【業界研究】SIerについて徹底解説!特徴や向き不向きは?
2023年12月28日更新
はじめに
就活を成功させるためには業界研究をしなければなりません。業界独自の業務や特徴を知っていないと入社後にギャップを感じて長く続かないかもしれませんし、長く仕事を続けるためには業界全体の将来も考えることが必要です。
そこで、ここではSIer業界について基本概要から業務内容、就活に役立つ情報をご紹介します。
この記事は以下のような点を知りたい就活生を対象にしています。
- SIer業界ってどんな仕事をするの?
- SIer業界の就活難易度は高いか気になる
- SIer業界の選考対策
SIer業界に興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
また、SIer以外の業界については、以下の記事で概観しているので、ぜひご覧ください。
この記事の結論
SIer業界の就職難易度は極端に難しくはないといえるでしょう。SIer業界は需要の高さから人手が必要であるため、業界全体の採用数は多い業界です。しかし、誰でも入れるわけではありません。根拠としてプログラミングに関する専門的な知識を身に着けるための下地を求められる点があります。また、日々技術が進化するため、それに対応可能な地頭の良さを求められます。しっかり選考対策を行い他の就活生に遅れを取らないようにしましょう。
選考対策として業界理解を深めると同時に、エントリーシートを記載する段階で自己分析をしっかりと行うことと、面接の頻出質問にしっかりと対応できるように練習することです。後ほど具体的な方法を紹介しますので是非最後までお付き合いください。
SIer業界とは?
SIerとはシステムインテグレーターを意味する略称であり、顧客のITシステムのコンサルティング・設計・開発・運用を一貫して請け負う事業者を指します。主な顧客は医療機関や金融機関、官公庁といった非IT企業で、これらの企業の業務をITで効率化・高度化するためのシステムを構築するのがSIerの役割です。
SIer業界の事業内容は大きく分けて以下の3つに分けられます。
- コンサルティング:顧客の業務課題を把握し、ITシステムを活用した解決策を提案する。
- 設計・開発:顧客の要件に基づいてシステムの設計・開発を行う。
- 運用・保守:システムの安定稼働を維持するために運用・保守を行う。
SIer業界はIT技術の変化や顧客のニーズに応じて常に新しい技術やソリューションを提供する必要があります。そのため、常に新しい知識やスキルを身につけることが求められる業界です。
また、SIer業界はプロジェクト単位で仕事を進めることが一般的であり、チームワークやコミュニケーション能力が求められる業界でもあります。
SIer業界の現状は?
トピック1:人材不足
SIer業界はIT技術の変化や顧客のニーズに応じ、常に新しい技術やソリューションを提供する必要があります。そのため、常に新しい知識やスキルを身につけた人材が必要です。しかし、近年はIT業界全体で人材不足が深刻化しており、SIer業界も例外ではありません。
この点は就活生にとっては入社しやすくなる要因です。ただし、SIerは人気のある業界であることから大手企業の選考は難しくなっています。つまり、選考を受ける企業によって難易度にかなりの差がある事が特徴的です。
トピック2:顧客ニーズの多様化
SIer業界の顧客は医療機関や金融機関、官公庁といった非IT企業が中心です。これらの企業はそれぞれに異なる業務課題やニーズを持っています。そのため、SIerは顧客のニーズを的確に把握し、それに応えるシステムを構築することが求められています。
とくに、近年は顧客のニーズがますます多様化しています。例えば、クラウドサービスの活用やIoT・AI・ビッグデータなどの先進技術の導入など新しいニーズが次々と生まれています。SIerはこれらのニーズに迅速に対応することが重要であり、対応できる企業が売上高を伸ばしています。
SIer業界の未来は?
