【業界研究】農林水産業界とは?志望動機・ビジネスモデル・職種を徹底解説
2023年9月10日更新
はじめに
「農林水産業の仕事って体力勝負の業界だよね…」「大手企業が全然思いつかない」
農林水産業の企業と聞くと、上記で挙げたようなネガティブなイメージを連想する学生が少なくありません。
しかし実際、働き方は企業次第です。
そして農林水産業を詳しく知らないまま就活を終えてしまうことは、とてももったいないです!
そのため本記事では、農林水産業界について就活生向けに詳しく解説していきます。
就職活動を行っている学生は、ぜひ最後まで読んでみてください!
農林水産業界とは
農林水産業とは、「農業」「林業」「水産業」をひとまとめに表現する言葉で、これらはすべて自然界から直接富を得る「第一次産業」に分類されます。
日本経済の主要産業とも言われるほど日本を支えている業界であり、我々の生活とも密接に結びついています。
近年ではコロナウイルスの感染拡大などに伴う農林漁業者の人口減少を受け、ICTなどの最先端技術やデータを積極的に活用し、生産効率の拡大を図ります。
農林水産業界のビジネスモデル
「農業」「林業」「水産業」のどれも自然界から手に入れたもので利益を得ていますが、今章では各業界ごとのビジネスモデルを紹介していきます。
農業
農業と言えば、畑で野菜などを育ててそれを販売していく、という内容が代表的です。
そして実際にはそれに加えて牛や羊の飼育を通して乳製品の製造・販売を行う「酪農」、牛や豚などを育てて食肉を生産し、それを販売する「畜産」、野菜などの種子を研究して生産や販売を行う「種苗」、そして農業を行う上で必要になるトラクターなどの機材の製造や販売を行う「農業資材会社」など、農業に関わる様々な分野を総称しています。
林業
林業は、木材を手に入れるために木を伐採し、それを加工・販売・流通させる業界です。
そのため伐採した後は再度苗木を植え、雑草を除去したり太陽がしっかり木に当たるよう間伐を行うなど森林の育成も行い、また森林環境を保全する役割を担っています。
森林環境を管理することは山崩れの防止など、自然災害を防ぎ、また光合成を通して二酸化炭素を吸収するため、地球温暖化の抑止にも繋がっていきます。
生活に必要な家具や建築物などを製造するうえで木材は欠かせないものでもあるため、社会的意義のある仕事ができる業界です。
水産業
水産業は魚介類や海藻類などの水産動植物を採取・捕獲・栽培・養殖・増殖し、また水産動植物の製造・販売・流通を行う業務までを含む広義な意味を持つ言葉です。
日本は島国で海洋環境が優れ、地域ごとで発展した漁の方法は様々です。
代表的なものでは「沖合漁業」「遠洋漁業」「沿岸漁業」「沖合漁業」があります。
ちなみに「漁業」と「水産業」はほとんど同じ意味ですが、漁業の場合は水産動植物の採取、栽培、養殖、増殖までを指す言葉であり、製造や流通までを含まないため水産業という言葉に比べると狭義的です。
農林水産業界の職種
農林水産業を営む企業では、主に以下の職種で働くことができます。
・生産者
・研究開発
・販売促進
・管理
・営業
・生産者
農林水産業界の職種の1つ目は、生産者です。
農業の場合であれば農家として実際に野菜を自ら生産していく、また漁師として海で魚を捕獲するなど現場で働く方々を指します。
体力が必要ではありますが、自身の技術で作物や森林が育ち、また大きな魚を捕獲できた時には大きな達成感ややりがいを感じることができます。
・研究開発
農林水産業界の職種の2つ目は、研究開発です。
資源そのものに焦点を当て、各々の作物や水産物が持つポテンシャルを最大限に発揮できるようにするための研究を行います。
そのため例えば農業では作物や種子がより高品質に、より持続的に、そして天候に左右されるため悪天候にも負けない品種に改良していくための研究を行っています。
・管理
農林水産業界の職種の3つ目は、管理です。
消費者のもとに高い品質の状態で食材や製品を届けるべく安全に管理していくために、品質検査を実施したり輸送手段の調整を行う業務です。
