【ブラック企業?】就活生が知るべき「みなし残業」とは?
2024/9/5更新
はじめに
就活で企業の求人情報を見ていると「みなし残業」という文字を目にすることも多いのではないでしょうか。
みなし残業という制度は、現在多くの企業が採用しているものの、就活生の皆さんはきちんとその内容を理解しておかないと、取り返しのつかない事態に陥る可能性があります。
この記事では、以下のような悩みや疑問にお答えしています。
- みなし残業とは?
- みなし残業代(固定残業代)のある企業はすべてブラックなの?
- 求人情報を見る時の注意点は?
この記事を読めば、こういった悩みや疑問はすべて解決できます!
エントリーシートも面接も楽々こなせるようになった自分を想像しながら読んでみてくださいね。
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みなし残業とは?
みなし残業とは、実際の残業時間に関わらず、毎月一定時間分残業をしたものとしてみなし、その分の残業手当を固定して基本給に加える制度です。
みなし残業制度によって支給される手当のことを、「みなし残業代」や「固定残業代」などと呼びます。
具体例を挙げましょう。
就活で求人票を見ていると、以下のように表記されているケースがよくあります。
このケースでは、毎月20時間分のみなし残業代として5万円が固定で支給されることになります。
実際の残業時間が5時間であっても19時間であっても5万円という額は変わりません。
みなし残業には2種類の制度がある
みなし残業には以下2種類の制度があります。
- 定額残業制
- みなし労働時間制
それぞれ見ていきましょう。
①定額残業制
1つ目は定額残業制です。
「固定残業制」とも呼ばれ、みなし残業制度を取り入れる企業のうち、多くはこの定額残業制を採用しています。
実際の残業時間に関わらず、事前に取り決めた時間分の残業を毎月しているものと処理し、その分の固定残業代を基本給に加えて支給するのが定額残業制です。
後述する「みなし労働時間制」と違い、定額残業制はどのような職種に対しても適用することができます。
求人票では、下記の内容で表記されていることが多いです。
- 基本給25万円(うち5万円はみなし残業代)
- 基本給25万円(月20時間分のみなし残業を含む)
②みなし労働時間制
みなし労働時間制とは、実際の労働時間に関わらず、事前に取り決めた時間分働いたものとみなして給与を支払う制度のことを指します。
労働時間の正確な把握が難しい職種に対して適用されることが多い制度です。
具体的には、下記の職種が挙げられます。
- 外回りで直行直帰が多い営業職
- 記者
- 労働量に波がある職種(研究職・ライター・弁護士)など
- 在宅勤務の職種
などの職種が挙げられます。
また、みなし労働時間制を適用するには一定の要件もあります。
さて、このみなし労働時間制の中で事前に定められた労働時間が、法定労働時間の8時間を超える部分について支払う手当のことを、みなし残業代(固定残業代)と言います。
具体的には、1日のみなし労働時間を9時間と定めている場合、法定労働時間の8時間を超える1時間分がみなし残業代として支給されることになります。
例え実際の労働時間が5時間であったとしても、支給される額は変わりません。
みなし残業時間を超えた分の残業代はもらえるの?
さて、多くの就活生が気になっているであろうテーマはこれではないでしょうか?
「所定のみなし残業時間を超えた分の残業代はもらえるのか?」
結論から言うと、法的にはもらうことができるが、もらえないケースも少なくありません。
というのも、企業側は超過分の残業代を支払う義務があるため、法令を遵守する企業に勤務していればきちんともらうことができます。
「もらえないケース」というのはどういうことか?
