面接する人事担当者が気をつけるべきこと!就活生との信頼関係の作り方
1.はじめに
面接は必ずと言っていいほどほとんどの企業の選考フローに組み込まれている手法です。
就活生からすると、就活と言えば「面接」のようなイメージがあるかもしれません。実際、就活生にとって面接は緊張の一場面でありますが、人事の方々からしても、直接相手と会って互いの肌感を確かめる面接の重要度は言うまでもありません。
今回はそんな面接の難しさから就活生との信頼関係の築き方まで注意点も交えてお話ししていきたいと思います!
2.面接の難しさとは?
面接の難しいところと言われると、限られた時間の中でたくさんの就活生と接し、自社に必要な人材を見極めることが真っ先に思い浮かびますが、人事担当者であればある程度の方法論や進め方などは身についてるかと思います。
ただ、ここでお話しする面接の難しさは話し方や進め方などの技術的なものではなく、もっと無意識のうちに潜むものです。
具体的には主に以下の3つが考えられます。
- 心理的なバイアスが拭えない
- 面接をしている人事担当者間の理想にズレが生じる
- 就活生に対してリアクションをとる必要がある
2-1.心理的なバイアスが拭えない
やはり就活生と人事担当者という立場の違いはあってもお互い人間であることに変わりはありません。人物の評価にはどうしても心理的な偏見が付きまとうのです。
そもそも人間は固定観念に陥りやすく、面接を始めた途端に直観で相手の評価を決めてしまう初頭効果や、良いと思ったところ、悪いと思ったところに極端に重点を置いてしまうハロー効果などの様々なバイアスが公平な評価を邪魔します。
その他にも、自分に似た人を好む傾向が出る類似性効果や、会社のために採用しないといけないというプレッシャーを感じて評価を上げてしまうなど、面接での評価を難しくしている心理的な原因は数多く存在します。
このような偏見に評価が左右されすぎていないかを常に点検しながら面接を進めていく必要があります。
2-2.面接をしている人事担当者間の理想にズレが生じる
人事担当者間で採用したい人材の人物像や採用基準が異なっていませんか?この誤差が大きければ大きいほど同じ情報に対する解釈の仕方や価値判断にズレが生じ、就活生に対する公平な評価を妨げる恐れがあります。
人事担当者複数人で一人の就活生を面接するとき、できるだけ絶対的な判断を下すためには、人事担当者間で理想の人物像や統一感のある採用基準の共有が不可欠になるのです。
人事担当者間で求める人材の判断の仕方や採用基準をしっかりとすり合わせた上で面接に臨むようにしましょう。
2-3.就活生に対してリアクションをとる必要がある
面接は書類や文面でのやりとりとは異なり、より会話に近く、互いのリアクションや態度、雰囲気などが直接的に伝わってしまうものです。
特に初めて面接の相手をする就活生だったり、競合他社との併願をしている就活生だったりする場合、相手のひととなりを探りたいし、相手の本音を聞き出したいものです。
しかし、人事担当者のとるリアクションや態度によって、就活生とのコミュニケーションに良くも悪くも影響が出てしまいます。
最悪の場合、人事担当者が取る態度一つで、相手である就活生の内定受理の有無に悪い影響が出てしまうことも考えられます。
直接のコミュニケーションが求められる場面だからこそ、自社に対する印象の決め手がそこら中に散らばっているため、細心の注意が必要なのです。
3.面接では「意見に注目しない」
これまで述べてきたように、面接には人事担当者にも心理的な偏見が働いたり、態度による就活生への影響があります。
これらのバイアスを全て取り払うことや全ての影響に対策することは難しいかもしれません。しかし、無意識のうちに公平な判断を妨げる要素が散らばっていることは気に留めておき、最大限の注意を払うことが肝要です。
また、もう一つの注意点として
就活生の「意見」に注目しない
ということが挙げられます。
この注意点は一見「いや、就活生の意見もちゃんと聞いてあげなきゃだめだ」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、「意見」というのは実はとても就活生の主観的なものです。
主観的な「意見」は言うだけなら簡単、思っているだけかもしれない、再現性を量ることができないなどのネガティブな特徴を持っています。
