投資銀行とは?就活に役立つ基礎を分かりやすく解説
2023年10月21日更新
はじめに
この記事では投資銀行とは何か、投資銀行の業務内容や、求められる人材などについて解説しています。
エリートの就職先として「投資銀行」という名称は聞いたことがあるものの、詳しくは知らない人も多いのではないでしょうか。
そんな人に向けて分かりやすく解説した記事となっています。
投資銀行
投資銀行の業務や証券会社との違いを解説します。
投資銀行が行う主な業務
投資銀行は、大口顧客のために証券引受業務、資金調達業務、そして合併や買収の仲介などを行います。
名前に「銀行」と付いていますが、その業務は証券会社とよく似ています。
一方で、一般的にイメージされる「銀行」は市中から調達した預金を元に、貸し出しや手形の割引などの業務を行う商業銀行を指します。
投資銀行と商業銀行の大きな違いは、投資銀行は預金を取り扱わない点です。
商業銀行が預金を基に様々な貸出活動を行うのに対し、投資銀行は企業や政府の資金調達をサポートし、証券市場での取引を仲介します。
証券会社との違い
投資銀行と証券会社は、どちらも有価証券の取引や仲介を行う金融機関ですが、その業務内容や顧客層には大きな違いがあります。
投資銀行の主な顧客は大企業や政府機関などの大口顧客であり、企業の合併や買収(M&A)、新規公開(IPO)などの大型案件を扱います。
一方、証券会社は個人投資家や法人投資家が主な顧客で、株式や債券、投資信託などの金融商品の売買を仲介する業務を行います。
なぜ企業は投資銀行を必要とするのか
企業が事業拡大や設備投資を行うためには、資金調達が必要です。
そのために投資銀行が重要な役割を果たし、株式や債券の発行、M&Aなどの資金調達スキームを設計・実行することで、企業の資金調達を支援します。
例えば、新しい工場を建設するためには大量の資金が必要です。
しかし、その資金を得るような大きな投資を一度に行うことは難しいかもしれません。
そこで投資銀行が企業が必要とする資金を調達するための様々な手段を提供し、これには株式や債券の発行、または他の企業との合併や買収(M&A)が含まれます。
さらに、投資銀行はその専門知識とネットワークを活用して、企業が適切なM&A戦略を立てることを支援します。
これにより、企業は自社のビジネスに集中し、成長と成功を追求することができるでしょう。
また、投資銀行は企業の財務戦略の助言や資金調達のアレンジを提供し、企業が資本市場から資金を効率的に調達することを支援します。
これらのサービスは、企業が競争力を維持し、市場で成功するために不可欠だといえます。
日本における主要な投資銀行
日本の主要な投資銀行は以下の通りです。
- 野村証券
- 大和証券
- SMBC日興証券
- みずほ証券
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
それぞれ解説します。
【野村証券】
野村證券は、日本最大の証券会社であり、国内トップクラスの投資銀行です。
株式・債券の発行やM&Aにおいて、国内外で高いシェアを有しています。
また、海外拠点も多く、グローバルなネットワークを活用した支援が可能です。
【大和証券】
大和証券は、野村證券に次ぐ国内2位の証券会社であり、投資銀行においても高い実績を誇ります。
特に、M&Aにおいては、国内トップクラスのシェアを有しており、また、豊富な経験と知識を活かした幅広いサービスを提供しています。
【SMBC日興証券】
SMBC日興証券は、三井住友フィナンシャルグループと日興フィナンシャルグループの合併により誕生した証券会社です。
株式・債券の発行やM&Aにおいて、国内で高いシェアを有しています。
また、中堅・中小企業の資金調達を支援する強みも有しています。
【みずほ証券】
みずほ証券は、みずほフィナンシャルグループの証券会社で、株式・債券の発行やM&Aにおいて、国内で高いシェアを有しています。
また、銀行との連携を活かした資金調達支援が可能です。
【三菱UFJモルガン・スタンレー証券】
三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、三菱UFJフィナンシャルグループとモルガン・スタンレーの合弁会社です。
