博士課程は就職難?理由と内定を勝ち取るポイント

博士課程は就職難?理由と内定を勝ち取るポイント

2024/10/8更新

はじめに

「博士課程は就活が難しい…」という話しを耳にしたことはありませんか?

Web上で、「博士号」「就活」をキーワード検索すると様々な情報や記事を目にします。

もし本当に就職が難しいとしたら、博士課程への進学をためらってしまうのも当然のことでしょう。

そこで、今回は、博士課程における就活をテーマに、なぜ就活が難しいと言われるのか、就活を成功させるためには、どのようなポイントをおさえていけばいいかをご紹介します。

この記事は以下のような方に向けて書いています。

対象の読者
  • 既に博士課程に在籍しており将来の就職活動に不安を感じている
  • 博士課程の就活のポイントを知りたい
  • 博士課程の就職率を知りたい

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博士課程が就職難と言われる理由

博士課程が就職難と言われる理由

そもそも博士課程とは、大学院において、修士課程修了後にさらに高度な専門知識や研究能力を習得するための課程です。

学術的な探求心や強い問題意識を持ち、特定の分野を深く掘り下げて研究したいという方が博士課程を選ぶことでしょう。

また、その分野の専門家として社会に貢献したいという強い意志を持つ方も居るかもしれません。

では、なぜ博士課程卒の就職は難しいと言われるのでしょうか。

多くのウェブサイトでも指摘されている、博士号取得後の就職活動を難しくする要因を、4つのポイントに絞って解説していきます。

卒業までの期間が長い

博士課程の卒業までには長い年月がかかります。

学士課程が4年で卒業できるのに対し、博士課程は9年かかるため、企業側としては二の足を踏んでしまうことがあります。

区分入学から卒業までの年数卒業年齢
学士課程4年22歳
修士課程4年(学士)+2年=6年24歳
博士課程博士課程27歳

注:入学から卒業までのブランク(浪人など)は考慮していません。

具体的には、以下のような点が懸念されます。

懸念①|入社年齢に関する課題

上の表が示すように、博士課程卒業者の入社年齢は、一般の新卒社員よりも高くなります。

同期との年齢差や、中堅社員と同年代になってしまう可能性があるため、企業側は配属先での人間関係やチームバランスを懸念することがあるのでしょう。

博士課程卒業者は専門性の高い知識を持つ一方で、実務経験が少ない場合もあるため、企業によっては育成期間の長さも考慮する必要があります。

懸念②|給与面での課題

多くの企業では、勤続年数に応じて基本給が上がる仕組みを採用しています。

博士課程卒業者は入社年齢が高いため、企業はどの給与テーブルに当てはめるべきか頭を悩ませることになのかもしれません。

一般的な新卒社員の初任給よりも高額になる可能性があり、企業にとってコスト面での負担が大きくなる懸念があります。

懸念③|配属先決定が難しい

博士課程卒業者は専門性が高い一方、年齢も高いため、企業はどの部署に配属するのが最適か頭を悩ませることがあります。

年齢によるチームバランス、専門性を活かせる業務内容など、考慮すべき点が多いためです。

多くの企業では、部署の人員構成を年齢や経験に基づいて決めています。

博士課程卒業者は、新卒でありながら学士卒よりも5歳程度年上になるため、年齢バランスを考慮する必要があるのです。

また、年下の先輩との関係構築など、人間関係の面でも配慮が必要となる場合があります。

求人数の低下

博士課程卒業者が活躍できる場は、残念ながら学士卒に比べて限られています。

企業が環境問題などに取り組んでいても、それを専門的に分析するポジションを設けているケースは多くありません。

専門性を活かせる職種に就きたい場合、求人数が少ない、あるいは欠員が出にくいといった状況に直面する可能性があります。

博士課程卒業者の採用実績がある企業は、受け入れ体制を整えていることもありますが、多くの企業ではまだ準備ができていないのが現状です。

博士課程で得た専門知識を活かせる仕事は魅力的ですが、その分、競争率も高くなる傾向があります。

博士号取得者の就職率

では、実際の就職率はどうなのでしょうか。

文部科学省「令和4年度学校基本調査(速報値)の公表について」のデータによると、以下のとおりです。

就職率の差は、以下の通りです。

区分令和4年度就職率
博士課程70.2%
修士課程76.1%
学士74.2%(令和3年度)

