【業界研究】研究職業界は!特徴や向き不向きは?選考に役立つ情報を徹底解説!
2024/5/24更新
はじめに
将来、研究職に就きたいと考えている人は多いでしょう。
今回は、研究職業界について基本概要から業務内容、就活に役立つ情報をご紹介します。
この記事は以下のような点を知りたい就活生を対象にしています。
- 研究職業界ってどんな仕事をするの?
- 研究職業界の将来性は?
- 研究職業界の選考対策
研究職業界に興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
また、研究職以外の業界については、以下の記事で概観しているので、ぜひご覧ください。
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この記事の結論
研究職業界の就職難易度は高いといえるでしょう。
その根拠は、企業や大学などが研究職の募集をしているものの、採用人数が少ない上に、なかなかポストが空きにくいからです。
たとえ就職できたとしても、雇用期間が2年と限定されたり、研究成果を上げられなければ、打ち切りになる可能性があり、非常に不安定な職種でもあります。
しかし、選考対策として業界理解を深めると同時に、エントリーシートを書く段階で自己分析やこれまでの研究内容と成果をまとめておくことで、希望する職種に採用される確率が大幅に高まるでしょう。
後ほど、具体的な方法を紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
研究職業界とは?
研究職では、企業や大学、公的機関に属して特定の分野の研究に携わって業務に取り組みます。
業務内容は、「基礎研究」と「応用研究の」2種類です。
- 基礎研究
今まで明らかになっていなかった特定の分野の事象・理論や仮説などを立証し、新しい知識を得るための研究。 - 応用研究
基礎研究によって発見された知識などを利用して、材料・製品やシステムを新たに生み出し、既存のモノやサービスを改良するための研究。
また、開発職と研究職は似ていますが、厳密に言えば異なります。
開発職は「製品」を新たに生み出すのが目的ですが、「研究職」は「技術・知識」をアップデートするのが目的です。
研究職業界の現状は?
トピック1:博士課程へ進学する学生が減少傾向
近年、博士課程に進学する学生の数は減少傾向にあります。
その要因としては、博士課程に進学してもその後の就職先に不安があることや、生活の経済的見通しが立たないなどが挙げられます。
若手の人材が少なくなることで、将来的に国内から世界を牽引する人材が育ちにくい状況です。
事実、ノーベル賞受賞などの多大な業績をあげた研究者の平均年齢は、概ね30代後半が多く、若手の研究者が先端研究の現場を支えている傾向があります。
そのため、若手の研究者の待遇を改善しないと優秀な研究者は生まれにくく、科学技術や学術分野の発展が遅れてしまうでしょう。
トピック2:雇用が不安定
研究業界では、雇用先は大学などの学術機関か、民間企業の研究部門のいずれかになります。
大学での雇用は教授や助手、講師としてのものが一般的ですが、多くは任期が定められており、期限が近づくと次のポストを探す必要があるのです。
一方、民間の研究部門に配属されても、研究成果を上げられなければ、研究が進む前に打ち切りになってしまいます。
さらに、大学院の博士課程を修了しても安定した雇用が得られず、任期付きの働き方が一般的な「ポストドクター問題」も存在します。
欧米と比べて、キャリアパスが整備されていないのが現状です。
研究職業界の未来は?