また会社として無駄なく製品を製造していくために、工場の在庫の管理を行う業務もあり、会社が効率的に利益を挙げるための重要な役割を担います。
・販売促進
農林水産業界の職種の4つ目は、販売促進です。
販売促進は「人気の出る・売れる」商品を見つけ出すために消費行動を調査・研究し、よりよいサービスを企画・宣伝していく「マーケティング業務」です。
農林水産業では製品そのものの「質」はもちろん重要ですが、良い商品を多くの顧客に知ってもらうためには企業独自の広報や宣伝を上手く実行していくことが必要で、その戦略を練っていく職種になります。
・営業
農林水産業界の職種の5つ目は、営業です。
自社のサービスや商品を直接消費者に提案していくため、各々のサービス・商品のメリットやデメリットなどを良く知ることが必要です。
また顧客の潜在的なニーズを拾いだす力や、お客様と商品がマッチしていることをしっかりと伝えるためのコミュニケーション能力なども必要なため、対人スキルが優れている方がより活躍できる職種です。
大手企業紹介
農林水産業界で活躍している企業は、いったいどのような企業なのでしょうか。
会社名 | 売上高 | 平均年収 | 就職偏差値・難易度 | 社風 |
カゴメ(農業) | 1,897億円 | 958万円 | 65 | アットホーム |
クボタ(農業) | 2兆1,968億円 | 920万円 | 59 | 年功序列 |
住友林業(林業) | 1兆3,859億円 | 868万円 | 60 | 体育会系 |
マルハニチロ(水産業) | 8,667億円 | 734万円 | 62 | 主体性を重視 |
農林水産業界の動向
近年の農林水産業界は、人口減少やコロナウイルスの感染拡大を受けてITの技術を積極的に導入するなど、全体として従来のビジネスモデルからの「変化」を遂げようとしています。
農業の動向
農業従事者の減少が著しかった現状を受け、2009年に農地法を改正。
参入障壁の高かった農業への参入条件を緩和したことで、他業界の大手企業から中小企業まで多く農業を行うようになりました。
法人数も4000社近くに増加し、2016~2018年の3年間で業界規模(農業総産出額)が9兆円を超える結果に。
しかしそれ以降はコロナウイルスの感染拡大も影響し、業界規模は9兆円を下回っています。
今後は日本国内でさらなる深刻化が予想される「高齢化」などにも対応すべく、「アグリテック化」や「スマート農業」という言葉がトレンドになっています。
具体的には従来のように「人の手」を用いるのではなく、農業の「IT化」「機械化」を通して効率的に農作物を生産していく仕組みの構築を目指す言葉です。
そのため農業業界の今後としては、自動化でより安定的かつ効率的な環境を生み出していくために、ますますITの導入などを積極的に行っていくでしょう。
林業の動向
森林面積は国土全体の約70%を占め、その数値は世界でも有数です。
歴史としては高度経済成長に伴って木材の需要が拡大し、1980年代にピークを迎え業界規模(林業算出総額)は約1.2兆円を記録しました。
しかしその後は徐々に下落し続け、30年後の2020年時点では林業の業界規模は4,831億円と当時の半分以下の数値になっています。
衰退の原因は、日本の木材は海外産の木材に比べ生産性が劣る点や、林業従事者の高齢化、そして森林を活かしたビジネスが新たに生まれない点などが挙げられます。
そのため現在は、生産性向上のために林野庁を中心に森林内のインフラを整える施策を行い、またICTやAI技術を活用し
・サプライチェーンの構築
・林業で用いる機械の自動化や遠隔操作化
・電波が圏外の地域でも利用できるようなプラットフォームの構築
など積極的な改革が行われます。
また市町村が仲介役となり管理者が不在の森林と林業経営者を繋ぐ「森林経営管理制度」が実施され、林業ビジネスの機会拡大を図ります。
そして人材問題に対しては「緑の雇用事業」という新規事業者確保を目的とした取り組みを行い、現在は実際に林業に従事する若者が増加しています。
