【業界研究】信用金庫とは?志望動機・ビジネスモデル・職種を徹底解説

【業界研究】信用金庫とは?志望動機・ビジネスモデル・職種を徹底解説

2023年8月31日更新

はじめに

皆さんが住んでいる街には、「信用金庫」はありますか?

信用金庫と聞くと、何となく銀行というイメージはあるものの、具体的な業務については知らないという方がほとんどではないでしょうか?

 

実は信用金庫は、金融業界に属してはいるものの、銀行と比較すると全く異なるビジネスモデルで運営されている金融機関です。

 

そこで本記事では、知っているようで知らない信用金庫について詳しく解説します。

 

すでに信用金庫に興味・関心がある人はもちろん、「言葉としては知っているけど、どんなことをしているのか知らなかった」という人も、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。



信用金庫とは?

信用金庫とは、街に根差した相互扶助を目的とした共同組織の金融機関です。ここで言う「相互」とは、信用金庫の利用者と会員を指します。

知らない人が意外と多いのは、信用金庫は株式会社ではないということです。

会員の出資による共同組織の非営利法人という位置づけで運営されています。

一方で銀行は株式会社として運営されており、最も優先されるべきは株主の利益という考え方です。

この点、営業範囲を特定の地域に限定し、地域発展に貢献することを目的としている信用金庫とは大きく異なることが分かるのではないでしょうか。

 

信用金庫のビジネスモデル

信用金庫のビジネスモデルは非常にシンプルで、会員から預かった預金の金利と、会員への貸し出しを行った際の金利の差、通称「利ざや」から利益を得ています。

 

「果たしてそれだけで利益を獲得できるの?」と感じる人がいるかもしれませんが、この「利ざや」は預金関連だけで発生するわけではありません。

信用金庫が提供する個人ローンなどでも発生することから、一定期間にわたりある程度の利益を獲得できることが分かります。

 

また、このほかにも「為替業務」と呼ばれる銀行口座間での振り込みや送金も信用金庫を支える業務のひとつです。



信用金庫の職種

窓口担当

信用金庫は近年流行りのネットバンキングとは異なるため、必ず店舗を設けています。

したがって、窓口での顧客とのやり取りは窓口担当者が行います。

 

入金や出金といった業務が一般的ではあるものの、口座に紐づく住所や印鑑の変更をはじめ、幅広い相談事にも対応します。

窓口数が多いメガバンクなどとは異なり、信用金庫の窓口担当は少数精鋭の気質があり、数少ない窓口担当者が地域の方の様々な相談に応えています。

 

資産運用の相談などにも対応する必要があることから、投資信託などの説明はもちろん、生命保険などの幅広い知識が求められる業務です。

融資担当

融資担当者は地域の方々の「お金を借りたい」という要望に対して、審査を行ったり、申込書類の確認を行ったりします。

 

信用金庫の融資担当は、銀行のように企業利益を追求するのではなく、「この人に融資することが地域貢献や地域の活性化につながるか」という観点で融資の可否を判断します。

 

個人の住宅ローンをはじめ、経営がうまくいっていない地元企業にも融資という方法で手を貸し、信用金庫が主導して街を盛り上げるケースも少なくありません。

事務担当

事務担当者は、窓口担当者の業務をサポートする役割を担っています。

書類などの一般的な事務処理を行うことに加え、信用金庫にかかってきた電話対応やクレーム対応なども業務として行っています。

 

窓口担当者がスムーズに会員とコミュニケーションができるよう、影で業務を支える役割だと言えるでしょう。

営業担当

渉外担当とも呼ばれ、名称通り外に出て、会員とのコミュニケーションを通じて商品の販売を行います。

 

信用金庫は大きな街だけでなく、高齢化が進んだ地域にも多数残っていることから、自宅から動けない高齢者などのもとには直接出向き、窓口と同様の対応を行います。

 

営業担当エリアは非常に狭く設定されていることから、車ではなく自転車や原付で移動している担当者がほとんどです。

企画担当

近年信用金庫内で脚光を浴びているのが、企画担当です。

 

