規事業立案が必要不可欠なベンチャー企業の選考で出題される、
「フェルミ推定」。
聞いたことのある人は多いと思いますが、
そもそもフェルミ推定が何であるか、何のためにやるかなど、
知らないことも意外と多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、
- フェルミ推定とは?企業が課す目的
- フェルミ推定の思考法
- フェルミ推定を用いた例題
- フェルミ推定で企業が見ているポイント
- フェルミ推定での注意点
について、解説していきます。
コンサル・ベンチャー志望だけでなく、
日常生活でも非常に役立つ思考法ですので、押さえておいて損はしないはず。
最後までしっかり読み、
大事なことはしっかりと頭に入れるようにしましょう!
もくじ
1.フェルミ推定とは?概要と企業の意図
フェルミ推定とは、
予想もつかないような、捉えどころのない問題を、論理的思考力を元に推論し概算することを指します。
このような概算を得意とし、1938年にノーベル物理学賞を受賞したエンリコ・フェルミに由来しており、
答えの存在しない問題に対して考え抜く知的好奇心や思考力、
複雑な問題から課題を見出すために全体を俯瞰する能力などを図るため、
ベンチャー企業や外資系コンサルティングファームの選考で課されることで有名です。
具体的な例題でいうと、
「世界中にある全ての鉛筆の数は何本か?」
「東京都内に自動車は何台?」
「東京都内(日本全国)のマンホールの数はいくつか?」
「東京都内(日本全国)の電柱の数はいくつか?」
このような問題があります。
スケールが大きすぎて、どう考えていいのか分からないかもしれませんが、
そこまで難しく捉える必要はありません。
一人当たりに因数分解して、あとは全体で掛け合わせるだけで一応答えは出るはずです。
例えば、最初の問い。
世界中の人が鉛筆を1ダースずつ持っているとしたら、、、
12×70億人で一応答えは出ます。(とはいえ、一人当たりが保有する数以外にも、店舗や倉庫でのストック分などもあるので回答としては不十分ですが..)
あなたなら何本と答えますか?
2.フェルミ推定の思考4ステップ
「漠然とした数字は、どうやって求めれば良いのだろう、、」
と、不安に思ってしまった方もいるかもしれませんが、
何も難しく考えることはありません。
まずは前提条件を確認し、
小さなスケールに落とし込んで計算し、後で全体像を求めれば良いだけの話です。
具体的には、
下記のようなステップで思考します。
フェルミ推定のやり方を説明します。
1.問題の要点を掴む
2.公式を作る
3.公式に当てはめる数字を作る
4.計算
ざっくり並べるとこのような手順となります。
それでは簡単に解説していきます。
2-1.問題の要点を掴む
まずは問題の論点、つまり
何の数字を元に仮説を立てていくか(問題の要点)を掴むことが重要です。
ここでの判断が、フェルミ推定では最重要といえるでしょう。
要点は主に、
・人口…人口あたりでいくつか推定できるもの
(例:コンビニ、スーパーなど)
・個人…個人の属性による問題
(例:スカートの売り上げ、パソコンの売上など)
・世帯…世帯当たりいくつかの問題
(例:電子レンジの数、掃除機の数)
・面積…面積あたりいくつあるか
(例:マンホールの数)
・需要…需要と供給が釣り合っているという前提にもとに解く問題
(例:タクシー、ホテルの数)
・特殊…上記以外のケース
(例:戦闘機の重量はいくらか)
これらの数字を元にすることで、
全体像を概算することが可能になります。
2-2.公式を作る
要点が掴めたら、
次は公式を作ります。
要は、
「この数字とこの数字がわかれば答えが出るよね」
という段階に持っていく作業です。
例えば、
「日本全国のコンビニ弁当の年間売上はいくらか?」
こんな問いが出たとします。
ともすると、思考停止してしまう方もいるかもしれませんが、
