
【新卒向け】初心者でもわかる給与明細の「見方から意味まで」網羅解説
2022年9月26日更新
はじめに
給与明細って、分かっているようで分かっていない、説明しろと言われても案外できないシロモノですよね。
「別に手取りだけ分かればいいじゃん」という人はスキップしても結構ですが、あなたの給与がどのような形で入ってきて、何がどれだけ引かれているのかを知ることで、マネーリテラシーが上がってきます。
逆に知らないと、間違って支給された給与にも気付けませんし、かわいい後輩から質問されても天を仰ぐことになります。
本記事では新入社員教育のように、給与明細で知っておいてほしい内容を網羅解説します。
10分くらいで給与明細を読み解くリテラシーが入手できますので、サクッと最後まで流して下さいね。
1.給与に欠かせない2つの重要な基準
給与明細を説明する前に、給与に欠かせない2つの基準があります。
それは何かというと、「計算期間」と「支給日」です。
俗に日当と言われる日給や1週間ごとに支給される週給、1か月ごとに支給される月給制など、給与の支払い方には色々な形態があります。
ほとんどの新卒は月給制ですが、月に1回の支給だと色々問題が出てきます。
それは、
「いつからいつまで働いた期間の給与を支給するのか?」
「その給与をいつ支給するのか?」
の2点です。
そのために会社は「1か月の計算期間」と「支給日」を規定する必要があるのです。
「計算期間」は1日〜月末に設定する会社が多いですが、16日〜翌15日の会社もありますし、21日〜翌20日なんて会社もあり、会社によって自由に設定することができます。
次に「支給日」ですが、これは「計算期間」を考慮して設定する必要があります。
素人考えだと、「計算期間が決まってるのだったら、次の日に支給すればいいじゃん」と思うかもしれませんが、そこから勤務実績を確認して確定させ、税金や社会保険など天引きする計算処理を行った後に、膨大な量の振込を次の日にというわけにはいきませんので、どうしても一定期間が必要となるわけです。
したがって、支給日は計算期間の締め日から、10日〜20日後に設定されることが多いです。
たとえば、計算期間が1日〜30日であれば、支給日を翌20日にするようなケースです。
この2つの基準は就業規則か、給与規定に記載されていますので、入社したら真っ先に確認しておきましょう。
2.給与明細は4部構成
あまりにも給与明細リテラシーが低いと、もし給与計算に間違いがあってもスルーしてしまいますし、もらい損や引かれ損になる可能性もありますので、給与明細の中身は知っておいたほうが断然リスクが低いです。
給与明細は大きく分けると、
①勤務(勤怠)欄
➁支給欄
➂控除欄
➃差引支給額
の4部構成です。
明細では下記のように表示されます。
【勤務欄】
就業日数 | 出勤日数 | 労働時間 | 欠勤日数 | 休日出勤日数 | 有給取得日数 |
22.00 | 20.00 | 160.00 | 0.00 | 1.00 | 2.00 |
代休日数 | 時間外時間 | 深夜残業 時 間 | 法定休日 労働時間 | 遅刻早退時間 | 有給残日数 |
12.00 | 3.00 | 6.00 | 0.00 | 14.00 |
【支給欄】
基本給 | 役職手当 | 資格手当 | 住宅手当 | 家族手当 | |
210,000 | 25,000 | ||||
通勤手当 | 時間外手当 | 深夜勤務手当 | 法定休日手当 | 総支給額 | |
5,500 | 17,178 | 4,125 | 11,137 | 272,940 |
【控除欄】
健康保険 | 厚生年金 保険 | 介護保険 | 雇用保険 | 社会保険合計 | 欠勤控除 | |
13,776 | 25,620 | 863 | 40,259 | |||
所得税 | 住民税 | 税額合計 | 共済費 | 労働組合費 | 団体保険 | 控除合計 |
10,979 | 18,996 | 29,975 | 300 | 3,000 | 2,500 | 76,034 |
【差引支給額】
差引支給額 |
196,906 |
会社によって多少誤差はありますが、給与明細はだいたいこのようなレイアウトになっています。
➃の差引支給額は単に「支給額-控除額」なので、①の勤怠、➁の支給額、➂の控除額の3つが理解できれば、事足りますね。
なので、次のチャプターで、その3つの中身を解説していきましょう。
3.給与明細の各項目の意味
勤務欄
たいがい給与明細のトップに表示されている「勤務欄」から確認していきましょう。
「勤務欄」はこんな表示でしたね。
【勤務欄】
就業日数 | 出勤日数 | 労働時間 | 欠勤日数 | 休日出勤日数 | 有給取得日数 |
22.00 | 20.00 | 160.00 | 0.00 | 1.00 | 2.00 |
代休日数 | 時間外時間 | 深夜残業 時間 | 法定休日 労働時間 | 遅刻早退時間 | 有給残日数 |
12.00 | 3.00 | 6.00 | 0.00 | 14.00 |