 

学士と修士課程の就職率に大きな差はないのに対し、最新のデータでは、博士課程の就職率は70.2%となっています。

博士課程の就職率は過去最高を更新しており、年々低下しているわけではなく、むしろ向上傾向にあると言えます。

 

博士課程の進路には何がある?

博士課程というと、「研究職」といったイメージを持つ方が多いでしょう。

しかし、博士課程を修了した後にどのような進路があるのか、具体的に知ることで、そのイメージも変わるかもしれません。

博士課程修了後の進路は、大きく3つに分類されます。

博士課程修了後の進路
  • 研究職
  • 大学研究室
  • 一般企業

それぞれの内容を詳しくみていきましょう。

①研究職

博士課程修了後の進路として最も多いのは、大学や企業の研究機関などで研究職に就くことです。

博士課程で培った専門知識や研究スキルを活かし、さらに深く研究を続けたいと考える人が多く、人気の進路となっています。

しかし、研究職のポストは競争率が高く、狭き門であることも事実です。

博士課程で得た専門性を活かせる企業や研究機関をしっかりと見極め、将来のビジョンを明確に持って就職活動に臨むことが大切です

②大学研究室

博士課程修了後、大学に残って研究を続ける道を選ぶ人も少なくありません。

慣れ親しんだ環境で、自分の研究に没頭できるという魅力があります。

しかし、大学教員や研究員のポストは非常に限られており、研究職以上に狭き門です。

在学中から質の高い論文を発表したり、教授や関係者への積極的なアピールなど、将来を見据えた行動が求められます。

③一般企業

博士課程修了後、一般企業に就職する道を選ぶ人も多いです。

研究分野にとらわれず、幅広い業界で活躍したい、新たなことに挑戦したいという方がこの道を選びます。

ただし、必ずしも自分の専門分野を活かせる仕事が見つかるとは限りません。

企業選びには苦労することもありますが、企業文化や理念に共感できるかどうかを重視して就職先を決めるケースが多いようです。

博士号を取得するメリットとデメリットは?

