【業界研究】金融業界とは?業種から仕組み,代表的な職種まで大解剖!
2020年3月26日更新
はじめに
就活生に人気の金融業界。
例年、学生が就職したい人気企業ランキングの上位には
必ず金融系の企業がランクインしていますし、
高給や好待遇、安定といったイメージを抱いている方も多いのではないでしょうか?
しかし、ひと口に金融業界と言っても、大きく分けて
・銀行
・証券
・損害保険
・生命保険
と業種が分かれており、それぞれ業務内容も異なるうえ、
求められる資質や持っていると有利な資格も変わってきます。
それぞれの違いをしっかりと理解せずに、ただ「金融業界」という括りで就活を進めてしまうと、入社後のミスマッチにつながってしまう可能性があります。
そのような事態にならないよう、本記事で業界に対する理解を深め、
自分の志望する分野がどこなのか、はっきりさせておくようにしましょう。
本記事では、
・金融業界の4つの業種とビジネスモデル
・金融業界の区分:直接取引と間接取引
・金融業界における職種
・金融業界で働くメリット・デメリット
について、解説していきます。
1.金融業界の職種 ①銀行
それではまず、
金融業界と聞いて誰もが思い浮かべる「銀行」について、見ていきましょう。
1-1.「銀行」のビジネスモデル
銀行のビジネスモデルは、
以下のようになります。
①資金余剰者(個人・企業)から「預金」という形でお金を預かる
②預かったお金を企業へ貸し出し
①、②の状況では、それぞれ
①預金金利(銀行→資金余剰者)の支払い
②貸出金利(企業→銀行)による利益獲得
となるため、
銀行はこの「貸出金利と預金金利の差」(専門用語では、”利ざや”と呼ばれます)によって、利益を得ているといえます。
1-2.銀行の種類
また、銀行の種類は大きく分けると、
・メガバンク
・地方銀行
・信託銀行
・信用金庫・信用組合
の4つに分けることができます。
◯メガバンク
預金や貸出金の額面が非常に大きい銀行です。
いわゆる、誰もが聞いたことのある大手銀行を指します。
例)三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、りそな銀行
◯地方銀行
特定の地域に特化した営業活動を行う銀行であり、
略して「地銀(ちぎん)」などと呼ばれることも多いです。
例えば、千葉銀行や横浜銀行などは、東京には店舗を構えておらず、コンビニのATMなどで対応する形となります。
例)千葉銀行、横浜銀行、宮崎銀行、大分銀行 など
◯信託銀行
上記の「メガバンク」や「地方銀行」のビジネスモデル以外にも、
顧客の株式や不動産の管理などもサービスとして提供しています。
例)三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行 など
◯信用金庫・信用組合
特定の地域や業種を営業範囲としており、会員・組合員から出資金(預金)を集めて、集めた資金を相互扶助の理念の元で、中小・零細企業や個人に出資しています。
例)京都中央信用金庫、大阪信用金庫 など
2.金融業界の職種 ②証券
証券のビジネスモデル、収益の源泉は以下の通りです。
・引受手数料収益
企業が上場したり、新たな株式を発行したりする場合にその株式を証券会社が引き受け、これを投資家に売る際に手数料収益を得ます。
・株式・投資・債権売買委託料収益
顧客である投資家から証券売買の注文を受け、株式や債権の売買を仲介して、この売買の委託料として収益を得ます。
・トレーディング収益
証券会社が独自に持つ自己資金で、株式や債権の売買を行い収益を得ます。
・その他収益
株式口座管理手数料や投資信託代行手数料、M&Aや財務に関するコンサルティングによるコーポレートアドバイザリー手数料など、手広く収益を得るポイントを設けています。
また、証券会社の種類は大きく分けると2つの種類があります。
<店舗証券>
店舗証券とは、全国に支店を持ち、対面販売が中心の営業を行うのが特徴です。
例)野村証券、大和証券、SMBC日興証券 など
<ネット証券>
2000年以降、インターネットやIT化の発展とともに店舗型に台頭する形で急増し始めたのが、オンラインでのトレードが可能なネット証券です。
例)GMOクリック証券、SBI証券、楽天証券 など
3.金融業界の職種 ③損害保険
損害保険はとはおおまかに言うと、「モノ」を守るための保険です。
代表的なものとしては、「自動車保険」「火災保険」「旅行保険」などが挙げられます。
損害保険のビジネスモデル、収益源は以下の通りです。
・保険引受利益
顧客の保険料から、顧客に支払う保険金や代理手数料などのコストを差し引いて生じる利益
