医療機器業界へ就職したい学生必見!業界研究から試験対策を徹底解説
2023年8月24日更新
はじめに
2020年に発生した新型コロナウイルス感染拡大による影響で、医療現場では人手不足で大変な状況にあると報じられています。そんな医療業界は、人の生命に携わる仕事であり、ハードで重大な責任が伴う一方で、喜びややりがいを感じられる仕事でもあるといえます。
そんな医療業界の中にあり、高齢化や技術の進歩を背景に不況に強く、安定志向の就活生に人気が高い医療機器業界への就職を希望している学生さんも多いのではないでしょうか?
この記事では、医療機器業界における基礎知識から上位企業の詳細、さらにどのような仕事内容があり、どんな人材が求められているのかなど詳しく解説していきます。
文系理系を問わず、活躍できるフィールドはありますから医療業界で働きたいと思っている学生さんは、是非最後まで読み進めて頂き、医療業界で働くイメージを膨らませて就職活動に臨んでください。
医療機器業界とは?
「医療機器」とは、診断や治療に使用される医療に特化した機械や器具の総称です。
医療という名称が付いているだけに、医療現場である病院で使われる製品が多いため、普段の生活を送る一般の人には、あまり馴染みがありませんが大きく二つに区別されます。
・医療用品:ガーゼや注射器、カテーテルなどの消耗品など
・医療機器:ペースメーカーやMRI、放射線治療機器など
市場としては、医療用品の方が大きいですが、高齢化や予防医療の普及にともない、医療機器の需要も増えてきています。
さらに、医療機器は三つに分けることができます。
・診断機器:CT・MRI・内視鏡などなど
・治療機器:カテーテル・ペースメーカーなど
・その他医療機器:コンタクトレンズ・家庭用体温計など
これらの医療機器は、病院だけでなく、福祉・介護施設や、海外新興国での需要も年々拡大しており、今後も安定的に成長し続けることが見込まれています。
医療機器業界のビジネスモデルは?
医療機器業界のビジネスモデルは、医療機器メーカーが医療機器を製造し、医療機器商社が医療機器を医療機関へ提供することで成り立っています。
国内における主要な医療機器メーカーは、約30社ほどあると言われています。
日本の医療機器メーカーは、小型の医療機器や家庭用の医療用品を中心に製造しており、各メーカー毎に製造する医療機器が異なっていることが特徴です。
また、医療機器商社は、医療機関と医療機器メーカーをつなぐ役割を持つ卸業者です。
様々な種類の医療機器を買い付け、顧客である医療機関に対して、医療機器を販売して利益をあげています。
医療機器は、高度な技術と専門知識が必要であることから、他業種のように下請け業者に委託製造や、代理店による販売が難しいとされています。
医療機器業界の上位企業はここだ!
ここで、日本国内の医療機器メーカーの売上高の上位5位までの企業を見ていきましょう。
先ずは、上位企業の規模感を下表で確認してください。
富士フイルムHD
富士フイルムホールディングス(富士フイルムHD)は、日本を拠点とする多国籍企業で、もともとは写真フィルムやカメラの製造で知られていました。
しかし、デジタル技術の進化と市場の変化に対応するため、事業領域を大きく拡大し、現在では医療機器分野でもその名を知られるようになっています。
医療機器分野において、富士フイルムは特に画像診断機器の分野でリーダー的地位を築いています。デジタルX線撮影装置や超音波診断装置、内視鏡システムなど、幅広い製品ラインナップを持っており、これらの製品は世界中の医療機関で使用されています。
富士フイルムの強みは、独自の画像技術や材料技術を医療分野に応用する能力にあります。これにより、高品質かつ高性能な医療機器の開発が可能となっています。
オリンパス
国内では、カメラメーカーとしてその名が知られていますが、オリンパスのメイン事業は、医療事業です。連結売上高の約75%以上を医療事業が占めており、特に消化器内視鏡は世界でシェア7割を誇っています。
カメラメーカーとして長年蓄積した技術を基礎として、内視鏡や顕微鏡、デジタルカメラの分野でも存在感は大きく、多角的に事業を展開しています。
