新卒採用における課題発見の重要性|解決に有効な選考プロセス設計とは?
2020年7月25日更新
はじめに
昨今の不安定な社会情勢により採用自粛を余儀なくされる企業が増えていますが、
新卒採用における課題は今に始まったことではなく、
むしろコロナによって顕在化したといえます。
人材サービス事業を手掛けるディスコが11,865社を対象とし、
2019年5月実施した調査によると
2020年の採用活動に危機感を抱いている企業は全体の9割に上っています。
コロナ収束後の速やかな事業再開には、
新卒をはじめとした採用活動における課題の早期発見に加え、
早急に解決策を講じることが急務です。
本記事では、新卒採用のプロセスにおける課題、
応募者数の確保や採用重点層への訴求、内定・選考辞退などについて6つの事例を挙げ、
課題発見および解決を図るための選考プロセス設計について解説します。
▲株式会社ディスコ「2020年卒採用活動の感触等に関する緊急企業調査 採用活動への危機感」
「かなり危機感がある」(40.9%)と「やや危機感がある」(53.6%)を合わせると、全体の94.5%の企業が2020年卒を対象とした採用活動に危機感を抱いている。
1.応募者数の確保
新卒採用において、企業知名度や不人気業種などの理由により、
多くの企業が「母集団形成」に最も苦心していることが、
先述の調査で明らかになっています。
▲株式会社ディスコ「2020年卒採用活動の感触等に関する緊急企業調査 ここまでの採用活動での課題」
応募者の母集団形成には、
採用広報活動及び企業ブランディングの見直しによる他社との差別化が有効です。
就職サイトに掲載済みの文言修正や求める人物像の明確化、
加えて自社採用サイトの設置や、
SNSを活用したソーシャルリクルーティング、
場合によっては新卒採用コンサルティングの利用なども視野に入れるべきでしょう。
2.採用ノウハウ不足
採用をゼロからスタートさせる場合や、
既存の採用ノウハウでは対処しきれないなどの課題がある場合、
採用ノウハウを強化する必要があります。
ただしその方法は多岐にわたるため、
まずは採用目的と採用目標人数、求める人物像などターゲットを明確にした上で、適切な採用プロセスを選択する必要があります。
また、採用担当者のスキルにバラつきがある場合は、
社内の選考基準を策定し、社内で認識を共有しておくことが重要です。
予算に余裕があるのであれば、採用戦略や企画に長け、
応募者対応まで広く請け負ってくれる採用代行やアウトソーシングも検討に値します。
3.人手不足
独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が2017年、
中小企業1,067社を対象に実施したアンケートによると、
「人手不足を感じている」企業は実に全体の7割以上を占めています。
▲独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)中小企業アンケート調査報告「人手不足に関する中小企業への影響と対応状況」平成29年
社内で人手が足りていないため、
当然採用担当にも人が回るはずがありません。
このような場合は採用ターゲットの絞り込みや、適性検査の導入など、
選考初期段階でのスクリーニング強化などが有効な手段として挙げられます。
注意点としては、いくら社内で人手不足だからといって
採用基準を下げるような行為は避けるべきでしょう。
「入れてから育てる」思考には限界があるため、
負債を抱えてしまうと売上減少のみならず、
企業全体の風土にも影響を及ぼしかねません。
リソースが足りないのであれば、社内の求める人物像を今一度明確にし、
思い切って採用ターゲットを絞り込むことが、
組織風土を守るためにも非常に重要です。
4.採用コストの高騰化
近年の売り手市場により、優秀な人材の奪い合いが激化し、
採用コストの高騰に悲鳴をあげる企業も少なくありません。
採用枠が少ない、あるいは前年よりも低予算で採用活動を実施する場合、
一人当たりの採用単価が相場よりも高くなってしまう傾向にあります。
このような場合は、
ゼロコストベースでの採用プロセス設計が効果的でしょう。
既存の就職サイトなどを利用した採用広報活動は取りやめ、
大学の就職課へ求人票を出す方法や、
ソーシャルリクルーティングの活用が挙げられます。
また新卒紹介サービスを利用し、
成功報酬制により採用単価を抑え、
ミスマッチングを防ぎながら着実に欲しい人材を獲得する、
といった方法も検討に値します。
5.採用重点層への訴求
母集団形成に課題を感じている企業の中には、
ターゲット外からの応募に頭を悩まされているケースも多くあります。
自社の魅力が十分に伝わっていないことや、
自社の求める人物像と明文のズレ、
あるいはターゲットへ正しい方法で訴求できていないことなどが
大きな要因として挙げられます。
社の魅力について改めて客観的に探り、競合との差別化を図りましょう。
また、採用重点層の思考や行動など分析を強化し、
綿密なマーケティングを実施することにより、
重点層外からの応募を減少させ、採用重点層からの応募増加、
結果として費用対効果の向上が期待できます。
採用プロセスでの解決策としては、
社内で結果を出す人材に共通する行動特性(コンピテンシーモデル)を、
能力適性や性格適性といった形でスクリーニングの適性検査に盛り込むことにより、
採用重点層への訴求が可能となります。
6.途中離脱・内定辞退・早期離職の防止
せっかく高い採用コストを叩いて獲得した優秀人材でも、
辞退されてしまっては元も子もありません。
また新卒の3年以内の離職率は3割に上り、
早期離職にどう歯止めを掛けるのか、
企業体質や採用プロセスの見直しが迫られています。
▲厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)学歴別就職後3年以内離職率の推移」
採用ミスマッチの主な要因としては、
応募者の職種・企業理解不足や、
入社へのモチベーション低下、
企業が掲げる理念と現場社員の価値観の相違によるリアリティショックなどが考えられます。
ソーシャルリクルーティングなどを活用した内定者への企業理解促進、
及び現場社員または同期との接触回数を増やし、入社への不安の減少及びモチベーション向上に注力することが、
内定辞退率を低下させ、採用計画を保持するためには非常に重要です。
上記のような施策を実施しても効果が見られない場合には、
新卒採用コンサルティングなど第三者視点での原因分析も有効です。
おわりに
採用課題は各社各様であり、複数の課題が複雑に絡み合っている場合も少なくありません。
昨今の経済活動低迷により採用活動が難航し、収束後の最適解模索に苦戦する企業が多い中、採用課題の徹底的な原因追求により苦境を乗り越え、
ピンチをチャンスに変える企業も登場してきています。
今後の市場動向には引き続き注目していく必要がありますが、収束の兆しが見えてきた現在、早めの動き出しが功を奏すと言えるのではないでしょうか。
監修:曽和利光(そわとしみつ)
人事コンサルティング会社、人材研究所代表。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と、人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。