きちんと順を追って考えることができれば、全くどうしようもない問題ではありません。
この問いの場合は、
「店舗数」×「コンビニ1店舗当たりの年間の弁当売上」
という公式で、概算することが可能となります。
2-3.公式に当てはめる数字を作る
ここも非常に重要なパートであり、
ここの数字の正確さで答えが大きく変わってきます。
先ほどの掴んだ要点をもとに、
自分なりの仮説を作っていきましょう。
コンビニ弁当の例題の話に当てはめて考えてみると、
例えば、「自分の地元(人口20万人の市)には、コンビニが50店舗ある」とします。
とすると、日本の人口は1億2,600万人ですので、
日本全国のコンビニ店舗数は、求められることが出来そうですよね。
続いて、気になるコンビニ弁当の売り上げについてです。
「人によって、弁当の購入回数が異なる」
ため、思考が難しくなっていますので、
まずはこの「人」をいくつかのグループに分解し、
それぞれの購入額を元に、組み立てていきます。
例えば、
日本の人口が男性・女性50%ずつだと仮定して(細かい数字は省きます)
20歳ごとに分解、それぞれの月ごとの購入額を見ていきます。(下記参照)
セグメント① 0〜19歳(男)
セグメント②0〜19歳(女)
セグメント③20~39歳(男)
セグメント④20~39歳(女)
セグメント⑤40〜59歳(男)
セグメント⑥40〜59歳(女)
セグメント⑦60〜79歳(男)
セグメント⑧60〜79歳(女)
ここでは、あえて数値は挙げませんが、
それぞれのセグメントの消費行動を思考し、月(または週)に1店舗でどのぐらいの額を購入しているのかを概算します。
最後に合計し、年額を計算すれば、答えがなんとなく見えてくるはずです。
後で暗記項目として説明しますが、
- 世界の人口:76億人
- 日本の人口:約1.2(1.25)億人
- 世帯数:5000万戸
のようなフェルミ推定によく使用する数値は記憶しておくと計算時間が短縮されて便利です。
2-4.計算
先ほどの数字を元に、計算しましょう。
桁数が大きな数字になるので計算ミスに注意する必要があります。
先ほどの例だと、まずコンビニの店舗数は
コンビニ50店舗(20万人あたり)÷ 20万人 × 1億2,600万人 = 3,150店舗
と、求めることができますね。
あとは、上記で求めた店舗数に、1店舗あたりの売上を計上すれば、
「日本全国のコンビニ弁当の売上はいくらか」に対する解が見えてきます。
どうでしょうか?
ざっくりと抽象的にやり方を解説しました。
特に、
1の要点を掴むこと、
3の公式に当てはめる数字を作る
これら2つの作業は非常に難しいです。
難しいからこそ評価もされますし、
面接官にあえて質問をし、回答を探るコミュニケーション能力も見られています。(後ほど詳しく記述します)
しっかり取り組みましょう。
オンライン就活始めるなら
上京就活支援サービス「ジョーカツ」
3.フェルミ推定を使った例題と回答
もう一つ実際の例題とその回答について見ていきましょう。
設問は
「日本で一年間に送られる年賀状の枚数は?」
だとします。
まず最初に考えるべきは、考え方の枠組み。
年賀状の枚数=人口×1人が送った枚数
になりますので、
例えば人口が1億人、全員が10枚ずつ送ったと仮定すると、10億枚という回答になります。
大まかな数字が出たら、次はもう少し細かく数字を見ていきます。
ここで考えるべきトピックとしては、
「年代によって送る枚数が違う」
「正式な日本の人口は約1億2,000万人」
という事実。
例えば、約3,000万人いるとされる0〜20歳は5枚ずつ、
残りの約9,000万人(20〜80歳)は、仮に30枚と仮定すると、
次のようになります。
0〜20歳:3,000万×5=1億5,000万枚
20~80歳:9,000万×30=27億枚
1億5,000万枚+27億枚=28億5,000万枚
どうでしょう?