実のところ、残念ながら日本には法令を遵守せずに超過分の残業代の支給を拒むようなブラック企業が少なくありません。
超過分については手当が支給されず、サービス残業をさせられているケースが非常に多くなっているのが実情です。
「サービス残業」という言葉には、そもそも一切の残業代が支給されないケースもあれば、みなし残業の超過分が支給されないケースも含まれているわけですね。
就活生の皆さんは、みなし残業制度を取り入れている企業を調べる際、就活口コミサイト等を通じて超過分の手当が支給されているか調査することをおすすめします。
みなし残業制度のメリット
ここでは、みなし残業制度のメリットを2つ解説します。
従業員側、企業側それぞれに以下のメリットがあります。
- 残業が少ない月でも決まった額が支給される
- 残業時間の計算や管理の手間が軽減される
①残業が少ない月でも決まった額が支給される
まずは従業員側のメリット。
みなし残業制度が適用されている場合、実際には残業が少ない月でも、決まった額の残業代が支給されることです。
月に30時間分のみなし残業が設定されている場合に、閑散期などで残業時間が10時間程度で済んでしまえば、かなり得した気分になりますよね。
また、少なくとも固定残業を導入していない企業よりは確実にもらえる給与が増える可能性が高くなるため、従業員へ「経済面での安定」をもたらしてくれるでしょう。
②残業時間の計算や管理の手間が軽減される
こちらは雇用する企業側のメリット。
みなし残業制度を適用しておくことで、残業時間の計算や管理の手間が大きく軽減されます。
人件費が一定になり、固定費の計算も楽になることで、その分のリソースを他に割くことができたり、他の業務を円滑に進めることができるようになったりするわけです。
みなし残業制度のデメリット
今度はみなし残業制度のデメリットについて見ていきましょう。
就活生の皆さんはショックを受けるかと思いますが、みなし残業制度のデメリットについては、基本的に従業員側だけが一方的に受けることになります。
- 残業が常態化しているケースが多い
- 超過分の残業代を支払わない企業が少なくない
①残業が常態化しているケースが多い
1つ目のデメリットは、みなし残業制度を取り入れている企業の職場環境は、残業が常態化しているケースが非常に多いということ。
業務量に対して人員が不足しており、長時間の残業が前提になっているのです。
「働き方改革」、「ワークライフバランス」、「ノー残業」などの言葉が叫ばれる昨今においても、残業するのが普通という風土は変わらないのでしょう。
もちろんすべての企業で残業が常態化しているわけではありませんが、その傾向は強いと言えるでしょう。
②超過分の残業代を支払わない企業が少なくない
2つ目のデメリットは、先ほども紹介しましたが、超過分の残業代を支払わない企業が少なくないことです。
「コンプライアンス」という言葉が声高に叫ばれる一方で、法を破り従業員にタダ働きさせる企業が後を絶ちません。
本来的に雇用者側は労働者側よりも力関係が強いものです。
超過分をもらう権利はあっても、それを雇用者側に訴えることができず、泣き寝入りしている人は数多く存在します。
就活を進めていくにあたり、可能な限りこのようなブラック企業は避けたいものですね。
みなし残業に関するトラブル
先述のデメリットに関連し、実際にみなし残業に関するトラブルが数多く発生しています。
読売新聞オンラインによれば、人気洋菓子店の運営会社が固定残業代超過分の未払いを含む不適切な労働をさせたことで労基署から是正勧告を受けています。
記事の一部を引用します。
また、同社では、社員ごとに労働時間を定め、固定残業代を支払った上で、所定の労働時間を超えた分を別に支払う仕組みだった。しかし、一部の社員に超過分を払っていなかったという。
(中略)
労使協定の内容を見直し、未払い残業代について、労基法に基づき、過去2年分を今後支払うとしている。
労働基準法に違反していることはわかっていながらも、「やりがい」という名目で労働者から搾取する場合もあるのです。
この一件はあくまで氷山の一角であり、表沙汰になっていない「やりがい搾取」は数え切れないと予想できます。
みなし残業代(固定残業代)のある企業はブラック?
みなし残業制度には、デメリットやトラブルが付きまわることを解説してきました。
ここまでお読みいただいた就活生の皆さんの中にはこう思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「じゃあみなし残業代(固定残業代)のある企業はすべてブラックなの?」
当然の疑問かと思います。
これに対する答えとしては、「決してすべてではない」です。
みなし残業という制度の適用が理にかなっている場合も少なくないのです。
先述のとおり、労働時間の正確な把握が難しい職種に対してこの制度を適用することは合理的な判断だと言えるでしょう。
ブラック企業だと断定してもよい基準は2つです。
- 超過分の残業代を支給しない
- 実質的な基本給が最低賃金を下回っている
1つ目の基準については解説済みですので省略します。
2つ目の「実質的な基本給が最低賃金を下回っている」というケースについてご説明します。
「実質的な基本給」というのは、基本給からみなし残業代を除いた金額を意味します。
例えば、東京都内の企業が「基本給20万円(うちみなし残業代5万円)」という条件で求人を出していたとしましょう。
東京都内の最低賃金の時間額は1,041円です(2022年7月現在)。
月の労働日数を21日とし、法定労働時間である8時間働いた場合は以下の給与となります。
最低賃金で21日(1日8時間)働いた場合
1,041円×8時間×21日=174,888円