就活生が求める人材かどうか判断する上で重要視するべきは、
主観的な意見よりも客観的な事実です。
「〜したい」「〜できたらいいと思う」などのキャリア観などは主観的な意見に含まれます。就活生がそのような主張をしてきた場合は、「なぜ」を問うとエピソードトークなどの客観的な事実に落とし込むことができます。
実際に行動してきたことなどを聞き出すことができれば、ウソがなく、仕事の中でも再現性の高い事実をベースに評価を行うことが可能です。
「具体的には」「例えば」「他には」などの言葉を質問の中に織り交ぜ、効率的に判断できる要素を引き出していきましょう。
4.就活生との信頼関係は会話から
就活生から評価の対象となるエピソードや事実をより多く、より詳細に引き出すためには、相手の自社に対する信頼や、面接をする人事担当者との信頼関係が不可欠です。
また、自社で働いてもらいたい!と思った就活生を説得し、勧誘する段階まで持っていくには最初にコンタクトを取ったその段階から信頼関係を築いていくことが最も大切になってきます。
就活生を説得、勧誘するまでには信頼関係を構築する時期、情報を収集する時期、そして説得・勧誘する時期の大きく三段階に分けられるのですが、ここでは一番最初の信頼関係構築の段階について述べていきたいと思います。
4-1.信頼構築のステップ
就活生にとって面接の相手となる人事担当者は最初は得体の知れないものです。面接をする人事担当者は自分から砕けた話をすることで信頼関係を築くことに努めましょう。
最初から「今まさに評価しています」という雰囲気を出しすぎると就活生も本音を喋りにくく、人事担当者も評価に困ってしまいます。
最初はただ雑談をしている感じや、楽しさを感じてもらえるよう、例えば逆質問などがあった場合もこちらから少し深めに掘り下げたりすることで、胸襟を開いて、話をしてもらえる雰囲気を創り出していくことができます。
4-2.信頼関係を生み出すトークのポイントは自己開示
信頼関係構築において大切なのは「この人にならなんでも話せる」という雰囲気を創り出していくことです。そこでまず大切になるのは自己開示。自分から積極的にオープンな態度を見せていくことで、相手も自分の情報を開示しやすくなるのです。
自分の入社動機を話すことは絶好の自己開示のチャンスです。自分のライフヒストリーをドラマチックに語ることで、就活生も共感を得ることがあるかも知れません。
自社の事業や仕事を話すときにもポイントがあります。それは、「ビジネスモデル」ではなく「自社の社会的意義」を話すこと。相手の知らないことを延々と話すのではなく、相手が
「もっと知りたい!」
「自分も仲間になりたい!」
と思ってくれるように、知的好奇心に訴えかける話をするのです。
また、組織風土を話す際は「風通しがいい」などの抽象的な表現は避けましょう。相手に具体的なイメージを湧かせるような「象徴的なエピソード」や「社内でよく使われる言葉」などの事実を用いて、自社の個性をアピールします。
ネックについて踏み込まれたとき、否定するなら相手に推測の余地を与えないように数字や事実でキッパリと否定しましょう。万が一肯定しなければならないときは「問題認識+対策」を明確に伝えたり、目的のために一方を立てるともう一方がまずくなるという状態を表す「トレード・オフ」を説明すると良いでしょう。
5.おわりに
いかがだったでしょうか。面接の難しさは手法や話し方に止まらず、無意識のうちに正確な評価を妨げる要素が数多く存在します。また、その難しさを克服した上で、就活生との信頼関係構築にも目を向けなければなりません。
面接をする人事担当者は就活生に自社のイメージを決めさせる窓口であると言っても過言ではありません。
しかし、直接的な会話が就活生や自社のイメージに与える影響と対策について精通していれば、面接の人場面が就活生にとって強力な入社動機になることもあり得ます。
今回ご紹介した注意点を参考に、満足のいく採用を目指してください!
監修:曽和利光(そわとしみつ)
人事コンサルティング会社、人材研究所代表。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と、人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。