信用金庫は、企業の利益を追求しないという点はあるものの、地域の活性化につながることであれば、どのような手段を活用しても問題ありません。

この観点から、地域に根差した新たな商品を企画するための担当者需要が急速に拡大しています。

 

特に若者の流出が激しい地域については、信用金庫ならではの商品によって、地域全体を盛り上げようとする動きも大きくなっています。

技術系

信用金庫であっても、DX化の波には逆らえません。そのため、技術系の職種の需要が急速に高まっています。

 

様々な情報を管理している信用金庫内のシステムをはじめ、スマートフォンと連動したサービスの開発や企画についても、今の時代には必要不可欠だと言えるでしょう。



有名信用金庫の紹介

ここまでご紹介している通り、信用金庫は非営利法人です。

したがって、売上高ではなく、貸出金や有価証券、固定資産など貸借対照表の資産をもとにした合計額である「総資産」が大きい信用金庫をご紹介します。

(参考:週刊エコノミスト Online 総資産トップは6兆円超の京都中央信金<全254信金ランキング付き>

 

信用金庫名総資産平均年収就職偏差値・難易度
京都中央信用金庫6,617,337百万円(2022年3月期)644万円
城南信用金庫4,634,204百万円(2022年3月期)643万円
岡崎信用金庫4,283,722百万円(2022年3月期)637万円
京都信用金庫3,560,168百万円(2022年3月期)587万円

 

なお、就職偏差値や難易度について詳しく知りたい人は、【24卒・25卒最新版】文系・理系・公務員別就職偏差値・難易度ランキングを参考にしてください。

 

信用金庫の就職難易度は、就職したい信用金庫が地元か、そうではないかということが多少影響するだろうと言われています。地域密着型のビジネスを行っていることから、地域に関する人の方がスムーズに業務を行うことができると考えられているためです。

 

もちろん地元ではない信用金庫での就職も可能ですが、「なぜこの地域を活性化したいのか」ということを説明できなければ就職難易度は非常に高くなると言えるでしょう。



信用金庫の動向

市場規模

業界規模では約1.6兆円もの規模を誇っている信用金庫。

ただし、一般的な銀行の業界規模は25.1兆円にも上ることから、銀行と比較してしまうと、決して大きい規模のように感じないかもしれません。

しかし、この点は営利目的と非営利目的の違いであることを正しく理解しましょう。

 

一方で、純利益は年々減少傾向にあり、一時期は2,000億円を下回るほどでした。しかし現在はやや増加傾向にあり、このまま利益増を目論む信用金庫は多そうです。

 

その上で、売上規模は2016年頃から一定の売上を保っていることから、純利益の変動が大きい業界だと言えるのではないでしょうか。

成長性

ご紹介した通り、売上規模で行くと毎年大きな変化は見られないことから、成長に対して圧倒的な伸び率があるとは言い難いのが現実です。

 

一方で、近年は信用金庫同士の統廃合が進んでいることから、地域によっては非常に大きな信用金庫が誕生する可能性があります。

 

なお、信用金庫には銀行のような系列やグループといった考え方はありません。

全国の信用金庫を束ねるべく、全国信用金庫協会(全信協)と信金中央金庫(信金中金)はあるものの、独自で何のしがらみもなく動ける点は、信用金庫ならではの特徴と言えるでしょう。



信用金庫の志望動機

では、信用金庫の志望動機はどのように書くと良いのでしょうか。

 

  • 自身が生まれ育った街や地域に貢献したい
  • 自身がお世話になった街や地域に貢献したい
  • 信用金庫での業務を通じて、地域貢献を行いたい
  • 信用金庫での業務を通じて、この街で暮らす人を豊かにしたい
  • 信用金庫での業務を通じて、街の商店街をもっと元気にしたい
  • 営利目的ではない形で、金融業界に携わりたい
  • 金融業界における知識を広範囲に渡って付けたい
  • 長く活用できる金融業界の知識の基礎を身に着けたい

 

