外食産業の就活攻略法!業界の特徴と今後の見通しも解説
2024/8/23更新
はじめに
外食産業は多くの学生に人気がある一方で、コロナウイルスの影響で経営難となる店舗も増えて就職に不安がある方も多いかと思います。
しかし、現在はさまざまな施策展開によって黒字転換した企業も多く、今後もさらに成長が見込まれる業界です。
中には就活難易度が高い企業もありますが、多くのライバルと差別化して内定を獲得するには志望動機の作り込みが重要なカギとなります。
そこで本記事では、外食産業の動向や課題、今後の見通しから就活を成功させるポイントまで徹底解説します。
以下のようなお悩みを持つ学生は、ぜひ参考にしてください。
- 外食産業に興味があるけど、将来性が不安…
- 具体的にどんな仕事をするの?
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1. そもそも外食産業ってどんな業界?
まず外食産業と聞いて、どんなお店を思い浮かべますか?
ファミレスとか、ファーストフード店とか、居酒屋でしょうか。
実は外食産業といっても幅広くて、上記以外に学校給食、社員食堂、病院、保育所給食、宿泊施設、喫茶店、料亭・バーなど、家庭外で食事を提供するすべてのサービス業を指します。
市場規模はというと、一般社団法人 日本フードサービス協会の令和2年外食産業市場規模推計 によると以下のとおりです。
(単位:億円)
2018(平成30年) | 2019(令和元年) | 2020(令和2年) |
257,342 | 262,684 | 182,005 |
そもそもは25兆円規模の市場でしたが、新型コロナ感染拡大により消費者の行動自粛に加え、政府の緊急事態宣言発令、自治体の営業時間短縮要請、海外のインバウンド需要の減少などが相まって、2020年は前年比30.7%減の18兆円という結果になりました。
ちなみに規模感でいうと、業界リサーチによれば銀行が24兆円、電力が20.9兆円、スーパーが19.3兆円、ITが16.4兆円なので、なかなかの規模感です。
かなりの売上減少が経営を圧迫しているため、外食産業はやむを得ずテイクアウトや宅配といったいわゆる中食に手を広げたり、事業を海外展開するなど販路拡大をせざるを得ない状況に陥っています。
外食産業の中でも特に人気のファーストフード業界について知りたい人は、以下の記事もぜひ参考にしてみてください。
2.外食産業の売上ランキング
続いて、外食チェーンの売上ランキングトップ10をご紹介します。
順位 | 企業名 | 売上高(百万円) |
1位 | ゼンショーHD | 965,778 |
2位 | 日本マクドナルドHD | 381,989 |
3位 | すかいらーくHD | 354,831 |
4位 | FOOD&LIFE COMPANIES | 301,747 |
5位 | コロワイド | 241,284 |
6位 | トリドールHD | 231,952 |
7位 | くら寿司 | 211,405 |
8位 | 吉野家HD | 187,472 |
9位 | サイゼリヤ | 183,244 |
10位 | クリエイト・レストランツ・HD | 145,759 |
売上ランキングのトップは、すき家やなか卯といった外食チェーンを傘下に持つゼンショーHDでした。
そのほかにも人気のレストランやファーストフードも続き、日本に全国展開している大手チェーンが名を連ねています。
3. 外食産業が直面する4つの課題
外食産業の課題は大きく下記の4つです。
- 市場の縮小
- ITの活用
- 食材の価格高騰
- 慢性的な人手不足
1つずつ見ていきましょう。
①市場の縮小
新型コロナの影響により消費行動に変化があり、中食への流動化など全体的に外食の機会が減少していることから市場規模が縮小傾向です。
長期的にみても、少子高齢化にともない日本の人口が減少していくことや不況により市場規模が縮小していくという見方もありますので、この環境変化にどのように適応していくかが今後の鍵となります。
②ITの活用
今後の外食産業は従業員の労働負荷を軽減させるために、あらゆる方面でITを導入する必要があります。
たとえば、仕入れや予約、顧客情報管理、レジの自動化、受付のロボット化など業務をサポートするITサービスが続々と登場していますが、将来的にはフロアーの無人店舗なんかも誕生しそうですね。