直近では、平成25年4月にソニーの出資によりソニー・オリンパスメディカルソリューションズが発足しました。両社の技術を生かした新しい医療機器の誕生を目指しています。
テルモ
体温計で知名度が高いテルモですが、体温計の売上高は全体の1%以下に過ぎず、医療機関で用いられる高度専門機器の製造・開発がメインの事業になります。
特にカテーテルを始めとした心臓血管領域や血液システム領域に強みがあり、国内外で5割以上のシェアを持つ製品も少なくありません。こうした治療用医療機器の売上高は国内トップ、世界では13位の位置にあり、160か国で事業展開を果たしています。
特に近年は海外市場での成長が著しく、売上高の海外比率も6割を超えており、今後も世界を舞台にした事業拡大に注目です。
HOYA
HOYAは、日本を拠点とする多国籍の医療機器および電子部品メーカーです。1941年に創業した当初は、光学ガラスの製造からスタートしました。その後、技術革新と市場のニーズに合わせて、多岐にわたる製品ラインナップを展開してきました。
医療機器分野では、特に眼科関連の製品で知られています。コンタクトレンズや眼内レンズなどの製品は、世界中の眼科医や患者から高い評価を受けています。また、エンドスコピー機器や手術用の器具など、他の医療分野においてもその技術力を発揮しています。
HOYAはその高い技術力と革新的な製品開発を武器に、医療機器と電子部品の両分野で世界的な地位を築いている企業と言えるでしょう。
ニプロ
医薬品業界でも知名度が高いニプロは、創業当初からガラス加工の技術に優れ、医療用ガラス部材に重きを置いていました。現在では、ガラス加工の技術から派生した人工透析や人工臓器関連の分野がメインの事業です。
売上高やシェアの数値では、医療機器分野だけ抜き出すと、約半数を占めています。
特に近年は、アジア市場での事業拡大を果たしており、業績も順調に増えています。
ほかの医療機器メーカー大手に比べて、医薬品事業の収益も大きく、医療機器分野と医薬品分野の双方の技術を応用し、医薬品パッケージの開発にも力を入れています。
この三位一体の経営こそ、他に類をみないニプロの強みとなっています。
医療機器業界の動向と今後について
国内における医療機器市場は、右肩上がりで伸びています。
その規模は、約3兆円にも達しており、内訳を見てみると、診断系医療機器が2割、治療系医療機器が6割前後、その他眼科や歯科などの医療機器が2割程度となります。
しかし、2020年の新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、外来患者の受診を控え、緊急性が少ない治療や手術を延期した影響で、一時的に売上が落ち込みました。
これからは、中長期的な目線で見ると、新型コロナウイルスの五類移行や医療体制の強化など安定したアフターコロナを見据えて、次のような動きが想定されます。
(1)デジタルヘルス化が進む
デジタルヘルス化とは、人工知能やチャットボット、IoT、ウェアラブルデバイス、ビッグデータ解析、仮想現実(VR)など、最先端のデジタル技術を応用し、医療や健康管理の質を高めることを指します。
デジタル技術を使うことで、時間や場所、そして処理能力の制約が減少し、より多くの患者さんに質の高い医療を提供することが可能になるでしょう。
(2)グローバル化が進む
日本などの先進国は、少子高齢化が進み、今後人口が減少していくと考えられます。人口が減少すると、医療機器市場も縮小していくと思われがちですが、世界的に見るとそうではありません。
これまで医療機器のニーズが少なかった新興国では、医療機器のニーズが高まると共に、新興国は、今後も人口増の傾向が続く可能性が高いので、グローバル市場に進出することで、売上を伸ばす医療機器メーカーが増えることでしょう。
医療機器業界の職種と仕事内容について
続いて、製薬業界の職種と仕事内容について見ていきましょう。
研究・開発職
最先端医療や治療法については、常に情報収集や研究を行い、自社での基礎研究や新製品開発に携わる研究開発業務を行います。
生産技術
