【業界研究】EAP業界とは?志望動機・ビジネスモデル・職種を徹底解説

【業界研究】EAP業界とは?志望動機・ビジネスモデル・職種を徹底解説

はじめに

EAP業界とは、近年注目を集めている業界の1つです。労働者のメンタルヘルスを健康的に保つためのサポートを行う分野であり、企業の生産性にも大きく影響してくることから、EAP導入に動く企業が増加しています。

 

今回は、今後の需要の高まりも見込まれるEAP業界について、業界研究をしていきましょう。業界の概要や代表的な職種、大手企業のデータ、今後の業界の動向などを詳しく解説します。



EAP業界とは?

EAPとは「従業員支援プログラム(Employee Assistance Program)」を意味する言葉です。ストレスや悩みなど、従業員のメンタルヘルスをケアするプログラムであるEAPは、1960年代にアメリカで急速に広がり、現在日本でも注目を集めています。EAP業界はこのEAPの提供・支援など、事業所がEAPを導入するためのサポート的な役割を担う業界のことです。なお、EAP業界に属する機関・会社には次のようなものがあります(一例です)。

EAPサービス提供会社

 

EAPサービス提供会社とは、EAP関連のさまざまなサービスを事業所に提供する企業を言います。具体的にはストレス診断やEQ診断など従業員向け各種診断、専門家による相談・カウンセリング、メンタルヘルス研修、求職者向けの復職支援プログラム、ハラスメント対策などの提供・導入支援を行います。

 

医療機関

 

心療内科・精神科など、メンタルを起因とする不調・疾患に関し、専門的な知見を持つ医師・技術者などを事業所とつなげ、EAPの充実を支援します。事業所から直接依頼を受けるパターンや、EAPサービス提供会社と提携し、会社を通じて業務の依頼を受けるパターンなどがあります。

 

弁護士事務所

 

EAPの領域には、法律が関わる場面も多くあります。例えばハラスメントに悩む従業員の法律相談などが考えられます。また、従業員だけでなく、事業所向けの業務もあり得ます。EAPを導入する際、法的な観点から確認し、アドバイスする業務などです。



業界のビジネスモデル

EAP業界では、サービスを提供するクライアントから、サービスの利用料金を受け取り、収益を得るモデルがほとんどです。これは、前述したEAPサービス提供会社・医療機関・弁護士事務所など、どの形態の企業・機関にも当てはまります。なお、EAPに関しては、独立行政法人 労働者健康安全機構(厚生労働省所管)が「団体経由産業保健活動推進助成金」を給付しています。これは、事業主団体が傘下の企業などに産業保健サービスを提供する場合に、その費用を一部助成するものですが、支払われるのはEAPの提供機関ではなく、EAPを実施する事業所です。

 

参考:助成金(独立行政法人 労働者健康安全機構)

当該業界の職種

ここからは、EAP業界に見られる代表的な職種例を見ていきましょう。各職種の業務内容や、働くために必要なスキルなどを紹介します。

産業医

 

産業医は、医師の中でも事業の場において労働者が健康的に働けるよう、専門的な助言・指導を行う職種を言います。事業所で直接産業医を雇用するのではなく、医療機関などに勤務している医師に業務委託を行うケースがほとんどです。従業員の相談・診察・面接対応の他、事業所のEAPプログラム・制度へのアドバイスや安全衛生委員会への参加など、多角的に事業所のEAPに関わります。

 

医学の専門的な知識・スキルはもちろんのこと、相談相手の話を適切にヒアリングしたり、助言・指導の内容を相手にわかりやすく説明したりするコミュニケーション能力も不可欠です。

 

精神科医

 

精神科医も産業医と同じような役割を努めます。ただし、産業医が事業所の労働者の健康管理を目的に働くのに対し、精神科医はメンタルに不調をきたしている患者として診察対応を行います。なお、例えば労働者がメンタルの不調や疾患などにより休職をした場合、休職者を定期的に診察し、復職までのサポートや復職可能かの判断をするなどの業務もあります。

 

産業カウンセラー

 