1点注意するべきは、信用金庫は「会社」ではありません。

したがって、「貴社」という書き方は誤っており、「貴庫」と表記するのが一般的です。

 

また、先にもご紹介した通り、信用金庫は地域と密接に関わっていることから、「地域」というキーワードと共に、「なぜ自分はこの地域に対して貢献したいのか」という点をしっかり伝える必要があります。

 

様々な企業がある金融業界の中でも、敢えて信用金庫を選ぶのであれば、「どうしても信用金庫でなければならない理由」をきちんと説明できるのが望ましいでしょう。



信用金庫のホットニュース

信用金庫同士の経営統合

先にご紹介した有名信用金庫のように、総資産が1兆円を超える信用金庫が全国に多数存在する一方で、総資産が1,000億円を下回る信用金庫が増えています。

総額で比較すると、その金額の差がはっきりと分かるのではないでしょうか。

 

総資産が少ない信用金庫については存続のため、総資産が多い信用金庫はさらなる拡大を図るべく、信用金庫同士の経営統合が活発に行われています。

 

営業している地域が隣接している信用金庫同士で合併を行えば、単純に預金額などは大きくなります。これによって経営基盤を安定化させ、地域への安定的なサービス供給を行うことが目的となっています。

新サービスの積極的な展開

地域に根差した信用金庫は、比較的年齢層が高い顧客を多数抱えていることが多くなっています。しかし、今後の展望を考えると、幅広い世代を会員として取り入れていくことが求められています。

 

これまでのビジネスモデルに固執せず、新たな収益源を獲得していくことで、経営を安定させることに加え、新たにマイホームを建てるような若年層も会員として取り入れていきたいと考える信用金庫が増えています。

 

そこで注目を集めているのが、最新テクノロジーを活用した積極的な新サービスの展開です。フィンテックの導入や、キャッシュレス決済の対応などを通じて、より現代の生活に密着したサービスの展開を多くの信用金庫が模索しています。

 

なお、特定の信用金庫に限定した施策ではないものの、メガバンクや地銀が参加しているスマートフォンを使った少額送金サービス「ことら」では、全国170の信用金庫が連携予定です。

これにより、より多くの会員がスマートフォンを通じて信用金庫との関わりを持てるようになることが期待されています。

融資案件の難航

信用金庫のビジネスの一つである「融資」は、新型コロナウイルス感染症の影響を強く受けていると言えます。

 

新型コロナウイルス感染症発生時、多くの信用金庫が街の事業者存続のために融資を行いました。形態や利子については企業差があるものの、地域貢献を願っての融資です。

 

現在、新型コロナウイルス感染症がやや落ち着きを見せる中で、融資を受けた企業は返済フェーズに突入しました。しかし企業によっては、新型コロナウイルス感染症発生以前の水準に売上が戻らないこともあり、返済が滞ってしまっているケースが少なくありません。

 

また、これまでは融資と言えば信用金庫や銀行に限られていましたが、現在はそうとも限りません。融資を行ってくれる人をSNSで直接見つけて融資の依頼ができるほか、クラウドファンディングなどの手法が一般化したことで、むしろ「信用金庫の融資はハードルが高い」と思われてしまっている可能性があります。

 

そのため、様々なシーンで融資案件が難航している傾向があり、信用金庫にとっては辛い局面だと言えるでしょう。



まとめ

ここまで、信用金庫についてご紹介してきました。

 

信用金庫と聞くと、これまで「業務内容は銀行と同じ」と思っていた人が多かったかもしれません。しかし銀行と業務こそ似ている部分はあるものの、何のためにビジネスを展開しているのかという考え方は全く違うということを理解いただけたのではないでしょうか。

 

「とはいえ業務は一緒でしょ?」と感じるかもしれませんが、ビジネスの目的が異なれば、ビジネスにおける最終決定の判断軸が全く異なります。そのため、その軸に自身が共感できるのかどうかは、きちんと判断する必要があるでしょう。

 

「信用金庫のビジネスに対する考え方が自分と合っている」と感じる場合は、ぜひ選考を受けてみてはいかがでしょうか。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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