リストラはいまもある?就活生が知っておくべき実態
2024年8月28日更新
はじめに
「リストラ」は長い日本の不況の中で、企業が生き残るために従業員を切り捨てるという意味で使われました。
日本では特にバブル経済崩壊以降、安泰といわれたメーカー系企業が断行したことで一躍その名称が社会的に認識されています。
いまはリストラという直接的な言葉を使わず「早期退職募集」などのようにいわれることもありますが、なぜそのようなことになっているのでしょうか?
本記事は、以下のような人に向けた内容となります。
- 「リストラ」の仕組みについてあらかじめ知っておきたい
- いまもリストラは行われているのか具体例を踏まえて知りたい
- 自分が社会人になった後のキャリアについても考えてみたい
ぜひ、最後までお読みいただき、就職活動や業界研究、そして社会人になるにあたっての知識として活用いただければ幸いです。
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この記事の結論
この記事の結論からいうと、「リストラ」はいまの時代必ずしも人を切り捨てるための制度ではありませんが、過去には会社経営が立ちいかなくなりそうせざるを得なくなった企業がありました。
大きくなり過ぎた組織を存続させるための人員整理が、いまの時代はチャンスである人もいます。
終身雇用ではなくなったいまの日本の社会では、これから就職する皆さんは内向きではなく、外向きの社会やビジネスに敏感になりましょう。
自分自身の成長や人脈づくりを絶えず続けることを意識して、たとえ会社が傾いたとしてもあなた自身の価値を維持できるような働き方・生き方が望まれます。
なぜ企業はリストラを行わなければならないのか?
順調に成長している企業なら、売上が伸びると同時に人手も必要になるはずです。
新しく入る人もいれば、何らかの事情で辞めていく人もいます。
そうした自然な流れとはならず、なぜ企業はリストラをするのか?
しかも近年は労働人口も減少し、ほとんどの企業が人手不足だと感じている時代です。
人手不足のはずなのに、なぜいまもリストラをするのかについて、基本的な情報を紹介します。
リストラとは?
まず、リストラについての定義について正しく理解しましょう。
ただし、日本においてリストラというと、外的要因・内的要因に関わらず、企業が業績に行き詰った結果、人員を減らすことで企業存続の戦略をとるという意味合いのほうが強いです。
実際、90年代に起こったバブル不況や、2010年に発生したリーマンショックに端を発する世界不況が起こった際には、さまざまな形のリストラが多くの企業で行われています。
特にバブル不況は高度経済成長の名残やその直前の熱狂的な好景気の落差も相まって、過剰なコストカット・人員削減をしたことはさまざまな報道がなされました。
それらを題材にした小説やドラマ、映画を見たことがある人もいるのではないでしょうか?
- 「君たちに明日はない」(著/垣根涼介)
- 「解雇・男たちのリストラ」(著/山田智彦)
- 「ぷろぼの」(著/楡周平)
- 「THE COMPANY MEN(邦題:カンパニー・メン)」(映画、監督/ジョン・ウェルズ)
- 「Up in the Air(邦題:マイレージ、マイライフ)」(映画、監督/ジェイソン・ライトマン)
90年代のバブル不況からのリストラ【日本の総括】
少し古い情報ですが、1999年内閣府が当時の経済白書(現在は経済財政白書)の一節に、バブル不況によるリストラについて統括した内容があります。
経済白書でこのようにリストラについて解説をすることは異例ですが、当時の生々しい状況が詳細に記載されています。
実際の白書ではかなりのボリュームで記載されていますが、その内容を簡単に要約すれば以下のようになります。
<日本の慣行>
日本の企業は経営者に対する監視が極めて弱く、銀行はバブルのころまで企業の財務体質を重視していなかったため、企業経営は財務状況を顧みることをしなかった。
企業規模が社会的地位につながると考え、企業は成長とシェア拡大に専念した。
当面の利益よりもいかに成長と拡大ができるかが経営目標だった。
<不況発生時点の調整不足>
バブル崩壊した後も失業率が大きく上がることはなかったが、これは不況突入に適切な対策を施した結果ではなく、企業体質の改善が緩やかに進み、問題を先送りにしていたに過ぎなかった。
そうした動きをした背景に雇用維持(終身雇用)を重視した経営があったためである。
雇用にかかるコストは、変動費用ではなく埋没した固定費とみなされ、結果として新規雇用に企業は慎重となった。
不況においては、欧米では設備投資と人員計画を明確に調整するが、日本では設備投資の緊縮を優先し、雇用を維持する動きを取ったものの、その調整はバブル不況では不十分となった。
<過剰雇用から企業都合の失業へ>
もともと当時の日本労働人口は第二次ベビーブームによって、いわゆる管理職に相当するような中堅社員、30代後半から40代の世代がボリュームを占めており、大企業を中心に大幅なマイナス成長を背景に過剰雇用の風潮が高まった。
ホワイトカラー管理職の過剰感によって、自主的な退職も含めた高い失業率を記録し、一度こうした過剰人員を経験すると、仮に好況に戻ったとしても元の人員に戻そうという動きが鈍くなる。
年功序列は若年低賃金層の数が高年齢層より多く、成長が見込める場合において有効だが、ベビーブームが去り若年層が少なくなったことで賃金体系の見直しが社会全体として広がった結果、現在の職にとどまる動機も薄れて、労働移動(転職)はより拡大するものと見込まれる。
もともとバブル経済の発生と崩壊は、異常な状況自体に気付いていたものの、適切な対処を怠った(先延ばしにした)ことで招いたといえる点があります(もちろんそれ以外の要因も諸説あります)。
こういった失敗は近代の歴史の中でも何度も繰り返された結果、いまは「持続的成長」を見据えた経営が世界中で重視されていることも理解できるのではないでしょうか。
いまは理不尽なリストラではない?
