製薬業界へ就職したい学生必見!業界研究から試験対策まで徹底解説
2023年8月24日更新
はじめに
製薬業界は、理工系や薬学部の学生にとって魅力的な就職先の一つです。
製薬業界というと、疾患した人の治療や心身の健康維持や増進、回復のために医薬品を提供する重要な役割を果たしていますので、人の役に立ちたいと願っている人にとっては憧れの業界でもあります。
しかし、憧れの製薬業界であってもビジネスモデルや業界の特徴、そして製薬業界の動向や課題など、就職活動を始めるに当たって知っておくべき情報が山ほどあります。
この記事では、そんな製薬業界の業界分析から採用試験の対策を効果的に行うにあたって有益な情報をお届けします。
製薬業界とは?
製薬業界とは、医薬品の製造、そして販売までを手掛ける仕事をおこなっています。
様々な病気や怪我の治療に用いる医薬品を製造するだけでなく、製薬の改良や新薬の研究・開発を行なうことも重要な仕事のひとつです。
医薬品は、医師の処方箋が必要となり、薬局や病院で処方される「医療用医薬品」と、処方箋が不要で街中の薬局や郊外で見かけるドラッグストアなどで売られる「一般用医薬品」の2つに大別することができます。
医療用医薬品とは?
医療用医薬品には、以下のとおり二種類あります。
・先発医薬品:これまで世の中になかった薬効成分を持つ医薬品のこと。
「新薬」とも呼ばれる
・ジェネリック医薬品:先発医薬品の特許が切れた後に製造される医薬品のこと。
「後発医薬品」とも呼ばれる
国内医薬品市場のうち、9割程度は医療用医薬品が占めており、そのうちの9割程度を先発医薬品が占めています。
一般用医薬品とは?
一般用医薬品は、「OTC医薬品」と呼ぶことがあります。
OTCとは、Over The Counterの略で、薬局などでカウンター越しに購入できることからその名前が付いています。
医師の処方箋がなくても購入できる「OTC医薬品」は、大きく「一般用医薬品」と「要指導医薬品」に分類され、さらに一般用医薬品は服用のリスクに応じて第1類、第2類、第3類に区分されます。
これらの分類や区分によって、販売時の陳列方法や薬剤師などの専門知識を持つ者が薬の効能や副作用・注意点などを説明するなど、情報提供の方法などが細かく定められているのです。
製薬業界のビジネスモデルは?
製薬業界は、医薬品を研究・開発し、製造しながら販売している製薬会社が多数存在しています。その製薬業界のビジネスモデルは次のとおりです。
先ず医療用医薬品についてですが、大半は製薬会社から医薬品卸売会社を経由して医療機関や薬局、薬店に提供されます。
また、少数ではありますが、卸を通さずに製薬会社から直接医療機関や薬局に提供するケースもあります。
また、一般用医薬品についても医療用医薬品と同様に、一定数は製薬会社から医薬品卸売会社を経由して薬局・薬店に流通し、残り分は製薬会社から直接薬局・薬店に流通します。
医薬品が提供される各段階において「販売料」として利益が発生することになります。
製薬業界の上位企業とは?