そもそも「就活が難しい」といわれる博士課程ですが、博士号をとるメリットはどういったものがあるのでしょうか。

ここでは、メリットとデメリットについて解説していきます。

メリット

博士号を取得するメリットは、専門性を極め、新たな可能性を切り拓くことにあります。

①専門分野を深く掘り下げられる

博士課程では、特定の研究テーマにじっくりと取り組み、専門性を極めることができます。

論文作成や研究活動を通じて、その分野の最先端に触れ、新たな知見を生み出す喜びを味わえるでしょう。

②専門職への道が開ける

博士号は、研究者や大学教員など、専門性の高い職業へのパスポートとなります。

また、企業においても、研究開発部門などで専門知識を活かした活躍が期待されます。

③広い視野と人脈を築ける

博士課程では、国内外の研究者との交流や、膨大な文献に触れる機会があります。

これにより、自身の研究分野だけでなく、関連分野の知識も深まり、広い視野を養うことができます。

また、将来のキャリアにつながる貴重な人脈を築くことも可能です。

博士号を取得するデメリット

博士号を取得するデメリットもみていきましょう。

デメリット
  • 在籍期間が長くなる
  • 経済的負担が増える

以下で解説していきます。

①在籍期間が長くなる

博士課程は、一般的に3年以上かかるため、卒業までの期間が長くなることがデメリットのひとつです。

その分、社会に出るタイミングが遅れることになります。

②経済的負担が増える

学費や生活費など、経済的な負担が大きくなる可能性があります。

奨学金や研究助成金などを活用することもできますが、経済状況をよく考慮する必要があるでしょう。

博士号取得は、専門分野を極めたい、研究者としての道を歩みたいという強い意志を持つ人にとって、大きなメリットがあります。

一方で、時間的、経済的な負担も大きいため、将来のキャリアプランをよく考え、慎重に選択することが重要です。

博士課程における就活のポイント

博士課程における就活のポイント

就活が難しいといわれている博士課程での就職活動を、スムーズに進めるための具体的な方法を見ていきましょう。

これからご紹介するポイントは、博士課程に限らず、学士や修士課程の就職活動にも役立つはずです。

概要
  • 企業選定のポイント
  • 就活の活動ポイント

今回は、上記2つのポイントに大きくわけて解説していきます。

これらのポイントを押さえて、後悔のない就職活動を実現しましょう。

企業選定のポイント

就職活動において最も重要なのは、企業選びです。

博士課程の学生にとって、以下の3つのポイントを考慮することが大切です。

  1. 自分の専門分野と関連する事業を行っている企業か?
  2. 企業の理念やビジョンに共感できるか?
  3. 自分の専門性を活かせる求人が出ているか?

 

