コンピテンシー面接とは?質問例とメリット・デメリットについて解説

コンピテンシー面接とは?質問例とメリット・デメリットについて解説

2020年7月24日更新

はじめに:コンピテンシー面接とは

就職・転職活動において応募者の本質を見抜き、

採用におけるミスマッチを防げると近年注目を集めているのが、

コンピテンシー面接」と呼ばれる面接手法です。

 

採用担当者の主体的な印象に偏りがちであり、

また経験が浅いと応募者の本質を見抜くことが出来ないなど、

公正な判断に欠ける部分も多かった従来型の面接に代わり、

導入する企業が増えています。

 

本記事では、コンピテンシー面接の定義や質問例に加え、

導入するメリット・デメリット、

導入時のポイントについて解説します。

 

1.コンピテンシー面接とは?

コンピテンシー面接は、客観的評価に基づき、応募者の本質的能力を見抜くことを目的とした面接手法です。

 

コンピテンシーは「ハイパフォーマーの行動特性」、

つまり「ある特定の業種(職種)において、成果を出す人材に共通の行動特性」を意味します。

 

自社内におけるコンピテンシーモデル、

つまり「結果を出している優秀人材」の行動特性と比較して、

応募者の行動特性は要件を満たしているかどうか、

類似点があるかどうかなどを分析することにより、

客観的な採用判断が可能になります。

 

応募者の行動特性を見極めるためのアプローチとしては、

応募者へ一つの事柄について深く掘り下げる手法が一般的です。

 

このことにより、応募者の行動指針や動機、

困難にぶつかった際などの対処法、思考回路について把握することができます。

 

このように、コンピテンシー面接では応募者の行動、

そして行動の結果である「成果」に焦点を当てた手法であるため、

従来型の面接が「能力主義」の面接と呼ばれるのに対し、

コンピテンシー面接は「成果主義」の面接とも呼ばれています。

 

2.コンピテンシー面接の質問例

応募者の行動特性から本質的能力を見極めるため、

コンピテンシー面接では、一つの事柄について徹底的に掘り下げ、

当時の状況を詳細に把握することが非常に重要です。

 

従来型の面接と比較し、

コンピテンシー面接ではどの程度まで掘り下げる必要があるのか、

 

募集部署:営業

コンピテンシーモデル:問題解決能力

 

このように設定し、

従来型の面接とコンピテンシー面接の質問手法の違いを探っていきます。

 

 

2-1.従来型の質問例

 

学生:「学生時代は、剣道部の活動に力を入れていました。幹部という立場で部全体をまとめ上げるのはなかなか大変でしたが、やりがいも感じました。」

 

採用担当:「幹部は自ら立候補されたのでしょうか?」

 

学生:「元々は部員の推薦でしたが、せっかくなので引き受けてみることにしました。」

 

採用担当:「幹部の中では、どのようなポジションだったのですか?」

 

学生:「副部長です。部員とコミュニケーションを取りながら意見を吸い上げ、部長の補佐をしながら上手く部全体を一つにまとめ上げる役割です。」

 

採用担当:「そうなのですね。、、、剣道部以外には、取り組んでいたことはありますか?」

 

 

2-2.コンピテンシー面接の質問例

 

学生:「学生時代は、剣道部の活動に力を入れていました。幹部という立場で部全体をまとめ上げるのはなかなか大変でしたが、やりがいも感じました。」

 

採用担当:「部員全体は、どれぐらいの人数がいたのですか?」

 

学生:「50人程度です。通常30から40名が平均的ですので、多い方でした。」

 

採用担当:「幹部とのことですが、具体的にはどのようなことをされていたのですか?

 

学生:「副部長というポジションで、部員とコミュニケーションを取りながら意見を吸い上げ、部長の補佐をしながら上手く部全体を一つにまとめ上げる役割を担っていました。」

 

採用担当:「副部長になったのは、どのような背景でしょうか?」

 

学生:「部員からの推薦です。元々誰とでも分け隔てなく接することが出来るタイプであり、上の代との仲も良く、またチームをまとめ上げることも好きですので、引き受けることにしました。」

 

「採用担当」:「副部長として接する中で、何か問題があったり、難しいと思ったことはありますか?またその場合、どのように取り組みましたか?」

 

学生:「対抗試合前であるというのに部員の士気が上がらず、練習に来ない部員も多くいました。部員のモチベーションがバラバラでしたが、一人一人と話し合い、目標を作成し全体の前で共有してもらうことにより、少しずつ練習に来てもらえるようになりました。」

 

採用担当:「練習に来ていなかったのは、部全体のうち何人ぐらいですか?」

採用担当:「一人一人とは、どのように話し合いを重ねたのでしょうか?」

 

3.コンピテンシー面接における流れ

上記の質問例がコンピテンシー面接における流れとなりますが、

ただ場の流れに合わせて進めてしまえば、

肝心なポイントを聞き逃してしまいかねません。

 

大きく次の3つのステップに従い、応募者の本音を引き出すことが重要です。

 

 

3-1.事柄の背景や設定を、数値などでなるべく具体的に確認する

 

一つのエピソードについてとことん深掘り、応募者の本質まで見抜くためには、

まずはその背景について正しく理解することが必要不可欠です。

 

5W1Hを意識して欠けている情報がないか、

現在の情報だけで応募者が取り組んでいる様子まで具体的にイメージできるか、検証しましょう。

 

