
大卒の「初任給」を正しく理解!押さえるべきポイントとは?
2023年4月15日更新
はじめに
就活を進めていく中で、やはり気になるのは給与ではないでしょうか。
近年、物価高の影響を受け、大卒の初任給は高くなっている傾向はあるものの、
「周りの人はどれくらい貰っているんだろう…」
「実際自分はどれくらい貰えるんだろう?」
「給与を見る上で、注意するべき点はあるのかな?」
など、様々な不安や疑問を抱えている人が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、初任給を正しく理解するために、初任給の平均金額や差が生まれるポイント、さらには給与について押さえておくべきポイントを詳しくご紹介します。
これから就活を始める人はもちろん、すでに内定先が決まっている人も、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
初任給とは?
初任給とは、入社後初めて貰える給与を指します。
金額は入社以前に指定された金額が振り込まれます。
給与が振り込まれるタイミング
1ヵ月分の給与は、月初めの日から締め日までを1ヵ月と捉えて計算されます。
注意するべきは、企業によって締め日が異なることです。
代表的な締め日は以下3種類です。
・末日締め
・15日締め
・25日締め
締め日までの期間を元に計算された給与は、企業が指定する給与の支払日に振り込まれます。支払日も、企業によって異なるため注意が必要です。
支払日の考え方は大きく以下2種類に分けることができます。
・当月払い
・翌月払い
当月払いの場合、締め日と支払月が同じです。したがって初任給も、入社月である4月に振り込まれます。
翌月払いの場合、締め日の翌月に支払日が設定されています。そのため初任給は、入社翌月の5月の給料日に振り込まれることを理解しておきましょう。
このことを理解しておかないと、入社後丸1ヵ月ほど給与がなく、生活に困ってしまう可能性があります。自分の生活の安心のために、入社前にきちんと確認しておきましょう。
初任給の平均金額
では、初任給の平均金額はどれくらいなのでしょうか。
平均金額は大卒・院卒で異なるため、それぞれの金額をご紹介します。
(参照:令和3年賃金構造基本統計調査 (9) 新規学卒者の学歴別にみた賃金 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/dl/09.pdf)
<h3>大卒
厚生労働省が発行する令和3年賃金構造基本統計調査結果によると、大卒の平均金額は22万5,400円です。
前年比では0.3%ほど賃金が減少しているものの、平成29年には20万6,100円だったことを踏まえると、ここ数年で約2万ほど高くなっていることが分かります。
ただし令和2年以降、初任給に通勤手当を含めるようになったという背景があり、過去の初任給と単純比較はできないということを正しく理解しておく必要があります。
大卒
厚生労働省が発行する令和3年賃金構造基本統計調査結果によると、大卒の平均金額は22万5,400円です。
前年比では0.3%ほど賃金が減少しているものの、平成29年には20万6,100円だったことを踏まえると、ここ数年で約2万ほど高くなっていることが分かります。
ただし令和2年以降、初任給に通勤手当を含めるようになったという背景があり、過去の初任給と単純比較はできないということを正しく理解しておく必要があります。
院卒
厚生労働省が発行する令和3年賃金構造基本統計調査結果によると、院卒の平均金額は25万3,500円です。大卒と比較すると、2万8,100円ほどの差があるものの、前年比では0.8%ほど低くなっていることが分かります。
ただしこちらも平成29年には23万3,400円だったことから、約2万円ほど高くなっていることが分かります。
初任給は全ての企業で一緒ではない?