産業カウンセラーは、事業所でカウンセリングを行う心理カウンセラーです。その目的は産業医と類似し、労働者が健康的に快適に働ける環境をつくるサポ―トです。心理学の専門的知識を使い、労働者にカウンセリングを施し、問題解決に向けた支援をします。産業カウンセラーは外部に業務委託するケースと、自社で雇用するケースの両方が見られます。

 

心理学やカウンセリングに関する専門的な知識・スキルの他、相談者が自分の悩みを積極的に打ち明け、その内容をしっかりくみ取れるようなコミュニケーション能力も求められる仕事です。

 

心理士

 

心理士は心理業務を行う職種です。心理検査・カウンセリング・面接などを行い、相談者の心理状態を分析するとともに、問題が生じている場合は心の健康を取り戻せるよう、支援していくことが主な業務です。なお、心理士には複数種類の名称が存在します。国家資格の「公認心理士」、公益財団法人 日本心理学会の資格を取得している「認定心理士」、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の資格を取得している「臨床心理士」などが主です。心理士として働くためには、心理業務に関する専門的な知識・スキルを学び、資格の取得が必要です。

 

精神保健福祉士

 

精神保健福祉士は精神保健福祉士法に基づく国家資格を得て働く職種です。精神疾患・精神障害など、精神に問題を抱える人が、社会生活を送れるよう支援することが主な業務になります。EAPとの関わりは、例えば精神疾患により休職した労働者に対し、復職を目指す上でのサポートを行うなどが考えられます。

 

精神保健福祉士として働くためには資格取得が必須で、加えてコミュニケーション力や関係各所と連携する調整力、タフなメンタルなども求められる仕事です。

 

キャリアコンサルタント

 

キャリアコンサルタントは、相談者のキャリア形成をサポートする職種です。2016年からは国家資格となりました。EAPにおいては、事業所に対してEAP導入や運用のための環境づくりなどに関し、コンサルティングを行うことが主な業務です。資格取得の他に、提案を行うための分析力や判断力、論理的思考力、カウンセリングスキルなども求められます。

弁護士

 

法律の専門家として、法的な観点からアドバイス・指導をしたり、クライアントの代理人として法律業務を行ったりするのが弁護士です。前述した通り、EAPでは弁護士が事業所の労働者、または事業所に対し、法律の知識をもって阿ポートを行うことがあります。弁護士として働くためには、資格取得が難しい士業の中でも最難関と言われる弁護士試験に合格し、実務を積みながら勉強し弁護士の資格を得なければいけません。



大手企業紹介

それでは、EAP業界の大手各社の基本的な情報を見ていきましょう。

 

会社名売上高平均年収就職偏差値・難易度社風
保健同人フロンティア29億円400~600万円明るく元気な雰囲気
ダイヤル・サービス25億円400~600万円人柄が良い社員が多い
ティーペック56億円450~800万円風通しが良く満足度が高い
アドバンテッジ・リスクマネジメント64億円500~600万円挑戦しやすい・働きやすい

 

「株式会社保健同人フロンティア」は、EAPやメンタルヘルスケア、各種研修など、企業の環境改善・活性化につながる事業を展開している企業です。EAPは、専属カウンセラーのカウンセリングサービス提供が主となっています。2022年10月にヒューマン・フロンティア株式会社と株式会社保健同人社が合併し、現在の企業体制になりました。「暮らすだけで『Well-being』を実感できる社会へ」をミッションに掲げており、社会に生きる人のウェルビーイングの充実を目指しています。合併前は、明るく活気のある職場という評判も見られました。

 

「ダイヤル・サービス株式会社」は、資格を有した専門カウンセラーによる相談サービスの提供を行っている企業です。多様な専門分野に対応できる幅の広さが大きな強みと言えます。企業理念は「誰かのiをえがおに変える」。各業界の大手など約1万の法人の導入実績を持っています。社員に人柄の良い人が多く、働きやすい空気感があります。福利厚生がしっかり整っている他、オンオフがつけやすい環境も特徴です。

 