株式・債券の発行やM&Aにおいて、国内外で高いシェアを有しています。
また、グローバルなネットワークを活用した支援が可能です。
投資銀行の主要部門
投資銀行の主要な部門は以下4つです。
- 投資銀行部門(IBD)
- マーケット部門
- リサーチ部門
- アセットマネジメント部門
それぞれ解説します。
投資銀行部門(IBD部門)
企業が新規事業を立ち上げたり、事業を拡大させる際には、しばしば資金調達が必要となります。
ここで投資銀行部門(IBD)が登場し、株式や債券の発行を通じて企業の資金調達をサポートすることで、新しい機会を追求するための資金を確保できます。
また、企業が他の企業をM&Aする際には、IBDはそのプロセス全体をサポートします。
具体的には、買収先の選定から交渉、事前調査、そして契約締結までのプロセスを含んでおり、IBDの専門家は、市場の動向を理解し、顧客企業にとって最適なM&A戦略を提案することができます。
さらに、IBDでは顧客に対して資金調達やM&Aなどの提案を行うための資料を作成します。
この資料には提案内容だけではなく、提案の根拠となる市場や業界の状況、そしてクライアントの分析などの情報が詰め込まれています。
これにより、顧客はIBDの提案がなぜ有益であるのか、そしてどのようにそれを実行するのかについて明確な理解を深めることができるでしょう。
マーケット部門
投資銀行のマーケット部門は、主に銀行や保険会社、資産運用会社などの機関投資家に対し、金融商品の取引を行う役割を担っています。
この部門はさらに、セールス、トレーダー、ストラクチャーの3つの職種に分かれます。
セールスの担当者は、顧客の取引依頼を実行したり、オススメの株式や債券などを紹介し、売買を仲介します。
投資銀行間で金融商品自体に差はないため、営業マンの営業力が売上を左右します。
トレーダーは、投資銀行自身の資金を活用して株式や債券の取引を行います。
市場の動きを見極め、資本を増やすことが求められる役割です。
一方、ストラクチャーは、金融派生商品の設計を行います。
これは、株式などの資産を元にして派生した金融商品を組み込んだ新しい金融商品の設計を意味します。
リサーチ部門
投資銀行のリサーチ部門は、企業や市場に関する調査・分析を行い、その成果をもとにレポートを執筆する部門です。
このレポートは顧客の投資判断の材料となり、企業への販売や社内の営業部門への提供を通じて、投資の方向性を示す重要なツールとなります。
この部門で働く社員は「アナリスト」と呼ばれ、企業や市場に関する高度な知識を持っています。
アナリストの分析により、投資家は市場の動向や企業の健全性を理解し、より賢明な投資決定を下すことができます。
また、リサーチ部門では金融商品の価格予測や市場動向の分析なども行います。
これらの分析は市場の将来の動きを予測し、投資家にとって価値のある情報を提供することで、投資銀行とクライアントの関係を強化します。
投資銀行のリサーチ部門は、アナリストの専門知識と深い分析により、投資家や企業が市場の変動を理解し、適切な投資戦略を立てる上で不可欠な存在となっています。
アセットマネジメント部門
投資銀行のアセットマネジメント部門は、顧客から預かった資産を株式や債券取引を通じて増やし、利益を上げる責任を担っています。
この部門は投資銀行の主な業務とは異なる特徴を持っており、そのために別会社で運用されることもあります。
アセットマネジメント部門は、投資銀行内でも比較的働きやすい環境が提供されています。これは、顧客からの急な仕事依頼が少なく、激務が特徴的な投資銀行の中でも、比較的落ち着いた雰囲気で仕事を進めることができるからです。
特に、激務が不安な人にはアセットマネジメント部門がおすすめです。
計画的に働くことができるため、バランスの取れた仕事環境を求める人には適しているでしょう。
投資銀行の中でも、アセットマネジメント部門は顧客の資産を効果的に増やす重要な役割を果たし、同時に働きやすい環境を提供しています。
投資銀行でのキャリア
投資銀行の労働環境や求められるスキルについて解説します。
投資銀行の待遇と労働環境
投資銀行の待遇や労働環境は、企業や部門によって大きく異なります。
年収に関しては他業種と比較して最高峰クラスである一方、投資銀行全般の業務内容は激務で知られています。