トピック1:国や大学が労働環境を整備している
研究人材の育成・確保に向けて労働環境の改善が行われています。
例えば、大学側では経費を活用して5〜10年の任期を設け、中長期的な労働環境を整備したり、最新鋭の研究施設や設備を整え、インフラを整備する取り組みが行われているのです。
また、2016年からは、優れた若手研究者を企業や研究機関とマッチングさせるための取り組みもあります。
この取り組みは「卓越研究員制度」として知られ、受け入れ先が条件を満たす場合には任期なしのポストに就くことを明確にし、一時的に任期付きのポストでの雇用を行うことを目指します。
これにより、若手研究者の雇用の安定化が図られているのです。
トピック2:研究人材のニーズが高まっている
博士号を持つ人材は、その高い専門性と新たな価値を生み出す能力から、ITや製薬業界などでの需要が増加しています。
例えば、ヤフーは2015年に博士課程修了者やポストドクターのための採用枠を設け、AIやビッグデータの解析などの研究に注力しました。
また、製薬会社では、医療従事者への医学情報提供を行うメディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)の需要が高まっています。
これらの職種は高度な専門知識が求められ、医療に関する根拠の構築に携わるため、企業は博士号を持つ人材を積極的に求めているのです。
国や大学が就職を支援することで、優秀な研究人材が活躍できる環境を提供し、世界水準の技術を発展させることに貢献しています。
研究職業界の職種
職種内容①:民間企業の研究職種
民間企業では、新しいサービスや素材、製品の改良・開発、および基礎研究を行います。
大学や公的機関と異なり、企業は利益を生み出すための研究を行うため、成果が見込めなければ、研究が中止になることもあるでしょう。
自分が研究をしたいテーマや分野を深く追求するよりも、基礎研究をもとに企業の事業拡大や、より社会や消費者のニーズに貢献したい人が向いています。
大学や公的機関と比べて年収が高い傾向にあり、ITや製薬業界に携わることが多いです。
職種内容②:大学の研究室
大学では民間の研究とは異なり、学問を中心とした研究を行います。
1つのテーマや分野に対して長い時間をかけて研究を行い、ノーベル賞などを受賞するケースもあります。
大学や大学院で学んだことをより深く専門的に学びたい人には、こちらがおすすめです。
キャリアアップの一例として、大学院で博士号を取得した後、ポストドクターとして2〜3年間勤務し、その後研究成果が評価されれば、助教や講師として大学に採用されることがあります。
その後は講師、准教授、教授といった職位に進むことができますが、教授のポストは空席が少なく、かなり競争が激しいため、ハードルは高いでしょう。
職種内容③:公的機関
国や県が運営する研究施設に勤務し、研究の中心は新しい学問や理論、技術を発見する基礎研究です。
研究の目的は、社会や国の発展に貢献することに加えて、公務員と協力して問題や課題を解決することも含まれます。
警察庁の科学捜査研究所はその一例で、DNA解析やサイバー犯罪の解析など、事件解決に向けた研究を行います。
また、法医学の精度向上や事故の再現実験など、様々な研究テーマがあるでしょう。
公務員という安定した職種である反面、公務員試験に合格する必要があり、倍率が約2.5倍と高いのが特徴です。
研究職業界の市場規模・推移
業界全体の研究や職業界の市場についての詳細は、インターネットには掲載されていませんでした。
そのため、一例としてIT分野の研究開発の動向について紹介させていただきます。
2020年度の国内の科学技術研究費の総額は19兆2,365億円で、そのうち企業の研究費は13兆8,608億円でした。
国や県よりも民間の方が研究費を投入されているため、規模の大きい研究がしたい方は民間企業がおすすめです。
また、研究開発を担う人材は近年横ばい傾向です。
2020年度末の国内のIT業界の研究者は89万545人、そのうち企業の研究者数は51万5,469万人という内訳になっています。
研究人材の母数が増えない理由は、労働環境が不安定であり、経済的な不安を持つ人が多いからだと推測できるでしょう。
企業の研究開発費用ランキング
近年、企業は激しい競争に負けないように日々新しい技術を発見したり、サービスやモノを改良・改善したりしています。
新しい価値を提供するために莫大な資金を投じて、研究開発・設備投資を行っている企業も出てきています。
ここでは研究開発費をランキング形式にまとめましたので、ぜひご参考にしてください。