ここで、日本国内の製薬会社の売上高の上位5位までの企業を見ていきましょう。
先ずは、上位企業の規模感を下表で確認してください。
武田薬品工業
武田薬品工業は、創業から240年以上の歴史があり、売上高も3兆円を超えており、他の製薬会社と比べても圧倒的な売上高を誇り、医療用医薬品では国内No.1のシェアを占めています。
2019年には、欧州のシャイアを買収したことで海外売上高は大きく拡大し、現在では海外売上高の比率が8割を超えています。
アステラス製薬
アステラス製薬は、国内製薬会社ではトップ2位の売上高を保ち、山之内製薬と藤沢薬品工業が2005年に合併してできた企業です。
主力品の特許切れによって後発品が発売され、国内シェアは下がっていますが、海外の売上比率が約77%と高く、アメリカや欧州における売上を伸ばしています。
第一三共
第一三共の売上高は、1兆円を超えており、新薬やワクチン、ジェネリックからOTC医薬品まで4つの事業を展開しています。
新薬事業を中心に行っていますが、OTC医薬品の「ロキソニン」が有名です。
中外製薬
中外製薬は、1943年に設立された老舗企業です。
スイスの製薬会社で抗がん剤を中心としたロシュ製品の国内独占販売を行うことで、がん領域の製品では、国内No.1のシェアを持つ企業となっています。
大塚ホールディングス
大塚ホールディングスは、ポカリスウェットやカロリーメイトなどが有名ですが、製薬会社として世界中で治療薬の販売を行っています。
トータルヘルスケアの実現を事業の中核に置き、医療関連事業と日々の健康維持・増進をサポートする関連事業を行なっています。
製薬業界の動向と今後について
超高齢化社会、医療費増加、新型コロナウイルスによる病床の逼迫など、製薬業界だけではなく医療の現場そのものの危機が懸念される一方、AIやロボット技術など最新テクノロジーを駆使して製薬業界はどう変わるのか?今後の動向について見ていきましょう。
薬価引き下げによる海外展開
薬価とは、薬を売る時の価格のことです。
医療用医薬品の公定価格である薬価は、原則、2年に1回、4月の診療報酬改定時に価格の見直しが行われます。
新薬開発は、年々難易度が高くなるうえに膨大な開発費を必要とする一方、薬価が引き下げられたため、国内市場での収益維持が難しくなっています。
そこで大手製薬会社は、国内での市場拡大を期待できないため、海外での事業拡大を積極的に図っています。
製薬会社は再編・統合・買収の繰り返し
さらに、生き残りを掛けて日本国内の製薬業界は、再編・統合・買収が繰り返されています。
合併や統合を繰り返す理由は、国内の社会保障費抑制の動きがあります。
近年では、少子高齢化の影響で医療費が増大し、社会保障費の増加に歯止めが掛かりません。そのため薬価の引き下げやジェネリック医薬品の普及が推進されています。
しかし、ジェネリック医薬品が普及すると、新薬の販売が少なくなり、新薬メーカーは経営が厳しくなるなど、製薬業界にとっては厳しい状況が続いています。
AI技術の活用
新薬の開発には、長い歳月と巨額な開発費が必要になります。
そのため、世界の医薬品メーカーでは、長期間に莫大な投資が維持できる外資系のメガファーマだけしか新薬の開発ができませんでした。
このような状況に対抗するため、国内の大手製薬会社はAIを使った新薬開発を進めています。
また、新薬の臨床試験では、綿密な実施計画の立案が必要であるため、膨大な時間と熟練者のノウハウが必要でした。そこでも最新テクノロジーを活用して自動化を推進しています。
このように製薬業界では、研究コスト削減や開発効率の向上のために最新の技術が活用されているのです。
製薬業界の職種毎の仕事内容について
続いて、製薬業界の職種と業務内容について解説します。
製薬業界は主に「研究職」「開発職」「MR(営業)職」と、3つの職種に仕事内容が分けられます。
研究職
研究職は、その名前のとおり「研究」することがメインになります。
新しい薬を合成するなどの「実験」や医薬品の有効成分の「分析」することなどが主な業務となります。
大手の製薬会社の研究職になるためには、理工系の修士・博士を取得するなど大学院を卒業するか、薬学部を卒業していることが前提条件になります。
主な研究内容としては、医薬品の基礎研究*から非臨床試験**まで幅広い研究を行います。
植物や動物などから天然素材を抽出し、様々なテクノロジーを駆使して化合物の発見に繋げています。
*基礎研究とは、医薬品の元となる化合物を発見し作り出す研究のこと
**非臨床試験とは、新薬を人間に投与する前に、動物等へ投与して有効性・安全性を確かめる試験のこと
開発職
開発職では、臨床試験などを通して医薬品の開発をすることが主な業務です。
患者さんに発売前の医薬品を実際に投薬して臨床試験をおこなうなど責任がとても重い仕事です。
医療関係者だけではなく、患者さんとシッカリとコミュニケーションを取ると共に信頼を得ることも必要になるなど、能力だけではなく人間性も重要です。
また、海外の論文やデータを集めて研究する必要も多く、英語でのやりとりも頻繁に発生するため英語力も必要となります。
従って、研究職と同様に理工系の修士・博士など大学院の卒業が必須で、薬学部卒の学生も対象となります。
MR(営業)職
MRとは製薬会社の営業担当のことで、正式名称は「Medical Representatives(医療情報担当者)」を略してMRと呼ばれています。
MRになると病院やクリニックに訪問して、医師に自社の医薬品に関する情報を継続的に提供することが主な業務となります。
医薬品にもそれぞれ成分が違えば、用法・用量に違いもあり、特徴なども異なります。
そのため、医薬品の正確な情報を医師に提供して、患者さんに適した最良の医薬品を処方してもらうことがMRの役割です。
製薬業界で必要な資格やスキルとは?