「あれ?飲食業界って人手不足という課題はないんですか?」
実は新型コロナの影響で現在は人手不足どころか、人手過剰の様相を呈しています。
下記は帝国データバンクの特別企画:人手不足に対する企業の動向調査(2020年4月)の資料ですが、飲食店は正社員・非正社員ともに人手過剰のランキング2位に入ってます。
とはいえ、コロナ明けに外食機会が増えれば、また人手不足に陥る可能性がありますので、今のうちにIT化を進めて少人数で店を回せる体制をとることが命題です。
③食材の価格高騰
食材は気候の影響を受けやすく、安定した価格での販売が難しいようです。
さらに石油などのエネルギー価格上昇にともない、油や野菜類など軒並みすべての食材の物価が上昇しており、原価が経営を圧迫しています。
外食産業の場合、店舗家賃や人件費、水道光熱費が固定費としてのしかかってきますので、変動的な食材費が高騰するとダイレクトに経営数字に響くため、やむを得ず提供しているメニューの値段を引き上げる方向に動きます。
価格上昇で客足が遠のき、売上が減少する可能性もあるので、どのような施策を講じていくのかが今後の課題です。
④慢性的な人手不足
外食産業において「慢性的な人手不足」は深刻な課題となっています。
主な要因としてはまず、労働条件の厳しさが挙げられます。
長時間労働や休日出勤が多く立ち仕事がメインになるため、必然的に体力的な負担も大きいです。
さらに給与や待遇が他業種と比べて低いことから、若年層や求職者にとって魅力が乏しく、人材が集まりにくい状況にあるのも大きな課題と言えるでしょう。
このような状況を改善するために、業界全体での働き方改革や、人材確保のための待遇改善、さらには自動化やIT導入による業務効率化が求められています。
4.外食産業の今後の見通し
外食産業の課題に対する今後の見通しについて解説します。
積極的なM&Aを推進
外食産業では、企業の競争力を強化するためにM&A(企業の合併・買収)が積極的に行われると予想されます。これにより、経営資源やノウハウの共有が可能となり、新たな市場や顧客層へのアクセスが広がります。
また、規模の拡大により、原材料調達や物流などのコスト削減も期待されます。
特に、業界再編が進む中で生き残りを図る企業にとって、M&Aは重要な戦略となるでしょう。
海外に店舗を展開
国内市場が成熟する中、外食産業は成長のために海外展開を加速しています。
特にアジアや新興国市場では、日本食や高品質なサービスが人気を集めており、大きな成長機会があります。
海外での店舗展開は、ブランドの国際的な認知度向上や収益基盤の強化につながります。
ただし、文化や市場の違いへの対応が求められるため、現地ニーズに応じた柔軟な戦略が重要です。
持ち帰り・宅配事業の増加
コロナ禍を機に、持ち帰りや宅配サービスの需要が急増しました。
この動向は今後も続くと予想され、外食企業はこれらの事業を強化しています。
自宅での食事のニーズが高まる中、メニューの多様化や配送サービスの向上が求められます。
特に、効率的な配達網の構築や、オンライン注文システムの整備により、顧客満足度を高める取り組みが重要です。
ITサービスによる業務効率化
人手不足や業務の効率化を背景に、外食産業ではITサービスの導入が進んでいます。
例えば、注文管理や在庫管理の自動化、AIを活用した需要予測、顧客データを基にしたマーケティングなどが挙げられます。
これにより、コスト削減やサービスの向上が図られ、従業員の負担軽減にもつながります。特に、ITの活用は、競争力の強化と業績の向上に寄与する重要な要素です。
時短勤務制度の導入
労働環境の改善や人手不足への対応策として、外食産業では時短勤務制度の導入が進んでいます。
従業員の働きやすさを重視することで、離職率の低下や採用の強化が期待されます。
また、多様な働き方を提供することで、ワークライフバランスを重視する若年層や育児・介護中の人材の確保にもつながります。
時短勤務制度は、従業員の満足度向上と企業の持続可能な成長に寄与する重要な施策です。
5. 外食産業の主な仕事内容
外食産業は大きく7つの仕事に分けられます。
- ホールスタッフ
- 店長
- スーパーバイザー
- バイヤー
- 店舗開発
- 商品開発
- 本部スタッフ
1つずつ説明しましょう。
①ホールスタッフ
