【1本で丸わかり】独立系SIerの全貌と優良会社を見極める6つの物差し
2023年4月16日更新
はじめに
「独立系SIer」という言葉を目にしたことがあると思いますが、
「そもそも、SIerって何?」
「独立系って、何から独立してるの?」
「独立系SIerに就職すると、どんなメリットやデメリットがあるの?」
など、何かと謎の部分が多いですよね。
そんな人のために、SIerの定義から仕事内容、メリット・デメリットや優良会社の見極めポイントまで総合的な知識を手に入れてもらいます。
本記事1本で独立系SIerに対する具体的なイメージをもって就活に取り組めますので、10分ぐらいで最後まで一気にお読みくださいね。
そもそも「SIer」とは何?
そもそも、「SIer」って何でしょうか?
「SIer」を何と読むのかわからない人も大勢いるとは思いますが、「エスアイヤー」と読みます。
システムインテグレーション(System Integration)の頭文字に、「〜する人」を表す英語の接尾語「er」を合体させた和製英語となる日本独自のIT用語です。
また、SIerを「SI企業」や「SIベンダー」と呼ぶこともありますが、同じ意味で使われています。
「システムインテグレーター」を直訳すると「システムを統合する者」となりますが、お客様の業務を把握し、課題解決のためにコンサルティングから設計、開発、運用・保守までを請け負うのが「SIer」の仕事です。
なかには「SIer」と「SE(システムエンジニア)」の違いが分からない人も多いようですが、「SIer」が具体的な提案やシステムデザインを行う「企業」であるのに対し、「SE」はコンピュータの設計・開発を行う「職業」を指します。
次に、「独立SIerの独立系って、どういう意味?」と疑問に思う方もいると思います。
実はSlerと言っても、大きく5種類ありますので、次のチャプターで解説していきますね。
SIer企業は5種類ある
一口にSlerといっても、大きく下記の5種類があります。
①メーカー系
➁ユーザー系
➂独立系
➃コンサル系
➄外資系
これらの特徴を表にまとめると下記のとおりです。
①メーカー系
コンピューターや家電といったハードウェアメーカーの情報システム部門が分社・独立した子会社やグループ会社などの企業を指します。
親会社のハードウェアやソリューションを含めたITシステムの提案が可能で、幅広い提案やシステム開発など、ITに関してトータルで顧客課題に対応することができます。
➁ユーザー系
流通、製造、商社、金融などの大手企業の情報システム部門が独立した企業を指します。
主に親会社やグループ会社向けのITソリューション提案やシステム開発・保守などを行いますが、力のある企業は一般企業に対しても営業し、ビジネスを行います。
➂独立系
親会社の意向の影響を受けずに経営を行える点が最大の特徴です。
一方で、親会社の資本で恩恵を受けるメーカー系やユーザー系と異なり、比較的中小規模の企業が多いです。
➃コンサル系
ITコンサルティング会社のことで、ITシステム開発工程の中でも、主にコンサルティングを行うSIerです。
ITの導入企画や戦略立案などを得意とし、多くはシステムの構築や開発よりも上流工程にあたるシステムの適用検討を行います。
➄外資系
文字通り、海外資本のSIerを指します。
多くはグローバル市場で活躍する海外企業の日本法人で、いずれも企業規模が大きく、ブランド力があります。
日本の企業とは制度面で異なり、能力主義や成果主義に基づき個人の力が重視される傾向にあります。
以上のように、SIerにも5種類あり、その中の「独立系SIer」という相対的位置関係をまずは押さえておいてくださいね。
独立系SIerの仕事内容
「SIerのイメージは何となくわかったのですが、実際にどんな仕事をするんですか?」
SIerの仕事は下記のとおり大きく5つの仕事にカテゴライズできます。
営業活動
クライアント企業に対してヒアリングを行い、企業の課題や悩みを丁寧に掘り下げ、ITソリューションで解決可能な方策を探ります。
そのうえで、提案書に落とし込み、過去の事例や検証データに基づいた内容を評価されれば、受注につながります。
システムの企画
受注後に、具体的なシステム企画を実施し、クライアント企業がシステム運用した際のシミュレーションやオプション提案などを実施します。
システムに矛盾が生じるような提案や開発に膨大が時間がかかる企画は避け、商品理解とクライアントの理解が十分に共有されて、はじめて企画が成立します。
システムの要件定義
要件定義とは、クライアント企業がどのような目的で当該システムを必要としているのかヒアリングを行い、システムに必要な機能や性能などを定義する工程です。
システム化に必要な対象業務を洗い出し、業務処理の手順やシステムの操作、入出力要件などを整理して、要件定義書としてまとめていきます。
システムの設計/開発
設計は要件定義書に基づきシステムの設計を行う工程です。
設計といっても幅広く、ハードウェアの設計やデータベース設計、あるいは業務設計やプログラミング設計など、さまざまな設計を行います。
次に開発では、設計工程で作成した設計書に基づきプログラミングを行います。
コーディング基準にしたがって、採用したプログラミング言語でコードを書いていきます。