トピック1:DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
企業のDX化が進むことでSIer業界にも新たなビジネスチャンスが生まれます。まず、DXとは企業がITを活用してビジネスモデルや業務プロセスを変革することです。DXを実現するためにはシステムの開発や運用だけでなく、コンサルティングやデータ分析などの幅広いスキルや知見が必要となります。SIerはこれらのニーズに応えるべくDXに関する事業を強化していくことが重要です。
トピック2:グローバル化の進展
日本企業の海外進出や海外企業の日本進出が進むことでSIerのグローバル展開が求められています。SIerは海外のIT企業との連携や海外拠点の拡大などを通じてグローバル市場での競争力を高めていくことが重要です。
SIer業界は今後もIT化の進展やDXの推進、グローバル化の進展などによって成長が見込まれる業界です。しかし、競争が激化する中で差別化を図ることが重要となります。SIerは国内だけでなく国外でも常に新しい技術やソリューションを提供し続け、顧客のニーズに応えるべく新たなビジネスモデルを模索していくことが求められます。
SIer業界の職種
職種①SE(システムエンジニア)
システムの設計・開発・運用を行う職種です。要件定義から運用・保守までシステム開発の全工程に携わることもあります。
職種②PM(プロダクトマネージャー)
システム開発プロジェクトの全体を統括する職種です。スケジュールや予算、品質などの管理を行い、プロジェクトの成功を導きます。
職種③ITコンサルタント
クライアントの課題をITの力で解決する職種です。要件定義や設計などプロジェクトの初期段階から関わり、クライアントのビジネスを支援します。
職種④セキュリティエンジニア
システムのセキュリティを担保する職種です。セキュリティ対策の設計・開発・運用を行い、システムの安全性を守ります。
職種⑤データサイエンティスト
データを分析・活用してビジネスの課題を解決する職種です。AIや機械学習などの技術を駆使することでデータから新たな価値を創造します。
職種⑥クラウドエンジニア
クラウドサービスの導入・運用を行う職種です。クラウドサービスの知識や技術を有し、クライアントのニーズに合わせて最適なクラウド環境を提供します。
職種⑦Webエンジニア
WebサイトやWebアプリケーションの開発・運用を行う職種です。HTMLやCSS、JavaScriptなどのWeb開発技術を有し、Webシステムの企画・設計・開発・運用を行います。
職種⑧アプリケーションエンジニア
スマートフォンやタブレット向けのアプリの開発・運用を行う職種です。JavaやSwift、Kotlinなどのアプリ開発技術を有し、モバイルアプリの企画・設計・開発・運用を行います。
SIer業界の市場規模・推移
SIerの市場規模は8兆8,564億円となっています。さらに、今後5年間で30.99%成長すると予測されており、これから伸び続ける可能性の高い業界です。業界全体として安定しているため、将来的な転職などもおこないやすくなっています。ただし、業界全体で安定しているのであって、会社それぞれの事情とは異なる点にご注意ください。
参照ページ
SIer業界の売上高ランキング
SIer業界の売上高ランキングは下記のとおりです。
SIer業界に属する企業の売上高ランキングは上記のグラフ通りです。
上記企業はSIer業界に属していますが、事業内容自体はかなり異なります。そのため、選考に進む前には各会社の事業内容を調べることが必要です。SIer業界に進みたいと決めている場合は、専門的にそのサービスのみを提供している会社なのか、あるいは他の事業領域にも展開している総合企業なのか、良く違いを知り考えたうえで結論を出した方がいいでしょう。
参照ページ
SIer業界の大手企業紹介
売上高ランキング上位5つの会社をご紹介します。
- 富士通
- NEC
- NTTデータ
- 日立製作所
- パナソニックコネクト
企業①富士通
富士通は1935年に設立された日本最大のIT企業です。事業内容はITシステムのコンサルティング・設計・開発・運用・保守、ハードウェア・ソフトウェアの開発・販売、金融サービスなど多岐にわたります。
富士通の強みは幅広い技術力とグローバル展開力です。ITシステムのコンサルティングや設計・開発において豊富な実績とノウハウを有しています。また、海外拠点も世界各地に展開しており、グローバルなビジネスを展開する企業のニーズにも対応している企業です。
企業②NEC
NECは1899年に設立された日本を代表する総合電機メーカーです。事業内容はITシステムのコンサルティング・設計・開発・運用・保守、ハードウェア・ソフトウェアの開発・販売、ネットワークサービスなど多岐にわたります。
NECの強みは通信技術とセキュリティ技術です。通信ネットワークの構築やセキュリティシステムの開発・販売において高い技術力を有しています。また、官公庁や金融機関など、セキュリティが求められる分野で多くの実績を残しています。
企業③NTTデータ
NTTデータは1988年に設立された日本最大のITサービス企業です。事業内容はITシステムのコンサルティング・設計・開発・運用・保守、ハードウェア・ソフトウェアの開発・販売、ネットワークサービスなど多岐にわたります。