店舗に来店するお客様の接客がメインです。
コミュニケーション能力が問われる仕事ですが、新人研修を兼ねて全新入社員にホールを経験させる企業もあります。接客スキルだけでなく、メニューを覚えることや現場の雰囲気を感じることができる貴重な体験を積めます。
②店長
店舗を運営する現場の責任者です。
ホールスタッフをまとめる統率力や人間力も問われます。パートやアルバイトを採用したり、新人教育をする場合もあります。
ホールスタッフよりも年収が高く、店舗経営のノウハウも身につけられます。お客様の声に耳を傾けたり、時にはクレームに対応したりしてスムーズな運営に取り組みます。
③スーパーバイザー
複数の店舗を担当し、円滑な店舗経営のためのアドバイスや指導を行います。
主に店長とのコミュニケーションが多く、指導力や提案力が要求されます。
④バイヤー
商品の原材料の買い付けを行う職種です。
国産野菜を生産する契約農家を訪れたり、価格交渉なども行うと同時に、企業が求める材料の仕入れ先を開拓したりします。ときには生産者と共同で原材料の開発なども行います。
限られたコストや期間でいかに効率的に仕入れられるか、経験と調整力が問われます。
⑤店舗開発・マーチャンダイザー
調査に基づいて出店計画などを行います。
新規出店では地域の特性から、どのような場所に出店すべきかを調査したり、ニーズに基づいて店舗の大きさや内装などを検討します。
近年はアメリカやアジアに出店する企業も増えてきましたので、海外のトレンドに詳しい人や語学力も求められます。
⑥商品開発
時代のトレンドを読んで、より売れる商品メニューの開発を行います。
アイディアを形にする発想力が求められる仕事で、価格なども踏まえ周囲を納得させる提案力が必要になってきます。
外食業界では季節やイベント等も考慮し、お客様に選ばれるメニュー作りを日頃から考えていかなければなりません。
⑦本部スタッフ
チェーン店の本部などで総務や事務、勤怠管理などを行います。
会社の窓口となってさまざまな対応が必要となり、お客様と対面で接するよりも取引先企業やマスコミ、株主といった社外関係者と応対する場面が多いです。
6. 【安い?】外食産業の平均年収を公開
外食業界の平均年収はマイナビAGENTの調べでは375万円で、サービス関連業界の中で見ると中程度の金額となっています。
外食産業 | メーカー 食品 | 消費財・アパレル・宝飾・流通・サービス |
375万円 | 439万円(▲64万円) | 347万円(+28万円) |
年齢 | 平均年収 | 男性平均年収 | 女性平均年収 |
20代 | 349万円 | 374万円 | 317万円 |
30代 | 434万円 | 439万円 | 402万円 |
ただし、大手外食企業で昇進が早ければ、高収入のチャンスも期待できます。
また、食事手当(まかない)や住宅手当(補助)、家族手当、エリアごとに支給されるロケーション手当などを含めると毎月数万円〜10万円以上が上乗せされますのでバカにできないフリンジですね。
入社前に諸手当や福利厚生をチェックしておきましょう。
7. 外食産業はブラック?
厚生労働省は「ブラック企業」について定義していません。
- 労働者に対して極端な長時間労働やノルマを課す。
- 賃金不払い残業やパワハラが横行するなど、企業全体のコンプライアンス意識が低い。
- このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う。
厚生労働省が発表している令和2年上半期雇用動向調査によると、宿泊業・飲食サービス業の離職率は15.3%、入職率は12.4%で、入れ替わりの激しさは全産業トップクラスです。
この数値だけを見ると、辞めるのを前提に大量採用し、予定通り大量に退職するので、また大量に採用するという悪循環がみてとれますね。
とはいえ、コロナ禍の数字であることや、大企業から個人店までを含んだ数値であることから、すべての会社がブラックとは言い難いですね。
上場している会社であれば当然株主がいますので、コンプライアンスのチェックが厳しく、法律に抵触するような仕事のさせ方は表立ってできませんよね。
基本的に企業は予算を決めて事業を運営しますが、法を犯してまで最低賃金以下で予算を組むことは考えにくいです。
それではなぜ外食産業がブラック企業のやり玉に挙げられるのか?
