本気になるための動機は、自分の側にあるとは限らない。
平山 愛梨
立命館アジア太平洋大学
「どの職種にも興味が持てず、悩んでいた」という平山さん。
将来起業したいという目標に向け、「まずは就職して社会を知ることから始めたい」と思っていた。しかし、就職先を探すにあたり具体的に「これがやりたい」というイメージを持てず、入りたい会社も見つけられずにいた。
「やりたいことが決められないなら、自分を欲しいと思ってくれる会社に入ればいいのではないか」
そう考えることで就職活動を進めようとしたが、なかなか選考に本気になれない。もやもやした気持ちのまま、就活を続けていた。
やりたいことがなく、「みんなが書けると言う志望動機が、私には書けなかった」
◆合同説明会に行き、片っ端から人と話した。
動き出したのは夏から。9月は東京で過ごし、毎日のようにセミナーやベンチャー系合同説明会に参加した。
「その1ヶ月は、就職活動がどういうものかを体感しようと動きました。
同時に、自己分析も進めました。とはいっても、自分でやったのは基礎的な部分だけで、7割くらいは合同説明会で人に手伝ってもらいました」
平山さんが多くの合同説明会に参加した一番の目的が、説明会に来ている社員に他己分析をしてもらうことだった。話しかけやすそうな人に片っ端から話しかけ、相談しながら自分について言語化してもらう。その方法を繰り返した。
10月は土日を使い、福岡で合同説明会に参加した。
何度も説明会に足を運び、自己分析も進めていたが、その一方では、やりたいことや入りたい会社がなかなか出てこなかった。
そんな中、合同説明会で話した会社の役員から、選考を受けないかと声がかかった。その会社のきらきらした雰囲気と、若手の時から活躍できる環境はとても魅力的に思えた。
◆就活のゴールを見失った。
しかし1月、その会社に落ちてしまう。
「情けないですが、本当に調子に乗っていました。執行役員の方に興味を持って頂いたからきっと入れるだろうと勘違いをして、面接では会社に合わせて話す努力をしなかった」
いつのまにか「就活のゴール=その会社に入ること」になっていた。その会社に落ちたあとは何を目指して就活を続けたらよいのかすっかりわからなくなり、就活を辞めることも考えたほどだ。
なんとなく面接を受けに行く日々が続いた。やりたいことの具体案は相変わらず浮かばなかった。選考を受けても、積極的に受けたいと思える会社はなかった。
とあるコンサル会社でも、すでに数回選考が進んでいた。事業内容や雰囲気は合うと感じていたが、入社したいという熱意を持てずにいた。
「選考が進むたび、なんで通してもらえたんだろうと不思議だったくらい。でも、なぜだろうと考えに考えた結果、“私を欲しいと思ってくれているのかもしれない”と思ったんです」平山さんの気持ちが動き始めた。
◆緊張してまともに話せなかった最終面接。
「欲しいと思ってくれているのかもしれない」
そう思い当たってからは自然と熱意が湧き、面接の準備も念入りするようになった。その会社に入社して働きたいという気持ちが徐々に固まっていった。
「選考中にお会いした社員さんたちの誠実さに惹かれました。また、人柄も含めて率直に個人をフィードバックしてくれる制度があって、この会社でなら自分のよくないところを改善できると思いました」
そして迎えた最終面接の日。
それまでの面接の和やかな雰囲気とは一転、取締役との面接は、始終厳しい雰囲気だった。平山さんはすっかり気圧され、緊張で何一つまともに話せなかった。
面接後、取締役と入れ替わりで入ってきた執行役員から、その場で不合格を告げられた。
それまでもよく気にかけてくれていた役員から最終面接の感想を聞かれ「何一つ伝えられなかった」と言うと、「平山さんはどうしたい?」と尋ねられた。
平山さんはすぐに答えた。
「再チャレンジが許されるなら、もう一度頑張りたいです」
就活のゴールは「自分の目標に向けて経験が積める会社に入ること」に落ち着いた。
◆覚悟を決めたら、一瞬で気持ちが伝わった。
執行役員の全面的なサポートで、再度チャンスを得られることになった。
本番前に一度、役員とスカイプで模擬面談を行った。「就活生ぶるのを止めよう」と指摘された。
「『取り繕おうとせず、自分の気持ちを伝えて』と言われてその場でもう一度、白紙の状態から自分の思いを話しました。それを執行役員の方が『つまりこういうこと?』と整えて下さった」
整理してもらったものを書き留め、お礼を言って模擬面接は終わった。
再びの最終面接に臨むにあたり、平山さんは「もし落ちても、自分の中で納得ができるようにしよう」と覚悟を決めた。相手の雰囲気に圧倒されて何も話せなくなってしまった前回を省みて、その1週間は「自信を持って人と話す」ことを意識して過ごした。
1週間後。すべてを出し切る覚悟を決めた平山さんの前に、再び取締役が現れた。
「本日はよろしくお願いします」
そう一礼して顔を上げた時、目が合った。その瞬間、取締役の雰囲気が柔らかくなった。
面接内容はフランクに「何か質問ある?」と聞かれただけだった。穏やかな雰囲気のまま、面接は終わり、合格が伝えられた。
「私の気持ちの入り方が変わったことを、目を見てわかって下さったのだと思います」
執行役員をはじめとした会社側のサポートや理解に対し、平山さん自身が内省と行動を重ね、全力で応えたからこその結果だった。
再リベンジまでの1週間は、急遽ナイモノでインターンとして働いた。「自信を持って気持ちよく人と接すること」を意識し続けた。
こぼればなし
最初に行きたかった会社に落ちた時、「私は私だから」と自分の視点で話しすぎてしまったことを反省し、それ以降は受ける会社に合わせて話すように気をつけた。
「大事なのは、受ける会社と自分とのマッチングができているか、だと思います。その会社に入りたいのであれば、会社を分析して、自分からもある程度会社側に寄せて話す必要がある」
一方、入社を決めたコンサル会社では「取り繕わず、自分の気持ちを伝えて」とアドバイスされた。
相手に合わせて伝えることと、自分の気持ちを正直に話すこと。その両方を調整しながら話すことが必要だったという。
- お名前
- 平山 愛梨(ひらやま あいり)
- 内定
- 大学
- 立命館アジア太平洋大学
- 出身
- 北海道