「はじめに」でも述べた通り、結果として報道などではリストラだと指摘しますが、そういった人員整理を当事者である会社がいうことはなく、手段として用いるのは「早期退職募集」という方法です。
日本の労働法は雇用者に非常に強く、経営者が簡単にはレイオフ(クビ)にできないような制度設計になっています。
企業を存続するための円満な人員削減策の一つが「早期退職を募集」することです。
少し高い退職金を支払うことで、企業は財政や組織を立て直すきっかけとなります。
現在は、長い不況が続いた結果、転職市場が成長し、労働の移動は圧倒的にしやすい環境に変わりました。
早期退職募集に応じる人は、いまはその会社に居続けることができなくなった人の取る選択肢ではありません。
いまいる会社に見切りをつけてさらにステップアップする人や、新たに独立起業するなどの機会でもあるため、「リストラ」の言葉ほどの悲観さはそれほどなさそうです。
しかし、本来ならそういったことをしないで企業が成長できることが理想であり、早期退職募集することは「何かが」うまくいかなかったことの表出でもあります。
大手企業がそういったことに踏み出すと、世間やマスコミがざわつくのはこういった理由で過去の「リストラ」という言葉を用いて世間の注目を誘うのです。
近年のリストラ動向について
特に2020年代以降は、新型コロナ発生による大きな社会不安や経済打撃によって、リストラをせざるを得なくなったケースが多くありました。
また、物価上昇によって賃金上昇も進みつつありますが、全ての企業が順調に成長しているわけでもないため、こういったコスト増に耐え切れず、企業存続のためにリストラを実施したケースもあります。
この章では、リストラが報道されたいくつかの企業の実例を紹介します。
本田技研工業株式会社(2021~2023年)
自動車メーカーの大手である本田技研工業(ホンダ)は、もともと早期退職制度をもっていましたが、リーマンショックのころに一度制度を停止し、2021年に制度を「再開」する形となりました。
ホンダの早期退職制度はかなり厚遇で、退職金に3年分の賃金の上乗せ、さらに再就職先の紹介までをサポートしてくれるというもので、結果として想定を超える2,000人が早期退職に応募したといわれています。
想定以上の人材流出だったためか、2023年には早期退職制度は再び停止となりました。
ホンダ自体は業績が悪いわけではなく、コロナ禍でも順調に利益を上げています。
ほかの自動車メーカー含め、物価高騰や資材の調達の遅れなどにより、製品の納入が遅れ、従来のような成長の伸びではなくなっている点は確かにあります。
早期退職が極めて厚遇であるとはいえ、日本有数の自動車メーカーから早期退職という選択を多くの人が選んだという点に、多くの報道で注目されていました。
パナソニックホールディングス(2021年)
2021年は新型コロナによる経済の自粛の最中でしたが、その中でも上記のホンダとパナソニックの日本を代表するメーカーが「リストラ」を実施していると非常に話題となりました。
ただし、ホンダの場合はあまりネガティブな事情ではなく、もともと早期退職制度自体もあったものをさまざまな経営戦略を踏まえて実施したものでした。
しかし、パナソニックは新型コロナで売上は記録的な減収もあった最中での早期退職募集もあり、先行きは少し暗いものでした。
2021年の早期退職募集で1,000人近くの希望退職があり、これはパナソニックも想定外の規模だったと後に述べられています。
富士通株式会社(2022年)
富士通は2022年に50代以上幹部社員の早期退職を募集し、その結果社員の4%にあたる約3,000人が応募したとされています。
富士通自体はかねてより企業体質の変化をしようと苦心していた状況がありますが、組織の大きさゆえに想定しているような変化もなかなか見いだせていないような状況が2000年代から続いていた印象がありました。
IT・テクノロジーは常に変化が求められる以上、スピード感や成果を生み出しやすい組織体制にすることが求められる一方で、若い人へ権限移譲が思うように進まない中での早期退職募集を行ったという経緯もありそうです。
ただし、富士通での幹部経験のある人は、ITサービスの裾野にある多くの企業で求められる人材でもあります。
企業側としては若干ネガティブな印象はありますが、早期退職に応募した人たちには、それ相応の目的意識や新たな活躍の場を見いだしていた可能性も高そうです。
株式会社東芝(2024年)
東芝は日本を代表するメーカーの一つでした。
2015年に組織ぐるみで行われたとされる粉飾決算で、社会的に大きく信頼を失いました。
さらに2017年には米国の子会社が不正会計を行い子会社は経営破綻、東芝本体も巨額の負債を抱えることとなります。
数々の事業を売却や切り離しを行い、上場廃止となるという激動の状況を迎えた企業です。
かつてはTOSHIBAといえば日本の家電製品の代表格で、長年国民的アニメのメインスポンサーだった時期もありました。
現在は一般消費者向け事業は完全に撤退、BtoBとして電子部品、原子力、重電機、軍事などの重工業分野の企業となっています。
こうした東芝の真の意味での「リストラ」は世間から注目され続けていましたが、2024年に新たに4,000人削減プランを打ち出したことは大きく報道されました。
もともと混迷を極め、事業も大きく分断された結果「東芝」という会社に所属する社員は10年間でほぼ半減となっています。
報道が先行する形となったことで恐らく会社内部にも混乱が生じ、その後削減プランが緩和されるなどの情報が錯綜するなど、いまもなお難しい舵取りを求められている印象です。
これからの時代、リストラにどう備える?