初任給は、全ての企業で同一の金額が設定されているわけではありません。
どのような条件で給与に差が生じるのか、その例を見ていきましょう。
職種によって異なる
初任給に差が生じる理由のひとつに、職種による差があります。
職種は「一般職」、「総合職」、「専門職」に分けることができます。
「一般職」はいわゆる事務職などが該当し、総合職と比較すると給与は若干少なく設定されています。「専門職」は名称通り専門的な職種であることから、総合職よりもやや高めに給与が設定される傾向があります。
これまで多くの日本企業は、「一般職」や「総合職」で新卒社員を採用し、研修などを通じて適性があると判断した部署に配属をしていました。しかし昨今の「ジョブ型」と呼ばれる職種別採用の流れが相まって、新卒社員でも入社時から職種別に採用が行われるケースが増えています。
地域によっても差がある
初任給は、勤務地によっても差が生じます。
「地域によって給与が変わるなんて不公平だ」と思う人がいるかもしれませんが、家賃をはじめとする生活費は地域によって異なります。
したがって、同じ会社でも配属地域が異なれば、給与に差が生じる可能性があることを理解しておきましょう。
初任給は金額通り貰えない?
ここまで、初任給に関する基本的な情報を見てきました。
しかし、これで初任給の全貌を理解できたとは言えません。
初任給を受け取るにあたって、注意するべき点を見ていきましょう。
「額面」と「手取り」の違いに注意
まず注意するべきは、給与における「額面」と「手取り」の違いです。
「額面」とは、名称通り給与明細に記載される給与の総支給額を指します。
「手取り」とは、「額面」から税金などを控除した支給額を指します。
企業が開示しているしている初任給は「額面」です。
したがって、記載されている金額をそのまま受け取れるわけではなく、「手取り」の金額となることを正しく理解しておきましょう。
初任給の平均額を「手取り」で考えると?
では、初任給の平均額を「手取り」で考えると、どのような金額になるのでしょうか。
一般的に「手取り」の金額は、「額面」の約80%と呼ばれています。
そのため初任給の平均額から概算すると、以下のような金額になります。
・大卒:18万320円(22万5,400円)
・院卒:20万2,800円(25万3,500円)
額面で見ると高く感じた金額が、手取りで計算すると少ないように感じる人は多いのではないでしょうか。
額面をベースに家賃などを計算すると、支出が多すぎて苦労してしまう可能性があります。手取りの金額を正しく理解し、身の丈に合った生活水準を意識するように心掛けましょう。
「額面」からどのような金額が引かれるの?
「額面」からは、以下のような金額が引かれています。
・健康保険料
健康保険料は、所属企業が半額分を負担します。保険料として一定額を収めることで健康保険証が発行され、病気やケガをした際に治療費の自己負担額を軽減することが可能です。
・厚生年金保険料
健康保険料と同様に、所属企業が半額分を負担します。受給対象年齢を満たすと、厚生年金を受け取れるようにするための保険料です。
・雇用保険料
給与の0.3%が該当する雇用保険料は、万が一失業した際に給付を受け取るために支払いが生じます。
・所得税源泉徴収
給与に対して発生する税金です。「額面」の金額ではなく、社会保険料などを差し引いた金額に適用されます。
初任給では上記税金が引かれますが、社会人2年目以降はこのほかに住民税が引かれます。
住民税は前年度の所得に対して課されるため、社会人1年目は対象にならないことを覚えておきましょう。
給与を判断する上で注意するポイント
ここまで、初任給の「額面」と「手取り」について詳しくご紹介してきました。
「聞いていた金額と違う…」と不安にならないためにも、給与に関する情報は正しく理解することが大切です。
この他にも、新卒社員が気付きにくい給与の豆知識をご紹介します。
年俸制と月給制
給与形態は、大きく2種類に分けることができます。
・年俸制
給与を1年単位で決定する方法
・月給制
毎月の基本給に加え一定の手当、賞与を全て合わせて1年の給与とする方法
給与形態によって、最も大きく異なるのは賞与です。
年俸制の場合、基本的には賞与という考え方がありません。1年間の給与を事前に決定し、その給与を12ヵ月で割り算するという考え方のため、追加で賞与は発生しません。
その代わり、仕事で良い結果を残せば、次年度の給与を高めることができます。
月給制は、年俸制と比較すると年度初めの段階では給与が定まっていないという点が大きな特徴です。直近の成果が賞与に反映されるため、仕事の成果に応じて賞与の金額が大きく変わります。ただし、所属企業の業績によっては賞与が支給されないという可能性があるため、注意が必要です。
給与形態がどちらが好ましいかは、自身のタイプにもよるでしょう。
大切なのは、所属企業の給与形態はどちらなのかを正しく把握しておくことです。
残業代
残業代は、「必ず支給されるもの」だと思っていませんか?