ざっくりではありますが、考え方としては上記のようになります。
もう少し細かく計算する場合は、
「20〜80歳は30枚も出すのだろうか?」
「20〜80歳は、もう少し細かく分けられないのだろうか?」
などと、条件設定を細かく分類していくことで、さらに正確な値に近づけることが可能。
ただし、
日本の人口や面積など、基本的な値を把握していなければ推定さえ難しくなりますので、
最低限次で紹介する数値は押さえておきましょう。
4.フェルミ推定で押さえておくべき数字(暗記推奨)
最低限常識として、次の数字は頭に叩き込んでおくとスムーズです。
コンサル系を目指すのであれば、
しっかりと暗記しておきましょう。
人口 | 1億2,700万人 |
平均寿命 | 84歳 |
世帯 | 5,300万 |
国土面積 | 38万㎢ |
給与所得者 | 5,000万人 |
平均年収 | 430万 |
フリーター人口 | 200万(若年層) |
フリーター平均年収 | 100万 |
小学校の数 | 2万校 |
中学校の数 | 1万校 |
高校の数 | 5,000校 |
短期大学の数 | 300校 |
大学の数 | 750校 |
大企業の数 | 1万1,000社 |
中企業の数 | 55万社 |
小企業の数 | 330万社 |
市の数 | 800 |
町の数 | 750 |
村の数 | 200 |
(参考:国勢調査)
5.フェルミ推定で企業が見ているポイント
どのように学生を評価しているのでしょうか?
結果で評価することが難しい以上、
過程で評価するほかありませんが、
基本的に以下の4点が重視して評価されます。
それでは、それぞれ簡単に解説していきます。
5-1.仮説を立てる力
フェルミ推定で重要な要素の1つが仮説です。
フェルミ推定では、
非常に与えられる情報量が少ない中で、
数値を計算することが求められます。
同様に、ビジネスにおいても
明確な課題がなく、
限定された情報の中で仮説を立てる力を求められるケースが多くみられます。
このように
仮説を立てて仕事に取り組めるかどうか
を評価しているともいえるでしょう。
5-2.問題を俯瞰して、課題を見出す力
問題を俯瞰し、課題を見出す力も評価されます。
ある仕事を達成するために、
複数の課題の中から、どの課題を解決すべきかを考える力、
つまり優先順位を明確に立てられる力というのが、
非常に大切になってくるのです。
もちろん、
目の前にある課題を全て解決できれば、
仕事自体は上手くできるかもしれません。
とはいえ、実際問題として、
全ての課題を解決できる時間が与えられないことがほとんど。
フェルミ推定でも同様に、
限られた時間の中で、
どの課題が重要かを判断する必要があります。
効率的に質の高い仕事をできるかどうかが評価されている、
ともいえるでしょう。
5-3.取り組む姿勢や思考体力
当たり前かもしれませんが、
取り組む姿勢や思考体力といったものも評価されます。
フェルミ推定では、
限られた時間、限られた情報量の中で、
最適な解を導く必要があります。
そのような厳しい状況でも、妥協することなく
ベストの解のために考え抜くことができるか
も重要な評価ポイントとなってきます。
4-4.コミュニケーション能力
コミュニケーション能力も重要です。
ただ、ここで確認しておきたいのは、
コミュニケーション能力の意味です。
ここでの意味合いとしては、
いわゆる大学生のイメージするような、
「コミュ力が高い」
意味合いではありません。
「相手の話をきちんと理解した上で、
自分の意見を論理的に相手に伝える力」
のことを指します。
つまり、
上手く喋る力だけでなく、聞く力であったり、
聞いたことを理解する力も非常に大切です。
そして、
そのコミュニケーション能力を使って、
面接官や他の就活生と有意義な議論ができるかを評価しています。
相手の話をしっかり理解した上で、
建設的な意見を述べることが重要です。
6.フェルミ推定での注意点
フェルミ推定での2つの注意点、
- 知っているフレームワークに無理やり当てはめようとしない
- 面接官からの質問は「チャンス」と捉える
こちらについて解説します。