「ティーペック株式会社」は、体・心両面の健康のサポートサービスを展開する企業です。「日本の新しい健康インフラになる」というビジョンのもと、いつでも健康相談ができる窓口・カウンセリング、職場改善コンサルティング、ヘルスリテラシー向上研修、ハラスメント予防・対策プログラムなど、多彩なサービスを展開しています。若手も意見を発信しやすい風通しの良い社風があり、福利厚生なども充実していて、社員の満足度が高めです。

 

「アドバンテッジ・リスクマネジメント株式会社」は、EAP業界においてトップシェアを誇る企業です。売上高は近年連続して増収中であり、2022年度は過去最高の売上高を記録しました。「企業の元気を創り出す」という企業理念のもと、メンタルヘルスケアや健康経営支援、エンゲージメント・生産性向上、休業者・復職者支援、人材育成・研修プログラムなど、EAP分野に関し非常に幅広く事業を展開しています。

 

社員の自律を重んじる社風があり、年代に関わらずチャレンジの機会を得ることができます。また、休暇制度や福利厚生などが充実しており、働きやすい環境も整っているようです。ちなみに、アドバンテッジ・リスクマネジメントは2021年までの新卒採用実績データがあり、7~14名ほどを例年採用していたようです。

 

なお、EAP業界に関しては、近年日本でも注目が高まってはきているものの、まだ広く浸透しきっているとは言えない状況です。そのためか、ここに挙げた大手各社の就職偏差値や難易度についてはまだ情報が少なめです。新卒採用が実施されるかどうかから、情報を集め選考対策を立てる必要があります。

 

【24卒・25卒最新版】文系・理系・公務員別就職偏差値・難易度ランキング

 

当該業界の動向

先に触れた通り、EAPは日本でも注目を集めている分野ですが、まだ広く浸透しきっているとは言えない状況にあります。ただし、EAP導入で期待できる、従業員の意欲向上や事業の生産性アップに興味を持ち始める企業も増えています。従って、今後はEAPの需要がさらに高まるとともに、EAP業界の重要性も高まっていくと考えられます。

 

志望動機

ここからは、EAP業界で採用を獲得するための志望動機として、アピールしやすい例を紹介します。EAP業界の役割や事業内容と自分の経験・希望を上手にリンクさせることがポイントです。

辛い精神状態を克服した経験がある

 

例えば今までの人生の中で、精神状態が辛い時期を経験したことから、志望動機に結びつけていくのも1つです。自分が辛さを克服できた要因が、周りからの支えや専門家からのサポートであれば、よりEAP業界に絡めて動機をアピールできるでしょう。辛いメンタル状態を経験したからこそ、今度は労働者や事業所に寄り添い、自分がサポートをする立場になりたいと述べると一貫性が生まれやすくなります。

働く人の役に立ちたい

 

EAPは自分と同じ、労働者の心の健康を守り、快適な職場環境づくりを支援するためのものです。同じ労働者の立場から、働く人の役に立ちたい、快適な職場整備を追及していきたいという志望動機もありでしょう。

 

業界内の各企業が多様なサービスを発表

現在のところ、EAP業界全体に影響する大きなニュースは特別見られませんが、業界内の各企業からさまざまなサービスが随時リリースされています。例えば株式会社フェアワークのオンライン診療サービス「フェアクリニックオンライン」、株式会社Smart相談室のオンラインカウンセリングサービス「Smart相談室」などのリリース・レポート情報が見られました。また、現在急速に進化を遂げているAIを利用した、キリハレ株式会社の「KIRIHARE AI & HR」なども注目です。多様なサービスのリリースで競争が業界内の競争が激しくなれば、市場規模の拡大なども見込まれます。

 

参考:オンライン診療で【バーチャル社内診療所】を展開する、フェアクリニックオンラインをプロデュースしました(PR TIMES)法人向けオンラインカウンセリングサービス「Smart相談室」、導入企業累計100社突破(PR TIMES)生成AIを活用した「KIRIHARE AI & HR」をリリース | メンタル不調やハラスメントに対する早期対策としてAIカウンセリングとAIハラスメント診断を提供します。(PR TIMES)



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