コードを書いた後は、コードレビューを行い、必要に応じてデバッグを行います。
システムの保守・運用
システム導入後にクライアント企業が問題なく当該システムを利用できるように、稼働状況の監視や利用状況に応じたチューニングを実施します。
運用時にシステムに何らかの不具合が生じた場合には、応急対応を行い、そのあとの恒久対応も実施します。
独立系SIerのメリット5つ
「SIerの仕事内容はわかりましたが、独立系SIerで働くメリットとかあるんですか?」
大きく5つありますので、1つずつ解説していきましょう。
①幅広い業界での仕事機会
1つ目のメリットとして、独立系SIerは多様な業界や分野で活躍することができます。
メーカー系やユーザー系SIerとは異なり、親会社からの縛りのない独立系SIerは比較的幅広い業界の仕事を手掛けることが可能だということですね。
➁自由度の高い働き方
2つ目のメリットとしては、親会社からの制約がないため、開発で使用する製品の自由度が高い点が挙げられます。
親会社の製品を使用しなければならないしがらみがなく、ITシステム開発時にハードウェアやソリューションなどの製品を自由に選択できるため、より顧客目線の提案やシステム開発を行える点で自由度が高いと言えますね。
➂技術力の向上
①と関連しますが、多様な案件のシステム開発に携われるため、様々な技術に触れるチャンスがあります。
そのため、技術力を広く深く向上させられる点がメリットだと言えますね。
➃収入の高さ
独立系SIerは年齢や経験年数といった年功主義ではなく、能力や成果を重視する企業が多い傾向にあります。
したがって、活躍次第では高収入を期待できる点がメリットですね。
SIer企業の年収は400万円〜700万円が平均相場となっていますが、これはあくまでもプログラマーやシステムエンジニア職の平均給与です。
プロジェクトマネージャーやコンサルタントなどのクラスにキャリアアップすれば、独立系SIerで1,000万円以上の年収を得ることも期待できるでしょう。
なお、新卒のSIer企業での年収相場は300〜400万円が一般的だとされています。
キャリアアップの機会
最後のメリットとしては、多様なプロジェクトに携わるため、経験値が積み上がり、スキルアップの機会が多いです。
そのため、プロジェクトのマネジメントや顧客対応など、新たな役割にチャレンジできる点でキャリアアップの恩恵を受けることもできますね。
独立系Slerのデメリット5つ
次に独立系SIerのデメリットも5つ紹介しておきましょう。
巷では、「独立系Slerはやめとけ」といった表現もよく見られますが、これらのデメリットがクローズアップされて、そのような言い回しになっています。
①プロジェクトの不安定性
独立系SIerは、常に新しいプロジェクトを獲得する必要があります。
そのため、受注したプロジェクトが予定より早く終了する場合や、次のプロジェクトが獲得できない場合など、親会社や系列会社を持たない独立系はどうしても不安定性がついて回りますね。
➁契約条件の不利益
大企業の下請けとして仕事を受注することが多いため、契約条件が不利になる場合もあります。
また、大手企業からの指示や要求に従わなければならないため、自由度が低くなる場合も否めません。
➂技術力のアップデートの必要性
独立系SIerは、常に最新の技術動向に敏感である必要があります。
技術力が不足している場合は、プロジェクトを完遂できない可能性があるため、常に学習する必要があり、時間やコストがかかるケースもありますね。
➃キャリアアップの難しさ
独立系SIerのメリットの裏返しになりますが、上司や先輩との師弟関係がなく、キャリアアップが難しい場合もあります。
また、社内のスキルアップやステップアップの機会が少ない企業の場合、自己流での学習や独学を強いられる可能性もあります。
この辺りは事前にリサーチしておきたいポイントですね。
➄客先常駐がスタンダード
最後のデメリットは、独立系SIerの場合、客先で常駐することがほとんどで、自社で働くことはまずありません。
クライアント先に出向いて働くこととなりますので、どうしても帰属意識が薄くなり、離職率も高くなる傾向がありますね。
以上、独立系SIer のメリットとデメリットを紹介してきましたが、メリットとデメリットを比較考量して納得が行く場合は、独立系SIerの道もアリですね。
そのうえで、独立系SIerに向いている人はどんな人なのか、次のチャプターで解説していきましょう。
独立系Slerに向いている人
それでは独立系SIerに向いている人を見ていきましょう。
この中のいずれかに当てはまる人は脈がありそうです。
①様々な業種のシステムに関わりたい人
独立系SIerは業界を問わず幅広く案件を手掛けているため、多種多様なプロジェクトで広く経験を積みたい、1つの業種だけでは物足りない好奇心旺盛な人にとっては向いています。
そこで1つの業種を深く掘り下げたいのか、幅広い業種に対応可能なマルチプレイヤーになりたいのか、自分の中でどちらに志向があるのかを点検してみてください。
どちらかというと、飽き性ですぐに新しいことに飛びつかないとワクワクが続かない人は、独立系SIerに向いていると言えますね。
➁安定性より自由にスキルアップしたい人
メリット・デメリットのところでも解説しましたが、独立系SIerは親会社のバックボーンがないため、どうしても安定性という面では劣勢を強いられます。