のことを言います。これは損害保険会社のコアな収入源となっています。
・資金運用収益
資産の運用によって得られた利益の子を言います。
これは保険料として預かったお金の一部を元手として、不動産の取引や株式・社債の運用によって利益を稼ぐというものです。
損害保険会社には、「3メガ損保」と呼ばれる大きな企業があります。
「東京海上ホールディングス」「MS &ADインシュアランスホールディングス」「損保ジャパン日本興亜ホールディングス」の3社です。各社について簡単にまとめていきます。
<東京海上日動火災>
従業員数は、およそ1万7,000人で収入保険料は約2.1兆円の業界最大手企業です。国内で5万にものぼる代理店を経由したサービスの提供を行っています。
<三井住友海上火災>
MS &ADインシュアランスホールディングスグループの子会社で、従業員数は1万4,000人で収入保険料は約1.5兆円となっています。
海外事業にも積極的で、マレーシアやインドネシアなど東南アジア諸国やイギリスなど幅広く事業を拡大しています。
<あいおいニッセイ同和損保>
三井住友海上火災と同様にMS &ADインシュアランスホールディングスグループの子会社です。従業員数は1万3,000人で、収入保険料は約2.2兆円となっています。
<損保ジャパン日本興亜>
2014年に損保ジャパンと日本興亜が合併して成立しました。従業員数は約3万3,000人で、収入保険料は約2.2兆円となっています。最近ではワタミの介護事業買収も成立するなど多角化が進んでいます。
4.金融業界の職種 ④生命保険
損害保険が「モノ」を守るための保険だったのに対して、生命保険は「ヒト」に関する保険を扱います。
思いがけない事故や病気などで、怪我や病気、あるいは死亡に至った場合などに、自分や自分の家族が生活を営んでいく上で抱えうる経済的困難を補うものが生命保険です。
生命保険のビジネスモデル。収益源は以下の通りです。
・利差益
保険を契約する際に契約者側と交わした利回り(予定利率)と、自社で実際に運用した場合の利回り路の損益のことをいいます。
・死差益
生命保険会社側が独自に算出した保険契約者の予定死亡率と、実際の死亡率との差から生まれる損益のことをいいます。現在のところ、この死差益が生命保険会社の大きな利益源となっています。
・費差益
事業の実施にあたって予定していたコストと、実際にかかったコストの差によって生じる損益のことをいいます。
生命保険業界の大きな企業を、国内系企業2社、外資系企業1社について簡単にまとめていき
たいと思います。
<日本生命(国内系)>
1889年に創業した日本で3番目に古い生命保険会社です。
保険料収入ランキング、基礎利益ランキングともに1位に位置しており、業界最大手の企業であるといえます。
2015年には三井生命を買収し、業界の再構築を進めています。
<かんぽ生命(国内系)>
郵政民営化によって2007年に誕生した日本郵政傘下の保険会社です。
郵便局との提携のもとで商品提供を行うため、他社に比べてより多くの人々にサービスを届けることができる、という点が最大の魅力です。
<アフラック(外資系)>
1974年に日本で初めて「がん保険」の営業を開始したのが、このアフラックです。以来、がん保険では国内トップのシェアを誇り、医療保険の分野にも強い基盤を持っています。
5.金融業界の区分:直接取引と間接取引
そもそも金融とは本来、
「お金」が余っているところから、必要としているところへ「融通」する
という意味でした。しかし、現代ではその取引が複雑になっており、この定義だけに当てはまらなくなりました。
今では
「経済活動の血液として、お金が社会の中を回ること」
と捉えられています。
血液が循環しないと生きていけないように、お金がなければ経済は成り立たないのです。これらのお金を世の中にうまく循環させることを価値とする業界が金融業界なのです。
そのような金融業界の業界研究のポイントについて解説していきます。
主なビジネスモデル
金融業界のビジネスモデルは、主に2つに分けられます。
・まず1つ目が「間接金融」です。
間接金融とは「資金を必要としている人(借手)」と「資金に余裕がある人(貸手)」の間に、仲介役として銀行などの金融機関が入り、調整を行う仕組みのことです。
間接金融では、資金の借手と貸手が直接会わないというところが特徴です。
貸手は借手の信用力を調べる作業をしなくても済むというメリットがある一方で、金融機関に手数料を取られるため、大きな利回り(利益)を得にくいというデメリットもあります。
・2つ目が「直接金融」です。