全体的に、輸送用機器や電子機器に大規模な研究開発費が投じられている傾向があります。
他にも医薬品、IT、化学などのジャンルにも研究が行われていますので、興味のある分野と価値観に照らし合わせてご参考にしてください。
研究職業界の大手企業紹介
研究開発費用ランキング上位5つの会社をご紹介します。
- トヨタ自動車
- 本田技研工業
- ソニーグループ
- 武田薬品工業
- 日産自動車
企業①トヨタ自動車
出典元:トヨタ自動車|公式Xアカウント
トヨタ自動車は国内に存在する企業の中で、最も研究開発費用をかけています。
電気自動車開発には、研究開発費や設備投資が3兆1,000億円に達すると予想されるでしょう。
トヨタは2026年までにEVの販売数を150万台に設定し、将来の成長を見据え、「カーボンニュートラル・電動化」「ソフトウェア」「モビリティ」にリソースを注ぎ、事業を拡大しています。
この規模の実現は、国内最大級の企業であるトヨタならではです。
企業②本田技研工業
出典元:本田技研工業|公式Xアカウント
HONDAグループは、2050年に「環境負荷ゼロ社会」に向け「カーボンニュートラル」「クリーンエネルギーシフト」「リソースサーキュレーション」など、環境に配慮した技術を開発をしています。
「交通事故死者ゼロ社会」の実現を目指し、運転者の個々の能力や状態に応じたAIを活用した運転技術や、人とモビリティを通信で結び、事故を未然に防ぐ技術の開発に取り組んでいます。
常に未来を見据えた技術力を維持するために、研究に重点を置いている企業の一つです。
企業③ソニーグループ
出典元:SONY|公式Xアカウント
ソニーグループはトヨタや本田とは異なり、輸送機器ではなく電気機器の分野で活躍している企業で、研究開発領域は13分野です。
AIを活用した技術はもちろん、音響体験やヒトとシステム・ロボットの調和、材料・物質のメカニズムの研究も行っています。
例えば、高度なフレームワークを利用して実証システムの開発に取り組み、カメラ付き移動ロボットやアーム型ロボットを開発し、時代を先読みした新たな事業を展開することが期待されています。
ホームページにはSONYグループが作成した論文や事例が掲載されているため、ご興味があれば以下のリンクから確認してみてください。
企業④武田薬品工業
出典元:武田薬品|公式Xアカウント
2022年3月期には、最大5,500億円もの研究費を投入する見通しであり、これは2021年の前期比で1,000億円も増加しています。
製薬業界では、トヨタやSONYに比べると半分程度ですが、トップレベルの資金を研究や設備投資に注ぎ込んでいます。
新しい薬が開発され、その効果が確認されれば、特許を取得し、大きな利益を生み出す事業へと成長するでしょう。
特に力を入れているのが、睡眠障害「ナルコレプシー」の治療薬の開発です。
この疾患は、日中に突然強い睡魔に襲われる神経性疾患であり、その治療法を模索しているのです。
医療分野の高い専門知識を活かしながら、新薬の開発に取り組むことで、社会や人々に貢献することが期待されています。
企業⑤日産自動車
出典元:日産自動車|公式Xアカウント
日産もトヨタやHONDAと同様に、環境に配慮した自動車やAIの活用の研究開発を行っている会社です。
横浜にラボを構え、電動化や自動運転、材料の開発・改良など幅広い分野で研究をしています。
日産リーフの登場以来、リチウムイオン電池への注力を続け、課題や欠点を克服し、地球環境や地域特性、車両セグメントに合わせたエネルギーを開発しています。
持続可能な未来に向けて、再生可能エネルギーを最大限活用するために、日々研究に取り組んでいる会社です。
研究職業界で働くメリット
研究職業界で働くと、どのようなメリットがあるのでしょうか。
他の民間の職種とは異なる2つの長所をお伝えします。
メリット①専門性を追求することができる
研究職は、求職者が大学や大学院で学んできた学問についてより専門的に携わることができます。
これまで得た知識を活かせるだけでなく、論文をまとめて世の中に公表することで、イノベーションを起こすことができるのです。
そして社会により大きな影響を与えることができます。
また、研究内容が権威ある賞を得ることができれば、大きく収入を伸ばせるだけでなく、そのテーマの第一人者になることもできるでしょう。
対価をもらいながら、生涯にわたって解き明かしたいテーマや分野に携われるのが大きなメリットです。
メリット②強い達成感が得られる
誰も解き明かしていなかった分野や仮説、事象を立証し、新たな物質や材料を発見することで、大きな達成感が得られるでしょう。