6-1.知っているフレームワークに無理やり当てはめようとしない
「先ほど公式を解説していたのに、どういうこと?」
と思われた方もいるかもしれませんが、
お伝えしたいのは、
「面接官は、何も初めから正当な答えが欲しいわけではない」
ということです。
繰り返しにはなりますが、
フェルミ推定によって面接官が見ているのは、論理的な「思考力」です。
与えられた課題に対し、どう論理を組み立てながら思考していくのかが見られているのであって、
「公式を当てはめるゲーム」ではありません。
最近は、このフェルミ推定に関連する書籍も多く出回っているため、
機械的に対処してしまいがちですが、
その回答があまりに作り物のように「不自然に正しい」と、
面接官は
「本当に、自分の頭で考えたのだろうか」
「ただ丸暗記しているだけなのではないだろうか」
「現場でもし同じような課題にぶつかったとしたら、正しく思考できるのだろうか」
と、懐疑的に思われてしまいます。
学生側からしても、
せっかく頑張って対策をしてきたのに、
「考える力が無い」と評価されてしまっては、元も子もありませんよね。
なので、公式を認知しておく必要はありますが、
あくまで柔軟な思考を意識し、
「面接官とコミュニケーションを取りながら」
様々な状況を考え、思考を深めていくことが大切です。
6-2.面接官からの質問は「チャンス」と捉える
先ほどの延長になりますが、
面接官は学生に「丸暗記した公式で答えを出す」のではなく、
面接官とコミュニケーションを取り、時には設問の意図を確認するため、学生側からの質問も交えながら、
「その場で思考し、正しい答えに行き着いて欲しい」
と思っています。
そのため、
自分1人で答えを出す必要はありませんし、
時には面接官側からフィードバックとして質問が投げかけられるかもしれません。
慣れていないと、「詰められた」と感じてしまい、尻込みしてしまうかもしれませんが、
そのように感じる必要は全くありません。
むしろ、面接官側からの質問は
面接官からヒントをもらいながら正しい答えに行き着くため、
そして
その場で論理的思考力を面接官にアピールするためのチャンスと捉え、
双方向のコミュニケーションを図るようにしましょう。
7.フェルミ推定は今後使われなくなるって本当?
さて、これまでフェルミ推定の代表的な例題や考え方、企業の意図等について解説してきました。
ですが最近、このフェルミ推定は採用面接で使われなくなる、とも言われています。
そもそもこのフェルミ推定、
採用面接で取り入れられるようになったのは、Googleが最初でした。
その後、他の企業が続々とその姿勢を真似て、同様に採用面接に取り入れていったのですが、
Google人事担当の上級副社長であったラズロ・ボック氏は、2013年ニューヨークタイムズのインタビューにて、
「時間の無駄だった」
と真っ向から否定したのです。
つまり、フェルミ推定によって地頭力は一概に図れないという事実を、Googleが認めたということになり、
この意見に対しては同意の声が多く集まりました。
今後、フェルミ推定は下火になっていくとの見方がありますが、
とはいえコンサルの採用面接で、こういった類の問題が一切聞かれなくなるということは想定しにくいため、
引き続き対策は必須であるといえるでしょう。
まとめ:フェルミ推定は対策必須
フェルミ推定をイメージできるようになりましたでしょうか?
「難しい」
「大変そう」
「めんどくさそう」
そのようなイメージを持った方も多いことでしょう。
もちろん、
企業側も無理難題であることは十分に承知しています。
それでも、就活生がどのようにして、
無理難題に立ち向かうかを知りたいわけです。
もし、フェルミ推定を課されたら、
諦めることなく自分の精一杯を出し尽くしましょう。
そして、何よりフェルミ推定に真剣に取り組めば得るものも多いです。
コンサルティングファームやベンチャー志望以外の方も、
論理的思考能力を養うチャンスだと思って、
就活の機会に取り組んでみても面白いと思います。
論理的思考力は、
面接ではもちろん、
社会に出てからも役に立つ機会はきっとあるはずです。