いま現在が興隆を誇る成長企業だったとしても、何かのきっかけで経営が大きく傾き、足元が危うくなるという時代です。
これから新たに社会人になろうとしている皆さんは、どう心がけて働けばよいのか、少し思いを巡らすのも良いかもしれません。
リストラほど激動ではないにせよ、皆さんの人生にこれまであった「ターニングポイント」は自己アピールに活用できます。
こちらの記事もあわせて参考にしてみてください。
キャリアは、会社ではなく市場に価値を求める
キャリアは会社にではなく、市場に価値を求めてみましょう。
いまはピンとこないかもしれませんが、簡単にいえば、常に目線を会社の中ではなく、会社の外側にあります。
つまり、日本経済や自分の会社を取り巻くビジネス環境の広域を見ようと心がけることです。
もっと端的にいえば、「入った会社はいつでも辞められる、自分の居場所は自分で見つける」と心得ましょう。
もちろん自分の所属している会社で成果を出し、立場を上げていくことは重要です。
しかしそれが単なる内ゲバ(仲間うちの抗争)で消耗せず、どんな環境・どんな会社であっても成果を出せるような社会人になることを目指しましょう。
ちなみに、市場に価値を生み出す、わかりやすい方法が一つあり、それは「有言実行し、約束を守る」ことです。
社会人になってみると、これだけのことがいかに難しいかをきっと実感するでしょう。
有言実行を果たし約束を常に守る人には、人が集まり、仕事が集まり、信頼が集まるものです。
技術を磨き成長を止めない。人脈をつくり自分の価値を維持する
会社の中にずっと閉じこもっていると、その会社の中での評価は相対的に高いかもしれません。
しかし、会社の信頼が傾くと同時に自分の信頼や価値も下がってしまうことに、いまは危機感を持ったほうがいいかもしれません。
仮に会社が傾こうと、自分の価値を維持する、むしろ高めてくれる、別の指標が必要です。
ひとつは、技術です。
ここでいう技術とは、研究職や技術職の人だけが対象ではありません。
たとえば、経理資料から会社状況を把握できる数字を読む力や、人との交渉を自分主体で進められるコミュニケーション力は重要です。
ときには多くの人を味方につけ、結束力を最大効率に導けるような人徳や人間力も、ある意味では技術といえるでしょう。
こういった力は、自分で意識しないとある時点で成長が止まってしまいます。
考え方や物の見方、価値観は時代とともに変わっていくため、その流れをしっかりとらえてアップデートし続けることができるかどうかが重要になってきます。
もうひとつ、人脈が大切です。
会社にいれば自然といろいろな関係者とつながれます。
一方でそれはあなた自身の力ではなく、会社という組織力や看板に頼った結果のつながりです。
会社が傾いたとき、あなた自身に魅力がなければその人脈は非常にもろいものでしょう。
また、会社とは違う人脈を持つことは、自分自身を磨き、モチベーションを高めてくれます。
誠意のある人脈は、あなたが窮地に陥ったときにこそ、手を差し伸べてくれるでしょう。
まとめ
これから社会人になろうと思っている皆さんにとっては、少しハードな話だったかもしれません。
しかし、こういった話を知っているだけでも働き方の心掛けだけではなく、就職活動の考え方にも多少の変化が生まれてくるのではないでしょうか。
はじめから辞めるつもりで就職活動をする人はいません。
いまの時代、会社に所属するというより、自分を実現するために会社があるくらいの心持ちで挑んでも良いかもしれません。
むしろそうした向上心のある人を、きっといまの時代の会社は求めて評価していくのではないでしょうか。
この記事が皆さんの将来にとって刺激を与え、少しでも良い結果をもたらすことができれば幸いです。