イメージできないのであれば、さらに質問を重ね、

情報の解像度を上げましょう。

 

 

3-2.「コンピテンシーモデル」に関連した質問で徐々に深掘りをしていく

 

エピソードの背景について理解できたら、

徐々にコンピテンシーモデルに関連した質問を投げかけ、回答を注意深く記憶しましょう。

 

答えに躊躇している様子はないか、

自信を持ってハキハキと答えているか、

嘘をついている様子はないかなど、

様々な観点から多角的に応募者の情報を集めます。

 

 

3-3.応募者が実際に行動した事実を探る

 

ある程度深く掘り下げることができれば、

面接の核心である「応募者の行動」について質問を投げかけましょう。

 

何を意識して、どのくらいの頻度で、どのように、どの程度取り組んだかなど、この段階でも5W1Hを意識して深掘ります。

 

ただし、あまりにしつこく聞いてしまうと、

応募者を警戒させ、正しい回答を得られないケースがあります

 

あくまで自然な形でコミュニケーションを取り、

時には採用担当者の感想を織り交ぜるなどして、

本音を引き出しやすい雰囲気作りにも留意しておきましょう。

 

4.コンピテンシー面接のメリット

コンピテンシー面接では、

応募者の情報を広く浅く入手するのではなく、

狭く深く入手する点を重視しています。

 

そのため、

応募者の行動能力について正しく判断できることが可能になる他、

人材評価の再現性が高まり、情報の信憑性向上も期待できます。

 

 

4-1.行動能力を正しく判断

 

まず第一に挙げられるメリットとして、

応募者のエピソードを徹底的に深掘り理解することで、

応募者の行動能力を正しく判断できる点にあります。

 

従来型の面接では、

応募者の情報を広く浅く入手する点に重きが置かれていたため、

結果行動能力を判断するには根拠が不足している状態でも、

採用判断を迫られるケースが多くありました。

 

しかし、コンピテンシー面接では、

応募者に関する全ての情報を集めてくる必要はありません。

 

あくまで、自社のコンピテンシーモデルに合致するかどうか判断することが目的のため、

応募者の行動能力を正しく判断することが可能となります。

 

 

4-2.人材評価の再現性が高い

 

冒頭で挙げたように、採用担当者に面接経験が少なかった場合、

いまいち応募者を深掘りすることが出来ない可能性が高まります。

 

その結果、たとえ本来は優秀な人材であったとしても、

採用担当者が見抜けなかったことにより取りこぼしが発生してしまう場合があります。

 

しかし、コンピテンシー面接では、

いわばマニュアルのように採用基準が明確に提示されているため、

採用担当に経験が少なくとも適切な人材評価が可能となり、

社内での再現性向上が期待できます。

 

 

4-3.矛盾を見抜き、信憑性の高い情報を得られる

 

採用に関する情報を容易に入手できるようになったことにより、

応募者側も従来に比べ非常に綿密に、手の込んだ対策をしてくる場合がほとんどです。

 

中には、必要以上に自分をよく見せようと、

過度に誇張した内容で自己PRを図る応募者も少なくありません。

 

面接中に違和感を感じた際は質問を繰り返し重ねることで、

情報の矛盾を発見することが可能ですが、

従来型の面接では時間の制約により、矛盾を見逃さざるを得ない状況もありました。

 

ですが、コンピテンシー面接では、

限られた情報について深掘りをしていくことが大切な条件となるため、

情報の矛盾や脚色といった事態が生じた場合、早期発見が可能になります。

 

5.コンピテンシー面接のデメリット

従来型と比べ、メリットばかりのように見えるコンピテンシー面接ですが、

デメリットも並存します。

 

5-1.募集職種ごとにコンピテンシーモデルの作成が必要

 

人事に予算をかけられる、資金が潤沢にある企業であれば特に支障はありませんが、

あまり予算をかけられない企業や、人事に手が回っていない企業の場合は少々問題となります。

 

貴重な人的リソースを割き、

コンピテンシーモデル作成のために費用をかけられるかどうかは、

費用対効果を見極めた上での慎重な判断が求められます。

 

 

5-2.コンピテンシーモデルに充当する人材がいないと作成できない

 

コンピテンシー面接において、採用の判断基準である「コンピテンシーモデル」作成にあたっては、

社内に複数の「優れたコンピテンシー(行動特性)」を有する人材が存在している状態が必要不可欠です。

 

しかしながら、職種に限られた人数しかいない場合や、

まだ創業からあまり時間が経っておらず、モデル作成にあたり検証件数が不足してしまう場合などは、こ

のコンピテンシーモデルの作成自体に支障が生じてしまいます。

まとめ:コンピテンシー面接と従来型面接を棲み分ける

これまで、コンピテンシー面接の定義と質問例、メリット・デメリットについて解説しました。

 

一つのエピソードを徹底的に深掘ることにより、

応募者の行動特性の正しく判断できることや、

人材評価の再現性向上などが期待され、新たな面接手法として注目を集めています。

 

しかしながら、社員数の少ない企業や年次の浅い企業の場合は導入が難しく、

かえって採用コストを高めてしまいかねません。

 

導入には費用対効果を見極めた上で、

面接初期段階では従来型面接を継続するなど、場合に応じた棲み分けが必要であると言えるでしょう。

 

 

監修:曽和利光(そわとしみつ)
人事コンサルティング会社、人材研究所代表。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と、人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。

 

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