採用広報の活動内容とは|戦略的な採用活動のポイント

採用広報の活動内容とは|戦略的な採用活動のポイント

2020年7月30日更新

はじめに

人材サービス事業を手掛けるディスコが11,865社を対象とし、

2019年5月実施した調査によると

2020年の採用活動に危機感を抱いている企業は全体の9割に上っています。

 

少子高齢化による応募者数減少や、内定辞退、早期離職に代表される

採用課題はコロナウイルス感染拡大に伴う採用自粛によって顕在化し、

優秀な人材の獲得競争は年々激しさを増しています。

 

新卒採用における課題発見の重要性|解決に有効な選考プロセス設計とは?

 

そのような中で、昨今注目されているのが、wantedlyやnoteなどのプラットフォーム上で活用が広まっている「採用広報」の存在です。

 

自社に適した人材の発見から、育成までを手がけ、定着を図る採用広報の意義は大きく、

ここ数年で導入する企業が増えているものの、

未だ取り入れていない企業も多く存在します。

 

本記事では、採用広報の役割や導入の重要性、

採用広報の活動におけるポイントについて解説します。

 

1.「採用広報」とは?役割と発信内容

採用広報と一口に言っても、

「自社が求める人材を、自社へ応募するよう促す広報活動」

全般を指すため、

その業務内容は多岐に渡ります。

 

本項では、採用広報の役割と、

発信する情報の内容について整理します。

 

 

1-1.採用広報の役割

 

採用広報の具体的な業務としては、

 

・企業説明会やセミナーを行う(オフライン)

・インターンシップを開催する(オフライン)

・就活サイトに情報を載せる(オンライン)

 

などが代表的であり、

採用のために情報を発信していくことや、

企画を実行運営していくことは全て採用広報に該当すると言えます。

 

立ち位置としては、

自社の企業風土や商品・サービスに関する情報発信を担務する「企業広報」の中で、

特に求職者をターゲットとし広報活動を展開するポジションが「”採用”広報」であると定義可能です。

 

そのため、

直接の採用活動に関しては人事担当が主体となって進めていくものの、

「採用広報」という特殊なポジションにおいては、

宣伝商品を魅力的に伝えるノウハウを有している企業広報とも連携しながら、

業務を行うという特徴があります。

 

つまり、

企業が求める人物像を齟齬なく、

しかし興味を持ってもらえるような情報発信をするために、広報担当と協力する

という業務が、

採用広報に該当するといえます。

 

 

1-2.採用広報が発信する情報

 

採用広報がその地位を確立してきたのは、

ここ数年の話であり、

特に求人倍率が再び増加に転じた2013年以降で顕著です。

 

当初、「企業広報」と「採用広報」は混在しており、採用広報が発信する情報も事務的なものに留まっていました。

 

しかしながら、

昨今叫ばれている「経営の透明化」に端を発し、

企業の長所・短所双方ともに発信することで、「自社で働く意義」を明確にすると共に、

自社が求める人物像とのマッチングを図る動きが活発になっています。

 

そのため、

今日「採用広報」が発信する情報は様々な場面に広がっており、

社員へのインタビューや働いている様子、

イベント開催レポートなど、

企業の実状を発信することで、

早期離職やリアリティショック 予防に効果があると期待が高まっています。

 

「リアリティショック」とは?新入社員が辞める5つの原因と対策

2.「採用広報」導入の重要性

昨今、

採用広報が様々な企業に浸透し、推進されている理由としては、

 

・近年の「売り手市場」

・就活生の選社軸の変化

・急速に進む情報発信のニーズ

 

これらが挙げられます。

 

 

2-1.近年の「売り手市場」

 

まず挙げられるのが、近年の採用難です。

今年2020年は、コロナウイルスの感染拡大により「就職氷河期」とされていますが、

これまでの過去5年間で見ると求人倍率は上昇し、

売り手市場となっていました。

 

いかに競合他社と差別化して学生へ訴求し、

優秀な学生を獲得できるかが焦点となっていました。

 

このような背景により、

より効率的な採用活動の展開への需要高まる中、

注目が集まっているのが「採用広報」なのです。

 

 

新卒採用難の原因と対策|導入すべき採用手法とは

 

 

2-2.就活生の選社軸の変化

 

次に、就活生が会社を選ぶ基準の変化

すなわち価値観の変化が挙げられます。

 

リクルートが、自社採用メディア「就活みらい研究所」の学生調査モニターである19卒大学生1,087人を対象に、

2019年3月15日から3月19日にかけて実施した「就職プロセス調査2019年卒調査報告書」によると、

「就職先の決め手となった項目」を問う設問では、「自らの成長を期待できる」が最多の47.1%を占めています。

 

▲リクルート「就職プロセス調査2019年卒 調査報告書」

 

背景には、

近年のワークライフバランスや副業解禁などにより働き方が多様化し、

転職や副業が認められるようになり、

自分のやりたいことを重んじる風潮が高まっていることが挙げられます。

 

また、同調査で「成長機会」に次いで多くの割合を占めたのは

福利厚生(住宅手当等)や手当が充実している」(37.8%)となっています。

 

今後就職活動を展開する、堅実でリベラルな思考が特徴であるZ世代の、

選社軸を裏付ける結果となっています。

 

Z世代への採用活動における4つのポイント|特徴や価値観,重視する働き方について解説

 

今後、企業が優秀なZ世代人材を獲得するためには、

上記のようなポイントをしっかりと適切な形で、就職者に訴求する必要があります。

 