理由は大きく2つあって、1つ目は相対的に見えやすいからです。
基本的に店舗が少数の正社員と大多数のパートやアルバイトで構成されていて、働く人間への待遇や労働環境などが他の産業と比べて外から見えやすく、白か黒か分かりやすい側面はあるとは思います。
もう1つは店長の裁量権が大きいので、店長の能力によって売上から従業員のシフトまでもが変わり、店長の能力が低い場合は従業員にそのしわ寄せが来る結果、ブラックになることがあります。
休みが取りにくいとか、残業が多いとか、そういった差異は店長の管理能力に左右されるウエイトが高いです。
業績が低いと本部から売上アップのノルマを課せられますし、人件費圧縮の要請がかかります。
そうなると店長は限られた予算内で店舗運営をしなければならないので、当然昇給はできませんし、人員ギリギリで店を切り盛りする結果、休みがとれなかったり、不足する人員の穴埋めの残業が発生したりします。
逆に業績がいい場合は売上が伸びて、利益をスタッフに還元し、モチベーションが高まり、お客様へのサービスや業務の流れが活性化します。
また業績だけでなく、企業情報をきちんと知ることは大切です。
ホワイトな会社なら、店舗数から年間の出店スピード、企業の成長段階などを公開しています。
その上で、1社だけでなく、複数の会社を比較検討してみるとよいですね。
8. 外食産業の就活を成功させるための志望動機のポイントと書き方(例文あり)
それでは外食産業を受けると決めた人向けに志望動機のポイントについて解説していきます。
刺さる志望動機のポイント
外食産業の志望動機のポイントは他の業界と同様に以下の3つをおさえる必要があります。
- なぜ外食産業なのか?
- その中でもなぜその会社なのか?
- あなたを採用するメリットは?
この3つを上手にアピールできれば、説得力のある志望動機が完成しますし、逆にこの中のいずれか1つでも欠けると、信憑性を損ねます。
構成としては、以下のステップを踏んでください。
【ステップ1】結論(端的に)
【ステップ2】具体的には(結論を下支えするエピソードや理由)
【ステップ3】入社後の活躍イメージ
とはいえ、例文がないとイメージしづらいと思います。
次の章で例文を交え解説を加えますね。
刺さる志望動機の例文
「日本食を東南アジアに浸透させたい」という私の夢を実現できると考え、貴社を志望しました。
大学2年生から1年間、マレーシアの大学に留学し、現地および東南アジアを旅行するなかで、ローカルの人々が日本食のおいしさに感動している様子を目の当たりにし、日本食をもっと多くの人々に知ってもらうために自分が何か貢献できないかと考え続けてきました。
東南アジアにおいて日本食のお店は存在するものの、そもそも店の存在を知らなかったり、少し値段が高くて東南アジアの人々にとって敷居が高い現状にあります。
貴社には海外事業がありますし、原材料の調達から店舗販売まで独自のシステムがあり、安全でおいしい「食」をリーゾナブルな価格で提供できるノウハウがあります。
東南アジアにマーケットを展開している貴社でなら、私の夢を実現しながら貴社の発展に寄与できると考え、貴社を志望しました。
いかがでしょうか?
結論で「日本食を東南アジアで浸透させたい」という夢を端的に語っています。
それを補足する形でマレーシア留学中の原体験を添えて説得力を高めています。
加えて、この会社にしかない独自性(東南アジアのマーケット展開×独自の運営ノウハウ)を挙げて、この会社じゃなきゃダメな理由を伝えています。
最後に「自分の夢の実現」と「会社の発展」が直結することをアピールすることで、具体的な活躍イメージが想起できますので、人事が「ぜひ会ってみたい、話を聞いてみたい」と思わせるような志望動機に仕上がっていますね。
志望動機の書き方についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
おわりに
本記事では「外食産業って大丈夫なの?」と不安に思っているあなたのために外食産業が抱える課題からブラックなのかどうかまで解説してきました。
外食業界は市場の縮小や食材価格の高騰などの課題もありますが、その課題を解決するための施策によって今後大きな成長が期待できる業界でもあります。
またひとえに「外食業界」といってもさまざまな仕事があるので、自己分析などを通じて自分がどんな仕事に就きたいのかを検討してみましょう。
また今回ご紹介した志望動機のポイントをふまえれば、ライバルと差別化した魅力的なエントリーシートが作成できます。
面接官の印象に残るエントリーシートで、選考通過率を上げて内定を勝ち取りましょう!