直接金融とは借手と貸手がお互いに条件を提示し、金融機関を介さずに資金の貸し借りや投資を行う仕組みのことです。
直接金融の特徴は、市場で自由に売買行うことができること、貸手が行う投資の責任はすべて貸手が負うことにあります。
投資のサポートを行う金融機関(証券会社など)が、投資の責任を負うことはありません。一方で、仲介役がいないため、資金調達がしやすいというメリットがあります。
6.金融業界における代表的な5つの職種
次に、金融業界の職種としてどのようなものがあるのか、代表的なもの5つについて見ていきましょう。
①「個人営業」
個人営業は、保険や証券などの金融商品を個人に向けて販売する仕事です。
資産を築いている個人の顧客に対して、その顧客の要望に基づいて適切な商品を組み合わせて提案します。保険会社や証券会社ではノルマがあることが多く、代表的な営業マンの仕事であるといえるでしょう。
②「法人営業」
法人営業は、法人企業の財務面をあらゆる面からサポートする仕事です。
時には金融商品を提案したり、資金の借り入れを勧めたり、資金調達のお手伝いも行います。企業経営は、財務と密接な関係があることから、顧客の経営に深く関わるケースも多いです。
③「ファイナンシャルプランナー」
ファイナンシャルプランナーは、銀行や証券会社、保険会社などで顧客である個人に対して、資金計画や資産運用などの助言を行います。
また、ファイナンシャルプランナーは国家資格である「FP技能士」、民間資格である「AFP」「CFP」があり、個人営業として働きつつこれらの資格を取りながら、独立する人も多くいます。
④「ファンドマネージャー」
ファンドマネージャーは、法人から預かった莫大な資産を投資運用する仕事です。
株式市場に上場している企業への投資や、更には株式公開前のベンチャー企業に対する投資を行います。
さらに様々な企業の業務内容や業績、将来性を分析し、有望と判断した企業や国、金融商品等に投資しています。
⑤「証券アナリスト」
証券アナリストは、銀行や証券会社に所属し、個別企業の将来性や社会の動向などを分析する仕事です。
分析の対象は経済だけにとどまらず、政治情勢や新興国の経済、また新しい技術に対する情報収集や調査も行います。
ここで取り上げたもの以外にも様々な職種が存在しています。
職種に関してもしっかりと調べて、自分の興味に合いそうなものを見つけましょう。
7.金融業界のメリット・デメリット
どんなものにも良い点・悪い点が存在するように、
金融業界にもメリット・デメリットが存在します。
まずは、メリットからです。メリットは大きく2つあります。
1つ目は、「安定した収入が得られる」ということです。
安定した収入によって金銭面での安定が得られるのが金融業界の魅力の1つです。
2つ目は、「給与水準が高い」ということです。金融業界は、参入障壁が高い業界です。参入障壁が高い業界は給与水準が高い傾向にあり、金融業界も例外ではありません。給与水準が高いということは、安定した収入というところにもつながっています。
経済的なメリットが大きい一方で、デメリットもあります。
1つ目は、「精神力がないと続かない」ということです。
金融業界は、顧客のお金を任される仕事であり、大きな責任を背負うことになります。また、失敗すると大きな損失につながる可能性が大きいため、より正確で丁寧な仕事が求められます。
そのため、精神的にタフでないと務まらない点も無きにしも非ずです。
2つ目は、「裁量の大きい仕事があまりない」ということです。
前述の通り、失敗すると大きな損失につながる可能性が大きい業界であるため、マニュアル化されている業務をこなしていくケースが多く見られます。そのため、好奇心旺盛で「何にでも挑戦して行こう!」という人は、次第に合わないと感じるかもしれません。
このように、金融業界で働くということは当然ながらメリットとデメリットが存在しています。
しかし重要となるのは、「安定しているから」や「給与が高いから」という安直な理由で金融業界を選ばないことです。メリットとデメリットの双方を十分に検討したうえで選択することが、非常に重要なポイントとなります。
まとめ
ここまで見てきたように、金融業界といっても業種や職種は様々です。
当然ながらそれぞれの業種によって、業務内容にばらつきがあります。
また、職種によっても必要な資質や、持っていると有利な資格が異なります。
そのため、「金融業界」という括りでは大きすぎるかもしれません。
それぞれの業種や職種についてしっかりと理解し、自分自身のやりたいことと照らし合わせてみましょう。
すべてを理解することは難しいかもしれませんが、入社後のミスマッチを減らすためにも、しっかりと業界研究に取り組むようにしましょう!