この企業の実質的な基本給は、下記の通りです。
実質的な基本給
200,000円-50,000円=150,000円
つまり、例に出した求人の基本給20万円という数値は、一見最低賃金を超えているように思えますが、実質的な基本給は最低賃金を下回っているのです。
一部の企業はみなし残業という制度を悪用して、このような条件で求人を行っています。
2つ目の基準「実質的な基本給が最低賃金を下回っている」を満たす場合もブラック企業だと断定して良いでしょう。
求人情報を見る際の注意点
最後に就活生の皆さんが求人情報を見る際の注意点について、以下2つの観点から解説していきます。
- 実質的な基本給を計算してみる
- 賞与(ボーナス)の計算にみなし残業代は含まれるか
①実質的な基本給を計算してみる
1つ目は先ほど解説したように、基本給からみなし残業代を除いた額が、企業所在地の最低賃金を下回っていないかどうか計算してみることです。
一見高そうに見える基本給も、計算してみたらそうでもなかった・・・なんてケースはよくあります。
「うまい話には必ず裏がある」と思って疑いの目で見るようにしましょう。
人生の中で自分の貴重な時間を捧げる先なのですから、慎重になってもなりすぎることはありません。
②賞与(ボーナス)の計算にみなし残業代は含まれるか
2つ目の注意点は、賞与(ボーナス)の計算にみなし残業代が含まれるかを確認することです。
一般的に賞与は「基本給×◯ヶ月分」というふうに計算されます。
この基本給の部分について、みなし残業代を含めるのか含めないのかは、企業の規則によって異なるのです。
この違いは非常に大きいですよ。
例えば、下記のケースを例に考えてみましょう。
- 基本給25万円(うちみなし残業代5万円)
- 賞与は年間4ヶ月分
上記の場合、みなし残業が賞与(ボーナス)に含まれるか否かで下記の差が生まれます。
- みなし残業代を含める場合:25万円×4ヶ月=100万円
- みなし残業代を含めない場合:20万円×4ヶ月=80万円
年収にして20万円の差が生じていますね。
基本給が上がれば上がるほどこの差は開いていきますが、みなし残業代の額は固定の場合が多いでしょう。
賞与の計算方法を必ずチェックしてくださいね。
そもそも「ブラック企業」ってなに?
本記事では、みなし残業がブラック企業につながる可能性がある点に言及していますが、そもそもブラック企業とはどのような企業を指すのでしょうか。
ここで解説します。
- ブラック企業に明確な定義は存在しない
- ブラック企業だと判断されることが多い基準一覧
①ブラック企業に明確な定義は存在しない
事実として、ブラック業界・企業について明確な定義は存在しません。
一般的には、「働いていてストレスを多く感じる職場環境」や「その企業で働くとネガティブな感情になる」状態を「ブラック」と総称している傾向があり、とても抽象的な概念だといえるでしょう。
そのため大前提としてブラック企業の基準は個々人によって異なる内容といえ、世間的に「ブラック企業」だと恐れられている企業の中には、充実感を持って日々の仕事に取り組んでいる社員もいます。
②ブラック企業だと判断されることが多い基準一覧
「ブラック企業だ!」と称されている企業によくあてはまる特徴は下記の通りです。
- 離職率(新卒3年離職率)が高い
- 福利厚生が充実していない
- 給与が低い
- 副業できない
- 残業時間が多い
- 残業代が出ない
- 有給取得率が悪い
- 休日が確保されていない(休日出金がある)
- 研修制度が整っていない
- 社員の評価制度が不透明
- 役職者に女性がいない、また少ない
- 「未経験者大歓迎!」なのに給与が異常に高い
- 1年を通して求人を掲載している企業 など
また例えばホワイト企業の条件としても挙がる「企業の年収が高い」理由を考えると、企業の業績が好調だからというだけでなく「給与を高くしないと社員を確保できない」ほど内情がブラックなケースも想定されます。
そのため上記で述べた項目の1つだけが異常に悪いということを理由に、無条件に「この企業はブラックだ!」と断定するのは良しとされません。
様々な数値を総合的に調べ、かつ転職口コミサイト(OpenWork・エンゲージなど)で投稿されている従業員の口コミを確認するなどして判断していくことが重要です。
さいごに
今回は就活生なら知っておくべき「みなし残業」という制度について解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
記事の内容を簡単にまとめます。
- みなし残業とは、実際の残業時間に関わらず、毎月一定時間分残業をしたものとしてみなし、その分の残業手当を固定して基本給に加える制度のこと。
- みなし残業制度によって支給される手当のことを、「みなし残業代」や「固定残業代」などと呼ぶ。
- みなし残業には、「定額残業制」と「みなし労働時間制」の2種類がある。
- 所定のみなし残業時間を超えた分の残業代について、企業は支払う義務があるものの、支払っていないケースも少なくない。
- みなし残業制度を適用している企業がブラックかどうかの判断基準は「超過分の残業代を支給しない」、「実質的な基本給が最低賃金を下回っている」の2つ。
- 求人情報を見る際は、「実質的な基本給を計算してみる」、「賞与(ボーナス)の計算にみなし残業代は含まれるかチェックする」ということに注意。
みなし残業制度についてお分かりいただけたでしょうか?
この記事の内容が少しでも就活の中で役に立てば幸いです。
なお、みなし残業の1つとして紹介した「定額残業制(固定残業)」については下記記事で詳しく解説しているため、気になる方は読んでみてください!