製薬業界には主な職種が3つあると解説しましたが、職種ごとに必要な資格やスキルがありますので、それぞれ見ていきましょう。
研究・開発職で求められる資格その1.薬剤師
薬剤師は、資格を取得する過程で薬の知識を身につけます。
また、国家資格でもありますから、難しい試験にも合格したという証でもあります。
つまり、「薬剤師の資格を取得している=薬の知識が一定レベル以上身についている」ということです。
選考に必須というわけではありませんが、製薬会社で研究職に就くためには、必要最低限の資格と言えるでしょう。
研究・開発職で求められる資格その2.修士号
製薬業界の研究・開発職に就くためには、「修士卒」という最低ラインが暗黙の了解として求められています。
「能力があれば、学歴なんて…」と思う人も多いと思いますが、事実各社の応募資格には「修士卒」となっている製薬会社が多いので、あなたが希望する製薬会社の募集要項をみて確認しておきましょう。
MR(営業)職で求められる資格
製薬会社のMR(営業)職として働く場合、技術系職種のような高い専門知識は問われません。
学歴についても「大卒以上」が条件となる場合がほとんどですので、文系学部からでも応募は可能です。
また、資格に関しても、特別な国家資格などは求められません。
ただし、MRには「MR認定試験」という業務内容に関連する専門資格がありますので、MRとして配属された場合、このMR認定試験を受験してMRとしての知識を磨いて資格取得を目指しましょう。
その他
製薬業界で活躍するためには、高い語学力も求められます。
研究・開発のために海外の論文や資料・データをリサーチして翻訳して、活用するためには、語学力が必要です。
今後、製薬会社が海外へ事業を展開する場合には、語学力は必須になります。
在学中に語学を学び、スキルを高めておくといろんな面で有利に働くことでしょう。
製薬業界で求められる人物像とは?
このような状況にあっても、常に人気企業の上位にランキングされる製薬会社で「求められる人物像」とはどのようなものなのでしょうか?
各社の採用ホームページをみれば「求める人物像」がそれぞれ掲載されています。
また、採用試験の回数や就職偏差値をまとめた表を作成しましたので、自分の性格や思考、行動特性などを照らし合わせて、どの製薬会社で活躍できるのかチェックしてみましょう。
就職偏差値については、以下の記事から引用しました。
【最新版】24卒・25卒就活偏差値・難易度ランキング | ジョーカツキャンパス (jo-katsu.com)
まとめ
製薬業界は、病気や怪我の治療や心身の健康維持を目的とした医薬品の提供を通じて、社会に必要不可欠な役割を果たしています。
製薬業界は、法律や条例などによる厳格な規制で統制され、医薬品に関しても価格や品質、製造法で安全性などに関する様々な要件を満たす必要があります。
また、製薬会社は、新薬の研究開発に多大な時間とコストを投じる一方で、成功する確率は非常に低いというリスクを抱えています。そのため、製薬業界を目指す学生にとっても製薬業界が抱える課題や今後に向けて背負って立つという覚悟が必要になってきます。
この記事を通じて、製薬業界の業界分析を進めると共に、製薬業界の中でどの様なキャリアデザインを描いていくのかを真剣に考え、チャレンジする必要があります。
夢の実現に向けて今からでも出来る準備からスタートして、就職活動を乗り切ってください。