逆を言うと、親会社のしがらみもないため、自由度の高いシステム開発に携わることができます。
したがって、幅広い業種の業務経験を積んでスキルアップしたい人にとっては、恩恵のある企業ですね。
➂ベストソリューションを提案したい人
メーカー系やユーザー系のSIer企業では、どうしても親会社の意向や制約を汲み取らなければなりません。
したがって、「親会社の製品を使わなければ、もっとコストを引き下げて、予算内でプロジェクトを完遂できるのに…」といった場面に遭遇するかもしれません。
そんな時に、「仕方ない」と割り切れずに、顧客目線でベストソリューションを提案したいこだわり派は独立系SIerが向いていると思います。
ぜひ、自分はどっちなんだという線引きをして、向いている・向いてないを判断してみてください。
優良の独立系Slerを見極めるポイント6つ
本記事の締めくくりとして、優良の独立系SIerを選ぶポイントを6つ紹介しておきます。
自分の物差しを持っておかないと、誤ってブラック企業に就職し、負荷のある業務を無理強いされて残業や休日出勤などでプライベートのない生活を送る羽目に陥るかもしれません。
そうならないために、6個の物差しをぜひ確認してみてください、
①元請け・プライム案件が豊富か
独立系SIerの優良ホワイト企業ほど、元請け・プライム案件が多いので、年収は高く、プロジェクトをコントロールしやすい立場で仕事ができます。
全体に占める元請け・プライム案件が8割以上は欲しいところですね。
逆に、IT業界は多重下請け構造なので、下の立場になるほど中間マージンを差っ引かれ、給与や待遇が悪くなりがちです。
3次請け以下のプロジェクトが多い独立系SIerは、やめた方が良いでしょう。
➁30代が活躍しているか
30代が活躍しているかも、チェックするポイントです。
全体に占める30代の割合が、50%は欲しいところですね。
なぜなら、30代の層が薄いということは、それまでに会社を辞めている可能性が高いからです。
需要が高い20代後半から30代のエンジニア経験者は転職しやすいので、魅力のない会社だとすぐに辞めてしまいますので、「30代の層が薄い=会社に魅力がない」という公式になるわけです。
➂独自の強みがあるか
何かの強みがないと、独立系SIerは生き残れません。
IT業界以外にも自社開発する会社は増えてきていますので、独自の強みがないと早晩淘汰される可能性があります。
たとえば、
・AWSを活用したクラウド技術
・早いスピードと柔軟対応可能なアジャイル開発
・最新技術のAI、IoT、5G、フィンテック
・ずば抜けたインフラ・ネットワーク開発の技術力
・他社がマネできない大規模開発の実績多数
など、他社にはない自社だけの強みがないと競争力を担保できませんね。
「なんでもできます」という企業が一番危ないので、いくら元請けやプライム案件が多い企業でも、油断は禁物です。
➃自社製品・サービスはあるか
やはり、受託開発だけでは限界があります。
受託開発以外に収益の柱となる自社製品やサービスを展開していることが生命線になります。
今までの受託開発だけでなく、自ら変化して新しいビジネスを展開できるかが今後も生き残れる独立系SIerを見極める重要なポイントですね。
➄キャリアプランを選べるか
優良な独立系SIerであれば、自らキャリアプランを選択できます。
たとえば、
・社内公募制
・プロジェクト型公募制度
・ジョブローテーション
・社内FA制度
・階層別技術研修
などです。
こういった制度がないと、あなたがキャリアアップやキャリアチェンジしたい場合は、外に求めるしかないわけです。
特に、独立系SIerの場合は、親会社やグループ会社とのしがらみがないので、自由な人事制度や教育制度を設計できます。
優良な独立系SIerほど、制度が充実していると言えますね。
⑥平均年収が600万円以上
残酷な現実をお伝えしますが、年収はどれだけ頑張ったかではなく、どんな会社でどんな仕事をしているかで決まってしまいます。
元請けSler→2次請けSIer→3次請けSIerというようにマージンがどんどん差っ引かれますので、下流に行けば行くほど、年収が下がる構造になっています。
政府統計ポータルサイト-賃金構造基本統計調査によれば、システムエンジニアの平均年収は約550万円なので、600万円以上の企業を目指したいですね。
おわりに
以上、独立系SIerの全貌と優良会社を見極める6つのポイントを解説してきました。
システム開発のニーズは高く、特にクラウドやAI、データサイエンス、セキュリティ対策など、今後も需要の伸びが期待できる分野では、独立系SIerをはじめ、SIer全般に将来性があると言えます
また、上流工程のプロジェクトに参加してマネジメント経験を積んだり、より高度な提案や設計ができる技術力を身につけると、プロジェクトマネージャーやテクニカルエキスパートなどのキャリアアップを目指せます。
今回は独立系のSIerについて解説してきましたが、メリット・デメリット両面あります。
当然、そこには向いている人と向いていない人が出てきますので、本記事を判断基準にされて、向いている人はぜひ活用してほしいと思います。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。