NTTデータの強みはNTTグループのネットワークとデータセンターの活用です。NTTグループのネットワークとデータセンターを活用することで大規模なシステムの構築や運用を効率的に行うことができます。また、官公庁や金融機関など大規模なシステムを構築するニーズが高い分野で多くの実績を残しています。
企業④日立製作所
日立製作所は1910年に設立された日本を代表する総合電機メーカーです。事業内容はITシステムのコンサルティング・設計・開発・運用・保守、ハードウェア・ソフトウェアの開発・販売、エネルギー・環境事業など多岐にわたります。
日立製作所の強みはIoTやAIなどの先進技術への取り組みです。IoTやAIなどの先進技術を活用したシステムの開発・提供において積極的に取り組んでいます。また、製造業や流通業などIoTやAIの活用が進む分野で多くの実績を残しています。
企業⑤パナソニックコネクト
パナソニックコネクトは2015年に設立された、パナソニックのIT子会社です。事業内容は、ITシステムのコンサルティング・設計・開発・運用・保守、ハードウェア・ソフトウェアの開発・販売などです。
パナソニックコネクトの強みはパナソニックグループの幅広い技術とノウハウの活用です。パナソニックグループの製品やサービスと連携したシステムの開発・提供において強みを発揮しています。また、製造業や流通業などパナソニックグループの顧客が多い分野で多くの実績を残しています。
SIer業界で働くメリット
SIer業界で働くと、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは代表的な2つのメリットについて確認してみましょう。
メリット①幅広い技術や知識を身につけることができる
SIerは顧客の業務課題を解決するためにさまざまな技術や知識を駆使してシステムを構築します。そのため、SIerで働くことで幅広い技術や知識を身につけることができます。
具体的には以下のようなものが挙げられます。
- プログラミング言語
- データベース
- ネットワーク
- セキュリティ
- プロジェクトマネジメント
- コンサルティング
これらの技術や知識はIT業界だけでなくさまざまな業界で通用するスキルです。そのため、SIerで働いた経験は転職や独立にも有利になります。
メリット②社会貢献性の高い仕事ができる
SIerが提供するシステムは企業の業務効率化や経営改善、顧客サービスの向上などさまざまな形で社会に貢献しています。そのため、SIerで働くことは社会貢献性の高い仕事ができるというメリットがあります。具体的には以下のようなものが挙げられます。
- 医療機関向けのシステムで患者の診療や治療を支援する
- 金融機関向けのシステムで顧客の資産運用や融資を支援する
- 製造業向けのシステムで生産ラインの効率化を支援する
このようにSIerの仕事は人々の生活やビジネスをより便利で快適なものにすることにつながっています。
SIer業界で働くデメリット
SIer業界で働くことはメリットだけではありません。職業柄求められることが人によっては耐えられない程辛いこともあります。メリットだけで決めるのではなく、自分の適性も確認したうえで進むべきかどうかを判断していきましょう。SIer業界で働くデメリットには下記のようなものがあります。
デメリット①長時間労働や激務が強い
SIerは、プロジェクト単位で仕事を進めることが一般的です。そのため、納期や予算に間に合わせるために長時間労働や激務が強いというデメリットがあります。
兜町 金融エンジニアの成果物の調査ではSIerの平均残業時間は30時間を超えています。また、休日出勤や深夜勤務も頻繁に発生する可能性があります。
長時間労働や激務が続くと心身に大きな負担がかかるものです。そのため、体力や精神力、ストレス耐性などを備えていることが求められます。
デメリット②転勤や出張が多い
SIerは全国各地に拠点があります。そのため、転勤や出張の可能性が高いというデメリットがあります。
特に、大規模なプロジェクトの場合には顧客の近くの拠点で勤務する必要があるため、転勤や出張の可能性は高くなります。転勤や出張を希望しない場合は中小規模のSIerや地域密着型のSIerを検討するとよいでしょう。
SIer業界への就活を成功させるためには
まずは、就活に関する基本的なことは業界関係なく対策が重要です。ESのブラッシュアップ、面接対策は必ず徹底的におこないましょう。また、この業界向けに志望動機を書く際の注意点やよくある志望動機などをまとめてあるとより理想的です。
その上で、志望動機を作る上で大切なポイントが4つあります。それぞれの特徴とSIer業界でよくある志望動機を見ていきましょう。
なぜSIer業界なのか
- なぜ数ある中からSIer業界なのか
- それは他の業界ではできないのか
なぜその企業なのか
- 数ある中でなぜその会社を選んだのか
- それは競合他社では達成できないことなのか
なぜその職種なのか
- 5つのジョブがある中でなぜそのジョブを応募したのか
- 果たして他のジョブや全く関係ない業務でそれは達成できないか
以上の3つが自分のやりたいことや方向性とどうマッチするのか
- まず以上の3つ内容に相違はないか、論理的に破綻していないか
- そのうえで、自分が将来目指したいことや達成したいことにマッチするか
ES・面接頻出質問をご紹介
- なぜこの業界を志望しているのですか?