採用広報は、上記のような文脈において、

非常に重要な役割を果たすことは間違いありません。

 

 

2-3.急速に進む情報発信のニーズ

 

また、情報発信のニーズです。

「就活は情報戦」との合言葉は、学生にとってはもはや常識であり、

情報収集に労を費やします。

 

また、昨今のデジタルネイティブとも呼ばれる若者は、インターネットを駆使した情報収集に長けているため、

オンライン上での情報公開のニーズは高くなる一方です。

 

しかしながら、

ネット上には発信元の不明な、掲示板やSNSでの情報も溢れ、

信ぴょう性という面で判断しかねるシーンも多く存在します。

 

その点、企業の採用広報が発信した情報であれば、多少の脚色はあれどオリジナリティと信頼性の面では間違いがなく、

学生の目に止まりやすくなり

総じて企業に興味を持ってもらいやすくなる効果が期待できるでしょう。

3.採用広報を効果的に実施するポイント

採用広報といっても様々な手法が存在します。

本項では、まずは代表的な手順に加え、

説明会開催、およびオンラインでの情報発信におけるポイントについて解説します。

 

3-1.採用広報の手順

 

採用広報を戦略的に進めるための手順は、

3つのステップに分かれています。

 

ターゲットを絞る→ツールの選択→社内外への発信

 

第一にして、最も重要なのがターゲットの選定です。

コンピテンシーモデルなどを活用して

学問の専門分野や居住地域、経験値やスキルなどのペルソナを描き

自社の求める人材像を具体的にしましょう。

 

コンピテンシー面接とは?質問例とメリット・デメリットについて解説

 

ターゲットを選定後は、情報を発信するツールを決定します。

ツ紙媒体や、映像、対面式などがありますが、

紙媒体のみ、映像のみ、対面式のみ、など一本化するよりも、

ターゲットに合わせて多角的に訴求できるよう、複数のツールを選択するようにします。

 

最後に、社内外へ採用広報の内容を発信します。

 

社外に発信することは当然ですが、

社内へ周知させることもまた同様に重要です。

 

社内で情報を共有し、認知を統一しておくことにより

誤った情報を流布してしまうことの予防につながると共に、

モチベーション向上にも効果が期待できるでしょう。

 

 

3-2.説明会開催におけるポイント

 

極端な言い方をすれば、

「知らない企業の会社説明会」ほど、学生にとって苦痛なものはありません。

 

説明会開催の第一目的は「自社を知ってもらうこと」に他なりませんが、

学生に興味を持ってもらうためには、自社についてはあまり多くを語らない、というのも一つの手として考えられます。

具体的には、自己分析や面接対策を解説する就職応援セミナー、

他社と共同での合同説明会、

1日で内定が出る」「複数社同時に受験可能」など学生にとってのメリットを打ち出したものなどが挙げられます。

 

また説明会参加におけるハードルを適切に設けることもまた重要です。

誰でも参加が可能であると、

数稼ぎや物見遊山で参加する層も少なくありません。

 

せっかく用意したコンテンツが、求める学生に届かない場合も往往にして考えられるため、

抽選やエントリーシート、アンケートや、

場合によっては開催地などを考慮しハードルを設けることで、

入社意欲の高い学生のスクリーニングが可能となります。

 

さらに、踏み込んだ例としては、

ITメガベンチャーであるサイバーエージェント社の説明会が挙げられます。

 

同社ではあえて説明会を無くしており、

代わりにサイブラリーと呼ばれる誰でもアクセス可能なネット上のライブラリーで、会社説明動画や記事などの情報を公開しています。

 

 

このため、同社では地方就活生の入社比率が高く、5割ほどに上っているそうです。

 

優秀な人材が多数いる地方学生にも目を向け、

訴求を検討してみることもまた、人材獲得には有効であると言えるでしょう。

 

 

 

3-3.オンラインの活用

 

2020年はあらゆるもののオンライン化が進行しており、

新型コロナウイルスの収束が見えないこの状況下では、この動きは今後も加速していくと予想されます。

 

交通費、移動時間のコストがかからないことから、

東京の就活生だけでなく、地方就活生にとっても参加するハードルが低くなる

ため、

企業は今後も積極的なオンライン活用が求められていると言えるでしょう。

 

また、学生にとっては対面よりも、オンライン上の方が質問や発言がしやすいというデータも報告されているため、

学生のニーズを掴むためにも、オンライン採用活動は注力する意義があると言えます。

 

なお、オンライン採用活動は、オンラインでの会社説明会やオンライン面接ばかりが注目されがちですが、

昨今では「オンラインインターン」も登場してきています。

 

日経ビジネス社によって行われたこのインターンは、

企業側が議題を設定・解説し、

学生からのコメントを受けながらディスカッションをする、というものです。

 

このオンラインインターンでは、複数社が参加し、

学生とともに議題について参加するため、

企業の価値観を比較することができる上、

企業側としても学生の参加者それぞれのコメントの記録を振り返りやすい点がメリットとして捉えられます。

おわりに

昨今注目が高まっている採用広報。

採用活動のオンライン化が加速するにつれ、

ますますその重要性は増してきています。

 

自社が求める人物像を明確にし、正しく情報を発信し、

学生へ積極的に訴求することが重要です。

 

監修:曽和利光(そわとしみつ)
人事コンサルティング会社、人材研究所代表。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と、人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。

 

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