レピュテーションとは?リスク事例から学ぶマネジメントとブランディング戦略

レピュテーションとは?リスク事例から学ぶマネジメントとブランディング戦略

はじめに

近年、企業にとってマイナス要因であるネガティブな評判の広まり(レピュテーションリスク・評判リスク)により、経営が危うくなる事例が増加しています。

社会のIT化に伴い、情報発信や共有、活用が容易になったことが要因として挙げられますが、リスク回避にあたってはレピュテーションの現状把握に加え、影響範囲の適切な認知が必要不可欠であるといえます。

本記事では、ピュテーション の定義、影響を及ぼす経済範囲、レピュテーションリスク事例と回避のためのマネジメント方法について解説します。

 

レピュテーションとは

レピュテーション(コーポレート・レピュテーション)とは、企業活動によって直接的あるいは間接的に影響を受ける対象(ステークホルダー)が有する「企業への評判」を指します。

レピュテーションは、一般消費者のみならず株主や取引先などの間で広く構成され、例えば案件成立をかけた交渉、あるいは消費者の購買行動における重要な判断指標の一つとして用いられています。特にサービスの値段が高額である場合や、購入が新規であった場合、あるいは購入を検討しているサービスが目に見えないもの(コト消費)である場合、重要視される傾向にあります。

このように、レピュテーションは営業利益拡大の一端を担っているため、適切に管理することは売上拡大、経済活動の増幅、そして社会的信用の確立において非常に大きな意味を持ちます。

 

レピュテーションの影響範囲

企業のレピュテーションは、様々な方法を通じて瞬く間に波及していくため、ともすれば社会的信用を失墜させてしまいかねません。レピュテーションが影響を及ぼす範囲について、採用活動、及び社会的信用という切り口から解説します。

 

採用活動への影響

採用が決定すれば、1日のうち少なくとも3分の1の時間を当該企業への労働へ割くことになるため、応募者にとって企業情報や評判を得ておくことはもはや必須であるといえます。このため応募者は、エントリーあるいは選考前にネットに出回る様々な情報サイト・口コミを比較検討し、なるべく多くの情報を集め、企業のレピュテーションを見極めようと最善を尽くします。

良い評判ばかりであれば問題はありませんが、例えば離職者によるネガティブな評判が出回ってしまっている場合、そのような評判を目にした応募者の応募辞退、あるいは採用辞退を促してしまいかねません。一度でもネットに出回ってしまった情報は回収が困難であるため、評判回復には時間を要し、難航することが予想されます。

 

社会的信用への影響

現在の高度資本主義経済において、「信用」は最も大きな要素であると言っても過言ではありません。顧客や取引先からの信頼を獲得し、着実に積み重ねていけば、投資家や地方自治体をはじめとした公的機関と信頼関係を締結することも可能です。しかしながら、その反対に少しでも企業の信頼が落ち、名声に傷がつくような事態に陥ってしまうと厄介です。顧客との信頼関係の崩壊や、取引先との関係解消などが連鎖し、最悪の場合倒産に追い込まれてしまうケースも存在するため、レピュテーションリスクを常に意識しておくことは、安定した経営を図る上で非常に重要です。

 

レピュテーションリスクの事例

昨今話題に上ることの増えた、レピュテーションリスクによる経営不振や経営破綻ですが、実は社員やアルバイトによる些細な行動が原因となっているケースも少なくありません。

思わぬところで足をすくわれてしまわないよう、社員とコミュニケーションを密に図り信頼関係を構築すると共に、社員教育を徹底し、地に足を着けた安定した経営を心がけることが大切です。

 

アルバイトの非常識な投稿で倒産

この数年、アルバイトが迷惑行為・反社会的行為をtwitterなどのSNSに「バカッター」として掲載し、視聴者からの反応を楽しむ「バイトテロと呼ばれる事件が相次いでいます。見返りを受ける対象が本人だけならばまだしも、雇用主側である企業にとっては経営を揺るがす非常事態であり、中には多額の負債を抱えたまま泣き寝入りせざるを得ない状況に追い込まれた企業も出てきています。