自社製品の製造を安価で効率良く行なうと共に、要求される品質を実現する製造ラインの設計を行います。新製品製造のための新技術の開発から、安定的な生産体制を構築・維持するための技術開発まで行います。研究・開発部門と工場の両方を支援することも業務の一つになります。
サービスエンジニア
研究機関や医療機関に機器を導入する際の下見を行い、クライアント様へのヒアリングや設置に必要な環境整備を行います。さらに、医療機器設置の立ち合いの際には、関係者に対して使用方法の説明やアドバイス、デモンストレーション、導入後のインストラクションやメンテナンスまでをおこないます。
品質保証業務
医療機器メーカーは「製造管理及び品質管理の基準」に沿って、製品を販売することが医薬品医療機器法により定められています。法規制として要求される品質管理監督システム(QMS)を遵守する必要があり、総括製造販売責任者をトップに、国内品質業務運営責任者、安全管理責任者などの設置が義務づけられています。
医療機器営業(SR)
医療機器営業を医療業界ではSRと呼び、医療機器を医療機関で働く医療従事者(医師・看護師・臨床工学技士・臨床検査技師など)に自社製品を紹介して、その使用方法や注意事項を説明して、間違いなく使って頂くことが仕事になります。
事務系・業務系職他
他の業界と共通した職種としては、経営企画・経営管理、経理・財務、法務、特許関連、人事、総務、広報、資材購買、生産管理部門等幅広い職種があります。
医療機器業界で必要な資格やスキルは?
医療機器業界を目指し、入社する時点では、特別な資格やスキルが必要とされることはありません。
医療に関する知識や技術、扱う機械に関する知識は、入社後の研修やOJTで学ぶと共に、実際の業務や現場で身に付けることができます。
ただ、以下のような資格を取得できる方は、是非取得したうえで採用試験に臨まれることをお勧めします。
臨床工学技士
医療機器のスペシャリストになるためには、国家資格である「臨床工学技士」を取得しておくことが、あなたの医療業界でのキャリアプランを形成するのに役に立ちます。
この臨床工学技士を取得するためには、「医療」と「工学」に関する専門的な知識が必要ですし、臨床工学技士養成校(大学、短期大学、専門学校)において厚生労働大臣の指定する科目を修得し、国家試験に合格することが必要です。
この資格を取得した人は主に人工呼吸器や人工心肺、血液浄化や手術用機器などの操作や管理を行なうことで、医療機関のスペシャリストとして活躍できます。
「臨床工学技士」試験の合格率は80%を超えていますが、数年にわたる科目履修に加え、しっかりとした試験対策が必要です。
医療機器業界で求められる人材像とは?
続いて、常に人気企業の上位にランキングされる医療機器メーカーの「求める人物像」とはどのようなものなのでしょうか?
各社の採用ホームページから「求める人物像」を抜き出して一覧にしてみました。
各社のカラーや特性が出来ている結果となっています。
それ以外にも、医療機器業界で求められる能力・スキルとして考えられるのは、以下のとおりです。
コミュニケーション力
責任感
誠実さ
冷静・沈着
臨機応変
人と関わる事が大前提ですので、基本的なコミュニケーション力は必須です。
また、命に関わる仕事ですので、責任感や誠実さは当然持ち合わせていなければなりません。
また、医療業界では日々さまざまなトラブルやアクシデントが発生しますので、冷静・沈着で臨機応変な対応力が必要となります。
まとめ
医療機器業界は、今後も発展する要因が高く、事業拡大が望める業界でもあるため、就活生にとっては、益々人気が高くなって行くことでしょう。
医療機器業界へ就職したいと思っているだけで、具体的な業界・企業研究やどんな職種があって、どのような仕事内容なのかまで詳しくイメージできていない就活生にとって、この記事が参考になるのではないでしょうか?
さらに、目指す企業や医療機器業界そのものの動向や今後の見通しについては、新聞やTV、インターネットのニュースや企業のプレスリリースに触れるなどして情報収集を進めておくと、就活を有利に進められます。
あなたの希望する医療機器メーカーというゴールに向けて、悔いが残らない就職活動を行なってください。