SIer業界を志望する理由は、インターン時の経験から今後もこの業界に従事したいと考えているからです。私は2年間の実務経験から、セキュリティシステムの設計、脆弱性の評価、そしてそれらの対策策定に関する実務知識を身につけました。
今後はこれまでの経験を活かし、更なる高度化されたサイバー攻撃への対策や、大人数でのプロジェクトマネージャーを経験することで、貴社に貢献したいと考えます。
- なぜ弊社にご応募いただいたのですか?
貴社のカルチャーとして、誰でもプロジェクトの責任者になるチャンスがあると伺ったからです。
私は学生時代、セキュリティ関連のインターンシップに2年間参加し、実際のセキュリティ問題解決に関わる経験を積みました。この経験を通じて、セキュリティシステムの設計から運用までに関する実務知識を身につけました。私はキャリアアップとしてリーダーのポジションに立つことが現状の目標であり、そのために貴社がマッチしていると考えています。
入社後、この豊富な実務経験と学んだ知識を活かし、貴社のセキュリティチームにおいて即戦力として貢献します。
この質問返答を4つのフレームワークに当てはめて回答すると以下のようになります
なぜSIer業界なのか
SIer業界は多岐にわたるクライアントの課題に対して技術的な解決策を提供する環境であり、私が持っている技術への興味と挑戦する機会が多いといった点が私に向いています。また、最先端が常に更新され続けるといった点も勉強が好きな私に向いている点です。
なぜその企業なのか
御社はSIer業界でリーダーシップを誇り、大規模で複雑なプロジェクトに取り組んでいます。私は自分が関わったプロジェクトによって社会貢献をおこないたいと考えているため、SIer業界のなかでも大規模プロジェクトに多数関わっている御社を志望しております。
なぜそのジョブなのか
本ジョブは私の技術的なスキルや問題解決能力を活かせるものであり、プロジェクトの計画から実行までのフルサイクルに関与できることが魅力です。また、新しい技術の導入や最適なアーキテクチャの構築に挑戦することで常に向上心を持ちながら働けると感じています。
以上の3つが自分のやりたいことや方向性とどうマッチするのか
これらの選択は私の将来の技術的なキャリアゴールと一致しています。SIer業界での経験を通じて異なる業界やクライアントのニーズに対応できる幅広い技術スキルを磨きたいと考えています。また、リーダーシップの一翼を担い、技術領域での専門性を深めることで自身の成長と企業への貢献を実現したいと思っています。
このように自分のやりたいことや将来像に対して、現在とのギャップがどうなのか。そしてそれを埋めるために貴社を志望するといったロジックも一つの方法ということも覚えていただけると嬉しいです。
また、具体的な面接対策を紹介している記事などが他にありますので、是非合わせて読んでみてください。
まとめ
本記事ではSIer業界について解説しました。SIer業界は情報の信頼性を確保する非常に重要な業務をおこなっています。求められるスキルが高い分、やりがいや転職が有利になるため、気になっている方は実際の会社の説明会などに参加していきましょう。