基礎研究で判明したことを別の組織が応用することで、より社会に貢献することが可能です。
研究の成果が自分の功績として残るだけでなく、世の中にプラスの影響を及ぼせることを実感することで、より仕事に対して前向きになれます。
また、学会やコミュニティに参加することでより新しい知識を得ることができ、知的好奇心を満たせるのもメリットです。
優秀な仲間と働くことで、より成長できるでしょう。
研究職業界で働くデメリット
研究職業界で働くことはメリットだけではありません。
他の民間の職種にはあまりないデメリットも存在しています。
研究職は一つのテーマを深く扱うため、その分野のスペシャリストになれるでしょう。
しかし、社会や顧客から需要がなくなった時に大きな問題が発生します。
ここで研究職の短所を確認していきましょう。
デメリット①転職がしにくい
研究職は雇用が不安定な上に、ポストも限られるため、転職の難易度が高いのがデメリットです。
例えば、大学で研究をして教授へとキャリアアップしようとしても、講師から助教授、教授へとステップアップをしていくのには時間がかかります。
教授のポストは数が限られているため、なかなか席が空きません。
また、年齢を重ねると未経験の業界や民間企業への移行する際にハードルが高くなります。
民間の研究の場合は特に成果が重要視されるため、常に結果を出し続けなければならないというプレッシャーが大きいです。
仮に研究結果が成功したとしても、商業として活用ができない場合は継続して勤務するのは難しいでしょう。
そのため安定して仕事を得るのに苦労し、これが最大の短所となります。
デメリット②研究が続けられるかは組織の資金力による
公的な研究施設での研究職に就く場合、国や県の税金によって費用が賄われるため、安定した資金力を得られるでしょう。
しかし、民間企業に比べるとその額は小さく、最新鋭の研究設備を整えることや、高コストの研究を行うことが難しいのがデメリットです。
一方、民間企業では特に大手企業や注目される新技術の場合、豊富な資金を得られます。
ただし、研究テーマによっては十分な資金が確保されず、社会情勢の急激な変化や経営状況の悪化によって研究が中止されるリスクも考えられるでしょう。
自身が取り組みたい研究が企業や社会から需要がないと判断されると、業務が妨げられるだけでなく、職を失うリスクもあることを認識しておく必要があります。
研究職業界への就活を成功させるためには
就活に関する基本的なことは業界関係なく対策が重要です。
研究職は採用枠が少ない上に、自分が研究したいテーマに必ずしも携われるとは限りません。
少ないチャンスをものにするためには、より具体的な対策が必要です。
以下から解説しますので、ぜひご参考にしていただければ幸いです。
- なぜ研究職業界を選択したのか
- それは他の業界ではできないのか
- 同じ分野なのになぜその企業を選んだのか
- 求職者のやりたいことと企業がミスマッチを起こしていないのか
- 自分の研究したいテーマがその職種で実現できるのか
- 働き方が自分のライフスタイルや価値観に合致しているのか
- 過去と現在、将来を考えた結果、価値観に一貫性があるのか
- これから目指す先と自分実現したいことに矛盾がないか
エントリーシート・面接頻出質問をご紹介
- なぜこの業界を選び、研究職を志望しているのですか?
研究テーマが教授からあらかじめ用意されていて、就活生が受け身で研究に取り組んでいる可能性もあります。採用担当者は業界を選んだ理由と研究職を志望している理由を深掘りすることで、応募者が専門的知識や技術を持っているのかを確認し、将来活躍してくれる人材かを見極めようとするのです。 - 今まで行っていた研究テーマを教えてください
求職者の経験が応募している研究施設と合致しているのかを確かめるために質問します。専門性が高く、知識と経験が備わっていないと業務を進めていくのは難しいでしょう。採用担当者は就活生に対して、ミスマッチを減らすために研究テーマについて確認し、早期退職のリスクを回避しようとするのです。
まとめ
本記事では研究職業界について解説しました。
研究職は、まだ解明されていない事象や考えを明らかにし、新たな価値を生み出す仕事です。
求められる能力や考え方が他業界と少し異なるため、しっかりとした対策が必要です。
気になっている方は大学の教授に一度相談してみましょう。
研究職業界は国内だけでなく海外にも活動範囲が及ぶため、非常に大きな市場であり、将来性があります。
ぜひこの記事を参考にしてください。