もちろん働いた分の残業代を支払う義務が企業にあるため、支払いがないということは考えられないものの、どのような支払い形態になっているかは正しく理解しておく必要があります。
残業代の支払い形態は大きく2つに分けることが可能です。
・実費での残業代支払い
月の残業時間に応じて、支払われる残業代が変わる支払い形態です。
・固定金額での残業代支払い
一般的に「みなし残業代」とも呼ばれます。
給与の中に毎月決められた時間分の残業代がすでに組み込まれている支払い形態です。
決められた時間を超える場合は、別途残業代が追加されます。
一見すると「給与が高い」と感じる企業の場合、残業代がみなしで追加されている可能性があります。
そのため、みなし残業時間として設定されている時間のうちは、追加で残業代が発生しないため注意が必要です。
住宅手当
「あの子の企業は住宅手当があっていいなあ…」と思うかもしれませんが、その考えには注意が必要です。なぜなら、住宅手当は全額給与扱いとなる場合がほとんどだからです。
給与扱いになるということは、社会保険料をはじめとする税金の課税対象となります。
したがって「住宅手当」がある企業は、給与の一部を手当として見せているという表現が妥当です。言い換えれば、元の給与に住宅手当が加算されているのではなく、住宅手当を考慮して給与を設定しているのです。
そのため、一見すると給与に住宅手当が上乗せされ得をしているように見えるかもしれませんが、一概にそうとは限りません。住宅手当を含めた金額を給与として捉え、本当に得をしているかどうかを判断する必要があります。
よくある質問
では最後に、よくある質問にお答えします。
入社してみたらボーナスがないと言われた!
「入社してみたらボーナスがあると思ったのに、ボーナスがない」と言われ、焦っている人はいませんか?これは、入社以前に給与の支払い形態を正しく理解していなかったことで生じる焦りです。
全ての企業にボーナスがあるのではなく、会社の支払い形態に紐づいていることを理解しておきましょう。
また、ボーナスがある企業の場合も、1年目の上半期に支給されるボーナスは該当しない場合がほとんどです。勤務した期間に応じて、1年目の下半期からボーナスが支給されるのが一般的であることを理解しておきましょう。
「1年目の給与は高い」って本当?
周囲の先輩から、「1年目の給与は高いからな…」と言われたことはありませんか?
実際のところ、2年目以降に設定されている給与の方が高くなるものの、引かれる税金として住民税が加わるため、手取り額が1年目より少なくなることが多いです。
そのため、「1年目の給与は高い」という表現になっているのでしょう。
住民税が税金に加わると、手取り額が大きく減ってしまうような印象を受けるかもしれません。1年目に受け取れる金額を大切に活用していきたいですね。
額面だけを見ずに慎重な判断が必要!
いかがでしたか?
本記事では、初任給を正しく理解するために、初任給の平均金額や差が生まれるポイント、さらには給与について押さえておくべきポイントを詳しくご紹介してきました。
初任給について、実は詳しく知らなかったという人も多いのではないでしょうか?
社会人となると、学生時代と異なり自分の生活費を自分で賄う必要が生じます。
手取りで受け取ることができる金額を正しく理解していなければ、生活に苦労することにもなりかねません。
初任給に関する知識を正しく理解して、社会人になった自分自身の生活を安定させていきたいものです。
その上でぜひ、楽しい社会人生活を送ってくださいね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。