しかし、近年ではワークライフバランスを重視し、働きやすい環境を整える努力を行っている企業も増えており、具体的にはフレックスタイム制度の導入やリモートワークの推進などが行われているようです。
この動きは、投資銀行においても働きやすい環境の確保が重要視されていることを示しています。
激務であることが多くの人がイメージする投資銀行の姿ですが、時代の変化とともに働き方改革が進められ、より多くの人にとって働きやすい場所へと変わりつつあるのです。
投資銀行の待遇と労働環境は進化し続けており、今後もさらなる改善が期待されます。
配属や転勤の実情
投資銀行では、新入社員は一般的に幅広い業務をローテーションで経験します。
配属は面接時の希望に基づいて決定されますが、必ずしも希望通りにはならないこともあります。
また、官公庁出向という形で2年〜3年間、銀行の業務を離れて官公庁の業務に従事するケースも存在します。
投資銀行は異動や転勤が多い業種とされており、一か所当たりの在籍期間は、早い人だと1年半、長い人でも3年程度と比較的短めです。
このような動きは、投資銀行の業務が多岐にわたり、常に変化している市場環境に対応するための人材育成や適材適所の配置を目指していることを示しているといえるでしょう。
投資銀行の配属や転勤の実情を知ることは、投資銀行でのキャリアを検討する際に重要な視点となります。
異動や転勤の多さは、投資銀行で働く上での大きな特徴といえるでしょう。
投資銀行で求められるスキル
投資銀行での業務は、調査や分析を通じて新たな問題や課題に直面する機会が多く、論理的に考える能力が不可欠です。
具体的には、市場の動向を予測し、効果的な戦略を立てるために、大量のデータを分析する必要があります。
この点で、精緻な財務分析を可能とする数的能力が大きく求められます。
さらに、投資銀行の業務は想像以上の激務であり、高い緊張感のある環境での長時間労働が求められるため、タフネスも重要なスキルとなります。
また、投資銀行の業務は、社外の人との関わりが非常に多いため、高いコミュニケーション能力が求められます。
顧客や関係者との信頼関係を築き、複雑な金融商品やサービスを分かりやすく説明し、適切な提案を行う能力は、投資銀行での成功に欠かせません。
投資銀行へ就職するために
一流大学を卒業していれば有利
投資銀行で働くためには、一流大学の卒業が有利とされています。
特に新卒での入社を目指す場合、旧帝国大学や海外の名門大学、または早慶上理といったトップクラスの学歴が必要とされています。
これは投資銀行の業務には高度な専門知識とスキルが要求されるため、優れた教育機関で学んだ経験が評価されるからです。
しかし、一流大学を卒業したとしても、投資銀行への就職は決して簡単ではありません。
投資銀行は学歴だけでなく、候補者の協調性、ストレス耐性、人間性なども重視しています。
実際に投資銀行の業務はチームで行われることが多く、高いストレスの中で効果的に働ける能力が求められます。
投資銀行のキャリアパス
投資銀行におけるキャリアパスは多岐にわたり、個人のスキルや経験に応じてさまざまな道が開かれています。
投資銀行から別の投資銀行へ転職するケースは一般的で、新しい環境でさらにスキルを磨くことが期待されます。
また、投資銀行で培った知識や経験は、PE(プライベートエクイティ)やヘッジファンドといった投資ファンドへの転職にも有利です。
これらの投資ファンドでは、投資銀行での経験が非常に重宝され、新しいキャリアパスを築く大きなステップとなります。
他には、事業会社のM&A部門や財務部門へ転職するケースもあります。
まとめ
この記事では、投資銀行とは何か、投資銀行の業務内容や、求められる人材などについて解説しました。
投資銀行では大口顧客を相手に証券引受業務、資金調達業務、合併や買収の仲介などを行っています。
これらの業務は複雑であり、高度な専門知識とスキルが求められます。
そのため投資銀行に採用されるには高い学歴と、長時間労働やストレスに耐えられる体力、高いコミュニケーション能力が求められます。
これらの要素は、投資銀行が提供するサービスの質を保つために不可欠であるためです。
最後に、この記事があなたの就職活動の役に立てば幸いです。