新卒採用において内定辞退を回避する方法

新卒採用において内定辞退を回避する方法

1.人を集め、見極めすることだけが採用活動ではない

採用活動には大きく分けて以下の4つのステップがあります。

ステップ1. 採用母集団(最近では候補者集団とも)を集める。

ステップ2. 自社についての情報提供を行って選考参加を促す。

ステップ3. 選考・選抜を行って候補者の見極めを行う。

ステップ4. 選考をクリアした候補者が入社を決めてもらえるように口説く。

このステップの中でも、せっかく手間暇かけてステップ3まで進めた学生を、最後のステップ4でみすみす逃がしてしまう。つまり内定辞退されてしまうことが、昔から多くの企業で課題となっており、毎年の採用の悩みの種となっています。

これは特に中小企業やベンチャー企業に限った話ではありません。昨今では採用活動にもグローバル化が進んだことで、日系の大手企業においても更に採用ブランド力のある外資のグローバル企業に内定学生を持っていかれてしまう事態が起きています。

つまり、今やどの業界、どの企業規模においても、せっかく見極めた学生でもフォローを何もしないのでは、自社よりさらに強力な採用ブランド力をもつ競合他社に内定承諾をされ人材獲得競争に競り負けてしまうのです。

採用活動は、人を集め、見極めるだけの仕事ではありません。採用担当者のミッションの一つは、自社にマッチした優秀な学生を無事入社までつなげることです。

特に最後のステップまで進んだ上で辞退となってしまうのは、採用担当者としても悔しさ倍増であり、やはり何としても防がなければなりません。つまり、いかに内定辞退を回避するかが非常に重要であるのです。

では、内定辞退を回避する方法としてはどんなものがあるのでしょうか。ここでは大きく分けて内定の出し方と出すタイミングについてお話します。

 

2.軽く出す内定は、軽い

まず初めに、内定の出し方には注意が必要です。

内定はいわばプロポーズです。

メールやチャットで軽く一言「結婚してください」と伝えるのと、対面で花束や指輪を用意し、相手の目をみながら「結婚してください」と伝えるのでは、受け手はどのように感じるでしょうか?どちらの成功率が高いかは、こと恋愛では二人のそれまでの関係性や受け手の価値観(「厳かすぎるのは嫌だ」等)にも大きく寄りますので、ここでは言及しませんが、少なくとも後者の方がより受け手が重要感を感じるはずです。

内定の出し方もこれと全く同じなのです。メールや電話で機械的に「あなたは内定です」という通知を一本送るのでは、学生は「自分と同じように他のたくさんの学生にも気軽に内定を出しているんだろうな」と感じます。気軽に内定を出されれば、気軽にそれを断ってもかまわないだろう、と考えるのが人間です。良かれあしかれ相手がしてくれたのと同じように自分もしようという返報性の原理が働いているからです。

では、採用場面で、より重要感を演出した内定出しとは具体的にどのようなものか。

以下内定出しの3つのステップをご紹介します。

 

ステップ1. 呼ぶ

内定を出す際は、メールや電話ではなく、必ず対面で会うように呼びましょう。昨今のコロナ禍の中でも、感染拡大防止に最大限配慮することで対面を実現したいものです。例えば、窓が多い部屋、アクリルプレートを中央に配置、手の消毒、検温、マスク着用などをして、まず来社にあたって学生に安心感をもってもらうことが重要です。そこまでしても対面のほうがオンラインよりもフォローに有効であることは様々な研究からも明らかになっています。

 

ステップ2. 面接の感想や就活状況、気持ちを聞く

次に、これまでの自社の面接の感想や、現在の就活状況、自社への志望度や逆に不安(ネック)に感じていることなどを聞きます。ここで重要なのは、フォローにおいては「事実」よりも本人の「気持ち」のほうが大切であるということです。事実をいかに説いたとしても、本人が納得できていない限り入社は見込めません。その意味で、無理に言わせるのではなく自分の言葉で語ってもらえるような雰囲気づくり(圧迫的な聞き方はNG)が必要です。

 

ステップ3. 入社意思が高まっていたら内定

最後に、入社意思が高まっていることを確認したら、晴れて内定を出します。ここまで来ても強固な入社意思がまだ確認できないようでしたら、焦らずに次回の面談予定を取り付けてその日は終わりにすべきです。この時、内定を伝えるのは、それまで学生と接点がたくさんあった採用担当者か、内定付与の権限を持つ責任者クラスの方が良いでしょう。また握手をしたり、書面(免状)を渡したり、お祝いの食事をその後に用意しておく、なども有効です。

3.「最終面接合格」と「内定出し」を分ける

そして最後に内定を出すタイミングです。

これは、多くの企業が、最終面接合格=内定としているのが散見されますが、本来この間にもう1ステップをおいても良いはずです。そもそも大学入試などでは例え入試に合格したとしても即入学可能とはならず、その後に入学金を払って初めて入学資格を得られるというようにステップがあるのが通常ですので、採用場面だけ少し特異な現象ともいえます。

内定は「始期付解約権留保付き労働契約」という正式な労働契約であり、企業側が学生の採用を確約するもので、一度出してしまえばよほどのことがない限り企業側から取り消すことはできない非常に重たいものです。そういった意味で、内定は企業を拘束し、学生を自由にするものなのです。よくある内定が出た企業に対して学生が言っている「(選考がすでに)終わった企業」という呼び方からも、“内定が出てしまえば、この企業にもう断られることはないのだから安心して他の企業も見てみよう”、という心理が読み取れます。

こういった状況を避けるためにも、最終面接合格と、内定出しは区別し、「選考は合格です。あとはあなたの意思次第。お互いに相思相愛の状態で内定を出したいので、意思確認ができたら正式に内定を出します」といったコミュニケーションをとる必要があるでしょう。

但し、もちろんオワハラ「就活終われハラスメント」にはならないように、圧迫的に意思決定を迫る、というのはNGです。

冒頭で述べた、フォローをして入社を促すステップ4は、採用活動における正念場であり、採用担当者の腕の見せ所でもあります。採用力の高い会社というのは、やはりフォロー力が高い会社ということもできるでしょう。

また人が人に魅力を感じる原理や意思決定を行う際の原理は、採用においてのみ特別なもの、というのは本来なく、採用でも恋愛でも基本的には同様だと思います。自社にマッチした学生を一人でも多く獲得できるように、ぜひ今回ご紹介した方法を活用いただければと思います。

 

監修:曽和利光(そわとしみつ)
人事コンサルティング会社、人材研究所代表。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と、人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。

 

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