上記の各項目の意味は下記のとおりです。
・就業日数:その月に働くことを義務付けられた日数 ・出勤日数:その月に実際に働いた日数 ・欠勤日数:休んだ日数(←欠勤減額されます) ・休日出勤日数:法定休日に勤務した日数 ・有給休暇日数:労基法で定められた有給休暇を取得して休んだ日数 ・代休日数:法定休日に働いた分の代償として通常の出勤日に休んだ日数 ・時間外時間:所定労働時間を超えて勤務した時間(いわゆる残業) ・深夜残業時間:夜10時から翌朝5時まで働いた時間 ・法定休日労働時間:法定休日に働いた勤務時間 ・遅刻早退時間:所定労働時間内で遅刻・早退した時間 ・有給残日数:その年度で消化しきれてない有給休暇日数 |
上記の中でも、「休日出勤日数」「代休日数」「時間外時間」「深夜残業時間」「法定休日労働時間」については、初めて耳にしたという人も多いと思うので、解説を多少加えます。
「休日出勤日数」は法定休日に働いた日数を指します。
法定休日とは、労基法で「少なくとも週に1日以上休ませる日、あるいは4週を通じて4日休ませる日」を設けることを会社側に義務付けた休日です。
そんな休日に業務命令があって働いた日数が「休日出勤日数」というわけです。
「代休日数」とは「法定休日に働いた代償として通常の出勤日に休んだ日数」を指します。
原則的に「法定休日に休めなかった日の代わりに、別の日に休みをとる」というのが労基法の精神で、それでも休めなかった場合は賃金補償として、「休日出勤手当」が支払われるという仕組みになっています。
次に、「時間外時間」というのは、「残業」と言ったほうがわかりやすいですね。
要は、1日に拘束される時間(=所定労働時間)が就業規則で決まっていて、8時間なら8時間が所定労働時間として働くことが義務付けられています。
ただ、どうしても8時間のうちに仕事が終わらずに、居残りや朝早く出てきて仕事をしなければならなくなる状況って、特に繁忙期はありますよね。
そんなときに「労働組合と協定した時間(36協定)の範囲内で、所定労働時間を超えて働いてもいいよ」という時間が「時間外時間」です。
次に「深夜残業時間」です。
深夜残業時間とは、「夜10時から翌朝5時まで働いた時間」をさします。
最後に「法定休日労働時間」です。
さきほど、法定休日については説明しましたが、1日フルに働く場合もあれば、4時間で切り上げるといったケースもありますよね。
なぜ、こんな時間をわざわざ別個に表示する必要があるのか?
それは、この時間帯に働くと給与に「割増し」が付くからです。
この時間帯は通常なら家に帰ってゆっくりと就寝している時間帯ですよね。
にもかかわらず、会社のために働いているわけですから、何らかの給与補償をしてあげる必要があるよねということで、労基法で賃金の割増しが定められている時間なので、別に表示する必要があるわけです。
支給欄
次に「支給欄」の解説に入ります。
あたらめて「支給欄」を見ると、こんな感じでしたね。
【支給欄】
基本給 | 役職手当 | 資格手当 | 住宅手当 | 家族手当 | |
210,000 | 25,000 | ||||
通勤手当 | 時間外手当 | 深夜勤務手当 | 法定休日手当 | 総支給額 | |
5,500 | 17,178 | 4,125 | 11,137 | 272,940 |
この「支給欄」の中で、「役職手当」「資格手当」「住宅手当」「家族手当」「通勤手当」については、労基法上、会社に支払いを義務付けている手当ではないので、会社独自の手当になります。
上記の手当がないからといって違法にはなりませんので、注意してください。
要は、時間外や深夜、法定休日といった割増しの付く手当以外は会社のオプションです。
各項目の意味は下記のとおりです。
・基本給:一定期間働くことでもらえる給与のベースとなる給与 ・役職手当:係長や課長などの役職に就くことで支給される手当 ・資格手当:会社が定める資格を取得した場合に支給される手当 ・住宅手当:会社が家賃やローンなどを補助する目的で支給する手当 ・家族手当:扶養家族に対して会社が支給する手当 ・通勤手当:通勤にかかる費用を支給する手当(非課税:上限あり) ・時間外手当:所定労働時間を超えた労働に対して支払われる割増し手当(割増率25%以上) ・深夜勤務手当:深夜労働(夜10時から翌朝5時まで)に対して支払われる割増し手当(割増率25%以上) ・法定休日手当:法定休日に出勤した労働時間に対して支払われる割増し手当(割増35%以上) |
この中で、割増しについて理解しておいたほうがいいので、計算例を交えながら解説しておきましょう。
まず、残業や深夜業、法定休日に出勤した場合の割増しは、すべて時間当たりの労働単価(=時間単価)をベースにはじきます。アルバイトの「時給」のような感覚でOKです。
時間単価は、基本給を所定労働時間で割って算出します。
仮に基本給21万円で、所定労働時間が160時間ならば、
時間単価=210,000円÷160時間=1,313円/時間
ですね。
算出した時間単価を使って割増し計算していきます。