2013年、京王線沿線に店を構える個人経営の蕎麦屋にて、アルバイト学生が食器洗浄器に自ら入り込んだ画像をtwitterに投稿する事件が起きました。翌日からクレームや返金の電話が相次ぎ、同蕎麦屋は事件から僅か1週間で負債総額3,300万円を抱えたまま倒産に追い込まれました。1,385万円の損害賠償請求をするも裁判では200万円で和解、本人からは一度も謝罪は無く、大きな波紋を呼びました。

 

情報漏洩の危険性

IT化が進むと共に、大企業を狙ったハッキング事件や情報犯罪が横行しています。

2014年6月、ベネッセ・ホールディングスの子会社であるベネッセ・コーポレーションが、顧客情報管理を委託先していた外部企業の派遣社員により、約2,895万件もの会員名簿が売却されてしまう事件が起きました。社長兼会長、そして役員2人と計3人の辞任に加え、会員補償の被害額は260億円に上り2016年3月期連結決算の最終損益は82億円の赤字となってしまいました。また、2015年の日本年金機構による125万件の個人情報流出は、記憶に新しい人も多いのではないでしょうか。

情報セキュリティの脆弱さが明らかになった一連の事件。セキュリティ対策を強化すると共に、組織内でのポリシー周知徹底が鍵を握っています。

 

レピュテーション・マネジメントにおけるポイント

前述のように、経営を揺るがしかねない危険性を孕んだレピュテーションリスクを回避し、ブランドイメージを維持・向上させるためには、いくつかのポイントが存在します。まずはそのような評判が生まれないようソフト面・ハード面両方からの環境構築に加え、現状を正しく認知しておくことも有効です。

 

現在の評判の正しい認知

レピュテーションリスクによる信頼失墜は、企業に対する期待と現状とのギャップにより生じます。前述のバイトテロのような、反社会的突発的行為を予測することは不可能であり、負債以外の何物でもありません。しかしながら、企業の実情に対して世間からの期待値が高すぎる場合も、自らの立場を苦しめ、危うくしてしまう要因となりかねません。

現状を正しく認知しておくことは、ブランド価値を守るためにも非常に大切です。企業規模に応じて、顧客や取引先、株主を対象に報道調査やアンケート調査を実施し、レピュテーションリスクの芽を事前に摘んでおくことも、リスクマネジメントの重要な施策の一つであるといえます。

 

広報活動の強化

企業の実情が、世間からの期待値に伴っていない場合、広報活動によるレピュテーション調整の有効性が期待されます。

一般的に、レピュテーションは企業規模や経済活動の範囲が大きくなればなるほど、比例して期待値も高まっていくため、たとえ発端が些細な事件だったとしても、損失が莫大な金額になる傾向にあります。

社内SNSやオウンドメディア の活用により、企業の透明性を高めると共に誠意ある姿勢をPRしておくことも、一定の効果が期待できます。

 

綿密なコミュニケーション戦略

レピュテーションリスクの発生源を辿っていくと、組織内あるいは組織外の関係者間で、信頼関係が構築出来ていなかったことに由来するケースも少なくありません。組織内での関係強化はもちろん、取引先や株主といった組織外との関係性には細心の注意を払い、常に誠意ある対応を心掛けることが、リスクを最小限に抑えるための一番の有効策です。

また、万が一有事が起こってしまった場合、関係社員の精神的サポートをはじめとした企業体制の立て直しに、世間から厳しい目が注がれることとなります。

日頃からリスクを想定し、有事に備えて綿密なコミュニケーション施策を実施していくことも効果的でしょう。

 

まとめ

レピュテーションリスクには様々なものがありますが、普段から企業のステークホルダーと良好な関係を築けているかどうかでその後の企業存続が変わってくる、といっても過言ではありません。

有事の際に足元をすくわれ、社会的信用を失墜させてしまわないよう、日頃からソフト面・ハード面双方から関係強化に努めることが、長い目で見たときに企業にとってもプラスであることは明白です。情報激化社会における企業の管理体制のあり方が、今後ますます問われてくる可能性が高いと言えるでしょう。

レピュテーションリスクの損失と対策については、こちらの記事で詳しく解説されていますので是非ご覧ください。

レピュテーションリスクとは?過去の事例からわかる損失と4つの対策

監修:曽和利光(そわとしみつ)
人事コンサルティング会社、人材研究所代表。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と、人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。

 

 

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