漁業の動向
国内での漁業の生産量は年々減少傾向にあり、2008年には約559万トンあった生産量も2022年では合計で389,5万トンに減少しています。
しかし海外では魚の需要が増しており、特に欧米では健康増進を目的として魚の消費量が上昇しています。
また先進国でも所得の増加に比例して消費量が上がっており、日本国内とは対照的に世界では魚の生産量と消費量がともに増加しています。
特に近年は養殖業が最も注目され、1995年から養殖業での生産量は上がり続け、これからもさらに伸びていくと予想されています。
そんな世界的な漁業の傾向を受け、水産業界の国内最大手企業である「マルハニチロ」はクロマグロの完全養殖に成功。
民間企業初の快挙を成し遂げ、現在はアジアを中心に事業を広げていっています。
また業界2位の「日本水産」は養殖業にAI導入を行い、AIと漁業の融合でもたらされた強みを活かして国外に拠点を拡大しています。
志望動機
農林水産業の志望動機の例を各分野で1つずつ記載しました。
志望動機に悩んでいる学生は参考にしてみてください。
・農業編
医療の発展に伴い年々「平均寿命」が伸びている一方で、「健康寿命」は平均寿命に比べると伸びていない現状があります。原因の1つに偏った食生活が挙げられ、特に野菜の摂取不足が顕著です。そのため、貴社で野菜を自ら食べようと思えるような新メニューを開発し、世に健康を広めていきたいと考えます。
・林業編
木材を活用したビジネスを積極的に行う貴社に魅力を感じたためです。大学で行った研究で、環境問題の解決に貢献する木は、抗菌や血圧抑制など人々の健康にも良い影響をもたらすことを知り、木は大きな可能性を秘めていると理解しました。そのため林業で挑戦を続ける貴社で働き、人々の生活をより豊かにするための一助を担いたいです。
・水産業編
日本の水産加工物を海外に広めたいからです。学生時代に交換留学を経験し、現地の大学生とかまぼこや魚の缶詰を食べた際、「日本ではこんなに美味しいものが簡単に手に入るのか」と驚いていました。貴社は水産加工物の開発技術に優れ、人気商品を多数生み出しているため、そのような素晴らしい商品を世界に広めていきたいと考え、志望します。
ホットニュース
「ドローンで森林を管理!?」進むスマート林業の現状
現在は林野庁を中心に「スマート林業」が推進され、急速に林業のIT化が進んでいます。
中でも「ドローン」の技術は林業との相性がよく、最近ではドローンと地理情報システムであるGISを融合させることによる、森林マネジメントシステムの開発実験が行われています。
このシステムは森林ごとに伐採率を割り出すことができ、その率を参考に適切に人材を割り当てることで生じる「人件費削減」が主な開発の狙いです。
また他では九州電力や千葉大学など複数の会社が共同受託で「巨大ドローン」を用いて、木材を森林から自動で運び出す実証実験も行っています。
各々の実験が上手くいき、実際に運用するまでに至れば林業に良い影響をもたらすこと間違いなしです。
しかし実用化のためにはドローンの輸入や航空法との兼ね合いなど、まだまだ課題は山積みです。
大きな可能性を秘めている林業とドローンの研究が、今後業界にどのように影響を与えていくか注目です。
まとめ
本記事では、【業界研究】農林水産業界とは?志望動機・ビジネスモデル・職種を徹底解説というテーマで、農林水産業界を就活生向けに解説しました。
日本の経済を長期にわたって支えてきた農林水産業は、現在「変化」が求められています。
そして「変化」が求められている業界だからこそ、新たなビジネスチャンスが期待できます。
そのため、「挑戦していくことを通して世の中に新たな価値をもたらしたい」など社会的意義のある事業で大きなことを成し遂げたい学生は、一度農林水産業界を研究してみることをオススメします。
この記事を参考にしてくれた学生の方々が、志望する企業から内定をもらえることを祈っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。