仮に、月に20時間の残業を行った場合、表のように時間単価分は26,260円に、割増し分6,560円が加算された合計32,820円が支給されます。
割増し分 | 1,313円×25%×20時間 | 6,560円 | 32,820円 |
時間単価 | 1,313円×20時間 | 26,260円 |
次に、残業時間(20時間)の中に深夜時間が5時間含まれていた場合は、さらに深夜業の手当(歩増25%)が上乗せされ、合計が34,460円が支給されるというわけです。
深夜歩増分 | 1,313円×25%×5時間 | 1,640円 | 34,460円 |
残業歩増分 | 1,313円×25%×20時間 | 6,560円 | |
時間単価 | 1,313円×20時間 | 26,260円 |
法定休日手当も同じように計算しますが、歩増しが35%以上なので、さらに金額は増えますね。
控除欄
最後に「控除欄」です。
このようなレイアウトでしたね。
【控除欄】
健康保険 | 厚生年金保険 | 介護保険 | 雇用保険 | 社会保険合計 | 欠勤控除 | |
13,776 | 25,620 | 863 | 40,259 | |||
所得税 | 住民税 | 税額合計 | 共済費 | 労働組合費 | 団体保険 | 控除合計 |
10,979 | 18,996 | 29,975 | 300 | 3,000 | 2,500 | 76,034 |
これを見ると、
①社会保険関係(健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険)
➁税関係(所得税・住民税)
➂会社や個人関係(共済費・組合費・団体保険など)
の3つに層別されていますね。
①と➁は法的に天引きが決められているものなので、泣こうがわめこうが容赦なく差し引かれます。
但し、介護保険は40歳以上から支払うことになりますので、当面天引きはありませんね。
また、住民税は前年の収入に対して賦課される税金なので、入社1年目は支払う必要がありませんが、2年目からはシッカリと徴収されます。
国や自治体に納める税金や社会保険料については、どのように決められるのかを押さえておいたほうがいいので、以降で解説していきます。
①社会保険関係
健康保険料や厚生年金保険料は、「個人の標準報酬月額(4月・5月・6月の総支給額の平均値)×所定の保険料率」で算出されます。
標準報酬月額とは、基本給に通勤手当や残業手当を含む金額のことで、年3回までの賞与は含みません(年4回以上の支給される賞与については含みます)。
保険料率は居住地の都道府県によって数値が異なるため、全国健康保険協会(協会けんぽ)の公式ホームページにある「都道府県毎の保険料額表」をご確認ください。
雇用保険は少し考え方が異なり、
「ひと月の総支給額(基本給+各種手当)×雇用保険料率」
で算出されます。
雇用保険料率は毎年見直しが行われていますが、以下は厚生労働省が公表した「令和4年10月1日~令和5年3月31日」までの保険料率です。
個人負担 | 会社負担 | 雇用保険料率 | |
一般事業 | 0.5% | 0.85% | 1.35% |
農林水産・清酒製造事業 | 0.6% | 0.95% | 1.55% |
建設事業 | 0.6% | 1.05% | 1.65% |
雇用保険の財源は、失業給付や雇用を守るための助成金などに充てられていますので、就業状態が不安定になる可能性が高く、助成金の支給が多い業種では、会社側の負担率が高く設定されています。
➁税関係
会社員の給与の中から控除される税金は、
①所得税
➁住民税
の2つです。
①所得税
所得税は、その年の所得(給与)に応じて納める税金です。
しかしながら、毎月の給料から源泉徴収されて納めています。
これは所得税が「見込み額の前払い方式」になっているからです。
要は、その年の所得は12月にならないと確定しないので、年末に改めて正式な納税額が確定され、過不足分は年末に調整する方式をとっています。
これがいわゆる「年末調整」という制度で、扶養家族が増えると所得控除が利いたり、生命保険や個人年金も控除対象になりますし、住宅ローンのある人も返済残高に応じて税額からダイレクトに控除されますので、払い過ぎの状態になり税金が戻ってくる可能性が高いのです。
そういった意味で、会社員にとっては嬉しい年末イベントになっていますが、逆に扶養家族が減る場合などは追加で納めるパターンもありますので、一概に喜べませんね。
➁住民税
別名「市県民税」とも言われますが、前年の収入に対して賦課される税金です。
住民税は居住地の都道府県や市町村で異なりますが、前年の年収が100万円以下の新入社員は翌年の5月まで住民税による控除はありません。
要は、住民税は所得税の見込み額前払い方式と異なり、「確定後の後払い方式」を採用しているということですね。
したがって、仮に退職して収入がない場合でも、未払いの住民税については継続して徴収されることになりますので、意味を理解しておかないと後々恐ろしいことになりますね。