残念ながら、専門分野に直接関わる事業を行っていない企業では、求人が少ないのが現実です。

また、企業の理念やビジョンに共感できなければ、入社後のやりがいを見出すことも難しいでしょう。

しかし、近年では新たな分野に挑戦する企業も増えています。

まだ事業化されていない分野に挑戦するスタートアップ企業など、自分の専門性を活かせる求人が隠れているかもしれません。

求人が出ていなくても、企業説明会やインターンシップに参加することで、企業の雰囲気や事業内容を深く理解し、思わぬ出会いにつながることもあります。

就職活動には時間的な制約があるため、早めから情報収集を行い、自分に合った企業を見つけることが大切です。

以下の記事もあわせて参考にしてください。

就活の活動ポイント

では、具体的な就職活動におけるポイントを見ていきましょう。

博士課程の学生だけでなく、学士や修士課程の学生にも役立つ内容ですので、ぜひ参考にしてください。

①OBやOGのパイプを大切にする

学生時代に築いた先輩との関係は、就職活動において大きな強みとなります。

特に博士課程では、同じ分野の先輩と深い議論を交わす機会も多く、貴重な情報源となるでしょう。

OB・OG訪問を通じて、企業の雰囲気だけでなく、企業が目指す姿や求める人物像など、生の声を聞くことができるのも嬉しポイントです。

これらの情報は、企業選びだけでなく、エントリーシートの作成や面接対策にも役立ちます。

さらに、入社後も相談に乗ってくれる頼もしい存在となるかもしれません。

学生時代に築く人間関係は、その後の人生においても大きな財産となります。

積極的に先輩とのつながりを大切にしていきましょう。

②支援機関を最大限に活用する

就職活動では、様々な支援機関を積極的に活用することも重要です。

具体的には、以下の4つの機関があります。

概要
  • 教授からの紹介
  • 大学のキャリアセンター
  • 企業への直接応募
  • 求人サイトや就職エージェント

それぞれを詳しくみていきましょう。

1.教授からの紹介

研究活動を通じて、教授は多くの企業とつながりを持っています。

自分に合った企業がないか、どのような活動をするべきかなど、積極的に相談してみましょう。

教授からの推薦は、就職活動において非常に大きな影響力を持つことがあります。

2.大学のキャリアセンター

就職活動に関する情報収集や相談、対策セミナーなど、キャリアセンターは様々なサポートを提供しています。

企業側もキャリアセンターとの連携を重視しているため、積極的に活用することで、企業選びや就職活動の準備をスムーズに進めることができます。

3.企業への直接応募

希望する企業に求人が出ていない場合でも、企業のウェブサイトから直接応募したり、セミナーに参加したり、問い合わせをするなど、積極的にアプローチしてみましょう。

必ずしも採用されるとは限りませんが、熱意を示すことで、企業の目に留まる可能性があります。

4.求人サイト・就職エージェント

リクルートやマイナビなどの大手求人サイトは、多くの企業が利用しています。

企業情報や選考プロセスなどを確認し、自分に合った企業を探してみましょう。

また、新卒向けの就職エージェントも、自分に合った企業を紹介してくれるため、活用してみる価値があります。

③企業訪問を積極的に行う

企業説明会や見学会など、企業訪問の機会があれば積極的に参加しましょう。

写真やウェブサイトだけでは分からない、職場の雰囲気や社員の働く様子を肌で感じることができます。

企業訪問=必ず応募しなければならない、というわけではありません。

訪問を通じて、「自分がここで働いているイメージを持てるか」「企業文化に共感できるか」などを見極めることが大切です。

④自己分析の深掘りを行う

「自分は何をしたいのか」
「自分は何ができるのか」
「なぜこの分野を研究したいのか」

これらの問いを通じて、自分自身を深く掘り下げる自己分析は、就職活動において非常に重要です。

自分の価値観や強み、そして研究への情熱を明確にすることで、企業とのミスマッチを防ぎ、納得のいく就職先を見つけることができます。

⑤活動時期を早める

就職活動の開始時期は年々早まっており、企業側も優秀な学生を早期に確保したいと考えています。

博士課程の学生であっても、研究と並行して、企業分析や情報収集を早めに始めることが重要です。

研究活動を通じて接点のある企業についても、常に情報収集を怠らず、業界動向や企業が求める人物像を分析しておきましょう。

早めの準備と行動が、希望の企業への入社を叶える鍵となります。

博士課程修了者が活躍できる国に

この記事でも紹介したように、「就活が難しい」といわれる博士課程修了者。

現在日本では、「博士人材が、研究分野だけでなく、多様な分野で活躍できる社会の実現」に向かってさまざまな取組を行っています。

今日本では、博士人材は「研究者」というイメージが強く、社会における活躍の場が限定的であることが課題です。

口当たりの博士号取得者数が他の先進国と比べて少ないのに対し、その貴重な人材が活躍できる場が少ないことが問題です

そのため、博士人材が正当に評価され、様々な分野で活躍できる環境を構築しようと文部科学省は考えています。

解決策として挙げられているのは、以下です。

  1. 博士人材のキャリアパス開拓、大学院教育の充実、経済的支援など、多角的な取り組みを実施すること
  2. 博士課程進学へのモチベーション向上、早期からのキャリア教育を充実させる
  3. 企業との連携強化し、実践的なインターンシップの推進を図る

 

博士人材一人ひとりの実りある生涯の実現と社会全体の持続的な発展に貢献しようという取り組みが「博士人材活躍プラン」です。

この取り組みは2024年3月に発表されました。

2040年までに、人口100万人あたりの博士号取得者を、2020年度と比べて約3倍に増やし、世界トップレベルの水準を目指しています。

よって、今後さらに博士号を取得した方が活躍しやすい国になるといえるでしょう。

さいごに

この記事では、博士課程における就職活動の難しさ、そしてその克服方法について解説しました。

博士課程の就職活動には、専門性の高さゆえの求人数の少なさや、卒業までの期間の長さからくる企業側の懸念など、特有の課題があることは事実です。

しかし、それは決して乗り越えられない壁ではありません。

数多くの先輩たちが、これらの課題を克服し、自身の専門性を活かして様々な分野で活躍しています。

この記事で一番伝えたいことは、「博士課程の就職活動は確かに難しい面もあるが、決して不可能ではない」ということです。

大切なのは、早めの準備と積極的な行動です。

今回ご紹介したポイントを参考に、OB・OG訪問や支援機関の活用、企業訪問など、様々な手段を駆使して、効果的な就職活動を行いましょう。

博士課程で培った専門知識や研究能力は、社会で大きく貢献できる貴重な財産です。

自信を持って、理想の未来を手に入れるための第一歩を踏み出してください。

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